東北縦貫線建設工事(2011年10・11月取材まとめ)


神田駅の真上まで進んできた縦貫線の架設機

現在、JR東日本では東京駅と上野駅を接続する「東北縦貫線」の建設を進めています。当ブログではこの新線の工事と、関連する品川駅の再開発について2010年より取材を続けていますが、前回の取材から半年程度が経過し、進展が見られましたので昨年10・11月に再度取材を行いました。今回は品川駅の再開発に関する内容が多いため、2記事に分割してお伝えいたします。1回目の今回は東北縦貫線本体(東京~上野間)の工事についてお伝えします。

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■東北縦貫線の概要


東北縦貫線は東海道線の東京駅と宇都宮・高崎・常磐線の上野駅を接続する新線で、2000(平成12)年に発表された運輸政策審議会(現在の交通政策審議会)第18号答申2015(平成27)年までに整備するべき路線として位置づけられています。
現在、この区間は山手線・京浜東北線の2路線が走っていますが、その混雑率は着工前の2006(平成18)年の数値で216%と長きに渡り国内ワースト1位を不動のものとしていました。その後はつくばエクスプレス線の開業や湘南新宿ラインなどの開通により、2009(平成21)年には国内最混雑路線の座を総武緩行線錦糸町→両国間に譲ったものの、混雑率は200%を切っておらず混雑緩和が依然急務となっています。東北縦貫線完成後は現在東京止まりとなっている東海道線と、上野止まりとなっている宇都宮線・高崎線・常磐線の列車を直通運転することが可能となり、山手線・京浜東北線への乗り換えが不要になるため混雑率は180%以下へ大幅に緩和されることが期待されています。

東北縦貫線の位置
東北縦貫線の位置

東北縦貫線はその構造により「上野~秋葉原間」と「東京~秋葉原間」の2つに大別することができます。「上野~秋葉原間」宇都宮線・高崎線・常磐線の回送列車が秋葉原駅付近にある留置線まで出入りするための線路が3本あることから、このうち2本を東北縦貫線に転用する予定となっており、線路の規格を側線用から営業線用にアップするための改修が行われています。一方、「東京~秋葉原間」東北新幹線の高架橋の上部に東北縦貫線用の高架橋を継ぎ足します。そもそも、現在の東北新幹線東京駅と秋葉原駅を結ぶ「回送線」と呼ばれる線路を撤去して建設されたものであり、東北新幹線の高架橋は将来の回送線復活を前提に継ぎ足し可能な構造(ボルト穴の準備など)で建設されており、完成から20年以上の時を経てこの構造が活用されることとなりました。しかし、二重高架化については神田駅付近の沿線住民が反対運動を展開しており、これに配慮する形で東北縦貫線の高架橋の位置は当初計画よりも在来線側に移設されることとなりました。このため、新幹線の既設橋脚は空洞だった内部に鉄筋コンクリートを詰める補強を行ったほか、継ぎ足す高架橋の桁や橋脚も軽量のものを使用し、負担する力が極力少なくなるよう配慮されています。
東北縦貫線はこの反対運動や設計変更により着工が遅れたため、完成予定は2009(平成21)年から2013(平成25)年に延期されています。総工費は400億円前後と見られており、全額をJR東日本が自己負担します。

■東北縦貫線建設工事の現況

東京駅東北新幹線ホーム南側の作業基地。 東海道線ホームの先は留置線の機能を停止してポイントを交換している。
左:東京駅東北新幹線ホーム南側の作業基地。
右:東海道線ホームの先は留置線を使用停止にしてポイントを交換している。2枚とも2011年11月26日撮影

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東北縦貫線の作業基地は東京駅の東北新幹線ホームの南側にあります。工事は終電後に東北新幹線の車止めをスライドさせて工事用車両を線路上に載せ、新幹線の線路を走行して現場まで直接重機や資材を搬入しています。
前回取材時まで東京駅ではこの作業基地以外に東北縦貫線関連の動きはありませんでしたが、今回は新たに東海道線ホームの上野寄りで東北縦貫線接続に向けた線路改良が開始されていました。内容は上野寄りにある両渡り線の位置をホーム寄りに詰めるというもので、この工事に伴い東海道線の普通列車が主に使用している7・8番線の上野寄りはポイント手前に車止めが仮設され、暫定的に行き止まりとなっています。

2010年2月6日 2010年8月14日
2011年10月30日 2011年3月6日



神田駅の東京寄りから見た東北縦貫線高架橋の変化。撮影日時は左上から時計周りに2010年2月6日、2010年8月14日、2011年3月6日、2011年10月30日。 ※クリックで拡大

神田駅付近では既存の東北新幹線の高架橋の上に東北縦貫線の高架橋を継ぎ足す工事が進んでいます。橋脚の継ぎ足しは新幹線の通常運行を妨げないよう終電~初電の間のみに限定され、さらに作業ができるのはひと月の半分程度、1回の作業時間は停電作業や安全確認などの時間も含めると3時間程度しか確保できないという厳しい時間的制約のもと行われました。また、橋脚の部品の組み立ては新幹線の設備を大きく変更せずに行うため、縦横無尽に張り巡らされた架線の間のわずかな隙間を抜けて部品を吊り上げる必要があるなど、数ミリの狂いも許されない非常に難易度の高い工事となりました。東北縦貫線の橋脚は全部で16基あり、一度に全てを組み立てるのは困難であるため2009年末から2011年初めにかけて全体を260個の部品に分けて慎重に組み立てが行われました。

神田駅脇の東北縦貫線の工事。 10ヶ月後に撮影した同じ場所。高架橋の建設が進んでいる。
左:神田駅脇の東北縦貫線の工事。2011年3月6日撮影
右:10ヶ月後の同じ場所。高架橋の建設が進んでいる。2011年10月30日撮影

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完成した橋脚の上には自走式の架設機を使用して順次高架橋の橋桁が建設されています。今回取材時点ではすでに神田駅付近まで工事が進んでおり、いよいよ東北縦貫線の構造物の全貌が判明しつつあります。

秋葉原駅の東京寄りで建設が進む二重高架のアプローチ区間。 秋葉原駅ホーム脇の佐久間架道橋は二重高架に向けて持ち上げられた。
左:秋葉原駅の東京寄りで建設が進む二重高架のアプローチ区間。2011年10月30日撮影
右:秋葉原駅ホーム脇の佐久間架道橋は二重高架に向けて持ち上げられた。2011年3月6日撮影

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二重高架は秋葉原駅の手前で終了し、東北縦貫線は総武線の下をくぐるため山手線・京浜東北線と同じレベルまで降りてきます。秋葉原駅の東京寄りではこのアプローチ区間の建設が進んでいます。この区間は高架橋を全面改築する部分と既存の高架橋をかさ上げ・補強して流用する部分の2種類があります。左の写真は全面改築する部分で、二重高架と接する部分は2011年初めの時点で完成しており変化はありませんが、前回取材時と比較すると手前側にも工事が進んできていることが確認できます。右の写真は秋葉原駅ホーム脇にある佐久間通りを跨ぐ橋で、東北縦貫線に流用するため2011年初めに桁が斜めにかさ上げされました。この部分は今回取材時も変化はありません。

御徒町駅付近で進む線路改良工事 御徒町駅付近で進む線路改良工事
御徒町駅付近で進む線路改良工事。2枚とも2011年10月30日撮影
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御徒町駅付近は3本なる既存の留置線のうち2本を東北縦貫線に転用します。現在は一番東側の留置線として使用する線路の再整備が行われており、今回取材時には既に軌道敷設が大方完了していました。今後は留置線の機能をこの新しい線路に移し、残る2本の線路を東北縦貫線の営業線用に改修するものと思われます。また、今後は列車本数が増加するため防音壁のかさ上げも合わせて行われていますが、出来上がりつつある骨組みはかなりの高さがあり完成後は列車内からの車窓はほとんど期待できないものと思われます。

次回は先日、新駅設置がマスコミで報道された品川駅・田町車両センターの再開発についてお伝えします。

▼参考
宇都宮・高崎・常磐線の東京駅乗り入れについて(東海道線との相互直通運転) - JR東日本(2002年3月27日発表)
宇都宮・高崎・常磐線の東京駅乗り入れ工事の着手について - JR東日本(PDF)(2008年3月26日発表)
August 2010:特集「新幹線直上に架けるJR東北縦貫線」| KAJIMAダイジェスト | 鹿島建設株式会社
JR山手線上野-御徒町間が混雑率ワースト2位に-ワースト1位は総武線 - 上野経済新聞
東北縦貫線プロジェクトの概要と架設計画 - 橋と基礎2009年8月号77~79ページ

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東北縦貫線建設と品川駅構内の工事(2011年1~4月取材まとめ)(2011年6月9日作成)

(つづく)
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