「拡張現実 AR(Augmented Reality)なんて10年以上も前に提案されてテイクオフしなかった技術だ。」そう思い込んでいたが、頓智ドットのセカイカメラ を見て認識が変わった。iPhone というモバイルデバイス、そして Web2.0 のソーシャル・サービスと融合することによって、空中に浮かぶタグづけという、実に面白いコンセプトのサービスがローンチされた。
グローバルに通用するコンテンツでもあり、セカイカメラは早く日本から飛び出して、世界に出た方がいいのではないだろうか。日本だと「すぐに真似される。」「差異化技術がない。」「収益モデルが不明。」「iPhone だけではユーザが増えない。」といった評論家風の意見が出て資金調達がやりにくい気がする。
ベースとなる測位技術の精度(PlaceEngine が使われている)や、いっぱいになったエアタグの中から有用なものを提示するフィルタリングとユーザインタフェースの必要性など、確かに気になることはある。しかし TechCrunch 50 でそれなりに評価されたように、「つかみ」は OK、である。このよいスタートを持続させ、事業の成功の確率を高めるためには、資金だけでなく、技術開発と事業開発そして経営の人材が必要だ。それが得られる場所、たとえばシリコンバレーに早く行った方がいいのではないか。もちろんそこで厳しい競争を生き残れるかどうかはわからないが、少しでも成功の確率の高いところ、つまらないことで成長スピードがそがれないところに行った方がいい。
Facebook も twitter も彼らにしかできない技術で成立している会社ではない。収益モデルさえ見えていない。しかしその魅力的なサービスで億単位の大きな会員を得て、高い企業価値が見積もられ、資金調達を続けている。セカイカメラはそういうサービスに化ける可能性を秘めていると思う。ユーザが増えれば、空中広告という収益モデルの可能性が開ける。
追記:2009.9.26
はてなブックマークされたこともあって、アクセス数が多い。ブックマークのコメントを見ると、セカイカメラのライバルとなるサービスは、案の定、かなりある。Twitter や flickr、Bing、地図と連動する RobotVision は、ユーザインタフェースも秀逸だ。こういうライバルがいるからこそ、早く世界に出ていくべきでは、と感じる。それは第三者の、無責任で勝手な意見に過ぎないが、他にはなかなかない勢いのようなものをセカイカメラに感じるから「応援したい」というのが率直な気持ちである。
頓智ドットの井口CEO の活動を見ると、「世界に出る」というやる気と気概が伝わってくる。成功する確率は決して高くはない。TechCrunch でのプレゼンテーションでもわかるように、言語の壁も高い。しかしそういうものを乗り越えて、日本発のベンチャーがシリコンバレーから世界へ羽ばたいていくのを見てみたい。頑張ってほしいと思う。