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【  2016年01月  】 

ヤドリギの下 ~忍  -1- 

番外編 十二夜

2016.01.31 (Sun)

 忍は櫓館の庭をゆっくりと歩いていた。 クリスマスの日の午後、天気は良く青い空が見える。この館でホワイト・クリスマスを迎えたことは、覚えている限りは一度もない。温暖な地方で、雪が降ること自体少ないのだ。  お姉ちゃんや従姉妹たちはキッチンで働いているけれど、忍はゾフィア伯母さんから庭仕事をするように頼まれている。 普段は観光客に開放されているこの家の庭は、手入れも専門の庭師さんに頼んでいるのだが。...

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月明かりの道 ~千草  -22- (最終回)

番外編 十二夜

2016.01.30 (Sat)

「この島の風と土と海が。君の半分を作っているんですね」 克己さんが私の髪をなでる。いや、それ四分の一くらい。後の四分の一は、世界中のいろんなところから雑多な血が流れ込んでいる。「えーと。あの、お父さんは」 私は何だか恥ずかしくて、話をそらそうとする。「僕の父ですか? 父は、勘当したんだから僕とは顔を合わせないって公言してるからなあ。でも、結婚することは母が耳に入れているはずですから。当日は、父は外...

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月明かりの道 ~千草  -21-

番外編 十二夜

2016.01.29 (Fri)

 麻雀大会は、結局、十津見がそのまま勝ち切ったらしい。ブロムフォード三兄弟は彼をもう一勝負に誘おうとしたが。 陰険教師は、「残念ですが、時差にやられたようで。申し訳ないが、しばらく休ませていただきたい」 とスルリとかわし。更に、通りかかった忍に、「良かったら庭を案内してもらえないか」 と声をかけ、さっさと姿を消してしまった。 不機嫌な三兄弟は、同じく通りかかったヴァルを引き入れ次の勝負に。午後いっ...

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月明かりの道 ~千草  -20- 

番外編 十二夜

2016.01.28 (Thu)

 フレッドはちょっと不満そうだったが、そこは引いた。「じゃあさ。今夜、ダンスルームでダンスしようよ。若者だけでさ」「ダンスルーム?」 私はヘクセンハウスから顔を上げる。確かにこの家には舞踏室なるものがある、が。「あそこは、観光客用に開放してるじゃない」「夜中なんだから客なんかいないし、僕の家なんだから好きに使っていいだろう? どうせ、週末までクリスマス休暇で閉館してるし」 まあ、確かに。ここはフレ...

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月明かりの道 ~千草  -19- 

番外編 十二夜

2016.01.27 (Wed)

 ワンダは少しして戻ってきた。「伯母さん、ビル伯父さんがコーヒーを入れてくれって」 ゾフィア伯母は陰気にコーヒー豆の袋をワンダに放った。 コーヒーメーカーを動かしながら、ワンダは言う。「キョウスケがひとり勝ち。うちのダディも、伯父さんたちもみんな渋い顔だよ」「嘘」 思わず聞き返してしまう。 とんでもなく複雑な櫓館ルールは、うちの母曰く『日本ルールに慣れている人ほど苦戦する』代物なのだ。役はめったや...

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月明かりの道 ~千草  -18-  

番外編 十二夜

2016.01.26 (Tue)

 私は女性については人間観察をする方だと思うが、男なんかには興味ないし、むしろ視界に入れたくない。ので、恋愛関係についての洞察は元々苦手である。 しかし、この現状を見て。ミュリエル並とまではいかなくても、少しはそういう方面で周囲に目を配った方がいいのかもしれない、と思った。あと、妹にもそういうことを教えておいた方がいいのかも。 で、黒っぽい紅茶と共にクリスマス・プディングを胃に入れると、いったんク...

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月明かりの道 ~千草  -17- 

番外編 十二夜

2016.01.25 (Mon)

 この辺りになると、大人は酒がまわって来て饒舌になり、子供の頃の思い出話やら、思いついた世間話やらが延々と続く。私たちはあまり面白くないから、ひたすら食べる。ワンダの水餃子、愛玲伯母のに比べるとイマイチだなー。何だろう、皮が軟らかすぎるのか? ヒマなので、ななめ向こうの席にいるヴァルの様子を観察してみる。いつも通り、エリートぶってスカした感じだが。 ミュリエルに言われたことを考慮に入れてみると。な...

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月明かりの道 ~千草  -16- 

番外編 十二夜

2016.01.24 (Sun)

 ひととおり収まった辺りで、メインディッシュに。温め直された七面鳥が登場し、ビル伯父がそれを切り分けて配る。 そして、ズッペだの、ローストした野菜だの、ウインナーだの、筑前煮だの、水餃子のお代わりだのを私たち、女と若い者が次から次へとテーブルへ運ぶ。ああ、ハウスメイドがフツウに家にいたという大英帝国華やかなりし時代に生まれたかった。 その間、いい年のオッサン三人(父兄弟)はテーブルのクラッカーに手...

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月明かりの道 ~千草  -15- 

番外編 十二夜

2016.01.23 (Sat)

「まあ、フレッドはね。ある意味、シスター・コンプレックスみたいなものだから。あなたのことも、半分妹みたいな可愛がり方だから、いいんだけど。キスするにしたって昨日カツミにやりこめられた意趣返しくらいのつもりだろうから、あんまり気にしなくていいと思うんだけど」 ますます何ですかそれは! そんな理由で従兄弟にキスされたくないんだけど!「でもね、シャノン。この話、パットにはしちゃダメよ?」 釘を刺された。...

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月明かりの道 ~千草  -14-

番外編 十二夜

2016.01.22 (Fri)

 さて、翌朝。クリスマス当日である。 昨晩のセンチメンタルな気分を吹き飛ばすように。そして、私たちが昨日十九時間かけて日本から来たばかりだということなどには何の考慮もされずに。朝から忙しいよ! クリスマス・ディナー(昼食)に向けて、朝からこき使われることこき使われること。 ゾフィア伯母はあまり愛想のないタイプなので、知らないと『私が憎くてやってるの!?』みたいな気持ちになるくらいの感じで使い倒され...

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椿

Author:椿
好きな小説を書き散らかしている女です。現在、サリエリ音楽にずっぽりハマっています。よろしかったらお付き合いくださいませ。また、拙著「最強船長と最高に愉快な仲間たち」が講談社レジェンドノベルス様より発売しております。そちらもよろしくお願いいたします。

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