<酪農家なんか、まったく困らない、チーズ輸入増>
日欧EPA大枠合意 酪農家は「黒船」到来に悲鳴…乳価下落を懸念
SankeiBiz
7/6(木) 6:48配信
日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)では、欧州産のチーズに対し低関税の輸入枠を新設する。EUが最後まで求めたチーズ関税の完全撤廃は免れたものの、欧州産チーズという“黒船”到来で酪農家が打撃を受けるのは避けられない。チーズの国内シェアを奪われることで生乳が余り、牛乳価格の下落につながる懸念も指摘される。
EUは世界のチーズ生産量の約5割を占める最大の生産地だ。日本では現在、ナチュラルチーズに最大29・8%の関税を課しているが、発効後は輸入枠分の数万トンが低関税で流入する。
生乳段階からチーズ向けに生産するなど品質やブランド力が高い“本場もの”だけに、北海道の生産者は「市場を占領され、国産の需要が失われてしまうのではないか」と懸念する。
一方、国内では、チーズなどに使う加工用生乳は大規模化が進んだ北海道の酪農家が大半を供給し、他地域は飲用牛乳に注力する住み分けが行われてきた。
チーズの国内シェアが欧州産に奪われた場合、使い道を失った北海道の生乳が飲用に流れ込む可能性が高く、乳価下落を懸念する声がある。農林水産省は欧州産と対抗できるよう、搾乳ロボットの導入による生産効率化など生産者の競争力強化を支援する構えだ。(高木克聡)
<酪農家なんか、まったく困らない、チーズ輸入増>
まず、加工乳は、すべて「北海道牛乳」です。
これは、魅力度の高い「北海道生乳」を、他県に流さないようにするシステムです。他県は、「北海道ブランド」の生乳を、自県に入れないことによって、自県生乳を守っています。これは全国10の「JA農協」が、独占的に「生乳」「加工乳」を仕入れているからです。地元の農家は、地元のJAを通じてしか、取り引きできない構造になっています。
北海道の場合、ホクレン「北海道農業組合連合会」が、すべての農産物を独占して仕入れ、販売しています。ホクレンの横流し=ピンハネだけで、農産物価格の1割以上を占めます。とてもおいしい商売なので、ホクレンは大学生にとってもあこがれの就職先で、競争倍率は非常に高くなっています。ちなみにホクレンの平均年収は、40代後半で800万円を超えます。
一方、北海道の酪農家は、生乳の方が高価格で売れるのに、皆、「加工乳」へ回されます。生乳の価格が1キロ120円ほどだとしたら、加工乳は80円程度です。そこで、差額を国が補てんします。ただし条件があり、全量を、指定取り引き団体ホクレンに納入することという条件付きです。
読売北海道版 H29.7.5
このホクレン独占の加工乳仕入のしくみは、「改正畜産経営安定法」が成立し、来年度からは非ホクレン(全国では非農協系)の業者へ出荷する分にも、補助金が支給されるしくみになりました。
チーズの国内シェアが欧州産に奪われた場合、使い道を失った北海道の生乳が飲用に流れ込む可能性が高く、乳価下落を懸念する声がある。
欧州産チーズという“黒船”到来で酪農家が打撃を受けるのは避けられない。チーズの国内シェアを奪われることで生乳が余り、牛乳価格の下落につながる懸念も指摘される。
こんな可能性は、まったくありません。加工乳は、生クリームや、チーズ、バターに加工されますが、皆さんご存知のように、毎年「バター不足」「バター価格高騰」です。
生乳の出荷は、減り続けています。牛乳を飲まなくなったからです。少子化で小中学校の給食用牛乳も激減しています。加工用牛乳が、生乳に回ることはないのです。
①チーズの代わりに、バターを増産することが可能です。②酪農家は「卸価格」が決まっている「生乳」を出荷するだけです。農家に直接の打撃などありません。
北海道では、とにかくホクレンの締め付けが強いのです。「ガイアの夜明け」でも特集されましたが、MMJという群馬県の生乳卸売業者に、生乳を出荷する決断をした農家に対し、その地区の農協が、いきなり年に150万円の組合費増の負担を課すという、「嫌がらせ」をする様子が映っていました。
農家は、出荷だけではなく肥料から農薬から、借金から、何から何までJAのお世話になっていますから、今の段階で「組合員をやめる」ことができないのです。もう、本当に、「暴力団の上納金」のようなシステムになっています。
そこに牙城を崩そうというのが、MMJです。MMJは北海道の酪農家から生乳を仕入れ、新規契約農家を増やしてきました。加工乳買取価格が1キロ3円ほど高く、150~200頭の搾乳牛農家の場合、収入が600万円ほど増えます。
北海道では、十勝や根釧地方でMMJに切り替える農家が増え(といっても、道内の集荷量390万トンに対しては、1%程度)ています。
そのMMJに対しても、各地方の農協の締め付けは非常に強いです。MMJが、バター不足を解消しようと、各地の農家に協力を要請しますが、すべて断られます。またバター製造業者に生乳を出荷するのが各地JAなのですが、なんと、「飲料生乳」価格での取引を押し付けます。本来は、安い「加工乳」価格で卸せるのにもかかわらずです。メーカーは「バター生産」のために「高価格の生乳」を仕入れざるを得ません。結果、バターの価格は高騰し、生産量は毎年のように不足し、農水省が緊急輸入し、輸入したバターの関税が農水省天下り団体に入り、それが農水省の利権になっている・・・そういう構図です。既得権益そのものです。
MMJは、バター生産業者に、MMJで仕入れた安い加工乳で、バター生産をお願いしますが、JAの締め付けが厳しく、とうとう、「自前」で生産することになりました。18年に、北海道別海町に「バター工場」を建設します。
読売北海道版 H29.7.6
JAの組合員数が1000万人、多すぎますね。これは、JAの場合、農家だけではなく、JA貯金やJA年金・保険に、一般の人も入れますが、それが「組合員」数になるのです。ここで集めたカネが、「農林中金」へまわります。
巨大スーパーや卸にとっては、もう、「JA」を通さない取り引きの方が魅力的です。東京築地市場もそうですが、「卸」『仲卸』を通さない、つまり「市場」を通さない取り引きの方が、手っ取り早く、しかも安いのです。築地の取扱量が毎年減っているのは、「魚」を食べなくなったからではなく、その市場を使った取引量が減っているからです。
同じようにJAは、将来的には、「てら銭」商売は、成り立たなくなるでしょう。
おいしい思いをしているところ、ほかにもありますね。獣医師会とか医師会とか、法曹界とか・・・。みな既得権益を手放したくないのです。
<書評 図解使えるミクロ経済学>
HUMI
ミクロ経済学・最新のゲーム理論・行動経済学の、3つの経済学が勉強できる本です。初心者でも分かりやすいように、コンパクトにまとめられていて、読むのが苦になりませんでした。図解やイラストを使って解説してくれているのもいいですね。