ウラジーミルの微笑

海外文学・世界文学の感想を長文で書くブログです。池澤夏樹世界文学全集の全巻マラソンもやっています。

ドイツ文学

2-12『ブリキの太鼓』ギュンター・グラス/池内紀訳

その時は笑って虹の彼方へ放つのさ そのときどきの出来事が表面では貪欲にからみ合う糸となって物語をつくっていても、裏ではすでに歴史に編み込まれていたとしても、やむをえないことだろう。(p.388) <<感想>> なんとなくの設定は知っているけど読んでない…

2-02②『カッサンドラ』クリスタ・ヴォルフ/中込啓子訳

闘いからの卒業 アンキセスはかつて言っていた。ギリシャ人にとって、あのいまいましい鉄の発明よりもっと重要なのは、感情移入の才能であったかもしれないのにな、と。ギリシャ人は、善と悪という鉄の概念を自分たちばかりに適用しているわけではない。そう…

2-02①『失踪者』フランツ・カフカ/池内紀訳

若き失踪者のアメリカ 「そのことじゃないんです」 と、カールは言った。 「正義が問題なんです」(p.37) <<感想>> 『失踪者』である。『アメリカ』ではない。 私は学生の頃、本作のタイトルを『アメリカ』として認識していた。これは文庫で出ていた訳本が『…