土曜日 22:00
僕は今、机の上にきっちり直交配置された三本のペンを確認してから日記を書いている。
青、黒、赤。並び順はもちろん青→黒→赤。理由は単純で、色空間の順序として最も情報エントロピーが低い配置だからだ。
ルームメイトはこれを「ただの癖」と呼ぶが、統計力学的観点から見れば、低エネルギー状態への自然な遷移にすぎない。
ここ数日、僕は超弦理論のある奇妙な方向を追っている。
通常の超弦理論は連続体上の世界面共形場理論(worldsheet CFT)を使う。しかし最近の文献では、p進数体上の弦、つまり非アルキメデス幾何上の弦という奇妙な構造が再び議論されている。
これは1980年代に提案されたアイデアで、弦の振幅を通常の実数ではなくp進数体で定義する。結果として、弦散乱振幅が通常のベータ関数ではなく、p進解析的な形で書ける。
普通の人間ならここで「変わった数学だ」で終わる。しかし僕はそこで止まらない。僕が考えているのは次の仮説だ。
もし弦の世界面が単なるリーマン面ではなく、∞圏的なスタック構造として記述されるなら、p進弦はその非アルキメデス側のファイバーとして理解できるのではないか。
ではなく、
みたいな構造になる。ここで Perf(X) はターゲット空間 X の完全複体圏だ。つまり弦の自由度は座標ではなく、導来圏の対象としての状態になる。
これをさらに進めると面白い。通常の弦理論では、D-brane ≈ 導来圏の対象、という対応がある。だがもし世界面そのものが∞圏的対象なら、弦とDブレーンの区別は消える。両者は単に高次圏の射の階層になる。
つまり
弦 = 1-射
ブレーン = 2-射
背景幾何 = 0-射
になる。ここまで行くと、僕の疑いはこうなる。「弦理論の真の自由度は、空間ではなく高次圏のホモトピー型ではないか?」
もしそうなら、重力はRicci curvatureではなくπ∞(Moduli)の幾何として書ける可能性がある。
残念ながら、これを理解できる人間は地球にたぶん数十人しかいない。そしてその数十人の中にも、完全に理解している人はたぶんいない。もちろん僕を除いて。
さて、物理以外の話もしよう。今日は土曜日だから、いつもの生活スケジュールを守った。
07:00 起床
07:03 歯磨き(120秒)
07:05 シリアル
今日は41回だった。昨日より1回少ない。これは牛乳の粘性がわずかに高かったせいだと思う。
午後、ルームメイトがまた不可解な行動をとった。僕のソファ座標に座ろうとしたのだ。
(0,0) = 僕
(1,0) = ルームメイト
(0,1) = 友人A
(1,1) = 友人B
隣人は座標系を理解しないので例外扱いだ。ルームメイトは「今日は疲れてるからここに座りたい」と言った。
僕は言った。「それは量子統計を無視してフェルミ粒子が同一状態に入ろうとするようなものだ。パウリの排他原理を破る気か?」
夕方には友人Aと友人Bが来た。友人Aはまた宇宙船の推進方法について語り始め、友人Bはチョコレートを食べながら天文学の話をしていた。僕は彼らに説明した。
「もし宇宙がAdS/CFTのホログラフィーで記述できるなら、ブラックホールの情報は境界理論のエンタングルメントとして保存される」
友人Aは「それで宇宙船は速くなるのか?」と聞いた。友人Bは「チョコレートいる?」と言った。
さて、22:00を過ぎた。ここからの予定を書いておく。
1. 歯磨き
5. 睡眠
ただし寝る前にもう一つ試したい計算がある。
もし弦のモジュライ空間が
M ≃ Bun_G(Σ)
ではなく
M ≃ DerivedHom(Σ, BG)
なら、重力の自由度はゲージ理論の高次アノマリーとして再構成できるかもしれない。
これはかなり面白い。
もしかすると、宇宙は10次元でも11次元でもなく、単に∞次元圏論的構造の影なのかもしれない。
まあいい。