「ここ数年以内に、静止画では一眼カメラの画質を超えると見ている」――。スマートフォン搭載カメラについてこう見通しを示すのは、ソニー セミコンダクタソリューションズ(SSS)代表取締役社長 兼 CEOの清水照士氏だ。スマホ向けで加速する大口径化の傾向に、同社が開発する高飽和信号量技術注1)などが組み合わさることで実現するという(図1)。この発言と同時に示した資料では、24年に「静止画は一眼カメラの画質を超える」とあることから、一眼カメラ超えの目安は、24年とみられる。
注1)飽和信号量は、1つの画素で蓄積できる電子の最大値。量を高めることで、明所での撮影性能を向上できる。
ソニーグループ(ソニーG)は2022年5月27日、同社 イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)分野の事業説明会を開催した。同社によれば、スマホ向けのイメージセンサー市場は今後も拡大していくという。「19年ごろは、スマホはバッテリー・ディスプレー・カメラの3要素が進化していくといわれていた。他の2つが技術的に飽和しているのに対して、カメラにはまだ進化の期待がある」と清水氏は語った。
実際、イメージセンサー市場は「30年時点でもスマホ向けが過半を占める」(同社)見込みという。同社はこれまでスマホ向けの成長が将来的に鈍化するとしていたが、市場動向の変化をふまえて見通しを変更した。ハイエンドのスマホで、22年度からイメージセンサーの大判化が急速に加速し、センサーの単価が向上するからだ(図2)。
ソニーGは24年(FY、会計年度)に、ハイエンド向けセンサーの大判化が19年度時点の約2倍にまで拡大するという見通しを示した。「(スマホ向けカメラは)今後多眼化が飽和する一方で、大判化は中長期的に継続し、市場成長をけん引するだろう」と清水氏は予測した(図3)。
今後は大口径化に加え、明所の撮影性能を約2倍に拡大できる新画素構造「2層トランジスタ画素」技術や人工知能(AI)処理技術を組み合わせることで、「静止画では一眼カメラの画質を超えられる」(同社)という。さらに、30年に向けて8K動画の撮影・高速読み出しや、ToF(測距)センサーなどを活用した背景ボケが実現していくとした(図4)。