カテゴリ:鉄道:建設・工事 > 上野東京ライン・品川駅再開発
品川駅・田町車両センター再開発(2013年1月取材)
公開日:2013年02月09日10:29
品川駅では東北縦貫線建設に関連して折り返し設備の新設や駅北側にある車両基地の再整備が進められています。1月上旬・下旬の2回にわたりこの工事の模様を調査してまいりましたので、現在の状況をお伝えします。
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品川駅・田町車両センター再開発(2012年9月15・23日取材)(2012年10月6日作成)
■品川駅・田町車両センターの縮小・再開発の概要
現在、東海道線東京駅と宇都宮・高崎・常磐線上野駅の間では2014年度の開業を目指して「東北縦貫線」の建設が進められています。この新線の建設の主たる目的は混雑率が全国で最高レベルとなっている山手線・京浜東北線の混雑緩和ですが、副次的な効果として車両運用の効率化も期待されています。
東海道線と宇都宮・高崎線は現在は品川駅と上野駅の近傍に車両基地(田町車両センター・尾久車両センター)があります。2001(平成13)年に湘南新宿ラインの運行が開始され、両路線間を恒常的に車両が行き来するようになりました。これに合わせて、車両形式もE231系1種類にほぼ統一されていますが、車両基地がこの系統からは外れた位置にあるため、引き続き別々の車両基地を置くことを余儀なくされています。東北縦貫線が開業するとこの両車両基地が直接結ばれるため、品川駅側の車両基地を大幅に縮小し、上野駅側に機能を統合する計画となっています。現在宇都宮・高崎線系統に少数残る211系のE233系への置き換えが進められていますが、これも今後の車両基地統合や一体運用を考慮したものと言えます。(なお、現在導入中のE233系はE231系と併結して営業運転が可能となっており、置き換え完了後は名実ともに全車両の完全な共通運用が可能となる。昨年11月には実際に併結状態で試運転も実施された。)
再開発される車両基地のエリアと新駅設置予定位置
航空写真:(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データ(昭和63年)より抜粋
車両基地統合により品川駅付近に生まれる用地は10~15ヘクタールに及ぶとみられています。品川駅は東海道新幹線の全列車が停車し、京急線により羽田空港まで15分で結ばれているほか、2027年にはリニア中央新幹線が乗り入れる予定となっており、首都圏のみならずその高い利便性が注目されています。このため、東京都が主導となり「東京サウスゲート計画」の名の下再開発計画が進められています。この計画では車両基地跡地のみならず品川地区全体を開発対象としており、東側に豊富に存在する新芝運河などの水辺を生かした街づくりやヒートアイランド現象の抑制を目的とした超高層ビルの建築制限(海からの風の通り道を作る)などを設けることとされています。また、2011(平成23)年12月にはこの再開発地区が新たに国の国際戦略総合特別区域「アジアヘッドクォーター特区」の指定を受けました。この制度は外資系企業を対象に税率軽減や入国審査の簡素化などを図るもので、ビジネスのグローバル化による日本経済のさらなる活性化が期待されています。
なお、車両基地跡地の利用に当たってはより多くの土地を対象エリアに含めるため、山手線・京浜東北線の線路を現在よりも東側に移設することが計画されています。これに合わせて、移設される区間の途中に新駅を設けることが検討されています。山手線への新駅設置は1971(昭和46)年の西日暮里駅以来40年ぶりのことで、開業すれば品川駅との間は2分で結ばれ、再開発地区の国際競争力強化に大いに貢献します。新駅を含めた再開発は2014年の東北縦貫線開業後にスタートし、2016(平成28)年頃の完成が予定されています。
■9・10番線の改造が進行中
着工前の品川駅構内の配線図
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品川駅の再開発に向けた準備は2009(平成21)年から開始されました。着工前の田町車両センターは現在は運行されていない客車列車に最適化された構内配線となっており、機関車付け替え用の短い引上げ線があったり、線路の交差箇所は全方向を連絡できる両渡り交差分岐器(DSS)といった特殊分岐器が多用されており、旧態依然とした極めて複雑な構成となっていました。また、東海道線の上下線の間には「臨時ホーム」と称する2面の島式ホームがありました。このホームは新幹線や高速道路が未整備だった昭和30~40年代に帰省ラッシュなどの際の臨時列車を運行するために用意されていたものですが、現在はイベントでごくまれに使用される以外はほとんど遊休化していました。この臨時ホームはその使用目的から、東京方面の本線からは進入できない配線となっており、東北縦貫線の折り返しには使用できないという問題がありました。このため、東京寄りは既存の車両基地の線路の一部を撤去し、臨時ホームを使用して東京方面に折り返しできるよう配線を大幅に変更することになりました。
2009年に始まった工事ではまず駅北側の車両基地のうち、使用されていなかった東側半分が更地化されました。続いて、4線ある臨時ホームのうち車両基地にしか出入りできず使用頻度が低かった10番線が使用停止となり、東京方面から進入できるよう線路が移設されました。その後は東海道線下り本線を11番線から12番線に入れ替える工事が行われ、昨年9月に完成しました。
上:10番線(奥)は再び使用停止となっており11番線(手前)との間に柵が設置された。
下左:11番線ホーム端から建設中の新車両基地を見る。(同じ場所の2012年9月15日の様子)
下右:新車両基地の軌道敷設は概ね完了し、架線の設置が開始されている。
3枚とも2013年1月2日撮影
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12番線の使用再開と同時に、それまで湘南ライナー専用ホームとして使用されていた臨時ホーム10番線と対面の9番線は使用停止となり、東北縦貫線の受け入れに向けたホームの改造が開始されました。駅構内に掲出されている掲示物によると9・10番線ホームの改造は2013年一杯かかる模様で、駅構内の案内板からは9・10番線の数字が抹消されています。
左上:古いホームを取り壊し中の9番線東京寄り。(同じ場所の2012年9月15日の様子)
右上:完成済みの屋根の形状から9番線は10番線に沿ってカーブすることがわかる。
左下:北通路に上がる古い階段も取り壊し中。
右下:同じ階段を橋上駅舎内から見たところ。左が撤去中の階段。4枚とも2013年1月2日撮影
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臨時ホームの東京寄りは一連の工事着工前は4線とも東海道線下り本線には接続しておらず、東北縦貫線から直通してきた列車の折り返しは不可能となっていました。2011年に東京寄りが移設された10番線は東海道線下り本線と接続され、東京方面から進入が可能となりました。東海道線下り本線から10番線に進入するルート上には臨時ホームのほかの線路(7~9番線)に向かう分岐(→参考写真)も見られたことから、昨年10月に作成した記事でこれらの線路についても順次折り返し可能となるよう配線が変更されるのではないかと予想しました。
今回その予想通り9番線の東京寄りのホームの取り壊しが進行しており、一部は更地化済みとなっています。また、新たに入手した鉄道工事関係の専門雑誌「鉄道と電気技術」の2012年5月号の記事によると、最終的にはこの部分は完全に撤去され、10番線に沿う形で新しい9番線の線路が敷設されることになっています。さらに、新9番線の東京寄りはそのまま延長し、現在建設中の車両基地と2011年に完成済みの東海道線下り本線~10番線の途中にある分岐双方に接続され、東京方面への折り返しが可能になります。なお、北改札口側の橋上駅舎から9・10番線に降りる階段は2011年の10番線移設時にわずかに位置が変更されていましたが、今回9番線の撤去に合わせて変更前の古い階段の撤去が開始されています。階段の撤去跡は新9番線の線路の敷設スペースになるものと思われます。
左上:9・10番線横浜寄りで新設中の階段。(同じ場所の2012年3月3日の様子)
右上:新設中の階段の橋上駅舎内側。暫定的に荷物用エレベータが設置されている。
左下:9・10番線の横浜寄りはホームを改築中。
右下:橋上駅舎から改築中の9・10番線ホーム横浜寄りを見る。
左2枚は2013年1月27日撮影、右2枚は2013年1月2日撮影
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一方、横浜寄りは10番線の移設時に床面や屋根の一部が仮設化されていましたが、今回この仮設部分は全て撤去され、新しいホームを建設する工事が進められています。ホームの改築に合わせて9・10番線の線路も撤去されており、今後線形が変更されるものと思われます。また、昨年9月に使用が開始された11・12番線の横浜寄りに通じる通路の途中から9・10番線ホームに降りる新しい階段の建設も開始されており、東北縦貫線開業後は9・10番線にも定期的に列車が入線するようになることが予想されます。
品川駅横浜寄りの横須賀線~東海道線連絡線の新設・撤去箇所
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横浜寄りのホームの先は12番線と13番線(横須賀線上り本線)の接続部分を除きこれまで大きな変化はありませんでした。しかし、今回横須賀線の上下線間で2か所新しいポイントの設置が開始されているのを確認しました。1ヵ所目は横須賀線13・14番線ホームの横浜寄りの端、2か所目は14・15番線が合流した直後の横須賀線上下線間です。
前者は横須賀線横浜方面から中線(14番線)に入る際使用するものです。横須賀線横浜方面から中線に入る場合、これまでは横須賀線下り本線を経由する必要がありました。(上図黄緑の線)これは以前は15番線が無く、14番線が下り本線だった頃の名残ですが、平面交差となりダイヤ構成の支障となるため、上り本線から直接中線に入線できる渡り線を追加した形となります。これにより東京方面と同様の形となり平面交差無しで中線に出入することが可能となりました。(上図ピンク色の線)
一方、後者はまだ未完成ですが前記した専門雑誌に完成時の詳しい配線図が掲載されています。それによると横須賀線~東海道線の連絡線は移設が済んでいる12番線~横須賀線上り線の1箇所を除き一旦全て撤去したうえで、一般的な片開き分岐器を使用したものに交換する予定となっています。現在この部分は両渡り交差(DSS)や片渡り交差(SSS)などの特殊分岐器が多数設置されていますが、このようなポイントは交差部分の中に分岐機能が内蔵された複雑な構造となっており、安定した性能や通過時の乗り心地を維持することが困難となっています。また、東海道線~横須賀線を行き来する列車は少数の臨時列車以外存在しないことから、実態に合わせて配線を簡素化し省メンテナンス化を図るものと考えられます。(同様の改良は新宿駅でも行われている。)なお、横須賀線ホーム(13~15番線)と東海道線横浜方面を行き来するルートは以前から使用する列車が無く機能が停止されていたことから、ポイント交換後はこのルートを走行するポイントは設置されない予定です。
また上記に加えて、14番線は本線から中線への降格により列車本数が大幅に減少したことから、一連の配線変更の着手に合わせてホーム中央付近にあった場内信号機が撤去されました。これにより14番線はホーム全長が1閉塞に統合されています。
▼関連記事:15番線新設と14番線中線化について
品川駅横須賀線ホーム増設工事(2007年9月20日作成)
品川駅横須賀線ホーム増設工事・その後(2008年2月22日作成)
品川駅15番線(横須賀線新ホーム)使用開始(2008年3月23日作成)
上:東海道線・横須賀線ホームの横浜寄りの端には徐行予告信号機が設置されている。
下左:横須賀線上り本線~中線の間に新設された渡り線①。
下右:横須賀線下り本線に新設中の渡り線②。奥の東海道線につながる連絡線は撤去され、代わりに渡り線③が設置される。3枚とも2013年1月27日撮影
※クリックで拡大(下2枚はクリックすると注釈入りの画像を表示)
現在は2か所ともポイント本体を挿入した直後、または挿入途中・撤去途中であるため45km/hの徐行制限が設けられています。ホーム先端には運転士用の徐行予告信号機(標識)が設置されています。走行進路が多岐にわたることから、標識には徐行区間までの残距離も記入されています。
2013年1月の品川駅構内の配線図
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当初は9番線の折り返し設備新設だけになるかと予想していた品川駅の改良工事ですが、実際はホームを越えて駅の周辺まで及ぶ非常に大規模な工事となっています。前記した専門雑誌では次回(駅構内の掲示物から予想すると恐らく2013年末)予定されている第3回目の大規模切替工事についても触れられています。それによると、第3回切替では現在建設中の新車両基地留置線(26線)の使用を開始すると同時に、現在使用中の旧施設(現行の田町車両センターと札の辻群線)を全て廃止することになっており、品川駅の歴史史上屈指の大規模切替になることは確実です。品川駅の改良工事は着工時から推移を見ていますが、現場の条件に応じて当初の計画から大幅に変更されている箇所も存在しています。、今後も予想し得ない変化が現れる可能性もあるため、注意深く観察してまいりたいと思います。
▼参考
宇都宮・高崎・常磐線の東京駅乗り入れについて(東海道線との相互直通運転) - JR東日本(2002年3月27日発表)
宇都宮・高崎・常磐線の東京駅乗り入れ工事の着手について - JR東日本(PDF)(2008年3月26日発表)
2012 年度設備投資計画について - JR東日本(PDF)(2012年4月12日発表)
品川周辺地域都市・居住環境整備基本計画 - 東京都都市整備局(PDF)
(仮称) 品川駅・田町駅周辺 まちづくりガイドライン(案) - 東京都都市整備局(PDF)
「アジアヘッドクォーター特区」の指定について|東京都
品川駅改良工事(第1回・第2回切換)について - 鉄道と電気技術2012年5月号33~38ページ
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