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品川駅・田町車両センター再開発(2012年9月15・23日取材)
公開日:2012年10月06日08:52
品川駅では東北縦貫線の建設に関連して駅構内の配線変更と田町車両センターの縮小・再開発が行われています。今回は9月23日(日)より使用を再開した、東海道線ホーム12番線を中心に現在の状況をお伝えします。
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東北縦貫線建設&品川駅構内の工事(2012年6月15日取材)(2012年6月21日作成)
東北縦貫線建設工事(2012年9月15・16日取材)(2012年10月1日作成)
■品川駅・田町車両センターの縮小・再開発の概要
現在、東海道線東京駅と宇都宮・高崎・常磐線上野駅の間では2014年度の開業を目指して「東北縦貫線」の建設が進められています。この新線の建設の主たる目的は混雑率が全国で最高レベルとなっている山手線・京浜東北線の混雑緩和ですが、さらに副次的な効果として車両運用の効率化も実現するとが挙げられています。
現在の東海道線と宇都宮・高崎線の東京都心側の車両基地は品川駅(田町車両センター)と上野駅(尾久車両センター)の2箇所が存在します。2001(平成13)年の湘南新宿ライン運転開始以降、両路線で相互に車両を融通し合うようになり、それにあわせてほとんどの車両がE231系に置き換えられましたが、車両基地が湘南新宿ラインの線路からは外れた位置にあるため、引き続き別々の車両基地を持たざるを得ない状況となっています。東北縦貫線が開業すると、両車両基地が直接結ばれることになるため、品川駅側の車両基地を大幅に整理・縮小し、上野駅側の車両基地に機能を集約する計画となっています。東海道線・宇都宮線・高崎線では現在211系からE233系への置き換えが進められていますtが、これも将来の車両基地統合を見越した動きと言えます。
車両基地統合により生まれる用地は約20ヘクタールに及ぶとされています。品川駅は東海道新幹線の全列車が停車し、京急線により羽田空港まで15分で結ばれています。また、2027年にはリニア中央新幹線が乗り入れることから、東京都心の中でも特に交通の利便性が高いエリアとして注目されています。このため、東京都が主導となり跡地の再開発計画が現在進められています。再開発計画の名称は「東京サウスゲート計画」で、車両基地跡地のみならず品川地区全体を開発対象としていること、豊富に存在する運河などの水辺を生かした街づくりやヒートアイランド現象の抑制を目的とした超高層ビルの建築制限(海からの風の通り道を作る)などを設けることとされています。さらに、2011(平成23)年12月にはこの再開発地区が新たに国の国際戦略総合特別区域「アジアヘッドクォーター特区」の指定を受けました。この制度は外資系企業を対象に、入国審査の簡素化、法人税の軽減、国や自治体による事業資金の補助などを行うもので、ビジネスのグローバル化による日本経済のさらなる活性化が期待されています。
再開発される車両基地のエリアと新駅設置予定位置
航空写真:(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データ(昭和63年)より抜粋
東北縦貫線開業後はより多くの土地を再開発に充てるため、山手線・京浜東北線の線路を現在よりも東側に移設することが計画されています。これに合わせて、移設される区間の途中に新駅を設けることが検討されています。山手線への新駅設置は1971(昭和46)年の西日暮里駅以来40年ぶりのことで、開業すれば品川駅との間は2分で結ばれ、再開発地区の国際競争力強化に大いに貢献します。新駅を含めた再開発は2014年の東北縦貫線開業後にスタートし、2016(平成28)年頃の完成が予定されています。
■品川駅12番線が使用再開
着工前の品川駅構内の配線図
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品川駅の再開発に向けた準備は2009(平成21)年から開始されました。着工前の田町車両センターは現在は運行されていない客車列車に最適化された構内配線となっており、機関車付け替え用の短い引上げ線があったり、線路の交差箇所は全方向を連絡できる両渡り交差分岐器(DSS)といった特殊分岐器が多用されており、旧態依然とした極めて複雑な構成となっていました。また、品川駅は東海道線の上下線間に「臨時ホーム」と称する2面4線の島式ホームがありました。この臨時ホームは新幹線や高速道路が未整備だった昭和30~40年代の帰省ラッシュなどの際設定された臨時列車が使用していたもので、現在はほとんど使われていませんでした。また、この臨時ホームはその使用目的から、4線とも東京方面から進入できない配線となっており、東北縦貫線の折り返しには使用できないという問題がありました。
2009年に始まった工事では、まず遊休化していた旧東京機関区の施設が取り壊され、更地化されました。続いて、臨時ホームのうち一番使用頻度が低かった10番線が使用停止となり、東京方面から進入できるようホームの東京寄りのホーム・軌道が移設されました。同時に、東海道線の下り本線である11番線も軌道・ホームが10番線と近づくよう移設されました。これら一連の工事は昨年10月に完成し、以後は東海道線の下り副本線だった12番線が使用停止となり、ホームの一部の改築や軌道の撤去・再敷設が続けられてきました。
9月23日より東海道線下り本線として使用を再開した12番線。
※ここから先、昼の写真は2012年9月15日(土)、夜の写真は2012年9月23日撮影。
工事が続いていた12番線は9月23日(日)より使用を再開しました。この工事では駅の前後にあった分岐部分が全て12番線が直進側になるよう入れ替えられ、軌道も本線用に強化された(TC型省力化軌道を採用した)ことから、使用再開後は12番線が東海道線の下り本線に変更されています。また、後述する工事のため、この日から臨時ホーム9・10番線は使用停止となり、10番線に発着していた横浜方面の湘南ライナーは11・12番線発着に変更されています。
左:11・12番線ホームの横浜寄りの端。12番線は停止位置が東京寄りにずれているため柵が設置されている。(同じ場所の2011年4月6日の様子)
右:11番線の東京寄りも同様に柵が設置されている。
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使用を再開した12番線は11番線と同様着工前と比べて停止位置が横浜寄りに移動していますが、その量は11番線と比べて少なくなっています。このため、列車が停車しないホーム横浜寄りの12番線側と東京寄りの11番線側はともに転落防止のためステンレス製の柵が設置されています。このため、2010年頃から始まった一連の工事で11・12番線のホームが横浜寄りに大幅に延長されたにもかかわらず、12番線はその延長部分をほとんど使用しない状態となっています。12番線の停止位置が東京寄りにずれているのはホームのすぐ先に横須賀線へ進出するポイントがあるため、十分な余裕距離を確保したためと思われます。
左:使用を開始したホーム横浜寄りの階段。(同じ場所の2012年3月3日の様子)
右:新設された階段はエキュート品川サウスの端に通じる。
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横浜寄りではホームの延長に合わせて橋上駅舎に通じる階段の新設が行われていましたが、今回これが完成したことから、12番線の使用再開と同日に供用を開始しました。新設された階段はホーム上部へ上がった後、直角に曲がって既設の橋上駅舎(エキュート品川サウスの南端)に接続する構造となっています。エスカレータ・エレベータなどは併設されていないため、バリアフリーの移動経路は引き続きホーム中央にあるエレベータなどを使用することになります。このような簡素な設備となったのは、この階段がホーム上の混雑緩和を主たる目的として設置されたためであると考えられます。
拡幅部分の仕上げが完了した11番線側。床面の黒いテープが拡幅部分と既設部分の境界。
このほか、昨年10月の軌道移設時に仮設構造となっていた11番線ホームの東京寄りは、床面の仕上げが全て完了しました。上の写真でホーム床の中央に見える黒いテープの部分が元からあるホームと拡幅したホームの境界です。このホーム拡幅により11・12番線の中央付近は一般的なホームのおよそ1.5倍に拡幅されています。
左:東海道線下り列車から建設中の新車両基地を見る。洗浄台付きの本格的なものとなっている。手前の掘削は高輪橋架道橋の付け替えに関連したものと思われる。
右:新車両基地は11・12番線の分岐点付近まで続く。
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一方、品川駅の東京方にある田町車両センター内でも東北縦貫線開業後に使用する新車両基地の設備の建設が着々と進んでいます。東海道線下り列車から見える範囲では留置線が10線前後敷設されており、その一部は屋上点検台や洗車作業用の作業台が設置された本格的なものとなっています。これは今後も「サンライズ瀬戸・出雲」や臨時列車など、通勤列車以外の長距離列車の整備が残るためと思われます。
なお、田町車両センターの中央には車両基地を東西に横断する地下道(高輪橋架道橋)があります。この地下道は自動車が一方通行であることに加え、天井の高さが150cmと非常に低く※、交通の隘路(あいろ)となっています。このため、車両基地の整理にあわせて、北側に車道2車線+歩道を持つ新しい地下道を建設する計画があり、既に具体的な設計もできあがっている模様です。左の写真にある掘削工事は新しい地下道の予定地に相当する場所で行われており、これに関連した工事であると考えられます。
▼脚注
※タクシーの屋根に付いている会社名の標識に接触してしまうほど低いことから、別名「提灯殺しのガード」とも呼ばれる。
▼参考
新・高輪橋架道橋の計画図面ゲット - 招き猫の集客ニャース
▼関連記事
田町排煙所~第4立坑(品川第1変電所) - 総武・東京トンネル(28)(2008年8月17日作成)
→高輪橋架道橋の写真
左:11番線の端から敷設中の新車両基地の線路を見る。片開き分岐器や交差が合計9個並ぶ複雑な配線。
右:目視できた線路から描き起こした配線図(正確なものではない)。緑色の線は左の写真で写っている範囲を示す。
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建設中の新車両基地の品川寄りは最終的に全ての線路が1線に集約され、臨時ホーム10番線に直接つながる配線となっています。11番線から建設中の車両基地を見ると、ポイントや交差が合計9個並ぶという複雑な配線となっていることを確認できます。また、この途中からは東海道線上り線や臨時ホームの他の線路(5~9番線)方向への分岐も見られ、今後工事の範囲がこれらのホームにも拡大することが予想されます。
左:品川駅(11番線)到着直前の東海道線下り列車の前面展望。右に分岐する線路は新9番線に接続するものと思われる。
右:9番線のホーム端の先には新9番線に接続するものと思われる途切れた線路(黄色い↑の先)が見える。
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今年1月に作成した記事でも触れたとおり、東京方面から11番線に向かう線路の途中からもう1本線路が分岐している事を確認しています。今回再度この部分を確認したところ、この線路は臨時ホーム9番線に通じる可能性が高いことがわかりました。右の写真は臨時ホーム8番線のホーム端から9番線越しにこの線路を見たところで、手前にある9番線に向いたところでレールが途切れていることがわかります。今後は9番線ホームの東京寄りの一部を撤去したうえで、東海道線下り線に近づくように大きくカーブしている10番線のホームに沿うような形で軌道を敷設し直し、この途切れた線路と接続するものと思われます。
9番線のホーム端。今後は手前にある使用していない階段やホームの一部を取り壊し、10番線側に軌道を移設するものと思われる。(クリックすると取り壊しの範囲と予想される移設後の線路の位置を書きこんだ画像を表示)
11番線のホーム端から横浜方面を見る。右の9・10番線は使用停止となったため出発信号機に×印が打ち付けられている。
臨時ホーム9・10番線は東海道線下り線の12番線使用再開と同日より使用停止となっています。これは前記したホーム東京寄りの大規模な改修に備えたものと考えられます。改修期間が長期に渡るためか、駅構内の案内板からは「9・10」の数字がほぼ全て抹消されており、当分の間使用再開は無い模様です。今後は臨時ホームの状況を中心に調査を続けてまいりたいと思います。
2012年9月23日以降の品川駅構内の配線図(一部省略)
※クリックで拡大
▼参考
宇都宮・高崎・常磐線の東京駅乗り入れについて(東海道線との相互直通運転) - JR東日本(2002年3月27日発表)
宇都宮・高崎・常磐線の東京駅乗り入れ工事の着手について - JR東日本(PDF)(2008年3月26日発表)
2012 年度設備投資計画について - JR東日本(PDF)(2012年4月12日発表)
2012年3月期決算説明会資料 - 日本電設工業グループ(PDF)
→17ページに東北縦貫線・品川駅再開発についての記述あり
品川周辺地域都市・居住環境整備基本計画 - 東京都都市整備局(PDF)
(仮称) 品川駅・田町駅周辺 まちづくりガイドライン(案) - 東京都都市整備局(PDF)
「アジアヘッドクォーター特区」の指定について|東京都
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東北縦貫線工事(2009~2010年取材まとめ)(2010年3月15日作成)
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東北縦貫線建設と品川駅構内の工事(2011年1~4月取材まとめ)(2011年6月9日作成)
東北縦貫線建設工事(2011年10・11月取材まとめ)(2012年1月7日作成)
品川駅・田町車両センター再開発(2011年10・11月取材まとめ)(2012年1月9日作成)
東北縦貫線工事&品川駅構内の工事(2012年3月3日取材)(2012年03月21日作成)
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