黄輪雑貨本店　新館

クリスマスイラスト。
サンタ天狐ちゃんと旅岡さん。



天狐ちゃんは「魔法使い」である。
魔法使いなので道具なしで服を作れたり、服の色を変えたりは朝飯前にできる。

と言うような話をシュウとしていたら、「じゃ赤と白のツートンのお洋服作れます？」と聞かれた。
できるかどうかと聞かれて「できない」と答えるような天狐ちゃんではない。
即座にその場でポンと出してみせたところ、シュウは調子に乗った。
「んー……もうちょいモコモコ感ほしいですねー。ぽんぽん付けれます？」
「おそろいの帽子も作れたりします？　ぽんぽん頭に付けたの」
「あと袋があれば完璧ですねー。なんかちょっと大きめの箱が2、3個入りそうなサイズの」
乗せられて色々作るうち、何故か天狐ちゃん自身がそれを着ることになってしまった。
「わー、完璧サンタさんですねー」
「何だよサンタって」
「『こっち』では毎年12/24～25の夜中に、良い子にこっそりプレゼントくれるおじいさんらしーです」
「おい……誰がどうジジイに見えるってんだ。せめてババアだろ。いや誰がババアだよ」
ちょっぴりハラ立ったので、帽子はシュウに無理やり被せた。

天狐ちゃんはモノ作りが大好きな、クリエイター気質の持ち主でもある。
そして作ったモノを見せたくなるのは、クリエイターたちの性。
せっかく作った紅白衣装をそのまましまうのももったいないので――今日がちょうど12/24と言うこともあり――街に繰り出してみた。
ほどなく仲良しの女子高生、旅岡さんに出くわす。
旅岡さん「おー、めっちゃサンタさんやん。ほなプレゼントくれへん？」
シュウから話は聞いていたものの、出会い頭にそんなことを言われるとはちょっと思ってなかった。
天狐ちゃん「いきなり厚かましーなーお前」
旅岡さん「ええやん、クリスマスやで？　ちょーだーい☆」
悪びれる様子をまったく見せず、旅岡さんは両手をぺちんと合わせておねだりしてくる。
天狐ちゃん「チッ、……んで何がほしーんだよ？」
旅岡さん「（何だかんだプレゼントくれるんはくれるんやな。）ほなあんまん1つ」
天狐ちゃん「オレは中華料理屋かっつーの。まあいい」
魔法使いの天狐ちゃんは背負っていた袋に手を入れ、ご注文通りのあんまんを取り出してみせた。途端に旅岡さんは目を丸くする。
旅岡さん「え……ホンマにあんまん入ってたん？」
天狐ちゃん「お前さんがほしいっつったんだろーがよ。……衣装も見せたし、プレゼントも渡したし、サンタ役はもうコレでじゅうぶ……」
きびすを返しかけたその時――旅岡さんの友達がぞろぞろ、通りの向こうからやってきてしまった。
「紅、まーたなんか食べてる」
「い～な～」
「どこのコンビニ？」
問われた旅岡さんは、サンタ天狐ちゃんを指し示す。
「天狐ちゃんにもろた。クリスマスプレゼントやって」
指し示された天狐ちゃんは、口をへの字に曲げた。
「……しゃーねーなー。お前らほしいもんいっこずつ言え。いっこずつだぞ」
渋々ながらも、天狐ちゃんは袋の中に手を突っ込んだ。

関連記事

• ふわっふわじゃぁ 2025/01/13
• ほなプレゼントくれへん？ 2024/12/24
• なんでハロウィンでハートやねん 2024/10/31
• 狙った獲物は逃さない、ってコト～ 2024/10/06
• 旅岡さんの誕生日 / アンタ名探偵？ 2024/06/26