台湾で犬と猫の肉の消費が禁止された。犬や猫の肉を買ったり食べたりした者には、最大8200ドル(約90万円)の罰金が科される。消費に罰則が科されるのはアジアでは初めて。
台湾では1998年に犬や猫を殺してその肉を販売する行為は違法となっていたものの、闇市場での取引は続いていた。そのため今回の法改正では罰則も強化され、故意に犬や猫に危害を加えた場合、最大6万5000ドル(約700万円)の罰金と2年以下の懲役が科されることになった。以前は1年以下の懲役だったが、それが引き上げられたかたちになる。(参考記事:「刑務所で動物学の講義が人気のワケ」)
犬肉祭と中国
近年、東アジア諸国での犬肉の消費は、欧米の動物愛護団体などから批判を浴びている。そのきっかけになったのが、中国南部の玉林で毎年6月に開催される「ライチ犬肉祭」で、10日間にわたる祭りの期間中に1万頭以上の犬が殺されている。この祭りの廃止を求める署名は数百万人分にのぼる。(参考記事:「『犬肉祭り』が中国で開催、食用に1万匹とも」)
犬肉食の文化は東アジアで何世紀も続いており、中国、韓国、フィリピンでは合法だ。今回の台湾の決定は、こうした東アジアの文化にも影響を与えそうだ。
動物保護団体ヒューメイン・ソサイエティ・インターナショナルで動物保護部門の責任者を務めるアダム・パラスカンドラ氏は、今回の台湾の決断について、たとえ古くからの文化であっても「時代遅れの食習慣」は終わらせられることを示している、と主張する。(参考記事:「イリノイ州、“ライオン肉禁止”の法案」)
犬肉業界がこれほどの注目を集めているのも、犬肉食が文化に深く根ざしているからこそだろう。ヒューメイン・ソサイエティ・インターナショナルによれば、アジアでは毎年3000万頭の犬が殺されているという。しかし、実はほとんどの中国人は犬肉を食べない。動物保護団体アニマルズ・アジアが2015年に行った調査によると、北京や上海などの中国の主要都市では、過去2年間に犬肉を食べたことがある人は25%以下だった。
韓国ではオリンピックに向けて
同じように、韓国でも犬肉食を離れる傾向が見られ、特に若い世代ではそれが顕著だ。しかし、米国ワシントンD.C.を拠点とする非営利動物保護団体アニマル・ウェルフェア・インスティテュートによると、韓国では毎年200万頭の犬が殺されている。(参考記事:「開発が進む人造肉、地産地消で支持は得られるか」)
2018年の平昌冬季オリンピックが近づく中、韓国では犬肉業界の取り締まりを求める圧力が高まっている。2016年12月、政府はソウルのモラン市場での食肉処理の段階的廃止を呼びかけた。モラン市場は、年間8万頭の犬が売られる韓国最大の犬肉市場だ。いまのところ業者は抵抗しており、市場の今後についての活動家や政府との交渉は膠着状態にある。なお、市場の営業は現在も続いている。