福岡県太宰府市にある太宰府天満宮は2022年11月22日、124年ぶりに国の重要文化財である「御本殿」の大改修を実施すると発表した。23年5月から約3年かけて改修する。26年ごろに工事を完了する予定だ。太宰府天満宮は25年ごとに式年大祭を行うが、27年の「菅原道真公 1125年式年大祭」を前に、令和の大改修を実施することにした。
改修期間中は御本殿前に「仮殿」を建設し、引き続き参拝者を迎える。仮殿とは、御祭神の御神霊(おみたま)を仮安置するために設ける御社殿のことだ。仮殿遷座祭の後、神事や参拝は仮殿で行う。
約3年間限定の仮殿は、建築家の藤本壮介氏が代表取締役を務める藤本壮介建築設計事務所(東京・江東)がデザイン・設計を手掛ける。太宰府天満宮は同日、仮殿の完成図を初披露した。
藤本氏は天神の杜(もり)との調和を重視し、仮殿の屋根に木を植えるデザインを発案した。「浮かぶ森」のイメージだ。23年2月初旬に仮殿建設に着工し、同年5月中旬に完成する計画である。
屋根に木を植えるアイデアは、太宰府に古くから残る「飛梅(とびうめ)伝説」に着想を得たものだ。菅原道真公(天神さま)を慕う梅の木が、一夜のうちに太宰府まで飛んできたという。藤本氏は仮殿の屋根に梅の木や天満宮周辺の植物を植える。内部は天井が曲面になっており、現代のルーバーのようなデザインにする。これは御本殿の垂木を想起させるものだ。
斎場の広さは御本殿と変わらず、ゆとりがある空間にする。天窓を設け、空だけでなく、屋根の森が見えるようにする。
太宰府天満宮の第40代宮司である西高辻信宏氏は、「約3年しかお参りできない仮殿だからこそ、特別なものをつくりたいと考え、藤本氏にデザイン・設計を依頼した」とコメントしている。
仮殿だからできる建物の現代風なつくりもある。例えば、参拝者は靴を脱がずに、仮殿に上がれるようにする。スロープも設け、年配の人や子ども連れの参拝者にも配慮するという。