設計製図 超入門 課題の計画に関連する法規
設計製図 超入門
6.設計製図課題の計画に関連する法規
建築法規は、建築物の安全上、衛生上の最低基準を定め、社会との強調関係を実現し、維持するルールを個人に求めたものである。設計製図試験の受験者は、すでに学科試験に合格しているので、建築法規は理解しているものとして課題は出題される。製図の計画は当然、法規上も満足しなければならない。しかし、試験ではその基準に対して、十分なゆとりをもって計画できるような課題内容になっているので、計画上、法規が計画のネックになることは、ほとんどないと考えて良いが、法規の概要は、再確認しておく必要がある。
まず、建築に関係する代表的な法規である「建築基準法」の構成は以下のようになる。
この中で、試験に関連する項目について説明する。
(1)用途地域
良好な環境を形成するために、地域を区画し、その中の建築物の用途を制限することにより、土地利用の秩序を整えようとするものである。その目的に適合する13種類の用途地域が定められている。
試験では、設計条件で指定されるが、指定された地域・地区に試験課題の建物が建築可能なのは当然のことであり、用途地域・地区について、特に検討する必要はない。
(2)建築面積と延べ面積
(A)建築面積
a. 建築面積は、建築物の外壁、またはこれに代わる柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積である。図右のように、2階部分の方が1階部分より大きな床面積の時は、2階部分の水平投影面積が建築面積となる。
b. 外壁の中心線から 1mを超えたものがある場合、たとえば軒の出、2階バルコニー、玄関ひさしなどは、その先端から水平距離で 1m後退した線で囲まれた水平投影面積が建築面積に含まれる。
c. 玄関ポーチのひさしで、柱がある場合は、その柱の中心線に囲まれた部分が、建築面積に含まれる。
d. 三方を壁に囲まれた平面形状の建物では、屋根があればその囲まれた部分は、建築面積に含まれる。
(B)延べ面積
a. 延べ面積は、各階床面積の合計の面積である。
b. 床面積は、外壁の中心線で囲まれた建築の床を構成している部分の面積のことである。階段部分は、踏面部分の合計値が上階の床面積に含まれる。吹抜けの場合は、上階部分の床面積から除く。
(C)設計条件としての建築面積、延べ面積
a. 設計条件の指定延べ面積の範囲は、余裕があるので、各所要室の指定面積を満たしておけば条件の中に納まる。
b. 指定延べ面積は、「◯◯ m2以上、◯◯m2以下」という表現で指定される。
たとえば、「 160 m2以上、200m2以下」という面積条件の場合は、
160 m2であれば適合であるが、 159.99m2では条件違反となる。
200 m2であれば適合であるが、200,01m2では条件違反となる。
指定面積の条件違反は、無条件で不合格となるので、十分に注意してエスキースする必要がある。
(3)建ぺい率と容積率
(A)定義
建ぺい率(%)= 建築面積 /敷地面積 × 100
容積率 (%)= 延べ面積 /敷地面積 × 100
建ぺい率、容積率共、用途地域の目的に応じて、都市計画で数値が定められ、それ以下としなければならない。
(B) 緩和等
a. 建ぺい率は、防火地域の耐火建築物や角地等の場合、10%の緩和を受けられる。
b. 容積率は、前面道路幅員 12m未満の場合、幅員との関係において制限の規定がある。
都市計画で定められた用途地域ごとの限度と道路幅員による限度を比較し、いずれか小さい方の数値が、その敷地の定められた容積率となる。
c. 屋内自動車車庫や、地階住宅部分については一定の範囲で、容積対象延べ面積が除くことができる。
(C) 設計条件としての建ぺい率、容積率
設計条件に延べ面積の範囲が具体的に指定されているため、延べ面積がその範囲内にあれば容積率については特に検討の必要はない。
建ぺい率は、容積率とともに数値は明示されているが、容積率と違って建ぺい率については、総2階や一部平家のように建築面積がその計画によって違ってくるので、検討する必要がある。
いずれにしてもエスキースが終了した時点で、正確な建築面積、各階床面積、延べ面積を計算しなければならない。
計算上では、図面に記入された寸法で計算するが、少数点以下第3位以下は切捨て、小数点以下第2位まで記入する。
(4) 高さ制限(絶対高さ制限、道路斜線、隣地斜線、北側斜線)
高さ制限は、実務上ではかなり大切な検討事項である。設計製図試験では、まずほとんど検討を必要とすることはないが、次表を基本として、さらに各制限には、緩和がある。
又、建築物の高さについては、日影規制(法56条の2)、高度地区(法58条)によっても、さらに厳しい形で制限を受けるので注意する。
※2018年4月1日、改正された都市計画法の施行に伴い、用途地域に追加されています田園住居地域の高さ制限は、第一種住居専用地域と同じである。
(5) 居室の採光
建築基準法では、居室の自然採光を義務づけ(ここでいう採光は、直射光(日照)を意味するものではない)、有効採光窓面積 W ( m2)/ 居室の床面積 A ( m2)を、必要割合以上にしなければならない。
必要な有効採光面積の割合
有効採光面積として算定される開口部は、室内に十分な明るさが得られる必要があるので、開口部の面する外部状況(屋根やひさし等)、隣地境界線までの水平距離等によって、採光補正係数による数値をもって採光上有効とする。
d:開口部の上部にある建築物の部分と隣地境界線又は同一敷地内の他の建築物までの水平距離
h:開口部の上部にある建築物の部分から開口部の中心までの垂直距離
有効採光面積(建築基準法施行令20条)
有効採光面積 = W × A
W:窓の面積
A:採光補正係数 A= d/h × a – b
d:窓から隣地境界線等までの水平距離
h:窓の中心から直上の建築物の各部分までの垂直距離
ただし、A ≦ 3
(6)居室の換気
居室には、換気上有効な開口部を設けなければならない。居室床面積の 1/20以上が必要となる。
引き違い窓の場合、窓幅の1/2が実質上の開口となり、有効な面積は窓面積の1/2 となる。
(7)階段
(a)踏面とけあげの寸法
(b)回り階段で踏面の寸法をはかる位置
(8)構造に関する規定
建築物は、自重、積載荷重、積雪、風圧、土圧、水圧、地震などに対して、安全な構造とするために、建築物の構造や規模により各々の基準に適合するものでなければならない。下記に示す建築物は構造計算によって安全性を確かめなければならない。
また、構造計算を要しない建築物でも適合しなければならない構造の規定があり、木造については令第40条〜第49条までの規定を満足しなければならない。その中でも、わかりにくい構造耐力上必要な軸組み長さのチェックについての概要を説明する。
(a) 必要壁量のチェック
木造建築物は水平力に対する安全性のチェックとして、地震力及び風圧力に対し、各方向(桁行、張り間)に対する構造耐力上必要な軸組の長さ(必要壁量)を算定し、実際設置する軸組の長さ(有効壁量)がそれ以上でなければならない。
有効壁量 ≧ 必要壁量
■必要壁量
①地震力に対して
その階の床面積 × その階に応じた表1の数値
(張り間方向、桁行方向ともに同じ数値)
表1 地震力に対する必要な壁量
②風圧力に対して
その階の見付面積 × その階に応じた表2の数値
表2 風圧力に対する必要な壁量
※見付面積:各階床面より1.35m上がったラインより上部にある建物の桁行方向または張り間方向の鉛直投影面積。
■有効壁量
実際に設置する軸組の長さ(実長)に軸組の構造に応じた倍率をかけたものの合計(表3)
表3 各種軸組の倍率(抜粋)
(b)軸組配置の明確化
軸組の配置は、令第46条第4項の規定により、その有効壁量が充分であるかどうかをチェックするだけでなく、その配置が大きく偏っていないことをチェックしなければならない。以前は「釣り合いよく配置」というあいまいな表現であったが、平成12年告示第1352号により、各階平面図を張り間方向、桁行方向で、それぞれ 4分割し、両端の 1/4の部分に存在する壁量のバランスを数値で算定してチェックするようになった。構造計算により、偏心率が 0.3以下であることを確認する方法もあるが、ここでは前者の説明をする。
●バランスチェック
1) 張り間方向の検討する場合は桁行方向の、また桁行方向を検討する場合は張り間方向の両端から、それぞれ 1/4の部分が [ 側壁部分 ]
2)側壁部分の壁量充足率を求める
壁量充足率 = 側壁部分の存在壁量 / 側壁部分の必要壁量
存在壁量 = 側壁部分の軸組長さ × 令46条4項表1の数値
必要壁量 = 側壁部分の床面積 × 令46条4項表2の数値
3)張り間方向、桁行方向のそれぞれで、両端の壁量充足率の、小さい方の大きい方に対する比(壁率比)を求め、0.5以上であることを確認する。ただし、壁量充足率が1を越えていれば壁率比検討の必要はない。
4)これらを各階チェックする。