設計製図 超入門 設計製図試験 木造住宅の設計手順
設計製図 超入門
5.木造住宅の設計手順
木造の課題は、以前は専用住宅か併用住宅のいずれかであったが、令和4年度は、二級建築士の得意分野である住宅や木造からはずれ保育所(特殊建築物)という課題になっている。通常は、この変更点の主旨は不明であるが、このポイントに注意して計画する必要がある。
令和4年の、要求図面及び注意事項は下記の通りであり、従来の二級建築士の木造設計課題の要求図面と全く同じなので、成果図面としての見栄えは同等のものと考えられる。計画上の部屋面積の規定(保育所には特有の規定がある)、部屋の配置計画、動線計画の適合性、妥当性、合理性は保育所のプランニングで問われることになる。
対策としては、木造設計製図の過去問題のプランニングの習得と指定用途の建築物の研究(令和4年度は、保育所)をする必要がある。
令和4年度 設計課題発表より
要求図面
・1階平面図兼配置図 (縮尺 1/100)
・各階平面図 (縮尺 1/100)
・床伏図兼小屋伏図 (縮尺 1/100)
・立面図 (縮尺 1/100)
・矩計図 (縮尺 1/20)
・面積表
・計画の要点等
注意事項
・建築物の階数については、試験問題の設計条件において指定する。
・答案用紙には、1目盛が4.55ミリメートル(矩計図については10ミリメートル)の方眼が与えられている。
・建築基準法令に適合した建築物の計画(建蔽率、容積率、高さの制限等)とする。
>> 建築技術教育普及センター
要求図面
・1階平面図兼配置図 (縮尺 1/100)
・各階平面図 (縮尺 1/100)
・床伏図兼小屋伏図 (縮尺 1/100)
・立面図 (縮尺 1/100)
・矩計図 (縮尺 1/20)
・面積表
・計画の要点等
注意事項
・建築物の階数については、試験問題の設計条件において指定する。
・答案用紙には、1目盛が4.55ミリメートル(矩計図については10ミリメートル)の方眼が与えられている。
・建築基準法令に適合した建築物の計画(建蔽率、容積率、高さの制限等)とする。
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次に、過去問題における木造住宅のプランニング手順をしめす。
1)計画
1.寸法および各室の広さを決める
設計製図試験では、在来軸組工法でもツーバイフォー工法でもよいが、寸法の押え方は解答用紙が 4.55mmの方眼が引かれているので、いわゆる3尺モデュールで計画しなければならない。
1階平面図兼配置図、各階平面図、立面図(断面図)、伏図は、100分の1の縮尺の指定があるので、4.55mmのグリッドは 455mm(45.5cm)ということになる。
日本の木造建築の長さの単位は、古来より3尺をひとつの基本単位としてきたので、現在でも木造建築の基本単位として3尺モデュールを使用している。実際にはメートル換算して3尺を910mm(1尺 = 30.303cm)として計画しているので、解答用紙の1グリッドが100分の1で910mmとなっている。
すなわち、1グリッドで910mm(91cm)となるので、1グリットを計画上の基本単位としてプランニングすることになる。
例えば、6帖の部屋は 3グリット × 4グリット、すなわち 2,730mm × 3,640mm(=約 10平米)となる。なお、長さにおける数値は、ミリメートル単位で記入する。
2)配置計画
建物を敷地のどの位置に配置するかを決定するためには、延べ面積条件および所要室条件から、建物のボリューム及びプロポーションを決める必要がある。敷地形状によってもそのプロポーションは大きく変わってくる。建物のプロポーションを検討する上で、敷地境界線からの離隔距離のセオリーを下記に示す。
a.道路境界線からの離隔距離
①東側・西側・北側の場合
2グリッド(1,820)( ≧ 1.5グリッド)
②南側(一方向道路、屋外駐車)の場合
6グリッド(5,460)以上
駐車スペースは、5m × 2.5 m /台より
b.隣地境界線からの離隔距離
①東側・西側の場合
1.5〜2グリッド(1,820)
②北側の場合
1.5グリッド(1,365)
③南側の場合
4グリッド(3,640)以上
配置計画をする上で、最低上記のような離隔距離を確保して計画したい。
また、人間と車の動線分離は当然であるが、さらに併用住宅の場合は、住宅部分へのアプローチと併用部分のアプローチの完全な分離も大切である。今回の場合は、利用者及び関係者の動線計画を分ける必要がある。
北側一方向道路(車1台の場合)
・駐車スペース分として幅4グリッド(3,640)を西側(東側)に確保する。
・東側(西側)の隣地境界線とのあきは2グリッド(1,820)を確保する。
・南側のあきは最低 4グリッド(3,640)以上を確保する。
・道路側のあきは、スロープを計画する場合のことも考慮して、3グリッド(2,730)を確保する。
北側一方向道路(車2台の場合)
・駐車スペース2台分として、幅7グリッド(6,370)、奥行 6グリッド(5,460)
を確保する。
・西側・東側の隣地境界線とのあきは2グリッド(1,820)を確保する。
・南側のあきは、最低4グリッド(3,640)以上を確保する。
・道路側のあきは、最低3グリッド(2,730)を確保し、駐車スペースとの取合いから検討する。
また、※のあき < 南側のあき とする。
南側一方向道路の場合
・西側・東側の隣地境界線とのあきは、2グリッド(1,820)を確保する。
・北側の隣地境界線とのあきは、1.5グリッド(1,350)を確保する。
・南側のあきは、最低4グリッド(3,640)以上を確保し、駐車スペースをとる場合は、7グリッド(6.370)以上を確保する。
西側(東側)一方向道路の場合
・西側(東側)の隣地境界線とのあきは、2グリッド(1,820)を確保する。
・北側の隣地境界線とのあきは、1.5グリッド(1,350)を確保する。
・南側のあきは、最低4グリッド(3,640)以上を確保する。
・道路側のあきは、スロープを計画する場合のことも考慮して、3グリッド(2,730)を確保する。
二方向道路に接道している角地の場合
西(東)・南の二方向と、西(東)・北の二方向に分けられるが、基本的には、一方向道路の場合と同じセオリーで考える。
3)平面計画
平面計画は、建築設計においてきわめて重要な作業であり、計画上の最も基本となるものである。二級建築士製図試験では、住宅設計がメインテーマなので、わが国の気候や風土に根ざした計画のセオリーと理解しなければならない。
平面計画をする上でまず行う作業はゾーニングである。ゾーニングとは、関連している各所要室をおおまかなグループに分類することである。たとえば便所、浴室、洗面所などはサニタリーゾーンであり、居間、食事室、台所はパブリックゾーン、夫婦室や子供室はプライベートゾーンとなる。
次にそれぞれのゾーンを、建物のどの方角に配置するのが良いかを決めるが、おおよそ下記のような分類となる。
a.南向きにしなければならない部屋
居間、高齢者室、夫婦室、子供室など
b.北向きでもよい部屋
玄関、廊下、階段、納戸、浴室、洗面脱衣室、便所など
c.東・西・北どちらでもよい部屋
台所、予備室、食事室など
4)構造計画
木構造において構造計画を行うには、S造やRC造以上に経験と知識が必要とされる。特に併用住宅では、1階の空間が専用住宅より大きな空間を必要とすることが多いために、特に構造的な配慮が必要である。
しかし設計製図試験では、基本的な部分での構造的配慮がなされていれば、特別に難しく考える必要はない。試験において、要求図面として耐力壁の計算が要求されることはいまのところないと考えて良い。
木造軸組の各部名称
設計製図 超入門 設計製図試験の心得
設計製図 超入門
7.設計製図試験の心得
(1)課題文を読む
課題は設計条件、要求図面などすべてもれがないように読み、注意事項や重要事項をしっかりマーカーなどでチェックする。試験当日まで、何枚となく作図練習をしてきているため慣れを生じ、重要事項を読み落としがちになることが考えられるので、課題文を理解するまで何度でも読み返すようにする。
(2)建物規模の把握
所要室より建物の規模を大枠で算出し、指定延べ面積の範囲に納まるように調整する。この時、総2階建か、一部平家建かを決める。
(3)建物形状の検討
敷地形状と、(2)で決めた建物規模により、建物のプロポーションと敷地内の建物の位置を検討する。
(4)ゾーニング
北向きで良い部屋、南向きでなければならない部屋、東または西向きでも良い部屋など、所要室それぞれのおおよその位置関係を検討する。
(5)エスキース決定
(4)のゾーニングから、各所要室の寸法を指定面積を考慮しながら、プランニングを進める。設計条件をチェックし、微調整を加えながら、エスキースを決定する。その際、柱の位置、開口部の位置と形状、設備機器、矩計の切断位置、屋根伏図の形状、立面図の形状、平面寸法、建築面積、床面積、延べ面積などを決定する。
(6)課題文を再度読む
最初に読んだ時とは、色の違うマーカーで再度チェックし、エスキースの確認をする。
(7)図面作成
(1)〜(6)までの作業をおおよそ50分程度で行い、図面自体の作成は、3時間30分程度で完了させる。
(8)課題文をもう一度読む
前2回の課題文読み込みを違う3色めのマーカーで、もう一度チェックし、完成図面の修正を行う。
最後に、氏名、受験番号等の確認も行う。
設計製図 超入門 課題の計画に関連する法規 長寿社会対応住宅
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6.設計製図課題の計画に関連する法規
長寿社会対応住宅設計指針
本格的な長寿社会を迎える21世紀。それに伴って健常者だけでなく、高齢者や身体障害者が可能な限り住み慣れた地域社会で安心して生活できるように住宅設計でも配慮が必要とされている。
「長寿社会対応住宅設計指針」は、平成6年に制定された「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」(通称ハートビル法、平成6年法律第44号)の第14条の規定に基づくもので、高齢者や身障者等が円滑に利用できる建築物の建築の促進に関する国民の理解を深める一環として策定された。
二級建築士の設計製図試験でも、この基準がプランニングにおいて重要な要素となる。
長寿社会対応住宅の設計指針(補足基準)通則の抜粋
出入り口の有効開口幅
基本生活空間内にある出入口の有効幅員
曲がり階段の例
設計製図 超入門 課題の計画に関連する法規
設計製図 超入門
6.設計製図課題の計画に関連する法規
建築法規は、建築物の安全上、衛生上の最低基準を定め、社会との強調関係を実現し、維持するルールを個人に求めたものである。設計製図試験の受験者は、すでに学科試験に合格しているので、建築法規は理解しているものとして課題は出題される。製図の計画は当然、法規上も満足しなければならない。しかし、試験ではその基準に対して、十分なゆとりをもって計画できるような課題内容になっているので、計画上、法規が計画のネックになることは、ほとんどないと考えて良いが、法規の概要は、再確認しておく必要がある。
まず、建築に関係する代表的な法規である「建築基準法」の構成は以下のようになる。
この中で、試験に関連する項目について説明する。
(1)用途地域
良好な環境を形成するために、地域を区画し、その中の建築物の用途を制限することにより、土地利用の秩序を整えようとするものである。その目的に適合する13種類の用途地域が定められている。
試験では、設計条件で指定されるが、指定された地域・地区に試験課題の建物が建築可能なのは当然のことであり、用途地域・地区について、特に検討する必要はない。
(2)建築面積と延べ面積
(A)建築面積
a. 建築面積は、建築物の外壁、またはこれに代わる柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積である。図右のように、2階部分の方が1階部分より大きな床面積の時は、2階部分の水平投影面積が建築面積となる。
b. 外壁の中心線から 1mを超えたものがある場合、たとえば軒の出、2階バルコニー、玄関ひさしなどは、その先端から水平距離で 1m後退した線で囲まれた水平投影面積が建築面積に含まれる。
c. 玄関ポーチのひさしで、柱がある場合は、その柱の中心線に囲まれた部分が、建築面積に含まれる。
d. 三方を壁に囲まれた平面形状の建物では、屋根があればその囲まれた部分は、建築面積に含まれる。
(B)延べ面積
a. 延べ面積は、各階床面積の合計の面積である。
b. 床面積は、外壁の中心線で囲まれた建築の床を構成している部分の面積のことである。階段部分は、踏面部分の合計値が上階の床面積に含まれる。吹抜けの場合は、上階部分の床面積から除く。
(C)設計条件としての建築面積、延べ面積
a. 設計条件の指定延べ面積の範囲は、余裕があるので、各所要室の指定面積を満たしておけば条件の中に納まる。
b. 指定延べ面積は、「◯◯ m2以上、◯◯m2以下」という表現で指定される。
たとえば、「 160 m2以上、200m2以下」という面積条件の場合は、
160 m2であれば適合であるが、 159.99m2では条件違反となる。
200 m2であれば適合であるが、200,01m2では条件違反となる。
指定面積の条件違反は、無条件で不合格となるので、十分に注意してエスキースする必要がある。
(3)建ぺい率と容積率
(A)定義
建ぺい率(%)= 建築面積 /敷地面積 × 100
容積率 (%)= 延べ面積 /敷地面積 × 100
建ぺい率、容積率共、用途地域の目的に応じて、都市計画で数値が定められ、それ以下としなければならない。
(B) 緩和等
a. 建ぺい率は、防火地域の耐火建築物や角地等の場合、10%の緩和を受けられる。
b. 容積率は、前面道路幅員 12m未満の場合、幅員との関係において制限の規定がある。
都市計画で定められた用途地域ごとの限度と道路幅員による限度を比較し、いずれか小さい方の数値が、その敷地の定められた容積率となる。
c. 屋内自動車車庫や、地階住宅部分については一定の範囲で、容積対象延べ面積が除くことができる。
(C) 設計条件としての建ぺい率、容積率
設計条件に延べ面積の範囲が具体的に指定されているため、延べ面積がその範囲内にあれば容積率については特に検討の必要はない。
建ぺい率は、容積率とともに数値は明示されているが、容積率と違って建ぺい率については、総2階や一部平家のように建築面積がその計画によって違ってくるので、検討する必要がある。
いずれにしてもエスキースが終了した時点で、正確な建築面積、各階床面積、延べ面積を計算しなければならない。
計算上では、図面に記入された寸法で計算するが、少数点以下第3位以下は切捨て、小数点以下第2位まで記入する。
(4) 高さ制限(絶対高さ制限、道路斜線、隣地斜線、北側斜線)
高さ制限は、実務上ではかなり大切な検討事項である。設計製図試験では、まずほとんど検討を必要とすることはないが、次表を基本として、さらに各制限には、緩和がある。
又、建築物の高さについては、日影規制(法56条の2)、高度地区(法58条)によっても、さらに厳しい形で制限を受けるので注意する。
※2018年4月1日、改正された都市計画法の施行に伴い、用途地域に追加されています田園住居地域の高さ制限は、第一種住居専用地域と同じである。
(5) 居室の採光
建築基準法では、居室の自然採光を義務づけ(ここでいう採光は、直射光(日照)を意味するものではない)、有効採光窓面積 W ( m2)/ 居室の床面積 A ( m2)を、必要割合以上にしなければならない。
必要な有効採光面積の割合
有効採光面積として算定される開口部は、室内に十分な明るさが得られる必要があるので、開口部の面する外部状況(屋根やひさし等)、隣地境界線までの水平距離等によって、採光補正係数による数値をもって採光上有効とする。
d:開口部の上部にある建築物の部分と隣地境界線又は同一敷地内の他の建築物までの水平距離
h:開口部の上部にある建築物の部分から開口部の中心までの垂直距離
有効採光面積(建築基準法施行令20条)
有効採光面積 = W × A
W:窓の面積
A:採光補正係数 A= d/h × a – b
d:窓から隣地境界線等までの水平距離
h:窓の中心から直上の建築物の各部分までの垂直距離
ただし、A ≦ 3
(6)居室の換気
居室には、換気上有効な開口部を設けなければならない。居室床面積の 1/20以上が必要となる。
引き違い窓の場合、窓幅の1/2が実質上の開口となり、有効な面積は窓面積の1/2 となる。
(7)階段
(a)踏面とけあげの寸法
(b)回り階段で踏面の寸法をはかる位置
(8)構造に関する規定
建築物は、自重、積載荷重、積雪、風圧、土圧、水圧、地震などに対して、安全な構造とするために、建築物の構造や規模により各々の基準に適合するものでなければならない。下記に示す建築物は構造計算によって安全性を確かめなければならない。
また、構造計算を要しない建築物でも適合しなければならない構造の規定があり、木造については令第40条〜第49条までの規定を満足しなければならない。その中でも、わかりにくい構造耐力上必要な軸組み長さのチェックについての概要を説明する。
(a) 必要壁量のチェック
木造建築物は水平力に対する安全性のチェックとして、地震力及び風圧力に対し、各方向(桁行、張り間)に対する構造耐力上必要な軸組の長さ(必要壁量)を算定し、実際設置する軸組の長さ(有効壁量)がそれ以上でなければならない。
有効壁量 ≧ 必要壁量
■必要壁量
①地震力に対して
その階の床面積 × その階に応じた表1の数値
(張り間方向、桁行方向ともに同じ数値)
表1 地震力に対する必要な壁量
②風圧力に対して
その階の見付面積 × その階に応じた表2の数値
表2 風圧力に対する必要な壁量
※見付面積:各階床面より1.35m上がったラインより上部にある建物の桁行方向または張り間方向の鉛直投影面積。
■有効壁量
実際に設置する軸組の長さ(実長)に軸組の構造に応じた倍率をかけたものの合計(表3)
表3 各種軸組の倍率(抜粋)
(b)軸組配置の明確化
軸組の配置は、令第46条第4項の規定により、その有効壁量が充分であるかどうかをチェックするだけでなく、その配置が大きく偏っていないことをチェックしなければならない。以前は「釣り合いよく配置」というあいまいな表現であったが、平成12年告示第1352号により、各階平面図を張り間方向、桁行方向で、それぞれ 4分割し、両端の 1/4の部分に存在する壁量のバランスを数値で算定してチェックするようになった。構造計算により、偏心率が 0.3以下であることを確認する方法もあるが、ここでは前者の説明をする。
●バランスチェック
1) 張り間方向の検討する場合は桁行方向の、また桁行方向を検討する場合は張り間方向の両端から、それぞれ 1/4の部分が [ 側壁部分 ]
2)側壁部分の壁量充足率を求める
壁量充足率 = 側壁部分の存在壁量 / 側壁部分の必要壁量
存在壁量 = 側壁部分の軸組長さ × 令46条4項表1の数値
必要壁量 = 側壁部分の床面積 × 令46条4項表2の数値
3)張り間方向、桁行方向のそれぞれで、両端の壁量充足率の、小さい方の大きい方に対する比(壁率比)を求め、0.5以上であることを確認する。ただし、壁量充足率が1を越えていれば壁率比検討の必要はない。
4)これらを各階チェックする。
設計製図 超入門 設計手順 壁量計算
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5.木造2階建 壁量計算
二級建築士 設計製図の課題文には、耐力壁には(△)をつけるとあり、解答例には、1階平面図及び2階平面図に(△)が記載されている。図中にも、凡例にて 「△:耐力壁を示す」と記載する方が望ましい。
平成26年「介護が必要な親(車椅子使用者)と同居する専用住宅」
[ 解答例 ]
ここで記載されている「△:耐力壁」は、課題文では、筋かい「等」によるとあるので、自ら設定してもよいものと考えられるが、解答例を見ても特に特に設定されていない。外壁の外周は構造用合板 9mm(倍率 3.7)及び 3cm × 9cmの筋かい(倍率1.5)と想定し、合計倍率 5(最大で5まで)での計算例を示す。
壁量計算の例
在来木造住宅等の構造耐力は、壁の量(壁量)の長さで確保するのが壁量計算である。(建築基準法施行令46条)
各階において、地震力に対するのに必要な壁量と風圧力に対するのに必要な壁量を比較して大きい方の値を必要壁量とする。
1)必要壁量
地震力に対しては、屋根の重さ及び床面積、階数に関わり、土蔵造又は瓦葺きなどの重い屋根(屋根の軽重は令84条)の場合、軽い屋根(金属板・スレート葺など)の場合によって床面積に乗じる数値が異なる。
風圧力に対しては、今回の解答例にあてはめると、南立面にあたる風圧に対しては、その面に直角となるY方向の必要壁量、東立面にあたる風圧に対しては、その面に直角となるX方向の必要壁量を各階でそれぞれ計算することになる。
計算方向は、それぞれの階で、床から1,350mm以上の部分の見付面積を求め、その見付面積 に 50を乗じて必要壁量とする。
2)平成26年 設計課題 解答例の計算例
風圧力に対する必要壁量は、立面図の見付面積より求める。
風圧力に対する2階の壁の必要壁量は、2階床レベルより1,350mm以上の見付面積による。
まず、2階のY方向に必要とされる壁量を計算する。
南立面の 2FL+1,350mmより上部の見付面積
2FL〜軒高 2,700
着色部分のスパン 11×910 = 10,010mm
屋根勾配 3寸勾配(水平:垂直 = 10 : 3)
より
棟木の高さを求めると
5.5 × 910 = 5,005 mm
5,005 × 3/10 =1501.5mm
仕上げ込みで 、簡単のため1,600mmとする
(仕上げ厚さ 98.5mm)
解答例では
最高高さ 7,669mm より
7,669 – 軒高さ − 1501.5
= 7,669 –(500 + 2900 + 2700 )- 1501.5
= 67,5
棟木天と最高高さまでの仕上げ厚さは 67.5mm
と想定している。
壁の仕上げ(通り芯から仕上げまでの距離)を90mm
軒の出を455mmとすると
見付面積はの単位はm2であるので、
10.100 × 2.700 + ( 5.005 + 0.455)×1.600 × 2
= 27.27 + 17.472
= 44.742 [ m2 ]
同様にして見付面積を求めると
2階 南立面 44.742、東立面 36.890
1階 南立面 82.189、東立面 69.931
面積表(平26年 設計課題 解答例)より
1階床面積 97.71 m2
2階床面積 74.52 m2
屋根の材料を、軽い屋根(金属板・スレート葺など)とすると
地震力の床面積に乗ずる数値は、1階 29、2階 15となるので、
以上より、必要壁量は次のようになる。
よって、
1階 南立面に対して必要な壁量 41.1m(Y方向の壁)
東立面に対して必要な壁量 34.9m(X方向の壁)
2階 南立面に対して必要な壁量 22.37m(Y方向の壁)
東立面に対して必要な壁量 18.45m(X方向の壁)
の壁量が必要となる。
外周構造用合板 9mm(倍率 3.7)及び 3cm × 9cmの筋かい(倍率1.5)合計倍率 5(最大で5まで)としたので、5で割って
1階 南立面に対して必要な壁量 8.22m(Y方向の壁)
東立面に対して必要な壁量 6.98m(X方向の壁)
2階 南立面に対して必要な壁量 4.474m(Y方向の壁)
東立面に対して必要な壁量 3.69m(X方向の壁)
0.91m(910mm)で割ると
1階
南立面に対して必要な壁量 9.03m → 10P(Y方向の壁)
東立面に対して必要な壁量 7.67m → 8P(X方向の壁)
2階
南立面に対して必要な壁量 4.916m → 5P(Y方向の壁)
東立面に対して必要な壁量 4.054m → 5P(X方向の壁)
それぞれの枚数の壁量を各階、各構面で、910mmの柱間及び梁(胴差し)軒桁に所定の釘止めの方法により張り付けつける。
耐力壁の配置
基本的にはコーナー部分は耐力壁で拘束する計画とする。
コーナー部分は耐力壁で固める
また、上階の耐力壁の位置と下階の耐力壁の位置はできるだけそろえる。
その上で、2000年の法改正により四分割法というの確認方法にしたがって、端部に耐力壁を配置するように計画する。
四分割法とは、建物の各階、東西・南北方向の長さを4等分し、その側端部分にある壁量の充足率とバランスをチェックしていくもので、判定目標としては、側端部分の存在壁量が地震力・風圧力の必要壁量以上であることを前提に壁量充足率または壁率比のどちらかの条件をクリアさせる。
耐力壁の充足率 ≧1.0
充足率が両端とも1.0を超えない場合には
壁率比 ≧ 0.5
を確認する。
今回の計算例
1階 床面積 91.71 m2
(左端)13.650/4 × (4.55 + 1.82)
=3.4125 × 6.37
=21.737625 → 21.74
(右端)(13.650/4 – 2.73) × 8.19 + 2.73 ×5.46
=5.589675 + 14.9058
=20.495475 → 20.50
それぞれに、令46条4項の表2の数値 29 を乗じて
端部必要壁量は
(左端) 21.74 × 29 =630.46 cm
(右端) 20.50 × 29 =594.50 cm
壁量充足率=存在壁量/必要壁量 ≧ 1.0
を満たすためには、倍率5の壁として
(左端) 6.3046/5 =1.26092 m
(右端) 5.9450/5 = 1.1890 m
よって、壁それぞれ、2枚(0.91 × 2 )以上あれば良い
同様に
1階上側 1/4 及び 下側 1/4
2階左側 1/4 及び 右側 1/4
上側 1/4 及び 下側 1/4
を計算して、壁量充足率 ≧ 1.0
であることを確認する。
壁率比とは、壁量充足率が満たされてない場合に検討するもので、
各階において配置した壁量の上側と下側及び左側と右側の壁量で
小さい値/大きい値 ≧ 0.5
を満たしていれば、バランスよく配置されている。
建築士の試験の解答例では、壁倍率までの明記がないので、コーナー部を耐力壁とし、左右及び上下の端部側の壁はできるだけ耐力壁とすればよいと思われる。