品川駅・田町車両センター再開発(2011年10・11月取材まとめ)




昨年10・11月に取材した東北縦貫線の建設工事とその関連事業の続きです。2回目の今回は東北縦貫線開業に合わせて規模が縮小される田町車両センターと品川駅の配線変更・再開発についてお伝えいたします。(東北縦貫線本体の工事については前回の記事をご覧ください。)

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東北縦貫線建設と品川駅構内の工事(2011年1~4月取材まとめ)(2011年6月9日作成)
東北縦貫線建設工事(2011年10・11月取材まとめ)(2011年1月7日作成)

■品川駅・田町車両センターの縮小・再開発の概要


東北縦貫線の新設による効果としては、前回の記事で解説した東京~上野間の混雑緩和の他に車両運用の効率化があります。東海道線と宇都宮・高崎線は湘南新宿ラインの開業により接続され、車種もE231系に統一されていますが、車両基地は同線から外れた品川駅と尾久駅にあるため、引き続き別々の車両基地を持たざるを得ない状態となっています。東北縦貫線開業後はこの両車両基地の間が直接接続されるため、品川駅の車両基地(田町車両センター)を尾久に統合し、規模を大幅に縮小・再開発を行う計画となっています。縮小により生み出される用地は約20万平方メートルに及ぶとみられており、都心の中の一等地に位置することから経済や街づくりに対するポテンシャルは非常に高いものとなっています。
この再開発計画については東北縦貫線着工時にJR東日本から発表された文書の他、東京都の都市計画に関する資料などでも触れられています。それによると、再開発事業のプロジェクト名は「東京サウスゲート計画」と称し、車両基地の跡地のみならず品川地区全体を開発対象としていること、豊富に存在する運河などの水辺を生かした街づくりヒートアイランド現象の抑制を目的とした超高層ビルの建築制限(海からの風の通り道を作る)などを設けることとされています。
さらに、2011年12月にはこの再開発地区が新たに国の国際戦略総合特別区域「アジアヘッドクォーター特区」の指定を受けました。この制度は外資系企業を対象に、入国審査の簡素化、法人税の軽減、国や自治体による事業資金の補助などを行うもので、ビジネスのグローバル化による日本経済のさらなる活性化が期待されています。

再開発される車両基地のエリアと新駅設置予定位置
再開発される車両基地のエリアと新駅設置予定位置
航空写真:(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データ(昭和63年)より抜粋


この再開発にあたっては線路全体を東側に移設することが予定されていますが、この一環として山手線・京浜東北線に新駅を設置することが検討されています。品川駅は東海道新幹線の全列車が停車するほか、京浜急行線が乗り入れており羽田空港まで15分で結ばれています。さらに、2027年にはリニア中央新幹線が乗り入れ、名古屋までの所要時間はわずか40分に短縮されるなど西日本各地への交通の利便性が飛躍的に高まる見込みです。新駅の工事は東北縦貫線開業後の2013(平成25)年度に着手する計画で、現時点では2016(平成28)年3月までの完成が見込まれています(工事を担当している日本電設工業のホームページによる)。山手線への新駅設置は1971(昭和46)年の西日暮里駅以来40年ぶりのことで、開業すれば品川駅との間は2分で結ばれ、再開発地区の国際競争力強化に大いに貢献します。

■品川駅・田町車両センターの配線変更の現況

田町車両センター縮小・再開発着工前の品川駅構内の配線

昨年10・11月に取材した東北縦貫線の建設工事とその関連事業の続きです。2回目の今回は東北縦貫線開業に合わせて規模が縮小される田町車両センターと品川駅の配線変更・再開発についてお伝えいたします。(東北縦貫線本体の工事については前回の記事をご覧ください。)

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■品川駅・田町車両センターの縮小・再開発の概要


東北縦貫線の新設による効果としては、前回の記事で解説した東京~上野間の混雑緩和の他に車両運用の効率化があります。東海道線と宇都宮・高崎線は湘南新宿ラインの開業により接続され、車種もE231系に統一されていますが、車両基地は同線から外れた品川駅と尾久駅にあるため、引き続き別々の車両基地を持たざるを得ない状態となっています。東北縦貫線開業後はこの両車両基地の間が直接接続されるため、品川駅の車両基地(田町車両センター)を尾久に統合し、規模を大幅に縮小・再開発を行う計画となっています。縮小により生み出される用地は約20万平方メートルに及ぶとみられており、都心の中の一等地に位置することから経済や街づくりに対するポテンシャルは非常に高いものとなっています。
この再開発計画については東北縦貫線着工時にJR東日本から発表された文書の他、東京都の都市計画に関する資料などでも触れられています。それによると、再開発事業のプロジェクト名は「東京サウスゲート計画」と称し、車両基地の跡地のみならず品川地区全体を開発対象としていること、豊富に存在する運河などの水辺を生かした街づくりヒートアイランド現象の抑制を目的とした超高層ビルの建築制限(海からの風の通り道を作る)などを設けることとされています。
さらに、2011年12月にはこの再開発地区が新たに国の国際戦略総合特別区域「アジアヘッドクォーター特区」の指定を受けました。この制度は外資系企業を対象に、入国審査の簡素化、法人税の軽減、国や自治体による事業資金の補助などを行うもので、ビジネスのグローバル化による日本経済のさらなる活性化が期待されています。

再開発される車両基地のエリアと新駅設置予定位置
再開発される車両基地のエリアと新駅設置予定位置
航空写真:(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データ(昭和63年)より抜粋


この再開発にあたっては線路全体を東側に移設することが予定されていますが、この一環として山手線・京浜東北線に新駅を設置することが検討されています。品川駅は東海道新幹線の全列車が停車するほか、京浜急行線が乗り入れており羽田空港まで15分で結ばれています。さらに、2027年にはリニア中央新幹線が乗り入れ、名古屋までの所要時間はわずか40分に短縮されるなど西日本各地への交通の利便性が飛躍的に高まる見込みです。新駅の工事は東北縦貫線開業後の2013(平成25)年度に着手する計画で、現時点では2016(平成28)年3月までの完成が見込まれています(工事を担当している日本電設工業のホームページによる)。山手線への新駅設置は1971(昭和46)年の西日暮里駅以来40年ぶりのことで、開業すれば品川駅との間は2分で結ばれ、再開発地区の国際競争力強化に大いに貢献します。

■品川駅・田町車両センターの配線変更の現況

田町車両センター縮小・再開発着工前の品川駅構内の配線



田町車両センター縮小・再開発着工前の品川駅構内の配線 ※クリックで拡大

今回の整理・縮小事業が開始される前の田町車両センターは到着線1線、出発線3線、留置線が3群・24本、洗浄線2線、交検線3線、修繕線2線に加え、廃止された東京機関区の機関車庫や転車台が残存するなど非常に大規模な物となっていました。しかし、これらの多くは客車列車が消滅して久しい現在では文字通り無用の長物と化しているのに加え、東海道線の普通列車で標準となっている15両編成対応の留置線は7本しかないなど、明らかに電車列車主体の現代の運行形態とマッチングが取れていないものでした。
一方、品川駅の東海道線ホームは上下線の島式ホーム2面4線(5・6・11・12番線)の他に、この田町車両センターに接続する「臨時ホーム」と称する島式ホーム2面4線(7~10番線)を持つ特殊な構内配線となっていました。この臨時ホームは新幹線や高速道路が未整備だった昭和30~40年代の帰省ラッシュや行楽シーズンに臨時列車が発着するのに使われていたもので、その目的から東京方の下り本線からは直接進入できない配線となっており、現状では東北縦貫線から乗り入れてきた列車の折り返しで使用することはできません。さらに、この臨時ホームに接続するポイントは両渡り交差(ダブルスリップスイッチ:DSS)や振分分岐など旧態依然の特殊分岐器が多用されており、その複雑さ故に電子連動化(コンピュータによる信号機・ポイントの自動制御化)にもかなりの時間を要するなど、運用面・メンテナンス面でも多くの課題を抱えています。

線路が撤去された旧10番線。 建設中の新10番線ホーム。
左:線路が撤去された旧10番線。2010年5月22日撮影
右:建設中の新10番線ホーム。2011年1月9日撮影

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この田町車両センターの縮小・再開発に向けた準備は2009(平成21)年夏から既に開始されています。最初に着手したのは車両基地の中でも特に使用頻度が低かった旧東京機関区のエリアで、残存していた機関車庫や線路などの設備が撤去され、更地化されました。続いて、2010(平成22)年に入ると品川駅に最も近い留置線の一部と機回し線、接続する品川駅旧10番線の線路が全て撤去されました。この旧10番線は品川駅の臨時ホームでは唯一東京方が車両基地にしか進出できない配線で、4線ある臨時ホームの中では特に使用頻度が低い線路でした。
旧10番線の撤去完了後は跡地ではホームの拡幅と新10番線の軌道の敷設が行われました。新10番線は東海道線の下り本線となっている11番線の線路に沿うような形で敷設されており、拡幅されたホームの東京寄りは従来に比べ2倍以上の幅を持つ形態となっています。これに伴い、北改札口側の橋上駅舎へ接続する階段・エスカレータも新設されたホーム側に移設されました。さらに、2011(平成23)年に入ると今度は東海道線の下りホーム11・12番線ホームを横浜寄りに移設する工事が開始され、東京寄りでは11番線に並行して新しい線路の敷設が開始されました。これは東海道線の新11番線として使用されるものでした。

2011年10月3日以降の品川駅の配線
2011年10月3日以降の品川駅の配線 ※クリックで拡大

2010年に始まった一連の工事で新設された線路・ホームは2011年10月3日より使用が開始されました。この日から東海道線下りホームは横浜寄りに数両分移設され、副本線の12番線は使用停止となり線路が撤去されました。そして同時に使用再開となった新10番線は新たに横浜方面へ向かう湘南ライナー専用ホームとして機能しています。

ホーム手前の第四場内信号機。分岐側の信号機には数字式の進路表示器が付く。 その先の分岐器は11番線が分岐側。
分岐した直後に右側へさらに謎の線路が分岐・・・ 右の謎の線路は直進して工事エリアに突入。斜めに交差するもう1本の線路は10番線に通じる。<br>
品川駅進入中の東海道線下り列車の前面展望。4枚とも2011年11月26日撮影
左上:ホーム手前の第四場内信号機。分岐側の信号機には数字式の進路表示器が付く。
右上:その先の分岐器は11番線が分岐側。
左下:分岐した直後に右側へさらに謎の線路が分岐・・・
右下:右の謎の線路は直進して工事エリアに突入。斜めに交差するもう1本の線路は10番線に通じる。

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今回の線路付け替えに伴い、品川駅手前の東海道線下り線の配線も大幅に変更されています。
左上の写真はホーム手前にある第四場内信号機で、点灯している新11番線用の信号機の下には多進路対応の数字式の進路表示器が付属しています。また、左側には将来新12番線用となるであろう5灯式の信号機が×印を打ち付けられた状態ですでに設置されています。信号機の直後に現れるのが右上の写真の分岐器で直進側は将来12番線に接続すると思われますが、現状ではまだ線路が無いため全ての列車が右に進みます。分岐の角度は以前のものよりもきつく、45km/hの速度制限があります。分岐すると直後に左下の写真のように右側へ謎の線路が分岐しますが、この線路は10・11番線側へは向かわず、右下の写真の通りそのまま直進して工事エリアの中に突入して終わっています。また、この謎の線路と交差する形で工事エリアの中からもう1本別の線路が延びてきており、この線路は新10番線に接続しています。線路の向いている方向から勘案すると前者は臨時ホームの他の線路に、後者は縮小後の田町車両センターに接続するものと思われます。

ホーム直前にある両渡り分岐器。右の線路は新10番線。 ホーム端から東京方面を見る。右側に続くのは使用停止となった旧11・12番線ホーム。
左:ホーム直前にある両渡り分岐器。右の線路は新10番線。
右:ホーム端から東京方面を見る。右側に続くのは使用停止となった旧11・12番線ホーム。
2枚とも2011年11月26日撮影

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ホームの直前には新10・新11番線を接続する両渡り線があります。ここもやはり4方向とも必ずポイントの分岐側を通過しなければならない線形となっており、45km/hの速度制限があります。

拡幅された9・10番線ホーム・11・12番線ホームの東京寄り 11・12番線ホーム横浜方の延長部分
左:拡幅された9・10番線ホーム・11・12番線ホームの東京寄り。2011年11月26日撮影
右:11・12番線ホーム横浜方の延長部分。2011年10月30日撮影

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新11番線の東京寄りは従来と比べ10番線側に移動しているため、ホームもそれに合わせて拡幅されています。拡幅部分のホームは旧11番線の線路の真上に造られているため、今回訪問時はまだ完成が間に合わず、鉄骨や木材で組んだ仮設のものとなっていました。また、今回の線路付け替えに合わせて11・12番線ホームは横浜方に延長されており、東京方の一部は柵で仕切られ入れなくなっています。この部分は照明も撤去されていることから、近いうちにホームの構造物全体が取り壊されるものと思われます。
一方、横浜方の延長部分は今回訪問時では12番線側が全くの未完成で、床面もまだ仮設のものであるなど「暫定供用」といったイメージが強い状態でした。この延長分の屋根を支える柱の一部には橋脚のような頑丈なものも含まれており、将来の橋上駅舎の拡張も考慮に入れた設計となっている模様です。

横須賀線ホーム13番線から見た旧12番線の撤去跡。 11・12番線のホーム端から横浜方面を見る。
左:横須賀線ホーム13番線から見た旧12番線の撤去跡。2011年10月30日撮影
右:11・12番線のホーム端から横浜方面を見る。2011年11月26日撮影

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今回の線路付け替えに合わせて東海道線下り副本線の12番線は使用停止となり線路が撤去されました。しかし、駅前後にはこの12番線に接続すると思しき分岐器が多数準備されていることから、近いうちに復活することが予想されます。また、現在東海道線の下り本線として使用中の新11番線は

●場内信号機が警戒現示対応の4灯式(12番線用は5灯式)で、出発信号機は停止定位。
●ホーム前後のポイントは全て分岐側を通過する。(12番線は全て直進側。)
●架線はき電吊架式だが吊架線が細い簡易構造。

といった、本線用としては相応しくない構造となっており、12番線の復活後は12番線が東海道線の下り本線として使用されるものと思われます。

先日マスコミで報道された再開発地区内の新駅設置は東京都の石原都知事も歓迎の姿勢を見せるなど、この東北縦貫線と品川駅・田町車両センターの再開発には各方面から熱い期待が寄せられています。大きく変わりつつある都心の鉄道エリアの姿を今後も随時追ってまいります。

▼参考
宇都宮・高崎・常磐線の東京駅乗り入れについて(東海道線との相互直通運転) - JR東日本(2002年3月27日発表)
品川周辺地域都市・居住環境整備基本計画 - 東京都都市整備局(PDF)
(仮称) 品川駅・田町駅周辺 まちづくりガイドライン(案) - 東京都都市整備局(PDF)
「アジアヘッドクォーター特区」の指定申請等について|東京都
「アジアヘッドクォーター特区」の指定について|東京都
2012年3月期第2四半期決算説明会資料 - 日本電設工業(PDF)
→17ページ目に田町車両センター再開発関連の記述。
東京都品川周辺の街づくり、JR東の再開発案件に追い風 | ビジネスニュース | Reuters(2007年9月11日)
山手線、40年ぶりに新駅…品川―田町間 : 東京 : 首都圏 : 鉄道ニュース : 新おとな総研 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)(2012年1月4日)
特集「短絡線ミステリー9」 - 交友社「鉄道ファン」2008年6月号(通巻566号)

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