前回の行列の問題の円をその円自身に移す一次変換は回転と鏡映の二つの形になることを説明しました。
大学の線形代数の話になるけど、受験生でも知ってたら問題が解きやすくなるかもしれんから今日はもっと詳しく説明書こうと思います。
まずは、転置って概念から説明しよか。
転置って言うのはそこそこ甘くて切ないねんけど、行列の
a b
c d
って並びを
a c
b d
って並びかたのを転置って言うねん。
i行目j列目をj行目i列目と交換した行列やな。
行と列を反対にしたわけや。
行列Aの転置をtを左上につけてtAって書くねん。
その転置って概念を導入すると、縦表記のベクトル
x=
s
t
の転置は
tx=(s,t)
って横ベクトルになって
y=
p
q
との内積は
x・y=sp+qt=(tx)y
って二つのベクトルの内積は縦ベクトルを1行2列と考えて、その置換の横ベクトルに対応する2行1列の行列と縦ベクトルに対応する1列2行の行列の積になって行列の計算に含まれるようになるねん。
これでより一般的にベクトルを扱えるわけやな。
ここで行列A,縦ベクトルxにたいして
Ax
は縦ベクトルやけど、この転置を考えると
t(Ax)=t(as+bt,cs+dt)=(s,t)tA=(tx)(tA)
って順番がひっくりかえります。
こういうひっくりかえるような計算、よくあることやねんけどな。
ここまで準備しておいて
原点中心の円を考えて、円からその円自身に移すってことは、原点からの距離が不変なことが必要です。
まあ距離が不変な一次変換やと再びもとの円になるから必要十分になるねんけど。
距離が不変な一次変換を直行変換とか言うねんけど、その直交変換を考えます。
ちなみにそういう行列Aのことは直交行列と言います。
式であらわすと
ベクトルxをAxに移すとしたら全てのxで
|x|=|Ax|
にならなあかんってことになります。
これなら原点からの距離は不変です。
任意のx,yに対して
(Ax)・(Ay)=(|Ax+Ay|^2-|Ax|^2-|Ay|^2)/2
=(|A(x+y)|^2-|Ax|^2-|Ay|^2)/2
=(|x+y|^2-|x|^2-|y|^2)/2
=x・y
つまり直交変換によって内積が変わりません。
反対に内積が直交変換で不変なら、距離も直交変換で不変です。
つまりは「距離を保つ」⇔「内積を保つ」
まあ内積を導入するって言うことは、ベクトルに距離の概念を導入してるってことがこういうところからも垣間見えるねんけどな。
それで
(Ax)・(Ay)=x・y
⇔
t(Ax)(Ay)=(tx)y
⇔
(tx)(tAAy)=(tx)y
⇔
x・(tAA)y=x・y
が任意のx,yで成り立つからtAA=Eになりそうで、それを示したいねんけど、
e_1=
1
0
と
e_2=
0
1
とか代入すれば
(Ae_1)・(Ae_1)=e_1・e_1
⇔
a^2+c^2=1
(Ae_1)・(Ae_2)=e_1・e_2
⇔
ab+cd=0
(Ae_2)・(Ae_1)=e_2・e_1
⇔
ab+cd=0
(Ae_2)・(Ae_2)=e_2・e_2
⇔
b^2+d^2=1
これは行列で言うと
tAA=
a^2+c^2 ab+cd
ab+cd b^2+d^
=
1 0
0 1
=E
つまりtAA=Eってことが示せました。
これは
u=
a
c
v=
b
d
のベクトルu,vを考えるとAは(u v)ってuとvを並べたものやけど
tAA=E
⇔
a^2+c^2=1
b^2+d^2=1
ab+cd=0
⇔
|u|^2=1
|v|^2=1
u⊥v
と言うように、
Aが直交行列⇔u,vが両方とも長さ1で直交してる(A=(u v))
ことがわかります。
こうやってベクトルとして考えると、前回の行列の問題でやった
a^2+c^2=1
b^2+d^2=1
ab+cd=0
のぐちゅぐちゅな計算しなくても
|u|^2=1よりu=(cosθ,sinθ)とおけて、vはuに垂直で長さ1だから図より
v=(-sinθ,cosθ),(sinθ,-cosθ)
で簡単に求まります。
これは受験でも使えるな。
だから直交行列、つまり距離を保つ一次変換の行列は
A=
cosθ -sinθ
sinθ cosθ
か
cosθ sinθ
sinθ -cosθ
のどっちかの形になります。
それで前回の最後にやったように
cosθ -sinθ
sinθ cosθ
はθ回転、
cosθ sinθ
sinθ -cosθ
の時はy=(tan(θ/2))xについて対称移動である鏡映ってものでした。
ちあみに回転行列の場合は行列式は1
鏡映の場合は行列式は-1になることも注意しといてください。
ついでにn次の直交行列全体のn次直行群をO(n),n次の回転行列全体であるn次特殊直交群をSO(n)とか表記して、
|T|=-1,T∈O(n)
となる任意のTを一つとって
O(n)=SO(n)⊥⊥SO(n)T
と書けます。
(⊥⊥は下の線はつながってると思ってください、うへ~)
まあこの辺は大学生は覚えてったくれ。
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