コロナワクチンのつらい副反応は「良いこと」、研究続々

「効いている証拠です」とノーベル賞研究者、抗体レベルの高さに関連

2023.10.16
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2023年10月2日、オランダで新型コロナウイルスワクチンの接種を受ける患者。頭痛や悪寒などの強い副反応は不快だが、ワクチンがより強い免疫反応を引き出して将来の感染に備えているサインなのかもしれない。(PHOTOGRAPH BY KOEN VAN WEEL, ANP/REDUX)
2023年10月2日、オランダで新型コロナウイルスワクチンの接種を受ける患者。頭痛や悪寒などの強い副反応は不快だが、ワクチンがより強い免疫反応を引き出して将来の感染に備えているサインなのかもしれない。(PHOTOGRAPH BY KOEN VAN WEEL, ANP/REDUX)
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 新型コロナウイルスワクチンの副反応におびえる人々に朗報だ。最新の研究によれば、強い副反応はワクチン接種後にウイルスと戦う抗体がより多く作られていることを示していて、良いことかもしれないという。論文は査読前の論文を投稿するサーバー「medRxiv」で2023年10月6日に公開された。

「強い症状を報告する人ほど、抗体レベルが高かったのです」と、この研究を率いた米カリフォルニア大学サンフランシスコ校の臨床心理学者アリク・プレーザー氏は言う。

 米ブラウン大学の腫瘍専門医ジェレミー・ワーナー氏は、新型コロナウイルスワクチンの接種を6回受けた。氏が治療するがん患者たちは、免疫が低下しているため新型コロナウイルス感染症にかかりやすく、重症化リスクも高い。そんな患者たちの安全を守るため、ワーナー氏は米食品医薬品局(FDA)が新しいワクチンを推奨するたびに接種を受けている。接種後の副反応は、氏の悩みの種になっている。「毎回、次は絶対に無理と思うほどなのです」

 氏は新型コロナワクチンの接種を受けるたびに、注射した部位の痛みのほか、発熱、頭痛、激しい悪寒、関節の痛みと腫れに襲われる。「最悪だったのは2回目の接種で、2、3日続きました」とワーナー氏。「最近の注射では1日か2日ですみました」

 一部の人々は、副反応を理由にワクチン接種をためらっている。2023年10月6日付けで医学誌「Vaccine」に発表された研究によれば、新型コロナウイルスの起源株(流行が発生した当初の株)とオミクロン株に対応した2価ワクチンによるブースター(追加)接種を受けなかった成人の約3人に1人が、ワクチンの副反応を理由に挙げていたという。

 しかし、「副反応はワクチンが効いている証拠です」と、米ペンシルベニア大学の免疫学者であるドリュー・ワイスマン氏は言う。氏とカタリン・カリコ氏によるmRNAに関する研究は、モデルナ社やファイザー社のmRNAワクチンの開発につながり、両氏は2023年のノーベル生理学・医学賞を受賞している。(参考記事:「コロナワクチンは「年1回のインフルワクチンのようなものに」」

 新型コロナワクチンは極めて安全で効果的だ。例えば、米疾病対策センター(CDC)の「V-safe」プログラムを通じた接種後の健康調査によると、2022年8月31日から同10月23日までに2価ワクチンを接種した約21万人のV-safe登録者のうち、接種後の副反応で医療的な措置が必要だったと回答した人は1%未満だったと報告されている。

 それでも、新型コロナワクチンは帯状疱疹ワクチンに匹敵する、最も副反応のつらいワクチンの一つだ。理由はまだ明らかになっていない。「mRNAワクチンの副反応については、未解明の点がたくさんあるのです」と、米ワシントン大学医学部のワクチン学者であるデボラ・フラー氏は言う。氏は現在、より苦痛の少ない、次世代のmRNAワクチンの開発に挑戦している。(参考記事:「万能コロナワクチンは完成間近か、成果続々、治験に進んだものも」

次ページ:副反応の強さは高い抗体レベルの獲得を示唆

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