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北極圏から中欧まで、新たな鉄のカーテンが構築中(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。2024/05/21、北極圏から中欧に至る新たな鉄のカーテンの出現が事実上宣言されたが、これは米国が欧州の分断統治を続けられるよう、ヨーロッパ人を架空の「ロシアによる侵略の脅威」で怖がらせておいて、ドイツ主導のロシア封じ込め政策に対して従順にさせるのが目的だ。
A New Iron Curtain Is Being Built From The Arctic To Central Europe



 2024/05/21、ポーランドのチェザリー・トムチク副国防相は、ポーランドの新たな国境警備要塞「シールド・イースト」とバルトの「バルト・シールド(バルト防衛線)」を統合すると発表した。 フィンランドが臨時国境障壁を増築していることと組み合わせると、最終的には北極圏から中欧に至る新たな鉄のカーテンが出現することになる。


 ここまでに至る流れを纏めると次の様になる。
 
 ドイツは米国の「アジアへの軸足変更(回帰)」を補佐する為、「ヨーロッパ要塞」を再建造中(抄訳)
 The “Baltic Defense Line” Is Meant To Accelerate The German-Led “Military Schengen”
 フィンランドは対ロシア封じ込めの為の北極戦線を開きつつある(抄訳)
 Poland Is Poised To Play An Indispensable Role In Germany’s “Fortress Europe”
 Poland’s Border Fortification Buildup Has Nothing To Do With Legitimate Threat Perceptions

 要約すると、ポーランドはドイツを勢力圏を競って張り合っていたが、2023年12月にドイツの支援を受けたドナルド・トゥスクが首相に復帰すると、完全にドイツに従属した。 これにより、米国は欧州に於けるロシア封じ込めをドイツが主導する「ヨーロッパ要塞」に任せることが出来る様になり、米国は「アジアへの軸足変更(回帰)」を行って中国封じ込めに集中出来る様になった。

 超大国への軌道を再び歩み始めたドイツは、ポーランドが「軍事シェンゲン」に参加したことで、バルト三国を支援して(リトアニアにはドイツの基地が有る)新たな鉄のカーテンを構築し、米国に代わってロシアを封じ込めることが出来る様になった。

 フィンランド、エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランドの5ヵ国はロシアの侵略について恐怖を煽ることで国内世論を纏めているが、米国はこれを利用して、EUの東側面に沿ったドイツの軍事的覇権の拡大を加速するだろう。

 ドイツ単独ではロシアには敵わないが、これら5ヵ国のどれよりも国防支出が大きい為、これらを「ジュニア・パートナー」として従えて、米国の監督下で管理することが出来るだろう。
 
 ロシアはEUに侵攻しNATO加盟国を攻撃して第3次世界大戦を引き起こすつもりは無いので、ドイツとその属国諸国だけではロシアを討ち取ることが出来ないことは問題ではない。「ロシアからの侵略に対する防衛」と云うのは最初から単なる口実であって、米国は単に欧州を分断統治する為に無際限にロシア恐怖症の炎を煽っておきたいだけなので、その為に「防衛線」の構築を主導する信頼出来るパートナーを望んでいるのだ。

 昔のドイツは二度も二度も武力で超大国になろうとしたが、今のドイツは保守主義とナショナリズムを毛嫌いし、代わりに曾ての敵国である米国と同じくリベラリズムとグローバリズム(西洋の非公式の世俗宗教)を擁護している。 イデオロギー的に凝り固まっていると云う点では昔と同じだが、但し今回はジェノサイドをやらかす予定は無い。

 現在世界は三極化のプロセスを経験しているが、この儘グローバルなシステム移行が順調に進んで最終雨的には複雑な多極性(多重性)へと繋がるのか、それとも中米二極体制に逆戻りするのかはまだ分からない。そんな中で米国は、少なくともEUが新冷戦に於ける最大の属国であり続けることは確実にしておきたいと考えている。

 EUを確実に米国に従属させ続ける為には、イデオロギー的に信頼出来る準覇権国(sub-hegemon)が必要となる。だからこそ米国はドイツにその役割を任せ、新たな鉄のカーテンの構築によってこれを推進したいと考えている。米国はアジアに軸足を戻して中国封じ込めに集中する為に、ドイツを準覇権国として台頭させ、ロシアを無期限に封じ込めさせるつもりだ。

 北極圏(フィンランド)からバルト三国を経て中欧(ポーランド)まで西ユーラシアに降ろされようとしている新たな鉄のカーテンは、ヨーロッパ人を怖がらせて、架空のロシアの侵略の脅威に備えると云う偽りの口実を信じさせ、指導者達の行うことを何であろうと従順に受け入れさせるのが目的だ。米国はそうすることで欧州の分断統治を続けようとしている。

 新たな鉄のカーテンの目的は心理的なものであって、軍事的なものではない。ドイツが主導してEUを軍事的に纏めようとしても、ロシアには敵わないからだ。そして実際にロシア軍と戦う羽目にでもなれば、当然米国も関与するだろうから、そのシナリオは誰も望んでいない核の応酬に繋がる可能性が高い。そうなれば勝者は誰も居なくなる。
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川流桃桜

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一介の反帝国主義者。
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