アドビシステムズは2007年11月1~2日に東京・台場で「Adobe MAX Japan 2007」を開催した。基調講演には米Adobe Systems Inc.のChief Software ArchitectであるKevin Lynch氏が登壇し,「これからはコンテンツが主役の時代」と言い切った。
同氏はまず,インターネットがメディアとなった現在においては,(1)コンテンツが主役である,(2)個々人向けにカスタマイズすることにより,よりユーザーの要求に応えられる,(3)多くの情報を盛り込むのではなく,シンプルに使える,(4)人間は画面の変化に敏感なので,コンテンツの動きに意味を持たせる,(5)ユーザーに何らかの体験(エクスペリエンス)を提供する,という5点が重要であると説明した。
これを実現するため,いくつかの分野に分けて「次の手」を説明した。具体的には動画配信技術「Flash Video」は,H.264に対応して720pや1020pの動画をインターネット配信できるようにする。H.264に対応する「Flash Player」の次版は「MovieStar」(開発コード名)と呼ばれていて,同社が開発中の「Adobe Media Player(AMP)」と合わせて,「あらかじめ与えられたユーザー・インタフェースを使い,オフライン視聴が可能なAMPと,オンラインで自由にカスタマイズ可能なFlash Playerと,2種類の視聴環境を提供する」(Lynch氏)。
さらにRIA(リッチ・インターネット・アプリケーション)技術として「Flash」と「AIR(adobe integrated runtime)」を紹介し,「これがWeb 2.0の新トレンド」(Lynch氏)と語った。具体的な事例として,同社が2007年10月に買収した米Virtual Ubiquity社が提供している「Buzzword」を披露した。BuzzwordはFlashを使ったオンライン・ワープロで,一見してデザイン・ツールのような凝ったユーザー・インタフェースが特徴である。このオンライン・ワープロをAIRを使ってデスクトップ・アプリケーションとして動作させて見せた。「AIRを使うことにより,多くのWebアプリケーション・ソフトウエアをデスクトップで動作させることができる。Webアプリケーションにはないオフラインでの利用など,新しい機能を簡単に追加できる」(Lynch氏)。
次にこうしたRIAを作る環境として,同社のツール群を紹介した。まずWWWサイト構築ツールである「Dreamweaver」を使って,AIRアプリケーションを作成するデモと,次世代の開発ツールである「Flex Builder 3」を披露。前者は開発済みのWWWアプリケーションをAIRアプリケーションにして,ドラッグ・アンド・ドロップ操作やデータの自動同期などのデモを実演した。Flex Builder 3ではプロファイラ機能の搭載や,自動リファクタリング機能,メソッド名などを列挙するコード・ヒント機能などを搭載する。
これらの製品は2008年前半に登場が見込まれているものだが,それよりも先の技術や製品の解説もあった。その一つが「Astro」(開発コード名)と呼ばれる,Flash Playerの将来版である。画像変換フィルタの機能を搭載するほか,国際化対応,2次元画像の立体化変換機能などを備える。また「Thermo」(開発コード名)というRIA作成ツールも披露した。Photoshopで作成した静止画像を取り込み,画面の構成要素をFlexのユーザー・インタフェース記述言語であるMXMLに変換するデモを見せた。デザイナーが作成した画面イメージを保ちつつ,RIAを開発できる。