慶應大学2009年度理工学部の問題B1の解説、うへ~
[問題]
B1
xy平面上において円C:x^2+y^2=1と直線l:2x-y=0を考える。
(1)行列(1 -1 1 1)で表される1次変換によって、円Cはどのような図形に移るか。理由をつけて答えなさい。
(2)円Cと直線lとの交点の座標は((ヒ),(フ)),((ヘ),(ホ))である。
(3)円Cを円Cに移し、直線lを直線lに移す1次変換を表す行列A=(a b c d)をすべて求めなさい。
求める過程も示すこと。
[解答と解説]
(1)
お兄さんとしては行列(1 -1 1 1)を見たらπ/4回転させて√2倍する行列ってことわかって欲しいわけやな。
でもそんなお兄さんの期待を裏切っても大丈夫。
お兄さんはちょっと悲しいけど、そういうのなれてるから。
そう…なれてるから…
うっ…
ええからはよ説明せい!
π/4回転させて√2倍する行列ってわからなくても何となく出来ると思いますが、
円C上の点は(cosθ,sinθ)(0≦θ<2π)って言う表示が簡単になりやすいと思います。
これで(1 -1 1 1)で変換すると
(√2cos(θ+π/4),√2sin(θ+π/4))
に移って、π/4≦θ+π/4<2π+π/4でちゃんと一周するから半径√2の原点中心の円になります。
(2)
もうこれは連立して解くだけですね。
2x-y=0からy=2xでこれをx^2+y^2=1に代入して
x^2+4x^2=1⇔x^2=1/5
だから
x=±1/√5でy=2xだから
(x,y)=(1/√5,2/√5),(-1/√5,-2/√5)
(3)
この問題は(2)からAの変換で交点も再び交点に移らないといけないから、それで結構必要条件が出ますが、今回は行列の勉強と言うことで
円C上が円Cに移るAの必要十分条件
を求めたいと思います。
まず
円C上の点は(cosθ,sinθ)(0≦θ<2π)って言う表示であらわされたから
これをAによって移すと
(acosθ+bsinθ,ccosθ+dsinθ)
これが円上の点になるには
(acosθ+bsinθ)^2+(ccosθ+dsinθ)^2=1
⇔
(a^2+c^2)(cosθ)^2+2(ab+cd)cosθsinθ+(b^2+d^2)(sinθ)^2-1=0…[1]
これが0≦θ<2πとなるすべてのθで成立しなければならないから、こういうのはcosθ=0とかsinθ=0となるようなθを代入して必要条件をだしていくのがコツで
θ=0の時より,a^2+c^2=1
θ=π/2の時より、b^2+d^2=1
それでこれらを[1]に代入するとすべての実数θで
(ab+cd)cosθsinθ=0
がなりたたなければならないから、適当にθ=π/4でも入れて
ab+cd=0
よて
a^2*c^2=1…[2]
b^2+d^2=1…[3]
ab+cd=0…[4]
が必要条件になります。
しかし[2][3][4]が成り立てば、任意のθで[1]が成り立つから必要十分条件になってます。
よって
Aによって円Cが円Cに移る⇔[2][3][4]
です。
それでこの[2][3][4]の式が出てこれば[2]は二乗を足すと1になるから
a=cosα,c=sinα(0≦α<2π)
とか置けるのに注意して欲しいねん。
こういうのは最後に書くけど回転か、鏡映とか言う変換になると言うちょっと大学の線形代数の領域になるけど、そういう背景があるねん。
それでこの背景が結構、入試問題に∂ねん。
そこでこれらの式を見ると、a=cosα、c=sinαって置くのを覚えてください。
そしたら
[4]は
bcosα+dsinα=0
b^2+d^2=1
でこれを解くと、
cosα=0の時は、d=0,b=±1
cosα≠0の時はb消去して
d^2=(cosα)^2
より
d=±cosαでb=-dsinα/cosαから
(b,d)=(-sinα,cosα),(sinα、-cosα)
これはcosα=0の時も含む。
よって
[2][3][4]⇔(a b c d)=(cosα -sinα sinα cosα),(cosα sinα sinα -cosα)
ってαだけで表せるわけや。
これはもちろん円Cを円Cに移す必要十分な条件になってます。
それでここまで求めて後は、l上の任意の点がこの変換でl上の点になるようなαを求めたらよくて
l上の点はtを実数として(t,2t)とおけて
A(t 2t)=((a+2b)t (c+2d)t)
これがすべての実数tでl:2x-y=0上の点になるには
2(a+2b)t-(c+2d)t=0
⇔
(2a+4b-c-2d)t=0
がすべての実数tで成り立たなければならないから
2a+4b-c-2d=0…[5]
です。
後は[5]に
(a b c d)=(cosα -sinα sinα cosα),(cosα sinα sinα -cosα)
とかを代入するだけで
(a b c d)=(cosα -sinα sinα cosα)を代入すると
sinα=0⇔α=0,π
だから
(a b c d)=±(1 0 0 1)
です。
単位行列または単位行列×(-1)ですね。
最後に
(a b c d)=(cosα sinα sinα -cosα)
を代入すると
4cosα=-3sinα
両辺二乗して整理すると
sinα=±4/5
4cosα=-3sinαから
(cosα,sinα)=±(-3/5,4/5)
よって
(a b c d)=±(-3/5 4/5 4/5 3/5)
これでやっと
(a b c d)=±(1 0 0 1),±(-3/5 4/5 4/5 3/5)
って求まったな。
もうあかん疲れた。
ふにゅもうあかんわ…
でも最後にもうひと頑張りして
(a b c d)=(cosα -sinα sinα cosα),(cosα sinα sinα -cosα)
の意味は
(a b c d)=(cosα -sinα sinα cosα)
はこれはよく知ってるようにα回転させる一次変換になります。
それでよく似た
(a b c d)=(cosα sinα sinα -cosα)
の方は同じように(cosβ,sinβ)に作用させて加法定理使うと
(cos(α-β),sin(α-β))
とか言う点に移ります。
これはx軸について折り返して(β→-β)
α回転(-β→α-β)
する一次変換です。
これは結局のところ
y=(tan(α/2))xに関して、対称移動させる一次変換です。
これは対称移動だから、鏡に映したような変換、鏡映とか言います。
さすがに鏡映は大学の範囲ですが、こういう問題の背景を知ってるとかなりやりやすくなります。
詳しくは→距離を保つ一次変換である直交変換の行列は回転か鏡映参照
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