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 坂倉準三の建築群が集積していた三重県伊賀市旧庁舎の敷地内で、唯一解体を免れた旧南庁舎(竣工時は上野市庁舎、1964年竣工)。その建物が観光活性化のPFI(民間資金を活用した社会資本整備)事業として再生に歩み出した。事業全体の名称は「伊賀市にぎわい忍者回廊整備」。新築する「忍者体験施設」と旧庁舎の改修をセットで進める事業だ。

旧上野市庁舎の1階南側。リズミカルに並ぶコンクリート打ち放しの柱・梁が目を引く(写真:母倉 知樹)
旧上野市庁舎の1階南側。リズミカルに並ぶコンクリート打ち放しの柱・梁が目を引く(写真:母倉 知樹)
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 旧上野市庁舎は鉄筋コンクリート造、地上2階建て(現行法規では地上3階)、延べ面積約6000m2。旧羽島市庁舎を知った当時の上野市長が、坂倉に市庁舎の設計を打診し、建設に至った建物だ。

 伊賀市は2022年にPFI事業の公募プロポーザルを実施し、人材派遣会社のヒト・コミュニケーションズを代表とする「伊賀マネジメントグループ」を特定した。構成企業には若手設計者のユニットMARU。architecture(マル・アーキテクチャ、東京・台東)が名を連ねる。新築する「忍者体験施設」も含めたPFI事業全体の契約額は約64億円だ。

改修後の旧上野市庁舎の模型写真。1階と中2階の大半は図書館となり、中2階の一部にカフェが入る。2つの屋上庭園を囲む2階はホテルとなる(出所:マル・アーキテクチャ)
改修後の旧上野市庁舎の模型写真。1階と中2階の大半は図書館となり、中2階の一部にカフェが入る。2つの屋上庭園を囲む2階はホテルとなる(出所:マル・アーキテクチャ)
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 市と事業者は22年9月に契約を締結。基本設計終盤の23年6月、事業者の主催で説明会が開かれた。現在は実施設計の大詰め段階だ。

改修計画の模型を挟んで立つ、マル・アーキテクチャ共同主宰の森田祥子氏(左)と、同・高野洋平氏(右)。同社事務所にて撮影(写真:宮沢 洋)
改修計画の模型を挟んで立つ、マル・アーキテクチャ共同主宰の森田祥子氏(左)と、同・高野洋平氏(右)。同社事務所にて撮影(写真:宮沢 洋)
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