2025-08-29

男性にとってのセックスとはなにか──進化心理学観点から

人間の性行動を論じる際、多くは文化社会視点が導入されるが、本稿ではそれらを排し、進化心理学進化生物学のみを用いて、「男性にとってのセックスとは何か」を考察する。

あらゆる動物と同様、人間の行動原理も、遺伝子の複製と継承である

オス(男性)はメス(女性)と比べて生殖投資が少なく、一度の交尾複数の子孫を残せる可能性がある。

そのため、進化的にはできるだけ多くの性交機会を得ることが選択圧となってきた。

この戦略チンパンジーなどの霊長類にも見られ、オス同士は発情したメスへの交尾アクセスを巡って激しく競争する。

ヒトの男性もまた、性的に選ばれることを最も強く求めるよう設計されている。

この構造の下で、男性にとってセックスは単なる快楽ではなく、選ばれることの象徴である

すなわち、性行為に至るという事実のものが、自分には生殖価値があり、淘汰されないという確証として機能する。

逆に言えば、性行為への恒常的なアクセスを失うことは、進化的には淘汰の対象となったというメッセージとして認識される。

この傾向は結婚生活パートナーシップのなかでも強く現れる。

たとえばセックスレスは、女性にとっては忙しさや情緒の断絶の延長かもしれないが、男性にとっては「自分存在価値否定」として強く知覚されうる。

彼らはしばしば、自分家族のためにリソース提供し続けているにもかかわらず、生物的な承認を失っているという構造苦痛に晒される。

特に40〜50代の中高年男性自殺が多いのは、単なる仕事ストレスではなく、この性的価値喪失による精神的打撃も関係している可能性がある。

経済力を失うことで配偶者から承認も失われ、性的アクセスが閉ざされる。

そのことが、自分はもう遺伝子を残すに値しない存在なのだ、という進化絶望につながる。

こうした文脈を踏まえると、男性ポルノ風俗創作表現への依存理解が進む。

それらは単なる快楽追求ではなく、性的承認されているという錯覚を得るための代償行動であり、それが奪われれば、生存意欲そのものが削られる。

セックスとは、男性にとって「生きていていい」と確認するための最終報酬系である

この理解が欠けたままでは、男性の苦悩はいつまでも不可視のままだ。

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