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バングラデシュとブータンの選挙結果はインドに戦略的息抜きを与える(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。2024年初めの選挙でバングラデシュとブータンでインドに友好的な指導者が選出されたことは、インドに戦略的な余裕を与えた。
The Outcome Of The Bangladeshi & Bhutanese Elections Gives India Strategic Breathing Space




バングラデシュとブータンの選挙結果はインドにとっては安心材料だった

 2023年は以下の展開の所為でインドにとって困難な年だった。

 ・米国がパキスタンの事実上の軍事政権に対して影響力を再強化した。
 
 ・暗殺計画疑惑を受けてインドとアメリカの関係が急速に悪化した。

 ・中米関係は雪解けを始めたが、印中関係は依然として緊張を続けた。

 ・モルディブでは反インドの指導者が選出された。

 従って、2024/01/07にバングラデシュのシェイク・ハシナ首相が再選を果たし、01/09にブータンのツェリン・トブゲイ元首相が首相に復帰したことに、インドはほっとしたことだろう。彼等はインドの緊密なパートナーと見做されており、両国はインドの地域安全保障政策に於て戦略的に非常に重要な役割を果たしている。そして、

  ・インドに友好的なバングラデシュは宗教原理主義者を牽制し、インドがテロリスト・分離主義者に指定している者が領土内に存在することをを容認しない。
 
 ・インドに友好的なブータンも宗教原理主義者には全く寛容ではないし、インドに問題を引き起こす可能性の有る中国との国境協定には余り従わない。



最近の展開の解説

 最近の展開を簡単に解説しておくと、11/22、「ロシアは米国がバングラデシュでカラー革命を画策するかも知れないと警告」している。これはつまりバングラデシュが西洋が命じた対ロシア制裁に加担することを拒否したことに対する罰だった訳だが、それよりも主な動機は恐らく、インドに圧力を掛ける為にバングラデシュを「反インド」に変えることだったろう。対ロシア政策を支持する野党が政権に復帰した場合、米国のインド封じ込め計画の一環として、バングラデシュは宗教原理主義者やテロリスト/分離主義者の避難所に逆戻りする可能性が有る。

 そうすれば、米国はパキスタンとバングラデシュに対する影響力を利用してインドに深刻な安全保障上の問題を引き起こし、そうしてロシアから距離を置くよう、インド政府に圧力を掛けることが出来ただろう。そして圧力を緩和して欲しければ、インドに不利な自由貿易条件を飲めと要求することさえ出来たかも知れない。また、今春のインド国政選挙を控えて、(米国にとっては譲歩を引き出し易い相手である)野党を勢い付かせると云う目的も達成出来たかも知れない。

 ブータンに関しては、ブータンは中国と正式な外交関係を結んでおらず、長年に亘り国境紛争を抱えて来たのだが、前政権は紛争の平和的解決に向けて外相を北京に派遣し、その結果、前例の無い協定が結ばれることになった。

 若しブータンがドクラム高原を中国に割譲した場合、この地域はインド北東部の狭い、所謂「鶏の首」を見下ろしているので、「係争中のブータン領土を中国が支配すれば、インドの国家安全保障が脅かされるかも知れない。」他の係争地域で更に多くの中国人入植地が建設されているが、これはそれらの地域の割譲を見据えた既成事実の積み上げが目的ではないかも知れない。これは中国がこれらの領土をドクラム高原と交換すると云う巧妙な取り決めの一環である可能性が有る。それらの入植地はドクラム高原の戦略的重要性に比べれば取るに足らないものだからだ。ブータンの方では、「中国に膝を屈した」と思われない為にも、領土を割譲するにしても交換条件が有った方が望ましいので、これはブータンの顔を立てる為の前準備かも知れない。
Chicken’s Neck



地域の安定にとって望ましい結果

 従って2024年初めの選挙でバングラデシュとブータンでインドに友好的な指導者が選出されたことは、インドから見て最悪のシナリオが発生する可能性を減らせることを意味する。これはインドに戦略的な余裕を与えた。

 バングラデシュのハシナ首相は依然としてカラー革命の圧力に曝されるかも知れないが、彼女はしっかりと耐えて、如何なる強制的なレジーム・チェンジも阻止することが期待される。

 ブータンのトブゲイ首相は、ブータンと中国の国境交渉にブレーキを掛けるかも知れない。少なくとも、何が有ってもドクラムを中国に割譲しないことを誓うだろう。

 2023年7月のマニプールでの暴動後、インドの東側に沿ってハイブリッド戦争の圧力が増大した。またミャンマーの新たな紛争は、歴史的に不安定な北東部諸国にも波及するかも知れない。だがバングラデシュとブータンの選挙結果は、これらの脅威を緩和する役に立つ。

 これによりインドは、中国(北部戦線)、パキスタン(西部戦線)、モルディブ(南西の二国間戦線)の問題管理により集中出来る様になる。少なくとも東側の安全は確保されることになるからだ。
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川流桃桜

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