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- ナショナルジオグラフィック日本版
- 2017年9月号
- 脳科学で克服する依存症
脳科学で克服する依存症
依存症は道徳心の欠如が原因ではなく、病気である。脳を研究する科学者たちはこの見地に立って、薬物やアルコールにおぼれる人々を救う治療法の研究に取り組んでいる。
「薬物依存症を電磁波で治療するお医者さんがいるんだって」
母親にそんな話を聞かされても、パトリック・ペロッティは鼻で笑うだけだった。イタリアに住む38歳のペロッティは、17歳のときにコカインに手を染めた。しだいに常用するようになり、ついにはコカイン欲しさに生活のすべてを犠牲にするまでになった。恋をして息子が生まれ、レストランを開店したが、依存症のせいで家庭生活も商売も破綻した。
「どんなに頑張ってもやめられなかったんです」
国連薬物犯罪事務所の報告によれば、薬物の過剰摂取や、薬物の使用を通じて感染したエイズなどの疾患で死亡する人は世界で毎年20万人を超える。喫煙と飲酒による死者はそれよりはるかに多い。アルコール依存に陥っているのは、世界の成人のほぼ20人に1人。ギャンブルをやめられないといった依存も精神疾患に分類されつつある。
近年の研究で、依存症者の脳内では欲求、習慣の形成、快楽、学習、感情の制御、認知に関わる神経ネットワークとその働きが妨げられていることがわかってきた。
※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2017年9月号(amazon)でどうぞ。
いま米国では、生まれたばかりの赤ちゃんがヘロインや鎮痛薬の離脱症状を示すという、ショッキングな事例が増えています。母親のおなかの中でこうした薬物にさらされるためです。特集の本編のあとで「生まれつきの薬物依存」と題してこの問題を解説していますので、併せてお読みください。(T.F.)