カテゴリ:鉄道:建設・工事 > 上野東京ライン・品川駅再開発
東北縦貫線工事&品川駅構内の工事(2012年3月3日取材)※追記あり
公開日:2012年03月21日19:52
JR東日本では現在東京~上野間で「東北縦貫線」の建設を進めており、当ブログでは2009年よりこの新線建設と関連する品川駅構内の整理・再開発についてお伝えしています。去る3月3日にこれらの工事について再度取材(現地調査)を行いましたので、その状況をお伝えします。
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■東北縦貫線建設工事
東北縦貫線の位置
東北縦貫線は東海道線の東京駅と宇都宮・高崎・常磐線の上野駅を接続する新線で、2000(平成12)年に発表された運輸政策審議会(現在の交通政策審議会)第18号答申で2015(平成27)年までに整備するべき路線として位置づけられています。この区間を走る山手線・京浜東北線の混雑率は長年に渡り国内では最高水準となる200%を超える状態が続いており、混雑緩和が急務となっています。東北縦貫線が完成すると、東京止まりとなっている東海道線と、上野止まりとなっている宇都宮線・高崎線・常磐線の列車を直通運転することが可能となり、山手線・京浜東北線への乗り換えが不要になるため混雑率は180%以下へ大幅に緩和されることが見込まれています。
東北縦貫線はその構造により「東京~秋葉原間」と「秋葉原~上野間」に大別することができます。「東京~秋葉原間」は東北新幹線の高架橋の上に橋脚・橋桁を継ぎ足して縦貫線用の線路を敷設します。そもそも東京駅と上野駅の間はかつて「回送線」と呼ばれる線路で結ばれており、その土地を譲る形で東北新幹線が建設されたという歴史があることから、今回の縦貫線建設は「40年ぶりの回送線の復活」と言い換えることもできます。神田駅付近の東北新幹線の高架橋はこの回送線の復活を想定し、高架橋の継ぎ足しを考慮した構造で建設されており、縦貫線はその構造を活用して建設されることとなりました。しかし、重層化に関しては沿線で反対運動が展開されたことから、桁の一部を在来線側に寄せるなどの配慮がなされており、耐震性向上のため桁を軽量化するなどの工夫も行われています。一方、「秋葉原~上野間」は前述の回送線の名残で現在も宇都宮・高崎・常磐線の留置線があることから、その一部を営業線用に改修して縦貫線として使用します。
この東北縦貫線は当初2009(平成21)年度の完成が予定されていましたが、前述の神田駅付近での反対運動により着工が遅れた
神田駅東京寄りの定点観測。左が今回取材時(2012年3月3日)、右が2011年3月6日。
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神田駅付近の高架橋建設は営業中の東北新幹線の真上で行うことから、橋脚の部材は全て終電後の深夜に新幹線の線路上を経由して現場に搬入されました。橋脚の継ぎ足しは昨年の夏頃までにほぼ完了しており、現在はその上で自走式の架設機を用いながら橋桁の架設行われています。架設機は2010(平成22)年の春頃に神田駅の東京寄り300m付近(外堀通りとの交差付近)にある作業台から発進し、橋桁を架設しながら秋葉原駅方面へ向けて進んでいます。
左:神田駅の上野寄りまで進んだ架設機。
右:架設機の後方には組み立て途中の橋桁が仮置きされていた。
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昨年11月の取材時、架設機は神田駅の東京寄り付近にいましたが、それから4か月が経過した今回は神田駅の反対端(上野寄り)付近まで進んでいました。架設機本体の高さは、継ぎ足される縦貫線の高架橋と同じくらいの高さがあり、近くで見るとかなりの迫力があります。その様態は「都市交通を変革するモンスター」というに相応しい姿です。架設機の後方では既にこれから架設する橋桁の組み立てが行われており、来年度に迫った開業に向けて休むことなく工事が続いていることをうかがわせています。
左:佐久間通り架道橋の橋台は斜めになるよう作り直された。
中:斜めに持ち上げられた佐久間通り架道橋。
右:佐久間通り架道橋の先では縦貫線の高架橋へ向けて高架橋のかさ上げ工事が進行中。
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東北縦貫線が山手線・京浜東北線と同じ高さに戻るのは秋葉原駅の直前です。このアプローチ部分はコストダウンと工期短縮のため、旧来の高架橋の一部を補強・かさ上げして流用することになっており、昨年には佐久間通りにかかる架道橋の桁が縦貫線の重層高架に向かうように斜めに持ち上げられています。今回訪問時はこの斜めに持ち上げられた桁の両側で一旦取り壊した橋台を復元する工事が進められており、それ以外の部分でも高架橋のかさ上げに向けた補強などの工事が行われていました。
左:御徒町駅ホームから上野方面を見る。奥では防音壁の一部が完成している。
右:御徒町駅ホームから東京方面を見る。これまで使用されていた手前2線は封鎖され、営業線への改修が始まった。
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御徒町駅付近では3本ある留置線のうち、2本を縦貫線の営業線用に改修します。前回取材時は一番東側にある線路の改修が行われていましたが、今回訪問時はそれが完成し、秋葉原駅付近にある留置線への通路線として使用されています。これまで使用されていた線路はレールが細かく切断されており、一部はまくらぎごと撤去されています。今後は京浜東北線側の2線を営業線用に改修するものと思われます、このほか、前回骨組みだけが完成していた防音壁の一部には今回、透明なパネルが取り付けられていました。
■品川駅車両基地の縮小・再開発
再開発される車両基地のエリアと新駅設置予定位置
航空写真:(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データ(昭和63年)より抜粋
東北縦貫線によるもう1つの効果として、車両運用の効率化があります。現在、東海道線と宇都宮・高崎線はそれぞれ品川駅(田町車両センター)と尾久駅(尾久車両センター)に別々の車両基地を持っています。縦貫線開業後はこの2つの車両基地が結ばれるため、品川駅側の車両基地が大幅に縮小され、跡地の再開発が行われる計画となっています。再開発にあたっては、できるだけ多くの土地を対象用地に充てるため、京浜東北線・山手線の線路を現在よりも東に移設する予定となっており、合わせて新駅を設置することも検討されています。再開発の対象面積は約20万平方メートルで、東京都では「東京サウスゲート計画」と称し、周辺に豊富に存在する運河の水辺を生かした街づくりや、ヒートアイランド現象の抑制を目的とした超高層ビルに依らない環境配慮型の都市開発を行うこととされています。
去る、2011年12月にはこの再開発地区が新たに国の国際戦略総合特別区域「アジアヘッドクォーター特区」の指定を受けました。この制度は外資系企業を対象に、入国審査の簡素化、法人税の軽減、国や自治体による事業資金の補助などを行うもので、日本国内のみならず世界からも注目されています。
左:京浜東北線北行列車から見た田町車両センター。
右:東海道線下り列車から見た旧東京期間区跡地。新しい車両基地の洗浄台の設置が進む。
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品川駅の車両基地の再開発に向けた準備は2009(平成21)年夏から既に開始されています。最初に着手したのが車両基地の東側にある旧東京期間区のエリアで、残存していた車庫建屋や線路などの設備がすべて撤去されました。今回訪問時、この場所には新しい車両基地の洗浄台(車体洗車場)や詰所などの建設が進んでいました。これらの設備は東北縦貫線開業後も引き続き必要であるため、
2011年10月3日以降の品川駅の配線。右上の赤い丸で囲んだ部分は今回新たに撤去された分岐器。
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2010(平成22)年に入ると品川駅構内でも工事が始まりました。着工前の品川駅は東海道線の上下線ホーム2面4線の間に、臨時ホームと称する2面4線のホームが入る構造となっていました。この臨時ホームはかつて新幹線や高速道路が未整備だった時代に全国各地へ向かう急行・特急列車が発着するために設けられていましたが、近年はほとんど利用されておらず、遊休化しています。この臨時ホームはその用途ゆえ、東京方面からは進入できない配線となっており、そのままでは東北縦貫線の折り返しには利用できません。また、この臨時ホームの存在により、品川駅構内には随所に両渡り交差(ダブルスリップスイッチ:DSS)や振分分岐など古い特殊分岐器が使用されており、運用面・メンテナンス面でも多くの課題を抱えています。
2010年から始まった工事では東京寄りが車両基地にしか通じていなかった臨時ホーム10番線の線路が撤去され、ホームを拡幅したうえで東海道線下り線に接続するよう線路が敷設し直されました。これと並行して、東海道線下り線ホーム11・12番線は横浜寄りに3両分ほど移動させる工事が進められており、2011(平成23)年10月より新10・11番線の使用が開始されています。一方、東海道線の下り副本線だった12番線は新10・11番線の使用開始と同時に使用停止となり線路が撤去されました。
左:東海道線下り線の品川駅入口。直進する12番線の軌道敷設が開始された。
右:旧11・12番線の東京寄りはホームの一部が撤去され、残存部分には新しい屋根の設置が進む。
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昨年10月の切り替えで不要になった11・12番線の東京寄りは今回ホームが撤去され、跡地では新12番線の線路の敷設が開始されていました。ただし、撤去されたのは東京寄りの未使用部分すべてではなく、2両分程度であり、残存部分には元々あるホーム屋根の上に鉄骨で組まれた新しい屋根を新設する工事が進められています。横浜寄りの延長部分のホームうち、最先端部の数メートルはすぐに撤去可能な仮設ホームとなっていることから、東京寄りの再整備が完了した後は列車の停止位置を若干東京寄りに戻すものと思われます。
11・12番線横浜寄りの延長部分で開始された階段の増設工事。上段左が今回取材時(2012年3月3日)、右が2011年10月30日。下段はその階段を裏から見たもので、既設の橋上駅舎に接続することがわかる。 ※クリックで拡大
一方、横浜寄りの延長部分は今回も屋根や床の一部が未完成の状態のままとなっていました。前回の記事で、この延長部分に階段の準備らしき構造物があることに触れましたが、その予想通り今回階段の新設工事が開始されていました。新設中の階段はホーム中央側から横浜寄りの端に向かって登り、直角に曲がって既設の橋上駅舎(Dila品川)に接続する模様で、既に10・11番線を跨ぐ鉄骨の組み立ても完了していました。
左:横須賀線ホーム13番線から横浜方面を見る。黄色い丸で囲んだ部分にあった分岐器が撤去・新設。
右:同じ場所の2008年2月9日の状況。12番線(右)から分岐した線路は横須賀線上り線とDSSで交差し、下り線に接続していた。
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12番線の撤去に伴い、横浜寄りにあった12番線と横須賀線(13・14番線)との接続部分の配線も変化しています。従来は12番線から分岐した線路が横須賀線上り線(13番線)と両渡り交差分岐器(DSS)で交差し、横須賀線下り線(14番線)に合流していました。今回この部分を確認したところ、横須賀線上り線にあった両渡り交差とその直後にあった片側分岐のポイントが撤去されており、代わりに12番線に向かって片側に分岐するポイントが新設されていました。元々、12番線から横須賀線に出入りする列車はほとんどなく、必要があればさらに横浜寄りにあるポイントを使えば良いため、構造が複雑でメンテナンスに手間がかかる両渡り交差で残す必要はないと判断されたのでしょう。横須賀線上り線と12番線の接続が残されるのは、11番線から出てくる東海道線下り列車を支障せずに横須賀線に出入りするためと思われます。
臨時ホーム8・9番線の東京寄り。東北縦貫線の折り返しは10番線のみでは不足することから、今後は臨時ホームの他の線路についても改修がなされるものと思われる。
開業まで2年を切り、東北縦貫線本体・品川駅構内ともに工事が活発化してきています。今後は工事が行われていない臨時ホームの他の線路(7~9番線)についても大規模な改修がなされることが予想されます。引き続き機会があるごとに進捗状況を調査してまいります。
▼参考
宇都宮・高崎・常磐線の東京駅乗り入れについて(東海道線との相互直通運転) - JR東日本(2002年3月27日発表)
宇都宮・高崎・常磐線の東京駅乗り入れ工事の着手について - JR東日本(PDF)(2008年3月26日発表)
August 2010:特集「新幹線直上に架けるJR東北縦貫線」| KAJIMAダイジェスト | 鹿島建設株式会社
品川周辺地域都市・居住環境整備基本計画 - 東京都都市整備局(PDF)
(仮称) 品川駅・田町駅周辺 まちづくりガイドライン(案) - 東京都都市整備局(PDF)
「アジアヘッドクォーター特区」の指定について|東京都
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東北縦貫線建設と品川駅構内の工事(2011年1~4月取材まとめ)(2011年6月9日作成)
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東北縦貫線建設工事(2011年10・11月取材まとめ)(2012年1月7日作成)
品川駅・田町車両センター再開発(2011年10・11月取材まとめ)(2012年1月9日作成)
<2012年4月13日追記>
昨日、JR東日本から発表された2012年度設備投資計画で、東北縦貫線の開業が2014年度に変更(1年延期)することが示されました。本記事の完成予定年もこれに合わせて修正しました。
▼参考
2012 年度設備投資計画について - JR東日本(PDF)(2012年4月12日発表)
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