レビュー

2021年02月16日

通販サイトのレビュー絶賛されていた本が、実際手にとってみたら面白くなかった…
 
あるいは、酷評されていたものを試しに読んでみたら、それほど悪いものに感じなかったという経験、ありませんか?
 
「思っていたより良かった」なら何の問題もありませんが、「思っていたほど面白くなかった」だと「ダマされた!」と思ってしまいますよね。
 
(レビュアーさんもべつに、読者を騙そうと思って書いているわけではないと思うのですが…読者の感覚的にはどうしても、そう思ってしまうのではないかと…。)
 
実際、通販サイトのレビュー欄自体にも、そんな経験が書かれていたりします。
 
(「前のレビューで絶賛されていたから読んでみたけど、つまらなかった」あるいは逆に「ここまで悪く言われるほど酷い作品だとは思えない」等々…)
 
自分は「自分とは趣味も価値観も違う他人が書いたレビューが、アテになるかどうかは分からない」という考えから“参考程度に”レビューを読む方なのですが、それでも、レビューの文章に「面白そう」と“思わされて”失敗する…ということが何度かありました。
 
レビューの読者がそうして「ダマされて」しまう原因は、レビュアーとレビュー読者の価値観・好みの不一致にあると思われます。
  
人間の感覚は十人十色で、何を「おもしろい」「つまらない」と感じるかは一人一人違っています。
 
レビュアーが「長所だ」と思ってアピールしたものが、全ての人にウケるわけではありませんし、逆に「短所だ」と思ってけなしたものに、誰もが同様にガッカリするわけではありません。
 
レビューを読む人間がレビュアーとは「異なる感覚」の持ち主だったとしたら、実際に読んでみてレビュアーとは真逆の感想を持ったとしても、全く不思議ではないのです。
 
ならば、レビューの内容に「ダマされない」ためにはどうすれば良いのか…。
 
それは、レビューの「見方」「読み方」を工夫すれば良いのではないかと思っています。
 
レビューの内容から「主観的な感想」と「客観的な情報」を分け、頭の中で整理するのです。
 
主観的な感想」――「おもしろかった」「最高」「萌える」等々は、レビュアーの好み価値観から発生するものです。
 
よって、読者とは合わない可能性も多々あります。
 
しかし「客観的な情報」――たとえば「主人公が成長する物語です」とか「カップリングは幼馴染同士です」とか「世界観は中世ヨーロッパ的」ですとか…そういう「読み手の主観によって左右されない情報」は、「騙す・騙されない」は発生しませんし、自分の好みと合うかどうかの判断材料にもなります。
 
…ただし、レビュアーが情報を読み誤ってしまっている場合には、それもアテにならないことになってしまいますが…。
 
(サプライズのために、あえて読者の意識を誤誘導するような書き方をしている作家さんもいますし…。)
 
この「主観的な感想」と「客観的な情報」を分けて考えるやり方は、レビューの読み方のみならず、他のあらゆる情報処理にも使える大変便利な方法ですので、習得しておくと何かと人生の役に立つと思います。
 
それと「レビューにダマされる」要因には、他に「レビューによってハードルが上がり過ぎた結果、期待外れに終わる」パターンもあります。
 
レビューの文章から「過度に」期待と想像をふくらませ、ハードルが上がりに上がった結果、実際に読んだら「これだったら読む前の“想像”の方がおもしろかったじゃん」と思ってしまうパターンです。
 
この「期待外れ」パターンを味わいたくない方は、レビューから「過剰に期待」しないよう気をつけた方が良いかも知れません。
 
(ちなみに自分も、この「過剰に期待した結果、期待外れになる」パターンが多いのですが、そこで溜まったフラストレーションを、後々自作小説につなげて上手く活用していたりします。(→読む前に「期待」した内容を、自分自身の手で書く。)
 
<関連記事:帯のアオリ文は両刃の剣…?(←レビューとアオリ文という違いはありますが、「期待値上がり過ぎ問題」に関しては同じ内容です。)



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mtsugomori at 14:32

2020年08月05日

今回ご紹介するこの漫画、広島原爆を扱ったものだということは、読む前から知っていました。
 
ですが、最初の数ページを読んだ時「あれ?」と思いました。
 
そこに描かれていたのが、一見ごく普通の昭和の風景のように見えたからです。
 
戦争の悲惨さも何も感じられない、ごく普通の町の中の、ごく普通の女性のささやかな日常…。
 
しかし、徐々に、それがやはり原爆の物語であることが明らかになっていきます。
 
物語は原爆投下から10年後の昭和30年から始まります。
 
直接的に原爆の様子が描かれているわけではありません。
 
原爆の「傷跡」や、当時子どもだったヒロインの回想の中で「抽象的」に当時の様子が描かれているだけです。
 
なので、ついつい「これは、原爆から立ち直っていく人々の物語」と誤解してしまいそうになりました。
 
過去の不幸を乗り越えて、未来へ向かい幸せになっていこうという物語なのだと…
 
しかし、そうではありませんでした。
 
悲劇は、原爆投下直後の地獄で終わったわけではなく、10年、否、それ以降もずっと続いているのです。
 
物語の綺麗な結末のように「不幸を乗り越えて立ち直る」ことも赦されない、あまりに容赦のないその結末が、この国で実際に起きてきた“現実”なのでしょう。
 
特に最初に収録された「夕凪の街」は衝撃的なラストで、何とも言えない読後感を味わうことになります。
 
言葉は悪いかも知れませんが「後味の悪さ」は今まで読んできた本の中でも一番かも知れません。
 
でも、その「後味の悪さ」こそが、戦争というものなのだと、そんな気がします。 
 
自分は今まで様々な「戦争に関する本や映像作品」を読んで(観て)来ましたが、この漫画には、これまで読んできたものには描かれていなかったものが、言外に描かれているような気がしました。
 
同じ時代を同じ広島で生きていても、過ごした場所や年代や、ほんの少しの違いで、地獄を見たか見なかったか、悲劇的な結末に見舞われるか見舞われないかが分かれてしまう……必ずしも全ての人が同じ悲しみや苦しみを分かち合っているわけではないという事実。
 
そしてそんな“差異”に苦しめられる人がいたという事実。
 
そして戦争が終わって何十年経っても尚、呪いのようについて回るもの。
 
広島の人がかつて、目に見えない放射能を恐れる人々から差別を受けていたという事実を、自分は子どもの頃には既に知っていました。
 
けれど、それは今ほど科学が進んでいなかった過去のことで、現代においてはそんなことは起こらないだろう、人間の意識は今はもっと成熟しているだろうと考えていました。
 
それがとんだ過大評価で、何十年経っても人間の意識はそれほど成長していないのだという事実を、大人になってから様々な災害・疫病のたびにニュース報道等で知ることになるわけですが……。
 
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mtsugomori at 14:32

2019年10月07日

今回ご紹介するのは、こちらのマンガです。


 
このマンガの特徴は、何と言ってもその“絵”です。
 
まるで古いヨーロッパ細密画のような、びっくりするほど緻密で繊細な線で描き込まれた人物や背景、そして魔法効果の“絵”です。
 
連載作品(月刊誌)とは思えない絵の細かさにも驚愕しますが、世界観を彩る背景ファッションなどの独特なデザイン・センスにも唸らされます。
 
さらには、さりげない構図、人物のポージングが、いちいち格好良くキマっているのです。
 
それはまるで、古いメルヘン童話挿絵集アール・ヌーヴォーの画家さんの画集でも見ているような気分です。
 
前作「エニデヴィ(※)」の頃から、何気ない1コマ1コマがまるでポスター・デザインのように格好良いと感じていましたが、今作は「魔法ファンタジー」という世界観と絵の雰囲気が見事にハマっていて、とてつもない相乗効果を生んでいます。
  
石の一つ一つまで丁寧に描かれた石畳の道、西洋絵画から抜け出してきたかのようなドラゴン空に浮かぶ“山脈”等々…絵を見ているだけで物語の世界に引き込まれてしまいます。
 
また、魔法の設定が細かく魅力的に描写されていて「主人公たちと一緒に魔法のルールを学んでいけば本当に魔法が使えるようになるのではないか」と思わせてくれるリアリティーがあります。
 
ストーリーの根本が主人公の女の子たちの成長物語であるところも王道で良いですし、何となく、ほっとするような安心感があります。
 
…とは言いつつ、ほっこりするだけの物語ではなく、怪しげな敵(?)が暗躍していたり、主人公が魔法の道に進むきっかけが相当な大事件ですので、ハラハラ・ドキドキ、ナゾに満ちた展開もしっかりあるのですが。
 
ちなみにこのマンガ、日本で書店員さんが選ぶ「おすすめコミック」の第1位に選ばれている(2018年)他、フランスやスペインでも様々な賞を受賞していますが、ヨーロッパで評価されているというのは個人的に納得です。
 
絵や世界観から受けるイメージが「西洋ファンタジーど真ん中!」という感じですので。


(※)エニデヴィ

エニデヴィ1 (ビームコミックス)
白浜鴎
エンターブレイン
2013-06-15

 
天使女子と悪魔女子が地上を巻き込んで大暴れするコメディです。


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mtsugomori at 21:08

2018年04月08日

今回ご紹介するのは、こちらのCDです。
  ↓ 
ブラバン!甲子園 U18-WEST
大阪桐蔭高等学校吹奏楽部
ユニバーサルミュージック
2014-06-18

 
自分は元々金管楽器が好きで、高校時代も吹奏楽部に入ろうかと部活見学に行ったくらいでした。
 
(しかし成績順にクラス分けされた学校の1組だったせいで「うちの部は忙しいから勉強との両立は無理だと思うよ」とやんわり断られ(?)諦めたという…。)
 
なので家族が甲子園中継を見ていても、自分は試合よりその背後に流れるブラスバンド演奏が気になっていたりしました。
 
甲子園などの試合で流れる演奏って、普通のブラスバンドの曲とはまた違い、皆もよく知っているようなメジャーな曲を1人1人の打席の間にループできるようアレンジしてあるんですよね。
 
しかも一番気分の盛り上がるサビの部分がブラスバンド特有のあの音でカッコ良く演奏されるので、ただTVを見ているだけのこちらも気分がアガるような気がするのです。
 
そんな自分が「気分を上げたい時」「元気が欲しい時」に聴く用に買ったのが、このアルバムです。
 
甲子園でもおなじみの大阪桐蔭高校の吹奏楽部による甲子園アレンジの楽曲が収められたCDです。
 
この「ブラバン甲子園」シリーズは売れているらしく、他にもいろいろ出ているのですが、その中でもコレを選んだのはズバリ、収められている曲が自分好みだったからです。
 
Amazonの商品詳細ページへジャンプしていただければ(←上のCDジャケット画像から飛べます。)どんな曲が収録されているかご覧いただけますが…
 
自分のこのCDでの最大のお目当ては「進撃の巨人」1期前半のオープニング・テーマだった「紅蓮の弓矢」です。
 
元々勢いのある曲ですが、ブラスバンドとの相性がとても良く、聴いていると気分が高揚します。
 
他にも「千本桜」や「恋するフォーチュンクッキー」「ウィーアー!(ワンピース初期のOP)」「あまちゃんオープニングテーマ」「半沢直樹のテーマ」と最近のメジャーどころから「ルパン三世」「必殺仕事人」「狙いうち」などオーソドックスなものまでバリエーションが豊かで楽しめます。
 
甲子園アレンジですので、まるまる一曲通して聴けるわけでなく、中には本当に「サビのみ」なものもありますし、応援の掛け声や試合のサイレンなどが入っていますので「ただ純粋にブラスバンド・アレンジの曲を楽しみたい」という方には向かないかも知れません。
 
ただ、野球の試合での吹奏楽演奏のお好きな方は楽しんでいただけるかと思いますし、聴いていると、何だか自分が応援されているような気分になって元気が出ますので、個人的にオススメです。

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mtsugomori at 12:00

2017年08月13日


今回ご紹介するのはこちらの本です。






小学生向けの児童文学として出版された本で、映画化もされています。

広島の原爆を扱った“物語”なのですが、一番の特徴は、原爆を扱った作品でありながら、原爆投下後の悲惨な状況はほとんど描かれていないため、そういった描写が苦手な方でも読める、ということです。

(そういう意味では、昨年からロングランを続けている映画「この世界の片隅に(※)」(およびその原作)と共通する部分があるかも知れません。)

ただ、恐いです。

背筋をゾクゾクさせるようなホラー的、あるいはサスペンス的な“恐さ”があります。

挿絵もまた、物語が内包する“恐さ”をさらに煽り立てるような独特な雰囲気を持った絵で、小学生当時の自分は「恐い、恐い」と肝だめし的緊張感を味わいながらも、ページをめくる手を止められなかったのをよく覚えています。

物語は原爆から十数年経った夏の広島を、主人公である少年とその妹(そしてその母)が親戚の家を訪ねて行くところから始まります。

夏休み、見知らぬ土地を“探検”する少年が様々な発見と出逢いを通し、その土地で過去に起きた悲劇を知っていく、という物語なのです。

夏休み、親戚の家、見知らぬ土地の冒険というシチュエーションが、小学生だった自分にとってかなり“身近”で親近感があり、さらに、夏特有のじっとりした暑さや空気感が非常に克明に描かれているものですから、まるで「主人公=自分」のような感覚で物語の中に没入していけたのを覚えています。

そして、少年が知る“悲劇”の描き方も、陰惨だったり残酷というのとは違い、ただひたすらに「切ない」のです。

それは「戦争」という想像だに及ばない大きな悲劇と言うよりも、もっと身近な、抗い難い運命に翻弄される人生の悲哀に似ていて、それゆえにリアリティーをもって胸に迫ってくるのです。

この物語は、ある登場人物の運命が、その後どうなるか分からない、という所で終わります。

読み終わった後、何とも言えない切なさとモヤモヤが残ります。

でも、だからこそこの物語は未だに自分の心に残り続けているのだと思います。

自分は小学一年生の時「ひろしまのピカ(※2)」を読んで衝撃を受けて以来、小学生の頃の読書テーマを「戦争児童文学」として、様々な本を読み漁ってきましたが、その中でどれか一冊を選べ、と言われたらこの本を選びます。

戦争を扱っていない他の物語をひっくるめても「夏(夏休み)に読む一冊」と言われれば、この本を選びます。

それほどに印象深く「心に刺さる」一冊なのです。

(単行本の他、青い鳥文庫版もあります。)
  ↓




※「この世界の片隅に」は、こうの史代さん作のマンガおよび、そのマンガを原作として作られた映画です。

昭和19年に広島・呉に嫁ぎ、大切なものを失いながらも前を向いて生きていく一人の女性の物語です。

この世界の片隅に [Blu-ray]
のん
バンダイビジュアル
2017-09-15



 
(※2)「ひろしまのピカ」は原爆投下直後の広島の様子を描いた丸木俊さん作の絵本です。


 

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mtsugomori at 15:07
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