働くって何?
9月12日の「社会人講座」にこの3月までスタッフをつとめていた中川翔平さんをお迎えしました。現在は富山市内のNPO法人に常勤職員として勤務されながら、週2日富山県内の短大・専門学校の講師をしていらっしゃいます。この日は大学時代から現在に至るまでの中川さんの変遷から「働くって何」かを考えさせていただきました。
1 自己紹介
現在36歳・就職氷河期時代に大学生活を送られています。学生時代は大学の研究室で過ごすことが多く、大学の先生になろうと決意されたそうです。それから猛勉強され名古屋大学大学院を受験。1次の筆記試験は合格した者の2次の面接試験で不合格となり、翌年再チャレンジされたそうです。翌年は1次試験の通過もならなかったとのこと。その要因は、大学院で何をしたいかを面接の時に答えられなかったからだとおっしゃっていました。当時の中川さんは見かけだけを整えることにエネルギーを注いでいて、本質を抜かしていたと後から気づかれたそうです。「訳のわからないまま突き進んでいた。名古屋大学大学院の1次試験合格が自分を支えるものになってしまっていた。」
そして物事を俯瞰することが心地よいという立ち位置になってしまっていたそうです。具体的には他人の上げ足をとる、指摘されると言い訳をするなど嫌な奴だったとおっしゃっていました。自意識過剰の状態で孤立。誰にも相談することができなかったそうです。相談すると自分を作っているパーツがスカスカであることを暴露することから逃げていたとのことでした。
2 一発逆転を狙うも
2度の大学院受験失敗を経て不本意ながら卒業した私立大学の大学院に進学されたそうです。そこでは一発逆転を狙うも修士論文を提出できず留年。燃え尽きてしまったそうです。空白の1年間の記憶はなく何もしていない状態だったとのこと。2年目になり外に出られるようになり、友人と食事をすることもあったそうです。社会的ひきこもりの状態でした。その頃は「働いたら」という周囲からの圧力を感じながらも、「一発逆転」思考はまだ残っていたそうです。しかし、家族からの圧力もあり家に居辛い状況となり、インターネットで調べて見つけたのが富山市内にある「サポステ」でした。そこで20週間「筋トレ」というプログラムに参加したもののその場しのぎに過ぎず、本音では働きたくなく、面接に対する不安と緊張を回避するために就職活動をせずにのらりくらりとしていたそうです。
働きだすときのプレッシャーと周囲への言い訳とのジレンマに陥っていたとのこと。ただ、サポステ時代に自分への気づきがあったそうです。一つは口がまわること、もう一つは違和感に気づけること。そのタイミングで相談員の提案で「キャリアコンサルタント」の資格を取ることにしたそうです。
3 働いてみたら
働いてみたら、お節介を焼いてくれる人がいたそうです。また、社会的ひきこもり時代に食事を一緒にしていた友人は当時「安全」を確保してくれていたことも後から知ったそうです。今は笑い話になっているとのこと。そして「一発逆転」を狙っていたものの決定打がないまま今に至っているとのことでした。大きな流れに時には抵抗したこともありつつもこうなっていたそうです。これまで就職活動をしたことがないので、次は履歴書を作ってハローワークの求人に就職してみたいともおっしゃっていました。
そして、働くことで得られたことを紹介してくださいました。
○収入ができる。
○やりたいことや趣味を充実させられる。
○経済的なもの以外に得られる達成感や充実感。
○社会からの承認。
○経験や人とのつながり。
仕事をすることで対外的な価値ではなく、自分自身が大切にしたいことの元手を得ることもできるとおっしゃっていました。
更に、たかサポで仕事の中で「利用者の変化に気づいたとき、その人のためになっている」という充実感があったそうです。
働く中で何を得ていくかが大切とのこと。仕事上のプレッシャー、ノルマもある中で、なぜこんなに頑張っているのかと考えるきっかけにもなったそうです。
4 最初から「使える人材」はいません
仕事のスピードとは関係なく、最初から「使える人材」はいませんときっぱりとおっしゃってくださいました。働き始めてから徐々に適応していきます。完璧な人はいないし、完璧な会社もない。だから、想像していたことは起こるし、想像もしていなかったことも起こります。その時、自分一人で抱える必要はなく、他の人に相談し意見を聞けばいいのですと。
いつ気付くかが大切で、やってみて合わないことに気づくことも重要な経験ですとのこと。何を妥協し、何を大切にするのか、それを考えて次に生かせばいいとおっしゃっていました。
中川さんの場合、繰り返していて気づいたたできていたそうです。
そして、相談すること、その場所へまず行く事が立派なことです。その理由は人生は迷うものだから・・・次のメッセージで中川さんの話は締めくくられました。
○独りはしんどいといえる事。
○コトバにできないことを言葉にできる。
○必ず見ている人はいる。
○必要なサポートを得られる。
「これしかない」と思えることは大切です。しかし、それが自分を縛ることも忘れないでください。
最後に参加者の感想を発表し終了しました。それらを紹介します。
○最初から使える人はいないという話が聞け、できなくて当たり前という気持ちになれた。
○選択肢が1個しかなかったことに後で気づいた。他の人からの意見の受け止め方が変わった。
○自分を知るために、行動パターンと照らし合わせてみればいいことが分かった。
○たかサポへ来ていることを前向きにとらえることができた。いい機会になった。
○働いている人が立派に見えて苦しかった。実は身近にも大変な人がいるのかもしれないことが分かった。皆色々な人生経験があるということを想像する機会になった。
○自意識過剰の時代はまるで自分のことを言われているような気がした。中川さんと同じ流れを踏んでいる。
以上、9月12日の社会人講座の報告でした。
長文を読んでいただいてありがとうございました。中川さんにはこの場を借りて心よりお礼申し上げます。
1 自己紹介
現在36歳・就職氷河期時代に大学生活を送られています。学生時代は大学の研究室で過ごすことが多く、大学の先生になろうと決意されたそうです。それから猛勉強され名古屋大学大学院を受験。1次の筆記試験は合格した者の2次の面接試験で不合格となり、翌年再チャレンジされたそうです。翌年は1次試験の通過もならなかったとのこと。その要因は、大学院で何をしたいかを面接の時に答えられなかったからだとおっしゃっていました。当時の中川さんは見かけだけを整えることにエネルギーを注いでいて、本質を抜かしていたと後から気づかれたそうです。「訳のわからないまま突き進んでいた。名古屋大学大学院の1次試験合格が自分を支えるものになってしまっていた。」
そして物事を俯瞰することが心地よいという立ち位置になってしまっていたそうです。具体的には他人の上げ足をとる、指摘されると言い訳をするなど嫌な奴だったとおっしゃっていました。自意識過剰の状態で孤立。誰にも相談することができなかったそうです。相談すると自分を作っているパーツがスカスカであることを暴露することから逃げていたとのことでした。
2 一発逆転を狙うも
2度の大学院受験失敗を経て不本意ながら卒業した私立大学の大学院に進学されたそうです。そこでは一発逆転を狙うも修士論文を提出できず留年。燃え尽きてしまったそうです。空白の1年間の記憶はなく何もしていない状態だったとのこと。2年目になり外に出られるようになり、友人と食事をすることもあったそうです。社会的ひきこもりの状態でした。その頃は「働いたら」という周囲からの圧力を感じながらも、「一発逆転」思考はまだ残っていたそうです。しかし、家族からの圧力もあり家に居辛い状況となり、インターネットで調べて見つけたのが富山市内にある「サポステ」でした。そこで20週間「筋トレ」というプログラムに参加したもののその場しのぎに過ぎず、本音では働きたくなく、面接に対する不安と緊張を回避するために就職活動をせずにのらりくらりとしていたそうです。
働きだすときのプレッシャーと周囲への言い訳とのジレンマに陥っていたとのこと。ただ、サポステ時代に自分への気づきがあったそうです。一つは口がまわること、もう一つは違和感に気づけること。そのタイミングで相談員の提案で「キャリアコンサルタント」の資格を取ることにしたそうです。
3 働いてみたら
働いてみたら、お節介を焼いてくれる人がいたそうです。また、社会的ひきこもり時代に食事を一緒にしていた友人は当時「安全」を確保してくれていたことも後から知ったそうです。今は笑い話になっているとのこと。そして「一発逆転」を狙っていたものの決定打がないまま今に至っているとのことでした。大きな流れに時には抵抗したこともありつつもこうなっていたそうです。これまで就職活動をしたことがないので、次は履歴書を作ってハローワークの求人に就職してみたいともおっしゃっていました。
そして、働くことで得られたことを紹介してくださいました。
○収入ができる。
○やりたいことや趣味を充実させられる。
○経済的なもの以外に得られる達成感や充実感。
○社会からの承認。
○経験や人とのつながり。
仕事をすることで対外的な価値ではなく、自分自身が大切にしたいことの元手を得ることもできるとおっしゃっていました。
更に、たかサポで仕事の中で「利用者の変化に気づいたとき、その人のためになっている」という充実感があったそうです。
働く中で何を得ていくかが大切とのこと。仕事上のプレッシャー、ノルマもある中で、なぜこんなに頑張っているのかと考えるきっかけにもなったそうです。
4 最初から「使える人材」はいません
仕事のスピードとは関係なく、最初から「使える人材」はいませんときっぱりとおっしゃってくださいました。働き始めてから徐々に適応していきます。完璧な人はいないし、完璧な会社もない。だから、想像していたことは起こるし、想像もしていなかったことも起こります。その時、自分一人で抱える必要はなく、他の人に相談し意見を聞けばいいのですと。
いつ気付くかが大切で、やってみて合わないことに気づくことも重要な経験ですとのこと。何を妥協し、何を大切にするのか、それを考えて次に生かせばいいとおっしゃっていました。
中川さんの場合、繰り返していて気づいたたできていたそうです。
そして、相談すること、その場所へまず行く事が立派なことです。その理由は人生は迷うものだから・・・次のメッセージで中川さんの話は締めくくられました。
○独りはしんどいといえる事。
○コトバにできないことを言葉にできる。
○必ず見ている人はいる。
○必要なサポートを得られる。
「これしかない」と思えることは大切です。しかし、それが自分を縛ることも忘れないでください。
最後に参加者の感想を発表し終了しました。それらを紹介します。
○最初から使える人はいないという話が聞け、できなくて当たり前という気持ちになれた。
○選択肢が1個しかなかったことに後で気づいた。他の人からの意見の受け止め方が変わった。
○自分を知るために、行動パターンと照らし合わせてみればいいことが分かった。
○たかサポへ来ていることを前向きにとらえることができた。いい機会になった。
○働いている人が立派に見えて苦しかった。実は身近にも大変な人がいるのかもしれないことが分かった。皆色々な人生経験があるということを想像する機会になった。
○自意識過剰の時代はまるで自分のことを言われているような気がした。中川さんと同じ流れを踏んでいる。
以上、9月12日の社会人講座の報告でした。
長文を読んでいただいてありがとうございました。中川さんにはこの場を借りて心よりお礼申し上げます。