東日本大震災から1年が過ぎたが、建設業界に対する評価はあまり高まらない。津波で道路が寸断された三陸沿岸部にいち早く救援ルートを開いた「くしの歯作戦」の指揮官である国土交通省東北地方整備局長の徳山日出男氏は、建設業界の情報発信に対する姿勢に苦言を呈する。日経コンストラクション2012年3月26日号特集「伝わらなかった被災地支援」に掲載しきれなかった部分を含め、徳山氏へのインタビューの全容を紹介する。
――東日本大震災の被災地支援で自衛隊の活動が大きくクローズアップされたのに比べると、建設会社の取り組みは世間に伝わっていない。両者の差は、どこにあると思いますか。
震災では、自ら思考して判断できる日本の現場の力が海外からも高く評価されました。とりわけ自衛隊は、「現場力」だけでなく「発信力」も優れていた。国交省でも、建設業界からも「自衛隊ばかりマスコミに取り上げられている」とうらやむ声が上がりますが、情報発信力には歴然たる差があります。写真一つとっても違う。例えば、子どもと自衛隊員の交流の様子に焦点を合わせ、背景をぼかして撮っている写真があります。記録用なら背景が分かる方がいいですから、これは明らかに報道向けです。自衛隊に尋ねると、記録用とは別に、そういった写真も撮影できるように専門的な訓練をしているそうです。
建設業界や我々はと言えば、自分の姿はもちろん、なるべく人が映らないようにして、がれきの山の撤去前後を比較するような写真を撮っているだけです。一事が万事、そのくらいの差があります。