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2013.02.24
どんなによい本を読んでも現実は変わらないという人へ。2年越しの『草子ブックガイド』の感想
例によって風邪っぽい。先日出た『草子ブックガイド2巻』読了。
ずっと「宿題」になっている第1巻の感想文を書いてみる。
第1話(1冊め)の途中までしかいかなかったが、今はこれが精一杯。
草子は、本を読むのが好きな、中学生の女の子です。
草子のお父さんは全く売れない絵描きで、かといって余り他の仕事もせず、絵も描かず、お酒ばかり飲んでいます。
草子のお母さんは銅版画家で、草子が小さい時に、お父さんと離婚して、今は別の人と結婚して小さな娘がいます。
草子は、青永遠屋(おとわや)という小さな古本屋さんで、ここ半年の間、だまって本を持って帰ることを繰り返しています。
万引きです。
草子は、そうして持って帰った本を読み、読み終えた本をだまって青永遠屋さんの棚へ戻しに来て、また別の本を持って帰るのです。
青永遠屋の老店主さんも、若い見習いさんも、そのことに気づいています。
けれども何故だか、草子をとがめることをしません(見習いさんはプンプン怒っていますが)。
草子が持って帰るのは、古い本です。
最近出版された本ではなくて、古本屋通いをする人なら「黒っぽい」と呼ぶような本です。刊行後、長い年月を経た絶版本です。
老店主さんは、そんな草子の選書を、どこか楽しんでいる風です。
それからもうひとつ、老店主さんが楽しみにしているものがありました。
それは、草子が返しに来た本にこっそりと挟み込んでいる、感想文です。
草子の本好きは、いつも本を読んでくれたお母さんの影響と、お母さんが草子にくれた本を繰り返し読んだことで培われました。
ところがお父さんは、草子が本が好きなことも知りません。
そしてある日、お母さんからもらった本棚の本を全部売り払ってしまいます。
草子が嫌いで、困らせてやろう、悲しませてやろうと思って売ったのではありません。
お父さんは本を売ったお金で地鶏を買って、お鍋をつくって草子の帰りを待っていたのです。
けれども本棚の本がなくなっているのを見て、草子は半狂乱になります。
そして自分にとって、本棚にあった本がどういうものなのか、本を読むことがどういうことなのか、何もわかってないお父さんを悲しく思って、自分の部屋に閉じこもります。
次の日、お父さんがバイトに出かけた後、草子は古本の買取票を見つけます。
お父さんが本を売り払ったのは、草子が何度も本を持って帰ってきた、あの青永遠屋さんでした。
草子は、ありったけのお金を持って、青永遠屋さんに走ります。
息を切らせて飛び込んで来た草子が、父が本を売りに来なかったかと尋ねるのを見て、青永遠屋の見習いさんは激高します。
お父さんが売り払った本の中には、草子が持って帰ったままの青永遠屋の本もあったからです。
お父さんがもしも別の古本屋さんに売ってしまっていたら、その本はもう戻って来なかったかもしれないからです。
古本屋の棚に並ぶ本は、身銭を切って買ってきた本、一冊一冊は古本屋さんの血の一滴なんだと、見習いさんは怒ります。
老店主さんはしかし、見習いさんを押しとどめて、草子に尋ねます。
「おじょうちゃんは本が……ここが好きかね?」
草子の答えは、この世にとどまることのできる最後の縁(よすが)について話すような、好きというよりもっと切実で、もっと強いものでした。
だからこそ、老店主さんは訊ねます。私の大事な本に何をしたか分かっているのかい? そして、
「本好きは、世界で自分だけと思ったかい?」
草子の罪を咎めながら、同時に扉が開かれます。
本の中にしか居場所を見つけることができなかった女の子の物語は、ここでもうひとつのスタートを切ります。
本を読んでどう感じたかを記し、返された本に挟み込まれていた草子の文章を、老店主は「ブックガイド」と呼び、楽しみにしていたと告げるのです。
そうして老店主は、今回の「ブックガイド」を読んでいきます。
読まれた本は、
・富山房家庭文庫 世界児童文学全集
デフォー作、平田禿木 訳、K.OKAMOTO(岡本帰一)画
新訳ロビンソン漂流記(大正5年)
草子のブックガイドがはじまります。
(関連記事)
『草子ブックガイド』というマンガのこと 読書猿Classic: between / beyond readers
ずっと「宿題」になっている第1巻の感想文を書いてみる。
第1話(1冊め)の途中までしかいかなかったが、今はこれが精一杯。
草子ブックガイド(1) (モーニングKC) 玉川 重機 講談社 Amazonで詳しく見る |
草子ブックガイド(2) (モーニング KC) 玉川 重機 講談社 Amazonで詳しく見る |
草子は、本を読むのが好きな、中学生の女の子です。
草子のお父さんは全く売れない絵描きで、かといって余り他の仕事もせず、絵も描かず、お酒ばかり飲んでいます。
草子のお母さんは銅版画家で、草子が小さい時に、お父さんと離婚して、今は別の人と結婚して小さな娘がいます。
草子は、青永遠屋(おとわや)という小さな古本屋さんで、ここ半年の間、だまって本を持って帰ることを繰り返しています。
万引きです。
草子は、そうして持って帰った本を読み、読み終えた本をだまって青永遠屋さんの棚へ戻しに来て、また別の本を持って帰るのです。
青永遠屋の老店主さんも、若い見習いさんも、そのことに気づいています。
けれども何故だか、草子をとがめることをしません(見習いさんはプンプン怒っていますが)。
草子が持って帰るのは、古い本です。
最近出版された本ではなくて、古本屋通いをする人なら「黒っぽい」と呼ぶような本です。刊行後、長い年月を経た絶版本です。
老店主さんは、そんな草子の選書を、どこか楽しんでいる風です。
それからもうひとつ、老店主さんが楽しみにしているものがありました。
それは、草子が返しに来た本にこっそりと挟み込んでいる、感想文です。
草子の本好きは、いつも本を読んでくれたお母さんの影響と、お母さんが草子にくれた本を繰り返し読んだことで培われました。
ところがお父さんは、草子が本が好きなことも知りません。
そしてある日、お母さんからもらった本棚の本を全部売り払ってしまいます。
草子が嫌いで、困らせてやろう、悲しませてやろうと思って売ったのではありません。
お父さんは本を売ったお金で地鶏を買って、お鍋をつくって草子の帰りを待っていたのです。
けれども本棚の本がなくなっているのを見て、草子は半狂乱になります。
そして自分にとって、本棚にあった本がどういうものなのか、本を読むことがどういうことなのか、何もわかってないお父さんを悲しく思って、自分の部屋に閉じこもります。
次の日、お父さんがバイトに出かけた後、草子は古本の買取票を見つけます。
お父さんが本を売り払ったのは、草子が何度も本を持って帰ってきた、あの青永遠屋さんでした。
草子は、ありったけのお金を持って、青永遠屋さんに走ります。
息を切らせて飛び込んで来た草子が、父が本を売りに来なかったかと尋ねるのを見て、青永遠屋の見習いさんは激高します。
お父さんが売り払った本の中には、草子が持って帰ったままの青永遠屋の本もあったからです。
お父さんがもしも別の古本屋さんに売ってしまっていたら、その本はもう戻って来なかったかもしれないからです。
古本屋の棚に並ぶ本は、身銭を切って買ってきた本、一冊一冊は古本屋さんの血の一滴なんだと、見習いさんは怒ります。
老店主さんはしかし、見習いさんを押しとどめて、草子に尋ねます。
「おじょうちゃんは本が……ここが好きかね?」
草子の答えは、この世にとどまることのできる最後の縁(よすが)について話すような、好きというよりもっと切実で、もっと強いものでした。
だからこそ、老店主さんは訊ねます。私の大事な本に何をしたか分かっているのかい? そして、
「本好きは、世界で自分だけと思ったかい?」
草子の罪を咎めながら、同時に扉が開かれます。
本の中にしか居場所を見つけることができなかった女の子の物語は、ここでもうひとつのスタートを切ります。
本を読んでどう感じたかを記し、返された本に挟み込まれていた草子の文章を、老店主は「ブックガイド」と呼び、楽しみにしていたと告げるのです。
そうして老店主は、今回の「ブックガイド」を読んでいきます。
読まれた本は、
・富山房家庭文庫 世界児童文学全集
デフォー作、平田禿木 訳、K.OKAMOTO(岡本帰一)画
新訳ロビンソン漂流記(大正5年)
草子のブックガイドがはじまります。
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『草子ブックガイド』というマンガのこと 読書猿Classic: between / beyond readers
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