アフリカ大陸の東に浮かぶマダガスカル島北部の熱帯雨林で、新種のカメレオンが見つかった。頭部と胴を合わせた長さはオスが13.5ミリ、メスが19.2ミリで、ヒマワリの種ほどしかない。指先に乗せることもでき、世界最小の爬虫類である可能性もある。
「一目見ただけで、重要な発見だとわかりました」と言うのは、1月28日付けで学術誌「Scientific Reports」に掲載された論文の共著者であるマダガスカルの爬虫両生類学者、アンドララオ・ラコトアリソン氏だ。
この新種はBrookesia nanaと命名された。あまりに小さいので、落ち葉の中に潜むダニやトビムシなどをエサにしているのではないかと考えられている。
ここまで小さい爬虫類が見つかったことで、脊椎動物はいったいどこまで小さくなれるのかという疑問も浮上している。また、マダガスカルの生物多様性には驚かされるが、その生態系は脅かされており、Brookesia nanaがまもなく近絶滅種(critically endangered)に指定されると科学者らはみている。(参考記事:「絶滅とは何か―実はいろいろある「絶滅」」)
数ミリの差が大きな差
他のカメレオンと同じく、この超小型カメレオンも舌をのばして獲物を捕まえる。熱帯雨林にうまく適応しており、昼間は林床でエサを探し、夜は安全な草むらに隠れるという生活を送る。
論文の共著者の一人で、ドイツにあるポツダム大学の進化生物学者マーク・シェルツ氏によると、夜間に大型の捕食者がやってきた場合、このカメレオンは草の動きで危険を察知して下草の中に身を潜めるという。
今のところ、Brookesia nanaはまだオス1体、メス1体の合計2体しか見つかっていない。どちらも、2012年にソラタ山塊と呼ばれる雨が多く涼しい山地で捕獲されたものだ。
この超小型カメレオンは、世界最小の爬虫類である可能性もある。ちなみにもう一つの候補は、ミクロヒメカメレオン(Brookesia micra)だ。2012年には、マッチ棒の先端に乗っている写真が公開されている。(参考記事:「世界最小の爬虫類、新種ミニカメレオン」)
「数ミリの差を比較してもあまり意味がないのではないかと思うかもしれませんが、その数ミリが体長の数パーセントを占めるなら、それは大きな差なのです」とシェルツ氏は話す。「ほとんどの科学的発見は、こうした小さな差が積み重なって起こるのです」
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