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    HigherLessonInEnglish.png


     今日まで使われるこのダイアグラムは、1877年に出版されたAlonzo Reed と Brainerd Kellogg 1877. Higher Lessons in English(→Gutenbergで読める)に登場するものだが、1847年には早くもW. S. ClarkがA Practical Grammarの中でバルーン・メソッドと呼んだ類似の方法が提案されている。
     
     特徴としては、

    ・我々が親しんできた伝統文法を活用でき、

    ・文の内容において、主なもの/従うものの階層付けがはっきりしており、

    ・文ごとに個性的で印象の強いダイアグラムが生成される


     利用法としては、出来上がったダイアグラムを見てどうこうするというより、ダイアグラムをつくるプロセス(シンプルなところから始めて要素を追加していくところ)にトレーニングとしての主眼はある。

     以上から、今でも米の教育現場ではしぶとい人気がある。


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    カテゴリ: 教育

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     これに類するもので、日本の出版物で現在も見ることができるのは、原仙作『英文標準問題精講』(1933(昭和8)年初版)である。
     英語話者にとって、自然なものとして普段意識化されることの少ない母語(英語)を改めて意識化し法則的に扱うためのトレーニングであったセンテンス・ダイアグラムは、この国では、近代化の中で急増する受験者数に対応するなか難解化(端的には文構造の複雑化)を重ねていた受験英語に(複雑な文の構造を解剖するツールとして)安住の地を見出したのである。
     
     しかし、コミュニケーション志向の高まりや入試英語の長文化と容易化がすすむ中、文法訳読方式が批判を受けて(返り読みするな、直読直解、そんなに細かく解剖するよりも素早く大意をとるこそ実践的だ等々)、忘れられていった。

     自分でダイアグラムを書いたことがあると、どこから順に眺めていけばいいか分かるため、一見して複雑にみえるダイアグラムを見てもたじろぐことなく、そこに含まれる情報を汲み出すことができる。
     逆に、ダイアグラムを書いたことがない(その一歩前の文法的な分解もしたことがない)者が、最初から複雑な文章をダイアグラム化したものを見せられると、その複雑さについていけなくなる。
     センテンス・ダイアグラムは、難しすぎる/難しいものを少しも簡単に表現できていない、という非難を受けて退場したのである。

     しかし元々は小学生が学ぶもの、そんなに複雑なわけがない。
     
     加えてこんな時代だから、英文をコピペすれば、ダイアグラムを自動してくれるサービスもネット上には存在する。
     複数のダイアグラムの描き方がある場合には、それも作成する(丸い切り替えボタンが表示されて、切り替えられるようになる)。

    Diagrammer Online
    http://1aiway.com/


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    こんなブックマークレット
    javascript:var%20d=document;var%20tx=d.selection?d.selection.createRange().text:d.getSelection();var%20subw=window.open('http://1aiway.com/nlp4net/services/enparser/default.aspx?text='+tx).document;
    で、ブラウザで選択した英文のセンテンス・ダイアグラムを自動生成できる。


     では、ごくシンプルな例をつかって、ダイアグラムのルールを説明していこう。




    第一文型(主語+動詞)

    It rains. 雨が降っている。

    It_rains.png


    主語と動詞は、ベースラインを突き抜けた縦線で区切る。



    第二文型(主語+動詞+補語)

    That's ridiculous. そんなバカな。

    Thats_ridiculous.png


    補語は、ベースラインを突き抜けない斜線で区切る。



    第三文型(主語+動詞+直接目的語)

    I have friends. ぼくには友だちがいる。

    I_have_friends.png


    直接目的語は、ベースラインを突き抜けない縦線で区切る。



    第四文型(主語+動詞+間接目的語+直接目的語)

    He gives me love. 彼は愛をくれたわ。

    Hegivemelove.png


    間接目的語は、図のように枝分かれさせる。



    第五文型(主語+動詞+直接目的語+補語)

    She makes me happy. 彼女はぼくを幸せにしてくれる。

    Shemakesmehappy.png


    目的語の前を縦線で、補語の前を斜線で区切ってる。



    修飾語(形容詞)

    修飾語は、ベースラインから斜めの線を引いてくっつける。

    Big cats run. でかい猫たちが走る。

    BigCatsRun.png


    ここで形容詞Bigは主語のcatを修飾している。


    修飾語(副詞)

    She always makes me happy. 彼女はいつも僕を幸せにしてくれる。

    SheAlwaysMakesMeHappy.png

    ここで副詞alwaysは動詞makesを修飾していると考える。

    副詞が文頭に来てもこのことは変わらない。

    Suddenly the train started. 突然、列車は出発した。

    SuddenlyTrainStarted.png



    冠詞・前置詞句

    冠詞や前置詞句も同様に扱う。

    He lives in the town. 彼はその町に住んでいる。

    HeLiveInthetown.png


    in以下の前置詞句は、動詞livesを修飾している。
    その前置詞句の中では、冠詞theはtownを修飾している。



    副詞節

    節についても同様に考える。
    たとえば副詞節は、主節の動詞を修飾すると考える。

    Because you are happy, I can feel happy. 君が幸せだから、僕も幸せになれる。

    BecauseYouAreHappy.png


    この例だと、Because以下の副詞節は、主節の動詞feelを修飾している。
    なので、feelの下から斜め線が出てBecauseで"You are happy"とつないでいる。



    形容詞節

    関係代名詞をつかった形容詞節については、次のようにする。

    The woman whom I met is a teacher. 僕があった女性は教師だ。

    WomanIMet.png


    まずベースラインに主節のThe woman is a teacher.をダイアグラムにしたものが乗っている。
    そのなかのwomanに対して修飾するので、そこから斜め線が出ており、それがwhom I metの形容詞節の中のwhomと結ばれている(このwhomはwomanのことだから)。

    ポイントは、形容詞節のダイアグラムは、主語(貫く縦線)動詞(貫かない縦線)目的語という形を守っているので、元の文章とは語の順序が異なっている(元の文では関係代名詞を前に出しているので)。



    名詞節

    これに対して、名詞節は主節の主語になったり目的語になったりする。
    この場合は、ベースラインの該当箇所から二股の縦線を引き出して、その先に名詞節を結ぶ。たとえば

    I think he married. 彼は結婚したと思う。

    IThinkHeMarried.png

    I think (目的語)の、目的語のところから二股縦線が出て、上の名詞節he married と結んでいる。



    等位接続詞

    あと等位接続詞はこんな感じに枝分かれさせる。

    You and I eat pizza. 君と僕はピザを食べる。

    YouAndIEatPizza.png



    I eat both veggies and meat. ぼくは野菜も肉も両方食べる。

    IEatVeggMeat.png



    二つの文を等位接続詞でつなぐのは、こんな風にする。

    The parents ate the cake, and the children ate the cookies. 親たちはケーキを食べ、そして子どもたちはクッキーを食べた。

    ParentCakeChildrenCookies.png



    以上で、ダイアグラムをつくる一通りのルールを説明した。

     複雑な文をダイアグラムにすると、メインの主語+動詞などが乗っかってるベースラインから、どんどん斜めの修飾語たちが何重にも伸びていく感じでダイアグラムも複雑になっていく。

     他人の描いたダイアグラムを見るときも、どういう風に作っていったものかを考えるといい。

     完成したダイアグラムをみると、その複雑さにアタマがクラクラしてくるが、まずはベースラインだけを見れば、誰が何をやったか、その根っこのところは分かる。

     だから、まずベースラインをつくり、そこから修飾部分が少しずつ足されていくように、見ていくのだ。

     本当は、アウトライン・プロセッサのように、ベースラインからどのくらいの深さまで表示するかを調節できるようなものがあれば、複雑さを適時コントロールしながら、ダイアグラムの読み書きができる。

     



    では最後に、フランクリン『自伝』の冒頭について、センテンス・ダイアグラムをつくってみる。

    Having emerged from the poverty and obscurity in which I was born and bred, to a state of affluence and some degree of reputation in the world, and having gone so far through life with a considerable share of felicity, the conducing means I made use of, which with the blessing of God so well succeeded, my posterity may like to know, as they may find some of them suitable to their own situations, and therefore fit to be imitated.



    いきなり分詞構文の嵐だが、コアになるのは次の部分である。

    the conducing means I made use of, …… my posterity may like to know
    私の子孫たちは、私が使った有効な手段を知りたいと思うかもしれない。


    my posterity may like
    (クリックで拡大)


    故あって目的語であるthe conducing means I made use ofが前に出てしまってわかりにくくなっている。
    センテンス・ダイアグラムでは、本来の位置に戻るから、次の文とおなじになる。

    my posterity may like to know the conducing means I made use of


    to 不定詞の名詞用法(to know the conducing means)と、関係代名詞の省略((which) I made use of)があるために、ダイアグラムは少しだけ複雑になっているが、まだ序の口である。



    次に、冒頭からはじまる二つ分詞構文(Having emarged …… and having gone)をひとつずつ見ていこう。

    まず、
    Having emerged from the poverty and obscurity in which I was born and bred, to a state of affluence and some degree of reputation in the world
    私が生まれ育った貧しく卑しい(家庭)から身を起こし、裕福で、世の中にある程度名が知られるようになった


    基本の骨格は、emerge from … to ~であることは、下のダイアグラムからも分かる。

    Having emerged from the poverty
    (クリックで拡大)




    次に、もうひとつの分詞構文

    and having gone so far through life with a considerable share of felicity
    かなりの幸運に恵まれてこれまで人生を過ごしてきた


    and having gone so far
    (クリックで拡大)



    さて、残りを片付けよう。

    which with the blessing of God so well succeeded
    それは、神の恵みにあずかって、とてもうまく行ったのだが


    which_succeeded.png
    (クリックで拡大)

    もまた、フランクリンが用いた(子孫も知りたがるだろう)the conducing meansに係っている。




    あとは、最後のas以下の部分を残すのみである。

    as they may find some of them suitable to their own situations, and therefore fit to be imitated.
    自分たちの状況に合っておりそれゆえ真似をするとよいものを、子孫たちは有効な手段の中に見つけるかもしれない。


    they may find some of them
    (クリックで拡大)


    このas以下は、無論、my posterity may likeと対になっており、theyはmy posterityを、themはthe conducing meansを指している。



    と、パーツごとに見ていけば大したことないのだが、これらパーツをまとめて1枚の図にまとめると次のようになる。

    franklin.png
    (クリックで拡大)



    (参考サイト)
    Sentence Diagramming by Eugene R. Moutoux

    Diagramming Sentences - Guide to Grammar and Writing

    Diagramming Sentences--How to Diagram (homeworktips.about.com)

    Diagraming Sentence Index -Grammar Revolution, Grammar the Easy Way

    A Picture of Language -New York Times Opinionator, March 26, 2012.


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