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わざわざ言うまでもないことこそ知らない人には分かりにくいと考え敢えていう、新入生(大学生)向けシリーズのひとつとして書き始めたのだけれど、体調崩したり色々しているうちに時期を逸してしまったリストを蔵出しする。
都合よく考え直せば、スタートの志高い時期よりも、心が折れかけた「5月病」以降の方がニーズがあるかも知れない。
新書未満のものからはじめて、教科書にも採用されているような(しかし専門書よりはずっとやさしい)シリーズまで順々に紹介する。
昔なら、入門なら「新書を読め」と言われておしまいだったかもしれないが、新書が本気で教科書に使われていて、しかもそれに歯がたたないケースが今回のターゲットである。
ずっと手前から始めたって、分からないままごまかし続けるよりずっといい。
〈分かる〉ことは、つながることだ。
逆に言えば〈分からない〉というのは、孤独の最中に投げ出されることだ。
不明のうちに惑い、どこに手を伸ばせばよいかも躊躇う人に、あなたがつながりをつける助けになるかもしれないものは少なからずこの世にあることを、世界中の誰もがあなたを忘れてしまったわけではないことを、知らせることができればよいと思う。
リストは、新入生でない(学び直したい)人にも役立つと思う。
すべてをNDC順に並べることも考えたが、それだと難易度が分かりにくいので、今回はシリーズ(ごと)の紹介をメインにして、そのカバリッジ(範囲)を示すために各シリーズ名に画像一覧へのリンクを付け、別に何冊かを紹介する形にした。
このリストで食い足りなければ(まもなく食い足りなくなるだろう)、このブログの記事だと
・一人で読めて大抵のことは載っている教科書(追記あり) 読書猿Classic: between / beyond readers

・一人で読めて大抵のことは載っている「講座」もの全リスト 読書猿Classic: between / beyond readers

なんかが次に進むべきところだろう。
問題は、リストの手前の方は、学術系につよい大学図書館ではむしろ見つけにくいかもしれないことだ。
そんなときは公立図書館を使おう。
ある分野について、知識ゼロから手っ取り早く知るには、子供向けの書物が内容もしっかりしていて有効だが(この使い方はまた改めて)、これも大学図書館が苦手とする分野だ。こちらについても公立図書館が役に立つので申し添えておく。
・一人で読めて大抵のことは載っている教科書への助走=子供の本は大人の味方+新書で補う 読書猿Classic: between / beyond readers

『図解雑学』シリーズ(ナツメ社)
人文科学は橙、社会科学は緑、自然科学は黄のカラーリングで、400を超えるワンテーマ入門書シリーズの大御所。
哲学、心理、宗教、歴史、数学、物理、工学、スポーツや音楽、動物行動学に万葉集と、ほぼすべての分野をカバーしているので、教科書に行き詰まったら、手を伸ばしてみるといい。
片方に平易で短い解説、もう片方にイラスト図表と、見開き2ページで1トピックの構成で、たくさん読むのが苦手な人にもやさしい。
内容はけっこう詳しく書き込んであり、改訂版が出るなどロングセラーになっているものも少なくない。
『マンガでわかる』シリーズ(オーム社)
ページあたりに盛り込める教科内容の量に限界がある(ひとつのことを伝えるのにマンガだとやたらページが要る)ハンディを逆手に取り、内容をとことん絞り込むことで意外な良書を生み出してきた※オーム社『マンガでわかる』シリーズ(着々と世界侵略もとい英訳版が展開中)。
※ 嘘だと思う向きは、たとえば『マンガでわかる微分方程式』をご覧あれ。あるいは同じ著者が同じテーマで書いた小島寛之の『マンガでわかる微分積分』(本シリーズ)と『ゼロから学ぶ微分積分 (ゼロから学ぶシリーズ)』(講談社、後述)とを比較してみてもよい。
これまで数学、自然科学、工学の分野をターゲットにしてきたが昨年末、ついに『マンガでわかる社会学』が発刊。
コンピュータ系出版社だった秀和システムの『図解入門How‐nual Visual Guide Book』シリーズ
が、理工書とビジネス書に展開し、さらに医学系から『図解入門 よくわかる臨床心理学の基本としくみ (メディカルサイエンスシリーズ)』へ、あるいは高校向けというところから『図解入門 よくわかる高校世界史の基本と流れ―社会人のための再入門 流れとポイントを図解でおさらい (How‐nual Visual Guide Book)』といった隠れた名著へと向かっていったような展開を期待したい。
『ゼロから学ぶ』シリーズ(講談社)
講談社サイエンティフィクがおくる、同社の「なっとくシリーズ」(後述)の弟分、ゼロから学ぶシリーズ。
難しいテーマをやさしい本にするためには、やさしいことしか書かないやり方と、分からなくなるところを何とかするやり方がある。
ページ数に制限をつけないなら、分からなくなるところを何とかするやり方だけで押していけるが、残念ながらそんな僥倖は望むべくもない。
それでも、このシリーズは、随分と分からなくなるところを何とかする工夫を、テーマと著者ごとにアプローチは様々だが、惜しげも無く投下していると思う。
『キャンパス・ゼミ』シリーズ(マセマ出版社)
『ゼロから学ぶ』シリーズや『なっとくする』シリーズ(そして様々な入門書)が、基本的には〈分かる〉ことを目指して注力しているとすれば、この『キャンパス・ゼミ』(や、単位が取れるという触れ込みの様々な書物)は、〈解ける〉ことにその力を注いでいる。
数学系の知識は、実を言えば〈分かる〉だけだと、維持するモチベーションが湧いてこず、結局はあやふやになって消えていくことになる。逆に、〈解ける〉状態を続けていくと、〈分かる〉(理解)は後から時間差でやってくる。
だからまず〈解ける〉ことを目指すのは、意味がないことではないのだ(その後のフォローアップは大切だけれど)。
なお『キャンパス・ゼミ』が扱ってない集合・位相について、〈解ける〉系でもっとも易しく、また身も蓋もない『そのまま使える答えの書き方』シリーズ
の一書を追加しておく。
『やわらかアカデミズム』シリーズ(ミネルヴァ書房)
見開き2ページで1項目という、まるで『図解雑学』などの1テーマ入門書のような体裁をとりながら、そこは人文・社会科学系の大学教科書を大量に供給してきたミネルヴァ書房、B5版という大きさを生かして、本文脇のマージンに豊富な注を放り込み、大学の科目に標準を合わせたテーマ設定と相まって、ちゃんと教科書としてもつかえるものに仕上げてきた。
というわけで、雑学教養書と大学教科書のミッシング・リンク(って別に失われていた訳でもなんでもないけれど)をつなぐライトウェイト・テキスト。対応科目も細かくて豊富。
『なっとく』シリーズ(講談社)
教科書にはならないけれど、難しいことをなるべく回避せず、できるだけ平易に説くことつとめた数学・自然科学系サブ・テキストの老舗シリーズ。
今回の記事の趣旨からいえば、こういうシリーズから始めるのが本来だったかもしれないが、こんなに後ろに回ってしまった。
理工系のための解く!シリーズ(講談社)
『なっとく』シリーズが、〈分かる〉系の「ゼロから学ぶ」シリーズの兄貴分なら、〈解ける〉系の兄貴もいないとバランスが悪いかもしれないので、全ページの半分を解答解説に費やした、自習演習書のこのシリーズを掲げる。
『有斐閣アルマ』シリーズ(有斐閣)
このあたりから大学の教科書。
『有斐閣アルマ』シリーズは、人文・社会科学系の科目をカバーするもの。
学習の進度に合わせて選択が可能なように4つのグループ分けがされている。つまりやさしい入門書から、専門課程の教科書まで揃っている。
以下では、やさしい「赤:Interest =教養科目として学ぶ人に」から「緑:Basic =基礎科目として学ぶ人に」「黄:Specialized =専門科目として学ぶ人に」「Advanced =高度な学習を目指す人に」の順に、それぞれNDC順に何冊かを紹介してみる。
赤:Interest =教養科目として学ぶ人に
◯緑:Basic =基礎科目として学ぶ人に
黄:Specialized =専門科目として学ぶ人に
Advanced =高度な学習を目指す人に
都合よく考え直せば、スタートの志高い時期よりも、心が折れかけた「5月病」以降の方がニーズがあるかも知れない。
新書未満のものからはじめて、教科書にも採用されているような(しかし専門書よりはずっとやさしい)シリーズまで順々に紹介する。
昔なら、入門なら「新書を読め」と言われておしまいだったかもしれないが、新書が本気で教科書に使われていて、しかもそれに歯がたたないケースが今回のターゲットである。
ずっと手前から始めたって、分からないままごまかし続けるよりずっといい。
〈分かる〉ことは、つながることだ。
逆に言えば〈分からない〉というのは、孤独の最中に投げ出されることだ。
不明のうちに惑い、どこに手を伸ばせばよいかも躊躇う人に、あなたがつながりをつける助けになるかもしれないものは少なからずこの世にあることを、世界中の誰もがあなたを忘れてしまったわけではないことを、知らせることができればよいと思う。
リストは、新入生でない(学び直したい)人にも役立つと思う。
すべてをNDC順に並べることも考えたが、それだと難易度が分かりにくいので、今回はシリーズ(ごと)の紹介をメインにして、そのカバリッジ(範囲)を示すために各シリーズ名に画像一覧へのリンクを付け、別に何冊かを紹介する形にした。
このリストで食い足りなければ(まもなく食い足りなくなるだろう)、このブログの記事だと
・一人で読めて大抵のことは載っている教科書(追記あり) 読書猿Classic: between / beyond readers

・一人で読めて大抵のことは載っている「講座」もの全リスト 読書猿Classic: between / beyond readers

なんかが次に進むべきところだろう。
問題は、リストの手前の方は、学術系につよい大学図書館ではむしろ見つけにくいかもしれないことだ。
そんなときは公立図書館を使おう。
ある分野について、知識ゼロから手っ取り早く知るには、子供向けの書物が内容もしっかりしていて有効だが(この使い方はまた改めて)、これも大学図書館が苦手とする分野だ。こちらについても公立図書館が役に立つので申し添えておく。
・一人で読めて大抵のことは載っている教科書への助走=子供の本は大人の味方+新書で補う 読書猿Classic: between / beyond readers

『図解雑学』シリーズ(ナツメ社)
人文科学は橙、社会科学は緑、自然科学は黄のカラーリングで、400を超えるワンテーマ入門書シリーズの大御所。
哲学、心理、宗教、歴史、数学、物理、工学、スポーツや音楽、動物行動学に万葉集と、ほぼすべての分野をカバーしているので、教科書に行き詰まったら、手を伸ばしてみるといい。
片方に平易で短い解説、もう片方にイラスト図表と、見開き2ページで1トピックの構成で、たくさん読むのが苦手な人にもやさしい。
内容はけっこう詳しく書き込んであり、改訂版が出るなどロングセラーになっているものも少なくない。
![]() | 哲学 (図解雑学) (2001/06) 貫 成人 商品詳細を見る |
![]() | 宗教 最新版 (図解雑学) (2011/04/14) 井上 順孝 商品詳細を見る |
![]() | フランス革命 (図解雑学) (2010/04/09) 安達 正勝 商品詳細を見る |
![]() | ミクロ経済学 (図解雑学) (2003/01) 嶋村 紘輝、横山 将義 他 商品詳細を見る |
![]() | 図解雑学 資本主義のしくみ (図解雑学シリーズ) (2003/04) 八木 紀一郎、宇仁 宏幸 他 商品詳細を見る |
![]() | 内部統制 (図解雑学) (2007/10/17) 浜辺 陽一郎 商品詳細を見る |
![]() | フーリエ変換 (図解雑学) (2011/07/13) 佐藤 敏明 商品詳細を見る |
![]() | よくわかる渋滞学 (図解雑学) (2009/07/22) 西成 活裕 商品詳細を見る |
![]() | 誰も知らない動物の見かた~動物行動学入門 図解雑学 (2012/02/24) 今泉 忠明 商品詳細を見る |
![]() | 失敗学 (図解雑学) (2006/07) 畑村 洋太郎 商品詳細を見る |
![]() | よくわかる楽典 (図解雑学) (2008/05/16) 不明 商品詳細を見る |
![]() | 楽しくわかる万葉集 (図解雑学) (2011/07/15) 中西 進 商品詳細を見る |
『マンガでわかる』シリーズ(オーム社)
ページあたりに盛り込める教科内容の量に限界がある(ひとつのことを伝えるのにマンガだとやたらページが要る)ハンディを逆手に取り、内容をとことん絞り込むことで意外な良書を生み出してきた※オーム社『マンガでわかる』シリーズ(着々と世界侵略もとい英訳版が展開中)。
※ 嘘だと思う向きは、たとえば『マンガでわかる微分方程式』をご覧あれ。あるいは同じ著者が同じテーマで書いた小島寛之の『マンガでわかる微分積分』(本シリーズ)と『ゼロから学ぶ微分積分 (ゼロから学ぶシリーズ)』(講談社、後述)とを比較してみてもよい。
これまで数学、自然科学、工学の分野をターゲットにしてきたが昨年末、ついに『マンガでわかる社会学』が発刊。
コンピュータ系出版社だった秀和システムの『図解入門How‐nual Visual Guide Book』シリーズ
![]() | マンガでわかる社会学 (2012/11/29) 栗田 宣義、嶋津 蓮 他 商品詳細を見る |
![]() | マンガでわかる微分積分 (2005/12) 小島 寛之、十神 真 他 商品詳細を見る |
![]() | マンガでわかる線形代数 (2008/11) 高橋 信、井上 いろは 他 商品詳細を見る |
![]() | マンガでわかる微分方程式 (2009/11) 佐藤 実、あづま 笙子 他 商品詳細を見る |
![]() | マンガでわかる統計学 (2004/07) 高橋 信、トレンドプロ 他 商品詳細を見る |
![]() | マンガでわかる統計学 回帰分析編 (2005/09) 高橋 信、井上 いろは 他 商品詳細を見る |
![]() | マンガでわかる統計学 因子分析編 (2006/10/26) 高橋 信、井上 いろは 他 商品詳細を見る |
![]() | マンガでわかる物理 力学編 (2006/11) 新田 英雄、高津 ケイタ 他 商品詳細を見る |
![]() | マンガでわかる熱力学 (2009/12) 原田 知広、川本 梨恵 他 商品詳細を見る |
![]() | マンガでわかる電磁気学 (2011/08/25) 遠藤 雅守 商品詳細を見る |
![]() | マンガでわかる相対性理論 (2009/06) 山本 将史、高津 ケイタ 他 商品詳細を見る |
![]() | マンガでわかる量子力学 (2009/12) 石川 憲二、柊 ゆたか 他 商品詳細を見る |
![]() | マンガでわかる生化学 (2009/01) 武村 政春、菊野郎 他 商品詳細を見る |
![]() | マンガでわかる分子生物学 (2008/01) 武村 政春、咲良 他 商品詳細を見る |
![]() | マンガでわかるコンクリート (2011/09/23) 石田 哲也 商品詳細を見る |
『ゼロから学ぶ』シリーズ(講談社)
講談社サイエンティフィクがおくる、同社の「なっとくシリーズ」(後述)の弟分、ゼロから学ぶシリーズ。
難しいテーマをやさしい本にするためには、やさしいことしか書かないやり方と、分からなくなるところを何とかするやり方がある。
ページ数に制限をつけないなら、分からなくなるところを何とかするやり方だけで押していけるが、残念ながらそんな僥倖は望むべくもない。
それでも、このシリーズは、随分と分からなくなるところを何とかする工夫を、テーマと著者ごとにアプローチは様々だが、惜しげも無く投下していると思う。
![]() | ゼロから学ぶ微分積分 (ゼロから学ぶシリーズ) (2001/04/23) 小島 寛之 商品詳細を見る |
![]() | ゼロから学ぶ線形代数 (ゼロから学ぶシリーズ) (2002/05/10) 小島 寛之 商品詳細を見る |
![]() | ゼロから学ぶ統計解析 (ゼロから学ぶシリーズ) (2002/01/29) 小寺 平治 商品詳細を見る |
![]() | ゼロから学ぶベクトル解析 (ゼロから学ぶシリーズ) (2002/04/26) 西野 友年 商品詳細を見る |
![]() | ゼロから学ぶ熱力学 (ゼロから学ぶシリーズ) (2001/04/23) 小暮 陽三 商品詳細を見る |
![]() | ゼロから学ぶ電磁気学 (ゼロから学ぶシリーズ) (2007/04/11) 西野 友年 商品詳細を見る |
![]() | ゼロから学ぶ相対性理論 (ゼロから学ぶシリーズ) (2001/10/30) 竹内 薫 商品詳細を見る |
![]() | ゼロから学ぶ超ひも理論 (ゼロから学ぶシリーズ) (2007/12/08) 竹内 薫 商品詳細を見る |
『キャンパス・ゼミ』シリーズ(マセマ出版社)
『ゼロから学ぶ』シリーズや『なっとくする』シリーズ(そして様々な入門書)が、基本的には〈分かる〉ことを目指して注力しているとすれば、この『キャンパス・ゼミ』(や、単位が取れるという触れ込みの様々な書物)は、〈解ける〉ことにその力を注いでいる。
数学系の知識は、実を言えば〈分かる〉だけだと、維持するモチベーションが湧いてこず、結局はあやふやになって消えていくことになる。逆に、〈解ける〉状態を続けていくと、〈分かる〉(理解)は後から時間差でやってくる。
だからまず〈解ける〉ことを目指すのは、意味がないことではないのだ(その後のフォローアップは大切だけれど)。
![]() | スバラシク実力がつくと評判の微分積分キャンパス・ゼミ―大学の数学がこんなに分かる!単位なんて楽に取れる! (2013/05) 馬場 敬之 商品詳細を見る |
![]() | スバラシク実力がつくと評判の線形代数キャンパス・ゼミ (2012/07) 馬場 敬之 商品詳細を見る |
![]() | スバラシク実力がつくと評判の統計学キャンパス・ゼミ―大学の数学がこんなに分かる!単位なんて楽に取れる! (2010/05) 馬場 敬之、久池井 茂 他 商品詳細を見る |
![]() | スバラシク実力がつくと評判のベクトル解析キャンパス・ゼミ (2013/03) 馬場 敬之 商品詳細を見る |
![]() | スバラシク実力がつくと評判の複素関数キャンパス・ゼミ―大学の数学がこんなに分かる!単位なんて楽に取れる! (2006/07) 馬場 敬之、高杉 豊 他 商品詳細を見る |
![]() | スバラシク実力がつくと評判のフーリエ解析キャンパス・ゼミ (2012/06) 馬場 敬之、高杉 豊 他 商品詳細を見る |
![]() | ラプラス変換キャンパス・ゼミ―大学の数学がこんなに分かる!単位なんて楽に取れる! (大学数学・物理「キャンパス・ゼミ」シリーズ) (2008/12) 馬場 敬之、高杉 豊 他 商品詳細を見る |
![]() | スバラシク実力がつくと評判の熱力学キャンパス・ゼミ―大学の物理がこんなに分かる!単位なんて楽に取れる! (2008/08) 馬場 敬之、高杉 豊 他 商品詳細を見る |
![]() | スバラシク実力がつくと評判の電磁気学キャンパス・ゼミ〈改訂1〉 (2011/03) 馬場 敬之、高杉 豊 他 商品詳細を見る |
![]() | スバラシク実力がつくと評判のミクロ経済学キャンパス・ゼミ―経済学がこんなに分かる!単位なんて楽に取れる! (2011/12) 馬場 敬之、高杉 豊 他 商品詳細を見る |
![]() | スバラシク実力がつくと評判のマクロ経済学キャンパス・ゼミ―経済学がこんなに分かる!単位なんて楽に取れる! (2011/07) 馬場 敬之 商品詳細を見る |
なお『キャンパス・ゼミ』が扱ってない集合・位相について、〈解ける〉系でもっとも易しく、また身も蓋もない『そのまま使える答えの書き方』シリーズ
![]() | 集合と位相 そのまま使える答えの書き方 (KS理工学専門書) (2001/04/25) 一樂 重雄 商品詳細を見る |
『やわらかアカデミズム』シリーズ(ミネルヴァ書房)
見開き2ページで1項目という、まるで『図解雑学』などの1テーマ入門書のような体裁をとりながら、そこは人文・社会科学系の大学教科書を大量に供給してきたミネルヴァ書房、B5版という大きさを生かして、本文脇のマージンに豊富な注を放り込み、大学の科目に標準を合わせたテーマ設定と相まって、ちゃんと教科書としてもつかえるものに仕上げてきた。
というわけで、雑学教養書と大学教科書のミッシング・リンク(って別に失われていた訳でもなんでもないけれど)をつなぐライトウェイト・テキスト。対応科目も細かくて豊富。
![]() | よくわかる認知科学 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ) (2010/02) 乾 敏郎、 他 商品詳細を見る |
![]() | よくわかる心理学 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ) (2009/02) 無藤 隆、 他 商品詳細を見る |
![]() | よくわかる社会心理学 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ) (2007/04) 山田 一成、結城 雅樹 他 商品詳細を見る |
![]() | よくわかる臨床心理学 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ) (2009/08) 下山 晴彦 商品詳細を見る |
![]() | よくわかる心理統計 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ) (2004/09) 山田 剛史、村井 潤一郎 他 商品詳細を見る |
![]() | よくわかる考古学 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ) (2010/05) 松藤 和人、門田 誠一 他 商品詳細を見る |
![]() | よくわかる地方自治法 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ) (2009/01) 橋本 基弘、土田 伸也 他 商品詳細を見る |
![]() | よくわかる会社法 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ) (2009/02) 永井 和之 商品詳細を見る |
![]() | よくわかる司法福祉 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ) (2004/05) 不明 商品詳細を見る |
![]() | よくわかる現代経営 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ) (2012/05) 「よくわかる現代経営」編集委員会 商品詳細を見る |
![]() | よくわかるNPO・ボランティア (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ) (2005/06) 川口 清史、 他 商品詳細を見る |
![]() | よくわかる経営管理 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ) (2011/11) 高橋 伸夫 商品詳細を見る |
![]() | よくわかる組織論 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ) (2010/05) 田尾 雅夫 商品詳細を見る |
![]() | よくわかる社会学 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ) (2009/02) 宇都宮 京子 商品詳細を見る |
![]() | よくわかるメディア・スタディーズ (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ) (2009/03) 伊藤 守 商品詳細を見る |
![]() | よくわかる質的社会調査 技法編 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ) (2009/07) 谷 富夫、芦田 徹郎 他 商品詳細を見る |
![]() | よくわかるジェンダー・スタディーズ: 人文社会科学から自然科学まで (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ) (2013/03/30) 木村 涼子、熊安 貴美江 他 商品詳細を見る |
![]() | よくわかる社会保障[第4版] (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ) (2012/10/27) 不明 商品詳細を見る |
![]() | よくわかる社会福祉 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ) (2012/04) 不明 商品詳細を見る |
![]() | よくわかる教育原理 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ) (2011/04) 汐見 稔幸、高田 文子 他 商品詳細を見る |
![]() | よくわかる文化人類学 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ) (2010/02) 不明 商品詳細を見る |
![]() | よくわかる言語発達 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ) (2005/05) 不明 商品詳細を見る |
『なっとく』シリーズ(講談社)
教科書にはならないけれど、難しいことをなるべく回避せず、できるだけ平易に説くことつとめた数学・自然科学系サブ・テキストの老舗シリーズ。
今回の記事の趣旨からいえば、こういうシリーズから始めるのが本来だったかもしれないが、こんなに後ろに回ってしまった。
![]() | なっとくする集合・位相 (なっとくシリーズ) (2001/09/14) 瀬山 士郎 商品詳細を見る |
![]() | なっとくする微積分 (なっとくシリーズ) (2001/09/25) 中島 匠一 商品詳細を見る |
![]() | なっとくする行列・ベクトル (なっとくシリーズ) (1999/11/25) 川久保 勝夫 商品詳細を見る |
![]() | なっとくする複素関数 (なっとくシリーズ) (2000/04/20) 小野寺 嘉孝 商品詳細を見る |
![]() | なっとくする微分方程式 (なっとくシリーズ) (2000/02/09) 小寺 平治 商品詳細を見る |
![]() | なっとくする群・環・体 (なっとくシリーズ) (2011/02/22) 野崎 昭弘 商品詳細を見る |
![]() | なっとくする一般力学 (なっとくシリーズ) (2002/02/12) 小暮 陽三 商品詳細を見る |
![]() | なっとくする熱力学 (なっとくシリーズ) (1993/11/25) 都筑 卓司 商品詳細を見る |
![]() | なっとくする統計力学 (なっとくシリーズ) (1993/11/25) 都筑 卓司 商品詳細を見る |
![]() | なっとくする量子力学 (なっとくシリーズ) (1994/05/26) 都筑 卓司 商品詳細を見る |
![]() | なっとくする宇宙論 (なっとくシリーズ) (1998/03/30) 二間瀬 敏史 商品詳細を見る |
![]() | なっとくする電気回路 (なっとくシリーズ) (1995/07/11) 国枝 博昭 商品詳細を見る |
![]() | なっとくする電子回路 (なっとくシリーズ) (1994/03/10) 藤井 信生 商品詳細を見る |
![]() | なっとくする分析化学 (なっとくシリーズ) (2010/03/30) 斎藤 恭一、武曽 宏幸 他 商品詳細を見る |
![]() | なっとくする科学英会話 CD付き (なっとくシリーズ) (2001/03/29) 亀井 エリザベス 商品詳細を見る |
理工系のための解く!シリーズ(講談社)
『なっとく』シリーズが、〈分かる〉系の「ゼロから学ぶ」シリーズの兄貴分なら、〈解ける〉系の兄貴もいないとバランスが悪いかもしれないので、全ページの半分を解答解説に費やした、自習演習書のこのシリーズを掲げる。
![]() | 理工系のための解く!微分積分 (KS理工学専門書) (2006/10/12) 神谷 淳、生野 壮一郎 他 商品詳細を見る |
![]() | 理工系のための解く!線形代数 (2007/11/16) 筧 三郎、西成 活裕 他 商品詳細を見る |
![]() | 理工系のための 解く!複素解析 (理工系のための解く!) (2005/04/02) 安岡 康一、植之原 裕行 他 商品詳細を見る |
![]() | 理工系のための 解く!微分方程式 (理工系のための解く!) (2005/04/02) 水本 哲弥 商品詳細を見る |
![]() | 理工系のための解く!力学 (KS理工学専門書) (2006/04/05) 平山 修 商品詳細を見る |
![]() | 理工系のための解く! 振動・波動 (理工系のための解く!シリーズ) (2009/09/11) 三沢 和彦 商品詳細を見る |
![]() | 理工系のための解く!熱力学 (2007/04/03) 三沢 和彦 商品詳細を見る |
![]() | 理工系のための解く!電磁気学 (理工系のための解く!シリーズ) (2010/05/14) 伊藤 彰義、中川 活二 他 商品詳細を見る |
![]() | 理工系のための解く!量子力学 (理工系のための解く!シリーズ) (2008/05/10) 伊藤 治彦 商品詳細を見る |
『有斐閣アルマ』シリーズ(有斐閣)
このあたりから大学の教科書。
『有斐閣アルマ』シリーズは、人文・社会科学系の科目をカバーするもの。
学習の進度に合わせて選択が可能なように4つのグループ分けがされている。つまりやさしい入門書から、専門課程の教科書まで揃っている。
以下では、やさしい「赤:Interest =教養科目として学ぶ人に」から「緑:Basic =基礎科目として学ぶ人に」「黄:Specialized =専門科目として学ぶ人に」「Advanced =高度な学習を目指す人に」の順に、それぞれNDC順に何冊かを紹介してみる。
赤:Interest =教養科目として学ぶ人に
![]() | 図書館情報学入門 (有斐閣アルマ) (1998/01) 藤野 幸雄、山本 順一 他 商品詳細を見る |
![]() | はじめて出会う心理学 改訂版 (有斐閣アルマ) (2008/04/03) 長谷川 寿一、東條 正城 他 商品詳細を見る |
![]() | はじめて学ぶ考古学 (有斐閣アルマ) (2011/04/16) 佐々木 憲一、小杉 康 他 商品詳細を見る |
![]() | 日本史のエッセンス―歴史が物語るもの (有斐閣アルマ) (1997/11) 荒木 敏夫、加藤 哲郎 他 商品詳細を見る |
![]() | はじめて出会う政治学―構造改革の向こうに (有斐閣アルマ) (2009/04) 北山 俊哉、真渕 勝 他 商品詳細を見る |
![]() | ライフステージと法 第6版 (有斐閣アルマ) (2012/03/02) 副田 隆重、浜村 彰 他 商品詳細を見る |
![]() | いちばんやさしい憲法入門 第4版 (有斐閣アルマ) (2010/03/15) 初宿 正典、高橋 正俊 他 商品詳細を見る |
![]() | Do! ソシオロジー 改訂版 -- 現代日本を社会学で診る (有斐閣アルマ) (2013/03/29) 不明 商品詳細を見る |
![]() | やさしい教育心理学 第3版 (有斐閣アルマ) (2012/03/16) 鎌原 雅彦、竹綱 誠一郎 他 商品詳細を見る |
![]() | 文科系学生のための数学教室―1から思い出そう (有斐閣アルマ) (2004/07) 岡部 恒治、今野 和浩 他 商品詳細を見る |
◯緑:Basic =基礎科目として学ぶ人に
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ものを書く人は自由人である(少なくともそうありたいと思っている)から、
これは書くことがとことん苦手な人のために書いた文章です→小学生から大人まで使える素敵な方法 読書猿Classic: between / beyond readers

のような型(かた)の話をすると結構反発を食らう。
すでに書いている人たち向けに書かれたものでは、たとえば
書きなぐれ、そのあとレヴィ=ストロースのように推敲しよう/書き物をしていて煮詰まっている人へ 読書猿Classic: between / beyond readers

のような記事がある。
しかしレヴィ・ストロースのようにはできないという声も寄せられる。
何より、立ち止まらず振り返らず、ただ書きなぐっていくのが難しい。
心の隅から湧き上がる自己検閲の声はしばしば、書きなぐる速度よりも速く、我々をつかまえてしまう。
「本当にそうなのか?」
「そう言い切れる?」
「なんて凡庸なの!」
「もっといい言葉があるはず!思いつかないけど」
「いったい何が書きたいの?」
「@@が見たら、なんというだろう?」
「なんというマスターベイション!」
「これ以上、世界に駄文を増やしてどうする?」
先の記事にも出した〈「作文のつまずき」の現れ方〉という図

(クリックで拡大)
(出典:『国語科授業の常識を疑う〈3〉作文 (市毛勝雄模擬授業の記録と分析)』p.60)
でいえば「自分の書く文章は無価値」というつまづきだ。
どれほどスキルやテクニックが身についても、他人から達意の書き手と目されても、呪いのように付き従ってくる。
世に流布する「文章の書き方」は、ほとんどすべてが「やってはいけない」というネガティブ・リストの類で、一緒になって責め立てこそすれ、酸のように我々を苦しめる自己検閲から守ってはくれない。
書くことは、ほとんど必ず落胆を伴う(仕様だと思っていいくらいだ)。
どれだけ書き手として長いキャリアを積んでも、どこまでも付き合っていくしかない宿痾のようなものだ。
とりわけ書き始めてまだ日が浅い人たちが(いつかスラスラとすばらしい文章が書けるかもしれないと信じたい人たちが)、打ちのめされるとしても不思議ではない。
しかし戦い方がないわけではない。
これは魔法でもトリックでも、ましてやライフハックでもない。
むしろ正面突破だ。
(1)このワークに取り組む時間を決める
(2)タイマーをセット
(3)タイマーが鳴るまでとにかく書き続ける
以上である。しかしもう少し詳しくやり方を書こう。
(1)このワークに取り組む時間を決める
1セット15分とか20分でやってみる。
もっとやりたくなったら、もう1セット繰り返せばいい。
(2)タイマーをセット
紙(ノート)と筆記具、あるいはパソコンとテキストエディタなど書くために必要なものを準備する。それからタイマーを自分で決めた時間でセットする。
(3)タイマーが鳴るまで書き続ける
スタート。自分が決めた時間が過ぎるまで、何でもいいから、とにかく書き続ける。
手を止めてはならない。読み返してはならない。消すなんてもってのほか。
言うまでもないが、書き誤りや句読点や文法、改行や段落なんて気にしない。漢字が出てこないならひらがなでもカタカナでいい。レイアウトなんか犬に食わせてしまえ。
しつこく言うが、文章を評価するあらゆる基準を無視すること。
パクリ、月並み(クリシュ)でどこが悪い。
筋道立てる必要だってない。さっき書いたことと、今加工としていることが、いやそれどころか主語と述語がチグハグだって、単語の繰り返しだって構わない。
〈自己満足〉なんて僥倖(すごいラッキー)は期待するな。不満足のまま進め。
っていうか考えるな。ひたすら言葉を吐き出すのだ。
(4)もうだめだ、書くことがない、となったら
「もうだめだ、もう書くことがない」と書け。なんでこんなことしなきゃならないんだ、と思ったら、そう書け。とにかくタイマーが鳴るまで手を動かせ。
(5)ヤバイところに突き当たったら
怖い考えやヤバイ感情に突き当たったら(高い確率でそうなる)、「ようやくおいでなすった」と思って、まっすぐ飛びつけ。少なくとも書こうとせよ。
おそらくは、それが書くことを邪魔してるメンタル・ブロック(か、それにつながるもの)である。
同時にそれは、どこかで聞いてきたようなお行儀のいいコトバ以上(以外)を書くためのエネルギーの源泉になる。

書くことは独りでおこなう行為だから、こうして殴り書いたものは誰にも見せる必要はない。
けれども、もしも腹を割って話せる文章仲間がいるなら、グループワークとして取り組むこともできる。
15分間の〈書く時間〉で参加者各自が書いたものを、つづく〈朗読の時間〉で各自が朗読する。
感想、批評、その他コメントは一切なし。
このワーク中は、自分が書いたものを読み上げる以外、言葉を声を出してはならない。
誰かが真摯に発した言葉を受ければ、自分も何事か言葉を返したくなる。
口頭でのそれは禁止されているから、言葉への欲求は、また書くことにぶつけられることになる。
どんなテーマで書いてもいいが、お題が必要な参加者のために、〈お題箱〉を用意してもいい。
参加者が各自、匿名で書いたテーマのメモを箱に入れておいて、必要な人にはそこからクジのように引いてもらうのだ。
この〈書く時間〉+〈朗読の時間〉を1セットにして数セット、時間にして4時間ほど行う。
参加者が多くて朗読に時間をとられるなら、〈朗読の時間〉で朗読した人は、次回の〈朗読の時間〉では1回休みにしてもいい。
この〈書く〉ー〈読む〉ー〈書く〉…のサイクルを続けていくと、ライターズ・ハイとでもいう状態に入る。あんなにしつこく付き従ってきた〈自己検閲〉は置き去りにされ、ほとんどどんなことでも書けるようになっている。
だが心配はご無用、時間をおけば、また防具で身を固めた意地っ張りのあなたが戻ってくる。
このライティング・マラソンの後は、誰かと語り合うのは少し後にして、一人っきりでしばらく過ごすこと。できれば体を使った作業をするといい。
(関連記事)
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(参考文献)
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……アメリカの大学でCreative Writingコースのテキストに使われたりするもの
(その翻訳)
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時間がない人のための要約
◯どうするか?→下記のようなレビュー・マトリクスにまとめる

(クリックで拡大)
(出典:『看護研究のための文献レビュー: マトリックス方式』p.95)
◯何を与えてくれるか?(ご利益)
集められた論文に散在する情報を秩序だてて整理し比較対照を容易にする
集められた論文の共通点やトレンド、手薄な点などを浮かび上がらせる
◯どうやってつくるのか?(手順)
(1)文献を集めて年代順に並べる
(2)レビュー・マトリクスへ抽出するトピックを決める
(3)文献から情報を摘出してレビュー・マトリクスを埋めていく
文献を集めることの重要性は別に取り上げたことがある。
結論から言えば、参考文献リストは長いほどいい/文献収集が論文執筆にもたらす4つのご利益 読書猿Classic: between / beyond readers

しかし数多くの文献を手元に集めたとして、それが机周りの空間とあなたの思考に取扱い能力を超えた複雑さをもたらし、混乱を引き起こすだけとしたら本末転倒である。
注意という認知資源は有限である。ヒトが一度に意識を配ることのできる対象の数は思う以上に少ない。
多くの文献を取り回すためには、それらを組織だって取り扱うための方法があった方が良い。とりわけ超人でも碩学でもない我々には。
ある分野の知的貢献は複数の研究、複数の文献によって構成されている。
その分野を切り開く画期となった研究・文献が存在しても、その後重大な補完や修正を付け加えた複数の研究・文献が後に続くことが多い。
そして、ある研究・文献は、先行者を批判するにせよ、それ以前の複数の研究・文献を前提としている。
ひとつの研究・文献の価値や意義は、複数の研究・文献をコンテクストとして背景におかないと見えてこない。
相手にしなければならないのは、常に複数の、それもかなり多くの研究・文献なのだ。
今回は以下の本から、多数の文献を整理し比較対照して研究のフロント(前線)を浮かび上がらせる、簡便な方法を紹介する。
タイトルに看護研究(原題ではhealth sciences)という冠しているのは偶然ではない。
この分野の研究に携わる者の多くは、臨床家(practitioner)でもある。彼らは臨床研究を研究論文等で発信する、この分野の知識の供給者であると同時に、蓄積・共有された知識を活用して自身の臨床にあたる知識の需要者でもある。自身の研究の焦点を見い出すためだけでなく、自身の臨床の水準を高め維持するためにも、人類が今この時点で達している知識の最前線を(できるだけ少ない手間で)知る必要があるのだ。
今回紹介する方法は、異なる分野でも活用可能であり、この書の中でも科学分野以外での活用が紹介されている。
レビュー・マトリクスとは何か
レビュー・マトリクスは、複数の文献を比較対照するための自然かつ組織立った方法であり、複数の論文に含まれる情報を秩序づける表形式の構造である。
実例を見てもらったほうが理解しやすいだろう。
Literature Review Matrix

(クリックで拡大)
(『看護研究のための文献レビュー: マトリックス方式』p.95 を元に作成)
1行にひとつの文献が割り当てられ、文献から抜き出された情報がそれぞれの項目のマス目に配置される。
すべての文献から共通して同じトピックを拾い出していくことで、複数の文献に含まれる情報を横断的に参照できる。
レビュー・マトリクスがもたらすもの
あるテーマ・分野の文献を集め、レビュー・マトリクスをつくると、それらの文献の多く(時にすべて)に共通するものが浮かび上がってくる。
レビュー・マトリクスのトピック(項目)列を縦にみると、たとえば次のようなことがわかる。
・このテーマは、誰が研究しているか? 誰が協力しているか? →著者、研究協力者の列
・このテーマは、どこで(どの機関で)研究されているか? →著者の所属機関の列
・このテーマの研究で必ず(または頻繁に)引用される文献は? →引用文献の列
・このテーマの研究者が、よく使うデータセットは? →データセットの列
・このテーマの研究によく資金を出しているのは? →資金提供者の列
レビュー・マトリクスでは文献を年代順に並べてある。
これにより、あるテーマ・分野の研究について、時系列に沿った移り変わりが浮かび上がらせる。
・このテーマの研究で初期に用いられてきた研究デザインは?(ケーススタディ?)
・このテーマの研究にRCT(Randomized Controlled Trial ランダム化比較試験)が用いられだしたのはいつ頃からか?
→いずれも「研究デザイン」の列を時系列順に(つまり上から下へと)読むことで
さらにそこにある(実施された)共通点ばかりでなく、そこにない共通点=未だこのテーマの研究でなされていないもの、手薄な部分なども、レビュー・マトリクスから浮かび上がる。
発見された研究の空白地帯や手薄部分は、自分の研究の焦点を合わせるべきところかもしれない。
・このテーマの既存研究で対象者はほとんど成人ばかり→10代を対象としたものはまだ少ない
・このテーマの既存研究で、人種を独立変数にしたものは少ない
・このテーマの既存研究でA法、B法との対照したものはあるがC法についてはまだない

(クリックで拡大)
レビュー・マトリクスをつくる手順

(クリックで拡大)
(1)文献を集めて年代順に並べる
文献を集めないことには、レビュー・マトリクスは作れない(また作る必要もない)。
『看護研究のための文献レビュー: マトリックス方式』では、文献レビューをつくるのワークフローに沿って、次の4つのフォルダを物理的に、またはコンピュータ上につくることが推奨されている。
(a)ペーパー・トレイル・フォルダー……文献探しの手がかりと記録(ログ)、文献探索のスタートや参考にしたキーソース、検索に用いたキーワードとデータベースごとのヒット数、作業中の振り返りのメモなど……を置く
(b)文書フォルダー……集めた文献(抜き刷りやファイル)を置く
(c)レビュー・マトリクス・フォルダー……つくったレビュー・マトリクスを置く
(d)総括フォルダー……レビュー・マトリクスを元にまとめた文献レビュー(というアウトプット)の下書きから完成品までの各バージョンを置く
文献を集めることはスノーボール的に行わざるを得ない。
見つけた文献を手がかりに、そこに含まれる情報(著者名、参考文献リスト、登場するテクニカル・タームなど)を活用して、さらに文献を探していく。
調査の成果(ここでは集めた文献そのもの)とは別に、調査の過程を残していくことが重要である。
調査過程の記録は、今回の調査の中ではもちろん、調査が一段落した後にも、繰り返し役に立つ。
(2)レビュー・マトリクスに取り出すトピックを決める
およそ文献に書き込まれる要素はすべて、トピックとしてマトリクスに取り込むことができる。
実際的には、自分(が行う文献調査)の目的と集まった文献とに合わせて、レビュー・マトリクスを構成するトピックを決めることが推奨される。
つまり、作り手とその目的次第、そして集まった文献次第でどんなトピックでマトリクスを作るかは様々だということである。
しかし作業の手がかりのために、ほとんどすべての場合に登場するトピックとよく使われるトピックを挙げておこう。
以下の3つはほぼ必須のトピックであり、レビュー・マトリクスの最左の3列を占める。
(a)著者、題名、掲載誌などの書誌情報
(b)発行年など ……年代順にソートするため
(c)文献の(研究)目的……目的として明示されるか、仮説やリサーチ・クエスチョンとして示される
次のものは研究論文を対象としたレビュー・マトリクスに頻出のものである。
(d)独立変数と従属変数
「喫煙が肺がんに与える影響」についての研究ならば〈喫煙の量(頻度)〉が独立変数、〈肺がんの発生率〉が従属変数となる
(e)研究デザイン
(f)対象(数、単位、属性)
(g)データセット、データソース
(h)データの収集方法と収集時
(i)用いられた指標や尺度
(j)統計分析の手法と前提条件
(k)当研究の著者によって書かれた意義・長所
(l)当研究の著者によって書かれた短所
(m)引用文献
(n)資金提供者
・
・
(z)上記項目についてのマトリクス作成者の判断やコメント
(3)文献から情報を摘出してレビュー・マトリクスを埋めていく
上記で決めたトピックについて、文献を読みながら情報を摘出してレビュー・マトリクスを埋めていく。
抽出する項目とまとめる様式がレビュー・マトリクスとして定められているので、この作業はチームで複数人によって行うこともできる。
この場合、一人がひとつの文献についてすべてのトピックを埋めるやり方と、特定のトピックについて一人がすべての文献を担当するやり方がある。
レビュー・マトリクスを越えて
マトリクスを作りながら気付いたことはメモして置く。完成後、見返して気付いたこと分かったことは言語化する。そして、まとめて一つの文章としてアウトプットする。
つまりレビュー・マトリクスを見直し文献レビューとして文章化することが望ましい(先に示したワークフロー・フォルダーの構成もそうなっていた)。
理由の一つは、そうすることが必要になるからである。
レビュー・マトリクスは何度も再利用可能な知的生産物だが、フォーマルな知識の伝達手段ではない。
例えばある分野やテーマについてレポートを提出しなければならないとき、文章化したものが要求される(こうしたタスクにもレビュー・マトリクスは直接役立つ)。
研究費を申し込む時にも、既存研究を整理し要約した文章を添付することが求められる。
自身の研究を取り組む場合、論文として発表する場合はいうまでもない。
もう一つの理由は、文章化する作業を通じて、より深い洞察を得ることができるからである。
文章化するためには、情報を選択的に抜取り、それらを整合的に結び合わせ、論理的に関係付けることが必要になる。そのためには、レビュー・マトリクスが示している様々なものを再認し、組合せ、突き合わせることになるだろう。こうした過程を通じて、自身の認識は深化し、ただ眺めていただけでは得られなかったような発見をレビュー・マトリクスから得ることができる(少なくともその可能性は高まる)。
またレビュー・マトリクスは、見る者によって、また切り口によって示す姿を変える、多様な可能性を抱えた二次的資料である。一通りの見直しでは、その可能性のすべてを開示することはできない。このことは時間をおいてレビュー・マトリクスを見直した時や、自分以外の者がどのように読み解くかを知ったときに痛感するだろう。
それ故、現時点で自分がレビュー・マトリクスから受け取ることができるものを、スナップショットの形で残すことに意味がある。
現時点では、レビュー・マトリクスから何を受け取ったかを記録することで、自分の認識の変化を反省的に確認することができる。
ひとつのレビュー・マトリクスから何度も異なる発見を汲み上げること、そして同じ文献群のセットから別のレビュー・マトリクスを作り上げることは、多数の文献が織り成す知のフロントを、様々な角度で切り出し取り回す足場となる。
◯どうするか?→下記のようなレビュー・マトリクスにまとめる

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(出典:『看護研究のための文献レビュー: マトリックス方式』p.95)
◯何を与えてくれるか?(ご利益)
集められた論文に散在する情報を秩序だてて整理し比較対照を容易にする
集められた論文の共通点やトレンド、手薄な点などを浮かび上がらせる
◯どうやってつくるのか?(手順)
(1)文献を集めて年代順に並べる
(2)レビュー・マトリクスへ抽出するトピックを決める
(3)文献から情報を摘出してレビュー・マトリクスを埋めていく
文献を集めることの重要性は別に取り上げたことがある。
結論から言えば、参考文献リストは長いほどいい/文献収集が論文執筆にもたらす4つのご利益 読書猿Classic: between / beyond readers

しかし数多くの文献を手元に集めたとして、それが机周りの空間とあなたの思考に取扱い能力を超えた複雑さをもたらし、混乱を引き起こすだけとしたら本末転倒である。
注意という認知資源は有限である。ヒトが一度に意識を配ることのできる対象の数は思う以上に少ない。
多くの文献を取り回すためには、それらを組織だって取り扱うための方法があった方が良い。とりわけ超人でも碩学でもない我々には。
ある分野の知的貢献は複数の研究、複数の文献によって構成されている。
その分野を切り開く画期となった研究・文献が存在しても、その後重大な補完や修正を付け加えた複数の研究・文献が後に続くことが多い。
そして、ある研究・文献は、先行者を批判するにせよ、それ以前の複数の研究・文献を前提としている。
ひとつの研究・文献の価値や意義は、複数の研究・文献をコンテクストとして背景におかないと見えてこない。
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タイトルに看護研究(原題ではhealth sciences)という冠しているのは偶然ではない。
この分野の研究に携わる者の多くは、臨床家(practitioner)でもある。彼らは臨床研究を研究論文等で発信する、この分野の知識の供給者であると同時に、蓄積・共有された知識を活用して自身の臨床にあたる知識の需要者でもある。自身の研究の焦点を見い出すためだけでなく、自身の臨床の水準を高め維持するためにも、人類が今この時点で達している知識の最前線を(できるだけ少ない手間で)知る必要があるのだ。
今回紹介する方法は、異なる分野でも活用可能であり、この書の中でも科学分野以外での活用が紹介されている。
レビュー・マトリクスとは何か
レビュー・マトリクスは、複数の文献を比較対照するための自然かつ組織立った方法であり、複数の論文に含まれる情報を秩序づける表形式の構造である。
実例を見てもらったほうが理解しやすいだろう。
Literature Review Matrix

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(『看護研究のための文献レビュー: マトリックス方式』p.95 を元に作成)
1行にひとつの文献が割り当てられ、文献から抜き出された情報がそれぞれの項目のマス目に配置される。
すべての文献から共通して同じトピックを拾い出していくことで、複数の文献に含まれる情報を横断的に参照できる。
レビュー・マトリクスがもたらすもの
あるテーマ・分野の文献を集め、レビュー・マトリクスをつくると、それらの文献の多く(時にすべて)に共通するものが浮かび上がってくる。
レビュー・マトリクスのトピック(項目)列を縦にみると、たとえば次のようなことがわかる。
・このテーマは、誰が研究しているか? 誰が協力しているか? →著者、研究協力者の列
・このテーマは、どこで(どの機関で)研究されているか? →著者の所属機関の列
・このテーマの研究で必ず(または頻繁に)引用される文献は? →引用文献の列
・このテーマの研究者が、よく使うデータセットは? →データセットの列
・このテーマの研究によく資金を出しているのは? →資金提供者の列
レビュー・マトリクスでは文献を年代順に並べてある。
これにより、あるテーマ・分野の研究について、時系列に沿った移り変わりが浮かび上がらせる。
・このテーマの研究で初期に用いられてきた研究デザインは?(ケーススタディ?)
・このテーマの研究にRCT(Randomized Controlled Trial ランダム化比較試験)が用いられだしたのはいつ頃からか?
→いずれも「研究デザイン」の列を時系列順に(つまり上から下へと)読むことで
さらにそこにある(実施された)共通点ばかりでなく、そこにない共通点=未だこのテーマの研究でなされていないもの、手薄な部分なども、レビュー・マトリクスから浮かび上がる。
発見された研究の空白地帯や手薄部分は、自分の研究の焦点を合わせるべきところかもしれない。
・このテーマの既存研究で対象者はほとんど成人ばかり→10代を対象としたものはまだ少ない
・このテーマの既存研究で、人種を独立変数にしたものは少ない
・このテーマの既存研究でA法、B法との対照したものはあるがC法についてはまだない

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レビュー・マトリクスをつくる手順

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(1)文献を集めて年代順に並べる
文献を集めないことには、レビュー・マトリクスは作れない(また作る必要もない)。
『看護研究のための文献レビュー: マトリックス方式』では、文献レビューをつくるのワークフローに沿って、次の4つのフォルダを物理的に、またはコンピュータ上につくることが推奨されている。
(a)ペーパー・トレイル・フォルダー……文献探しの手がかりと記録(ログ)、文献探索のスタートや参考にしたキーソース、検索に用いたキーワードとデータベースごとのヒット数、作業中の振り返りのメモなど……を置く
(b)文書フォルダー……集めた文献(抜き刷りやファイル)を置く
(c)レビュー・マトリクス・フォルダー……つくったレビュー・マトリクスを置く
(d)総括フォルダー……レビュー・マトリクスを元にまとめた文献レビュー(というアウトプット)の下書きから完成品までの各バージョンを置く
文献を集めることはスノーボール的に行わざるを得ない。
見つけた文献を手がかりに、そこに含まれる情報(著者名、参考文献リスト、登場するテクニカル・タームなど)を活用して、さらに文献を探していく。
調査の成果(ここでは集めた文献そのもの)とは別に、調査の過程を残していくことが重要である。
調査過程の記録は、今回の調査の中ではもちろん、調査が一段落した後にも、繰り返し役に立つ。
(2)レビュー・マトリクスに取り出すトピックを決める
およそ文献に書き込まれる要素はすべて、トピックとしてマトリクスに取り込むことができる。
実際的には、自分(が行う文献調査)の目的と集まった文献とに合わせて、レビュー・マトリクスを構成するトピックを決めることが推奨される。
つまり、作り手とその目的次第、そして集まった文献次第でどんなトピックでマトリクスを作るかは様々だということである。
しかし作業の手がかりのために、ほとんどすべての場合に登場するトピックとよく使われるトピックを挙げておこう。
以下の3つはほぼ必須のトピックであり、レビュー・マトリクスの最左の3列を占める。
(a)著者、題名、掲載誌などの書誌情報
(b)発行年など ……年代順にソートするため
(c)文献の(研究)目的……目的として明示されるか、仮説やリサーチ・クエスチョンとして示される
次のものは研究論文を対象としたレビュー・マトリクスに頻出のものである。
(d)独立変数と従属変数
「喫煙が肺がんに与える影響」についての研究ならば〈喫煙の量(頻度)〉が独立変数、〈肺がんの発生率〉が従属変数となる
(e)研究デザイン
(f)対象(数、単位、属性)
(g)データセット、データソース
(h)データの収集方法と収集時
(i)用いられた指標や尺度
(j)統計分析の手法と前提条件
(k)当研究の著者によって書かれた意義・長所
(l)当研究の著者によって書かれた短所
(m)引用文献
(n)資金提供者
・
・
(z)上記項目についてのマトリクス作成者の判断やコメント
(3)文献から情報を摘出してレビュー・マトリクスを埋めていく
上記で決めたトピックについて、文献を読みながら情報を摘出してレビュー・マトリクスを埋めていく。
抽出する項目とまとめる様式がレビュー・マトリクスとして定められているので、この作業はチームで複数人によって行うこともできる。
この場合、一人がひとつの文献についてすべてのトピックを埋めるやり方と、特定のトピックについて一人がすべての文献を担当するやり方がある。
レビュー・マトリクスを越えて
マトリクスを作りながら気付いたことはメモして置く。完成後、見返して気付いたこと分かったことは言語化する。そして、まとめて一つの文章としてアウトプットする。
つまりレビュー・マトリクスを見直し文献レビューとして文章化することが望ましい(先に示したワークフロー・フォルダーの構成もそうなっていた)。
理由の一つは、そうすることが必要になるからである。
レビュー・マトリクスは何度も再利用可能な知的生産物だが、フォーマルな知識の伝達手段ではない。
例えばある分野やテーマについてレポートを提出しなければならないとき、文章化したものが要求される(こうしたタスクにもレビュー・マトリクスは直接役立つ)。
研究費を申し込む時にも、既存研究を整理し要約した文章を添付することが求められる。
自身の研究を取り組む場合、論文として発表する場合はいうまでもない。
もう一つの理由は、文章化する作業を通じて、より深い洞察を得ることができるからである。
文章化するためには、情報を選択的に抜取り、それらを整合的に結び合わせ、論理的に関係付けることが必要になる。そのためには、レビュー・マトリクスが示している様々なものを再認し、組合せ、突き合わせることになるだろう。こうした過程を通じて、自身の認識は深化し、ただ眺めていただけでは得られなかったような発見をレビュー・マトリクスから得ることができる(少なくともその可能性は高まる)。
またレビュー・マトリクスは、見る者によって、また切り口によって示す姿を変える、多様な可能性を抱えた二次的資料である。一通りの見直しでは、その可能性のすべてを開示することはできない。このことは時間をおいてレビュー・マトリクスを見直した時や、自分以外の者がどのように読み解くかを知ったときに痛感するだろう。
それ故、現時点で自分がレビュー・マトリクスから受け取ることができるものを、スナップショットの形で残すことに意味がある。
現時点では、レビュー・マトリクスから何を受け取ったかを記録することで、自分の認識の変化を反省的に確認することができる。
ひとつのレビュー・マトリクスから何度も異なる発見を汲み上げること、そして同じ文献群のセットから別のレビュー・マトリクスを作り上げることは、多数の文献が織り成す知のフロントを、様々な角度で切り出し取り回す足場となる。
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