ライトノベル(ファンタジー)
2022年03月12日
「少女小説」とは、どんなジャンルなのか…どんな変遷を辿ってきたのか…、それを知るために役立つのが、この本です。
タイトルに「コバルト文庫」と、特定のレーベルが入り込んでしまっていますが…
「コバルト文庫」が「中心」というだけであって、それ以外の文庫にも、ちゃんと触れています。
それどころか、コバルト文庫以前の「ジュニア小説」や「少女小説前史」についても触れられています。
(ラノベやBLやボカロ小説についても触れられています。)
扱っているのが少女小説とは言え、「研究書」のような趣の本ですので、字は細かく、だいぶ内容が厚いです。
「ざっと知りたい」「ライトに知りたい」という方向けではなく、かなりガッツリ傾向分析や研究をしたい方向けだと思います。
ただし、それゆえにガッツリ学びたい派の方にとっては「1家に1冊置いておきたい」ような本になっています。
何せ、解説のみならず、様々な「資料」が付属しているのです。
コバルト文庫と他の文庫の年間出版点数(刊行点数)の比較グラフですとか、コバルト文庫のみならず、他のレーベルの新人賞の受賞作一覧ですとか、コバルト文庫の歴史が一目で分かるイラスト入りの「年表」ですとか…。
本文に関しても、情報ソースがかなり細かく記されていますので「もっと詳しく知りたい」方に重宝すると思います(参考文献については、参考にした情報の掲載ページまで記載されています)。
(その参考文献を実際に入手できるかどうかは別問題でしょうけど…。特に小説雑誌のバックナンバーなどは…。)
また、ただ「人気作品の傾向・移り変わり」のみならず、「読者の声・反応」も取り上げてくれているので、より「深く」少女小説の変遷を知ることができます。
読んでいて興味深かったのは「熱狂的ブームにも衰退はある」こと、「流行の後には『揺り戻し』がある」ということ。
そして、こうしたティーンズ向けレーベルの読者は「作家よりもシリーズに付く」傾向がある、ということです。
初版刊行が2016年のため、「最新の傾向(特に、昨今のネット発小説の隆盛)」については、さすがに語られていないのですが…
「姫嫁」ジャンルの成長など、現在の恋愛ファンタジーの流行(異世界か中世ファンタジー風世界が舞台で、姫や令嬢が主人公の恋愛もの)にも通じる傾向が読み取れたりと、勉強になることはかなり多いです。
ちなみに管理人本人も、コバルト文庫は結構読んだことがあります。
中学の学級文庫に少しあったのと、地元図書館のヤングアダルトコーナーにコバルト文庫が数多く取り揃えられていたので、同じく豊富に取り揃えられていた講談社X文庫や角川スニーカー文庫、富士見ファンタジア文庫などと一緒に読み漁っていました。
たぶん、リアルタイムの新刊などではなく、少し古めなシリーズだったのですが…(ファンタジー小説全盛期くらい?)
コバルト文庫が「少女向け」レーベルだということにさえ気づけないくらい、男主人公もガッツリ出てきたり、内容も恋愛中心なものばかりではなく、ミステリあり、SFあり、冒険あり、現代のサイキックものもありだったりして、「多様性(バラエティー)があって面白い」と思っていました。
mtsugomori at 17:59
2018年03月18日
以前、深沢美潮さんの「フォーチュン・クエスト」シリーズをご紹介した際、角川スニーカー文庫版の情報しか載せられなかったため、今回は電撃文庫(アスキー・メディアワークス)版の情報とメディア・ミックス情報を載せていきたいと思います。
この「フォーチュン・クエスト」シリーズはタイトルにナンバーが付いていて、比較的順番が分かりやすいシリーズではあるのですが、それでも角川スニーカー文庫版からお引越ししての「新装版」や「“新”フォーチュン・クエスト」「新フォーチュン・クエストⅡ」などがあり、ややこしく思われる方もいらっしゃるかと思うので…。
ここでは便宜上、シリーズを大まかに第1部~第3部に分けてご紹介します。
(外伝等は別個にまとめています。)
こうしてまとめてみると改めて、長~く愛されている作品であることが分かります。
出版社が変わったり、TVアニメ化されたり、電子書籍版が出たりと、様々な変化を遂げながらも、こうしてずっと続いているのですから…。
長く続いているシリーズ物にありがちなデメリットとして「途中から読み始めたり、あるいは途中が入手できなくてすっ飛ばしてしまうと、話が分からなくなる」ということがよくあるのですが、このシリーズは毎回巻頭にキャラクター紹介&前回までのあらすじがキッチリ載っているので、比較的分かりやすくなっているかと思います。
(でも、さすがに第1部をすっ飛ばして第2部あるいは第3部から、というのは大事な伏線や話の背景が分からないと思いますが…。)
ラインナップは以下の通りです。
(情報は2018年3月現在のものです。)
- 第1部・新装版…全8巻&Kindle合本版
- 第2部(新フォーチュン・クエスト)…全20巻&Kindle合本版
- 第3部(新フォーチュン・クエストⅡ)
- 新フォーチュン・クエスト外伝
- 読切型外伝(新フォーチュン・クエストL)
- コミカライズ情報
- アニメ情報
- 第1部・新装版
- 角川スニーカー文庫で刊行されていたフォーチュン・クエスト・シリーズ1~8巻を電撃文庫にて新たに刊行したものです。表紙も新たに書き下ろされています。
(Kindle(電子書籍)版では新装版1~8巻とバイト編を収めた合本版もあります。
合本版のみの特典としては、深沢美潮さんの書き下ろしあとがきと、イラストの迎夏生さんの描き下ろしコメント付きイラスト&ラフ画が収録されているそうです。)
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- 第2部(新フォーチュン・クエスト)
- スニーカー文庫から電撃文庫にお引越ししてからのシリーズ。クレイとトラップの故郷へ里帰りしたり、シロちゃんのお母さんが出て来たり、パステルに恋の波乱(?)があったりと、盛りだくさんな内容です。別の文庫に移っても、お料理レシピや巻末のモンスターポケットミニ図鑑は健在で安心できます。
(Kindle(電子書籍)版には「新フォーチュン・クエスト」全20巻+外伝3巻&「フォーチュン・クエストL」3巻がセットになった合本版もあります。
合本版のみの特典としては、深沢美潮さん書き下ろしあとがき&イラストの迎夏生の描き下ろしコメント付きイラスト&ラフ画が収録されているそうです。)
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- 第3部(新フォーチュン・クエストⅡ)
- ホワイト・ドラゴンのシロちゃんがついに××の姿になったり、小さなエルフ・ルーミィの家族探しにも進展がありそうな感じです。
- 新フォーチュン・クエスト外伝
- パステルたちが今のパーティーを組むまでの始まりの物語や、冒険者資格試験、そしてその受験のための予備校エピソードなどを収めた「外伝」です。
(この外伝3巻は「第2部(新フォーチュン・クエスト)」で紹介したKindle合本版にも収録されています。)
- 読切型外伝(新フォーチュン・クエストL)
- Lは「Limited」の「L」だそうです。タテ軸のナゾでつながった一連のシリーズとは別個に、これだけでも楽しめるという単発のクエストものです。
(この「新フォーチュン・クエストL」全3巻は第2部「新フォーチュン・クエスト」のKindle合本版にも収録されています。)
- コミカライズ情報
- 文庫版の挿絵を描いている迎夏生さんによるコミカライズです。書き下ろし原作によるオリジナル・ストーリーです。新フォーチュン・クエストでも登場するリーザ国のアンジェリカ王女は実はこのコミック版が初登場なのです。
- アニメ情報
- フォーチュン・クエストは「フォーチュン・クエストL」としてTVアニメ化もされました。なぜか放送が深夜帯だったのですが…。まぁ、最近は内容的には全く深夜向けでないものも深夜放送されるのが普通になってきていますしね…(後に朝の時間帯に子ども向けで放送された「けものフレンズ(※)」も最初は深夜放送でしたし)。
(※)「けものフレンズ」 とは吉崎観音さんデザインの動物を擬人化したキャラクターによるプロジェクトのことで、TV東京などにてTVアニメ化もされました。
(当初は深夜帯の放送でしたが、その後、朝の時間帯に、声優さんと子どもたちが一緒に踊る実写OPを新たに追加して再放送されました。)
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(ちなみにTVアニメはDVD扱いではなくブルーレイ付ガイドブックという「書籍」扱いで販売されています。
DVDコーナーで探しても見つからないため、知らない人はちょっと見つけづらいという…。)
mtsugomori at 14:42
2018年03月02日
管理人が学生時代、少ないおこづかいでコツコツ買い集め、
夢中になって読んでいたシリーズのひとつがコレです。
夢中になって読んでいたシリーズのひとつがコレです。
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「クエスト」の付いたタイトルからも分かる通り、内容は剣と魔法の世界で繰り広げられるRPG的な冒険ファンタジーです。
文章はどちらかと言えばラノベ寄りで、難しい専門知識が必要なこともなく、とても読みやすいシリーズです。
そしてこのシリーズの特徴と言えば「ほのぼの」「アットホーム」「日常感」。
主人公のパーティーは魔王を倒そうだとか伝説の武器防具を探しに行こうだとか、そういう大がかりなクエストに挑もうとしているわけではありません。
“ちょっとしたおつかい”的な小規模クエストに、レベルが低いがゆえに少ない所持金をやりくりし、防具も工夫で補ったりしながら一生懸命挑むのです。
(何せ、パーティー唯一の戦士(ファイター)の防具が、手作りの“竹アーマー”なのですから…。)
ところが、そんな低いレベルの冒険者ビギナーばかりのパーティーなのに、なぜか毎度、思いがけず大きな陰謀に巻き込まれてしまうのが、このシリーズなのです。
そしてこのシリーズには、他のファンタジー作品にはなかなか無い独特な雰囲気と個性があります。
まず主人公のパーティーが、ファイター(戦士)と盗賊、魔法使い、詩人(←でも実際は詩ではなく自分たちのパーティーの冒険記を書いている)、農夫(薬剤師)、運搬/運送と、他のファンタジー作品ではあまり見ないくらいにバラエティー豊かです。
しかも魔法使いがまだ言葉も片言な赤ちゃんエルフだったり、攻撃力の要であるファイターがとんでもない不幸体質で、呪われたり誤認逮捕されたりで、いつもパーティーの大事な時に役に立たなかったりと、パーティーとしての実力は実に弱そうなのです。
でも、そんな弱小パーティーが、普通なら遭遇しないような陰謀や大変なクエストを、知恵と工夫と幸運と仲間の絆で乗り越えて(そして少しずつレベルアップしたり、防具が良いものになっていったり、スキルが増えたりして)いくのが、良いのです。
そして管理人的に何より推しなのは、作品全体からにじみ出る日常感と、ほっこりした雰囲気です。
このシリーズ、何と言うか作品全体に(良い意味で)生活感が漂っているのです。
小説の中にしかいない動物の肉でできた料理のレシピがイラスト入りで詳しく載っていたり(しかもそれが実に美味しそうで、実際には食べられないのに食べたくなってしまうのです。)、冒険だけではやっていけなくて各々がバイトをしたり別のことでお金を稼いでいたり、節約してお金を貯めて、貯まったお金で何を買おうか悩んだり、冒険者カードの更新手続きのために都市へ行くなんていうエピソードもあります。
そういう細々とした描写がリアリティー……しかも何と言うか主婦感覚的な(?)リアリティーとなって、読み手を物語により没入させるのです。
それと、シリーズ1作目で登場するホワイト・ドラゴンの子どもの見た目がとても小型犬っぽいのですが、そのホワイト・ドラゴンのシロちゃんとエルフの幼女ルーミィがいつも一緒にいる様子が、とてつもなく可愛らしくて癒やし系です。
ほのぼの癒やし系なファンタジーが好きで、でもしっかり冒険も読みたい方は、ぜひ読んでみてください。
(苦手な方がいるかも知れないので注意として書いておきますが、このシリーズはヒロイン・パステルの一人称で進んでいきます。でも少女向けというわけではなく(レーベルも、最初に出たのが角川スニーカー文庫さんですし。)男性でも読めるのではないかと(個人的には)思います。)
mtsugomori at 23:29