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パヴェル・デュロフはその世間知らずがアキレス腱だった(抄訳)

2024/08/29のアンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。テレグラムの共同創設者兼CEOのパヴェル・デュロフの逮捕は、彼が国際世界の現実についてイデオロギー的な理由から無知だったことが原因だった。彼は自らの世界観が誤っていいたことを、苦い経験を通して学んだことだろう。
Pavel Durov’s Naivete Was His Achilles’ Heel



 2024/08/24、テレグラムの共同創設者兼CEOのパヴェル・デュロフが、パリの空港に到着した際に逮捕された。これはテレグラムが児童ポルノや麻薬密売、詐欺等の犯罪を助長した容疑に関する捜査の一環だと発表されたが、EUの言論の自由に対する偽善的な弾圧に対して、世界中で抗議の声が湧き上がった。


 08/28、デュロフは500万ユーロ(555万ドル)の保釈金で釈放されたが、逮捕の正確な状況は依然として不明だ。

 確実に判っているのは、彼のプライヴェート・ジェットがパリに着陸したのは、給油の為か、女性の友人と食事をする為か、マクロン大統領と夕食を摂る為かの何れかの予定だったと云うことだ。

 何れにせよ、デュロフは世間知らずであり、それが彼のアキレス腱だった。彼は複数の国の市民権を持っているが、自分が帰化したフランスで、どんな口実であろうと拘束されるとは想像もしていなかったからだ。

 彼はまた、国家の時代は必然的に終わりを迎え、彼の所有する様な企業が多くの国よりも大きな力を持つ時代が来ると信じていた。

 テレグラムがEUによって調査されていることを知っていたにも関わらず、彼はEUに行くことを恐れなかった。

 彼はまた10年以上前に母国ロシアから、裁判所命令によりテロ活動に従事したとされる一部のユーザーに関する情報を引き渡すよう求められたが、それを拒否したことによって、西洋で有名人としての地位を手に入れた。また彼の暗号化されたプラットフォームが世界中でカラー革命を組織する上で重要な役割を果たしたことも、彼が「超国家的な名士」としての名声を得る助けとなった。

 従ってデュロフは西洋にとって自分は価値有る存在であり、拘束されるなど有る筈が無いと思い込んでいた。テレグラムが各国政府と何か問題を起こしたとしても、何等かの取引(賄賂を含む)で解決出来るか、或いはその世界観から、原則に従ってユーザーの情報を提供しないでも、西洋でなら大丈夫だろうと考えていたのかも知れない。

 だがデュロフは、Facebook や旧Twitter(そして或る程度は殆どの法的要請に従っているXも)とは異なり、西洋はテレグラムをコントロール出来ないと云う、それだけの理由で、彼を敵視するかも知れないと云う可能性を考えたことが無かった。

 彼は誤ったイデオロギー的情熱から新冷戦ブロックの肩を持ったが、最終的に彼を迫害することになったのは彼が恐れていたロシアではなく、西洋の方だった。これはドゥロフにとって大きなショックだったに違い無く、EUの政治的一貫性の幻想を粉々に打ち砕いた。

 EUは以前、ベラルーシがテレグラムに反国家的な投稿をした一部の市民を投獄したことを非難していたが、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領はドゥロフの逮捕後、予想通される通り口を開いた。

 「我々はフランスがどうしたかを見ました。………私は彼等を責めません。彼等は正しいことをしているだけです。ドゥロフであろうとなかろうと、有罪であるなら答えなければならない。———(ですが)我々があなたと同じ方法で自衛しているのに、なぜあなた方は我々(ベラルーシ)に対して異を唱えなければいけないのですか?」

 彼の言い分は尤もだ。ドゥロフの逮捕について人がどう思おうと、国家主権の行使は国際関係の現実だ。

 ベラルーシ(とそれぞれ独自の民主主義形態を持つ非西洋市民)と西洋との違いは、ベラルーシは国家安全保障上の理由から言論の自由を明確に制限しているのに対し、西洋はそうしないフリをしている、と云う点だ。「「知っている悪魔は知らない悪魔よりマシ」と云う諺が有るが、言論の自由が法的に制限されていることを知っていて刑務所に行くことを避ける方が、知らないでいて気が付いたら投獄されているよりもマシではなかろうか。

 デュロフはイデオロギー的な妄想に陥って、西洋はロシアよりも道徳的に優れていると思い込んでいた。だからこそ彼は逮捕された。EUがテレグラムを支配出来ないことを理由に自分を敵視していたことに気が付いていたら、デュロフはEU内に足を踏み入れる様な真似はしなかった筈だ。

 テレグラムはまた西洋が支援するウクライナとイスラエルの戦争犯罪を暴露する上で大きな成果を上げており、代替メディア・コミュニティが好むプラットフォームのひとつとしても機能している。だからこそ彼は標的にされたのだ。

 デュロフにとっては恐らく、ロシアの治安当局や司法制度を信用して、テロ対策を口実に平和的な反体制派を迫害することは無いだろうと信じていた方が、ロシアを信用せずに西洋に逃げ込むよりは良かっただろう。「デジタル主権」は結局のところどの国だろうと多かれ少なかれ問題になるのであり、国内法に準拠していないメッセージング・プラットフォームは(それについて人がどう思うにせよ)訴追されるリスクが有る。従ってそれらの所有者は、どの国の法律に従うかに関して「より少ない毒」を選ばなければならない。企業が国家の法を完全に超越して活動出来る時代はまだ来ていないのだ。

 デュロフはロシアこそが「より大きな悪」だと見做していたが、彼を逮捕したのはロシアではなかった。

 最近まで、テレグラムは西洋のエリート層の利益に適っていた。当初はカラー革命を組織する上で役に立ったからだ。だがその後テレグラムが西洋で大人気となり、西洋が支援する戦争犯罪を暴露し、代替メディア・コミュニティにとって不可欠な存在になると、これは邪魔な存在と化した。従ってデュロフはテレグラムが厳しく取り締まられるであろうことを承知しているべきだった。

 全ての原因はデュロフの世間知らずと非現実的な世界観に帰着する。だが彼の逮捕は、彼の世界観が間違っていたことを証明した。同時に新冷戦ブロックは自らの評判をも傷付けた。
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川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
2022年3月に検閲を受けてTwitterとFBのアカウントを停止された為、それ以降は情報発信の拠点をブログに変更。基本はテーマ毎のオープンスレッド形式。検閲によって検索ではヒットし難くなっているので、気に入った記事や発言が有れば拡散して頂けると助かります。
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