先日来、2頭の「雄ライオン」が草原で交尾をする写真がネットをにぎわせている。ただしこの写真は、あるいはより興味深い事象をとらえたものなのかもしれない。
実は、下になっているライオンは雄ではなく、「たてがみのある雌」である可能性が高いという。そうした個体は、これらの写真が撮影されたボツワナ北部においては、めずらしくないらしいのだ。(参考記事:「風の中のライオン、南アフリカ共和国(1995年)」)
たとえば2頭のライオンが互いに頭部をこすり合わせている写真があるが、米バージニア工科大学教授で、アフリカのライオンに詳しいキャスリーン・アレクサンダー氏によると、これは雄が雌に対して優位性を示すための一般的な行動だという。
雄同士の交尾について、同氏はこう述べている。「私は(ボツワナで)20年間研究をしてきましたが、雄同士によるああした行為は見たことがありません。片方はたてがみのある雌と考えるのが妥当でしょう」(参考記事:「ライオン 生と死の平原」)
大型ネコ科動物の保護団体「パンセラ」代表のルーク・ハンター氏によると、ボツワナで見られるたてがみのある雌は、何らか遺伝的な要因でそうなったのだろうと言う。
以前に行われたインタビューの中でハンター氏は、たてがみのある雌には、受胎時あるいは子宮にいた時期に、発育上の障害があったのではないかと述べている。「仮にそれが受胎時だった場合、おそらくは精子の遺伝子に異常があったせいで、雄の特徴を持つ雌が生まれたのでしょう」
「あるいは、こちらの方が可能性が高いのですが、親のお腹の中にいる間に問題が生じたのかもしれません。母親の妊娠中に、胎児がテストステロンなどの雄性ホルモンを大量に浴びたのです」
ライオンの母親が、妊娠中に異常に多くの雄性ホルモンを持っている場合、雌の子供が「雄性化」することがある。こうしたケースは人間においてはときおり見られるが、野生動物の例はほとんど知られていない。
アレクサンダー氏によると、他のアフリカの動物の中にも、生き残り戦略として、雌が雄性化するよう進化したものがいるという。
たとえばブチハイエナの雌は、クリトリスが長く伸びて形成された「擬ペニス」を持っている。これは外見はペニスそっくりだが、大きさは雄のそれを上回る。雌はこの擬ペニスを勃起させることで自らの優位を示し、雌上位の社会を治めるのに役立てている。(参考記事:「ハイエナの雌に「ペニス」、雌雄どう判別?」)