二級建築士 平成28年度 学科III (建築構造) 解答解説④
平成28年度 学科III (建築構造) ー4/5
[ No.16 ]
鉄骨構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.圧縮力を負担する構造耐力上主要な柱の有効細長比は、200以下としなければならない。
2.圧縮材の中間支点の補剛材においては、圧縮力の2%以上の集中横力が補剛骨組に加わるものとして検討する。
3.H形鋼の梁においては、一般に、せん断力の大部分をウェブで負担するように設計する。
4.筋かいの保有耐力接合は、筋かいが許容耐力を発揮する以前に座屈することを防止するために行う。
5.埋込み形式柱脚においては、一般に、柱幅(柱の見付け幅のうち大きいほう)の2倍以上の埋込み深さを確保する。
答え
4
[ 解答解説 ]
1.◯
設問のとおりである。主要な鋼材の圧縮材(柱・筋かい等)の細長比は、柱にあっては 200以下とする。(建築基準法施行令第65条)
2.◯
設問のとおりである。
3.◯
設問のとおりである。
4.×
筋かいの保有水平耐力接合について、「筋かいの軸部が降伏する場合において、当該筋かいの接合部が破断しないこと」(昭55年建告第1791号第1号第2号)とあり、座屈防止の為ではない。
5.◯
設問のとおりである。埋込み形式柱脚は、「2倍以上の埋込深さとする」(平12年建告第1456号第3号)。
[ No.17 ]
鉄骨構造の接合に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.溶接接合を行う場合、スカラップは、溶接線の交差を避けるために設ける。
2.隅肉溶接における溶接継目ののど断面に対する許容引張応力度は、突合せ溶接による溶接継目の許容引張応力度の 1/√3 倍である。
3.一つの継手に突合せ溶接と隅肉溶接を併用する場合、それぞれの応力は、各溶接継目の許容耐力に応じて分担させることができる。
4.高力ボルト摩擦接合において、ボルト孔中心から鋼材の縁端までの最小距離は、ボルトの径と縁端部の仕上げ方法等に応じて定められている。
5.高力ボルト摩擦接合において、2面摩擦とする場合の許容せん断力は、1面摩擦とする場合の許容せん断力より小さい。
答え
5
[ 解答解説 ]
1.◯
設問のとおりである。スカラップは溶接線の交差を避けるため、ウェブの部材に設ける。
2.◯
設問のとおりである。溶接継目ののど断面に対する許容引張応力度については、突き合わせ溶接継目の許容引張応力度の 1/√3 倍とする。
3.◯
設問のとおりである。1つの継手に2種類以上の溶接を併用するときは、各溶接継目の許容耐力に応じ、それぞれの応力を分担させることができる。
4.◯
設問のとおりである。
5.×
高力ボルト摩擦接合において、2面摩擦とする場合の許容せん断力は、1面摩擦の許容せん断力の2倍となる。
[ No.18 ]
建築物の構造計画等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.鉄筋コンクリート構造において、袖壁、腰壁については非耐力壁として考え、偏心率の算定に当たり、影響はないものとした。
2.ピロティ階の必要保有水平耐力は、「剛性率による割増係数」と「ピロティ階の強度割増係数」のうち、大きいほうの値を用いて算出した。
3.3階建ての建築物において、1階に十分な量の耐力壁を配置するとともに、2階及び3階においても、1階と同程度の層間変形角となるように耐力壁を配置した。
4.杭基礎において、根入れの深さが2m以上であったので、基礎スラブ底面における地震による水平力を低減した。
5.耐力壁の配置が各階で異なっていたので、床や屋根の面内剛性を高くし、地震力などの水平力に対して建築物が一体となって抵抗できるように計画した。
答え
1
[ 解答解説 ]
1.×
偏心率の算定にあたり、RC構造においては袖壁・腰壁の剛性を考慮した場合と考慮しない場合の値の大きい方を用いる。(建築基準法施行令第82条の6)
2.◯
設問のとおりである。(2015構造関係技術基準解説書付録1-6)
3.◯
設問のとおりである。各階の層間変形角の差が大きいと、層間変形角が大きい階が崩壊する恐れがあるため、上下階の差はなるべく小さくする。
4.◯
設問のとおりである。基礎に加わる水平力は構造体の根入れ部分等で負担される。基礎の根入れ深さが2m以上あれば、地震による水平力を負担できる。
5.◯
設問のとおりである。
[ No.19 ]
鉄筋コンクリート構造の既存建築物の耐震改修、耐震補強等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.耐震スリットを設ける目的の一つは、せん断破壊型の柱を曲げ破壊型に改善することである。
2.あと施工アンカーを用いた補強壁の増設工事を行う場合、新設するコンクリートの割裂を防止するために、アンカー筋の周辺にスパイラル筋などを設けることが有効である。
3.建築物の最上階又は最上階から複数階を撤去する改修は、建築物の重量を低減できるので、耐震性の向上に有効である。
4.耐震診断基準における第2次診断法は、柱や壁の変形能力などは考慮せずに、梁の強さと変形能力などをもとに耐震性能を判定する診断手法である。
5.柱における炭素繊維巻付け補強は、柱の靱性を高めるのに有効である
答え
4
[ 解答解説 ]
1.◯
設問のとおりである。短柱は曲げ破壊より先にせん断破壊してしまう危険があるため、その対応として耐震スリットを設ける。
2.◯
設問のとおりである。
3.◯
設問のとおりである。
4.×
第2次診断法は、梁の変形能力を考慮せずに、柱と壁の強さと変形能力などを考慮し、耐震性能を判定する診断手法である。
5.◯
設問のとおりである。
[ No.20 ]
建築材料として使用される木材及び木質材料に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.木材の比重が樹種によって異なるのは、木材中の空隙率の違いによるものであり、木材の真比重は樹種によらずほぼ一定である。
2.CLT(直交集成板)は、挽板を幅方向に並べたものを繊維方向が直交するように積層接着したものである。
3.木材の繊維方向の基準強度の大小関係は、一般に、曲げ > 圧縮 > せん断 > 引張り である。
4.木材を加熱した場合、約 260°Cに達すると引火し、約 450°Cに達すると自然に発火 する。
5.木材に荷重が継続して作用すると、時間の経過に伴って変形が増大するクリープ現象が生じる。
答え
3
[ 解答解説 ]
1.◯
設問のとおりである。木材の比重は、気乾状態の比重で表す。樹種により空隙率が異なるので、比重は樹種により異なる。
2.◯
設問のとおりである。
3.×
木材の繊維方向の基準強度の大小関係は、一般に、曲げ > 圧縮 > 引張り > せん断となる。
4.◯
設問のとおりである。木材は 260℃以上で口火を近づけると引火するため、260℃を火災危険温度としている。また、400~450℃では口火がなくても自然発火する。
5.◯
設問のとおりである。木材に荷重が継続して作用すると、時間の経過に伴い変形が増大するクリープ現象が生じる。