カテゴリ:鉄道:JRの車両中央線

中央線グリーン車連結に向けた車両の動き


10CARSステッカーが貼られた中央線E233系

来年春のグリーン車サービス開始を目指して準備が進められている中央線ですが、ホーム延伸などの地上設備の改修がおおむね完了したことから、グリーン車本体の車両製造や増結に向けた既存編成の改造も急ピッチで進んでいます。今回は過去の記事の一部再掲になりますが、中央線グリーン車連結に向けた車両の動きについてレポートします。

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中央快速線グリーン車連結PJ

グリーン車の製造が進む

中央線用グリーン車は折り返し時間短縮のため両開きドアが採用されており、各部の寸法が大幅に変更されている。
中央線用グリーン車は折り返し時間短縮のため両開きドアが採用されており、各部の寸法が大幅に変更されている。

 中央快速線のグリーン車は、現在運用されているE233系0番台10両編成の4号車と5号車に増結されます。本車両最大の特徴として乗降ドアの両開きドア化があげられます。
 東海道線などで従来から導入されてきたグリーン車は、乗降ドアの開口幅が特急車両とほぼ同等の81cm(横須賀線の旧型(E217系)は72cm)しかありませんでした。中央線は朝ラッシュ時に東京駅で最短2分という高密度での折り返し運転を実施しており、従来の狭いドアでは降車に時間を要して現行ダイヤを維持できなくなる恐れがありました。そこで中央線用のグリーン車では乗降ドアを普通車と同じ幅1.3mの両開きドアとし、1枚のドアから常時2~3名ずつ降車できるようにしました。デッキが拡大されたことから、両端の平屋部分の座席が1列ずつ削られており、代わりに台車中心間距離を従来より67cm広げることで2階建て部分の座席を1列増やし、従来と同じ座席数補確保しています。これに加えてJR東日本の普通列車グリーン車としては初となる座席の自動回転機構を搭載しており、折り返し作業の高速化を図っています。

豊田車両センターで営業運転開始を待つ中央線用グリーン車。画像の右奥にも10両以上置かれていた。
豊田車両センターで営業運転開始を待つ中央線用グリーン車。画像の右奥にも20両ほど置かれていた。

 中央線用グリーン車(サロE233・E232形0番台)は2022年7月~10月ににテスト用として2両ずつ製造されました。この時製造された車両は中央線用E233系の10両貫通編成(T24編成)と6両+4両分割編成(H57編成)に即座に組み込まれ、以後車両性能や地上設備との整合性確認、乗務員訓練などに使用されています。しかし、その後は半導体不足などの影響もあり1年ほど製造が途絶えました。また、2023年9月にはグリーン車の連結編成数が当初予定されていた58編成から1本削減されることが明らかとなりました。
 2023年秋になるとグリーン車の製造が再開され、これ以降は1度に4両から8両程度にまとめて車両メーカーから出荷されるようになります。また、試運転用の編成についても追加され、宇都宮・高崎線でのグリーン車連結開始時に見られたような1編成の中にグリーン車を4両組み込んでの試運転も頻繁に目撃されるようになりました。

幕張車両センターで保管されている中央線用グリーン車。京成線など営業運転開始後は見られない並びも。
幕張車両センターで保管されている中央線用グリーン車。京成線など営業運転開始後は見られない並びも。

 グリーン車を組み込んでの営業運転はホーム延長など地上設備の改修が完了するまで行うことができません。そのため試運転が完了したグリーン車は編成から外したうえで豊田車両センター内に保管されています。豊田車両センターはある程度留置線の数に余裕はあるものの、57編成分のグリーン車全てを同時に置いておくことは難しいため、今年春以降は一部車両が国府津車両センター(神奈川県小田原市)幕張車両センター(千葉県千葉市)などに分散して保管されています。車両増備の進展に伴い分散保管の両数は増え続けており、一例として筆者の地元幕張車両センターでは本記事作成時点で合計24両のグリーン車を受け入れています。使える留置線の数が限られていることから、このうち16両は1本に連結した状態で止められています。横を通る総武線や京成線からも見えますので、車窓にぜひご注目ください。



組み込み準備改造

中央線E233系のグリーン車連結前後の編成形態比較
中央線E233系のグリーン車連結前後の編成形態比較

 グリーン車連結に向け、2019年より中央線用のE233系既存編成でも機器の追加など改造が進められています。改造内容は2020年に作成した記事の一部再掲になりますが以下の通りとなっています。

①連結位置変更・改番
10両固定編成(T編成)では、付随車の位置が6両+4両の分割可能編成と同一になるよう6号車と7号車に連結されていたが、6号車のサハE233形500番台を4号車(将来6号車)に移動した。また、分割可能編成ではトイレ新設(次節で説明)に伴い4号車(将来6号車)のモハE233形200番台を800番台に改番した。

中央線E233系の4号車(将来6号車)に新設されたトイレ(車体外観) 中央線E233系の4号車(将来6号車)に新設されたトイレ(内部)
中央線E233系の4号車(将来6号車)に新設されたトイレ

②普通車にもトイレ設置
東海道線などに合わせてグリーン車に隣接する6号車(現4号車)にトイレを新設した。新設位置はグリーン車とは反対側の車端部分で、車椅子対応サイズとなっており、トイレに対面するロングシート3名分は撤去され、車椅子スペースとなった。改造当初は締め切り扱いとなっていたが、車両基地の汚水処理設備が完成したことから2020年3月より使用可能になっている。

③補助電源装置増設
中央線用E233系では、空調や照明の電力を生成する補助電源装置(静止型インバータ:SIV)が3号車と9号車の2台搭載だった。グリー車連結後は消費電力が増えることから、未搭載だった編成中間のモハE232形200番台にも追加した。

中央線E233系運転台に追加されたホームドア連携用無線機 TASC活用によるホーム延伸量削減のイメージ
左:中央線E233系運転台に追加されたホームドア連携用無線機
右:TASC活用によるホーム延伸量削減のイメージ
上:中央線E233系運転台に追加されたホームドア連携用無線機
下:TASC活用によるホーム延伸量削減のイメージ

④TASC・ホームドア無線連携システム搭載
中央線を含む首都圏のJR各駅では2032年度を目標にホームドアを設置する計画となっている。ホームドア設置時は車両とホームドアの位置を正確に合わせるため、駅停車時のブレーキを自動化するTASC(定位置停止装置)をセットで導入する。中央線のグリーン車連結にあたっては工期短縮や支障物移転を回避するため、TASCを先行整備してオーバーランを防止し、ホームの延伸量を極限まで削減することとした。そのためグリーン車連結準備改造と同時にTASCやホームドア連携に使用する無線機器を追加した。

4号車がグリーン車に置き換えられるため、弱冷房車の連結位置を埼京線と同じ9号車に変更。
4号車がグリーン車に置き換えられるため、弱冷房車の連結位置を埼京線と同じ9号車に変更。

⑤弱冷房車の位置変更
中央線では、冷房の設定温度が高い弱冷房車を他の10両編成の路線と同じ4号車に設定していた。4号車がグリーン車に置き換えられてしまうことから、今年春より弱冷房車の連結位置を9号車(将来11号車)に変更した。これに伴い、分割可能編成では基本編成(6両)で弱冷房車が無くなり、付属編成(4両)に弱冷房車が連結されるようになった。青梅線・五日市線専用の青編成・P編成も変更対象に含まれており、青梅~奥多摩間のワンマン列車にも弱冷房車が設定されている。

10両編成ステッカーが登場

10CARSステッカー
10CARS SERIES E233 ステッカー
10 made to be ステッカー
E233系T編成に掲出された10両ステッカー

 2018年以降進められてきた中央線内のホーム延伸工事は、ほとんどの駅で延長された部分が開放されるなど最終段階を迎えており、まもなくグリーン車を増結した12両編成の営業運転が開始される予定なっています。(詳細は記事末尾
 増結作業の期間中は10両と12両が混在することから、7月以降中央線走るE233系固定編成のフロントガラスに“10CARS”と書かれたステッカーが貼られ始めました。両数が混在するのはごく短期間と予想されることから、ステッカーは豊田車両センター職員お手製(?)のようで、現在のところ3種類のデザインが確認されています。さらに8月下旬以降は青梅線・五日市線用を含む分割可能編成でも違うデザインのステッカー貼り付けが開始されています。

TASC使用開始、209系はお役御免に

高円寺駅に掲出されていた停止位置変更のお知らせ
変更後の停止位置はTASC併用を前提にホーム端まで1mしか余裕が無い
TASC地上子は12両・10両で共有しているため、10両でもホーム先端に停車する。
左:高円寺駅に掲出されていた停止位置変更のお知らせ
右上:変更後の停止位置はTASC併用を前提にホーム端まで1mしか余裕が無い
右下:TASC地上子は12両・10両で共有しているため、10両でもホーム先端に停車する。
上:高円寺駅に掲出されていた停止位置変更のお知らせ
中:変更後の停止位置はTASC併用を前提にホーム端まで1mしか余裕が無い
下:TASC地上子は12両・10両で共有しているため、10両でもホーム先端に停車する。

 6月の記事作成時点では中央線内の各駅でホーム延長工事が続いており、未開放の駅が一部残っていました。このうち、御茶ノ水と四ッ谷を除く各駅では、8月中旬までに工事が完了し延長部分に入れるようになっています。これにより停止位置変更の準備が整ったことから、9月8日(日)始発より中野~武蔵小金井間の10駅で一斉に停止位置が変更されました。
 変更後の停止位置は各方向とも進行方向ホーム先端にある12両停止位置となっています。上記の通り中央線のホーム延長では、工事量を抑えるためTASCを併用することを前提にホームを延長する長さを極限まで削っており、停止位置からホーム端まで1mほどしかありません。わずかなオーバーランも許されなくなることから、停止位置が変更された駅では同時にTASCの使用を開始しました。停止位置が10両編成でもホーム先端に合わせられているのは、12両と10両で同じTASC地上子を兼用しているためです。

▼脚注
※グリーン車組み込み完了後、東京~高尾間を走る快速電車は全列車が12両編成に統一される。この区間では10両用に別途停止位置とTASC地上子を用意しても、数カ月程度のごく短期間しか使用せず無駄になってしまうため、組み込み期間中も12両用の停止位置に統一することとした。

TASC使用開始に伴い運用を終了した209系1000番台
TASC使用開始に伴い運用を終了した209系1000番台

 営業運転でTASCが必須となったことから、停止位置変更と同時にTASCを搭載していない209系1000番台やE233系の一部編成(H49編成)は運用から外れました。209系は東京メトロ千代田線・常磐線のホームドア設置・ワンマン運転開始に伴い同線を追われた後、中央線E233系の改造期間中のピンチヒッターとして「命拾い」をしていましたが、とうとうお役御免となる日が来てしまいました。搭載しているインバータなどの機器類が古いままであること、元が地下鉄用であるため車体幅が狭いといった仕様上の問題もあり、再度改造してどこかに転用されるのか、このまま廃車になってしまうのか注目されます。

10月からグリーン車連結開始、春までは無料で利用可能

停止位置が変更された駅に登場したグリーン車乗車口
停止位置が変更された駅に登場したグリーン車乗車口

 一昨日9月10日にJR東日本より、10月13日(日)から中央線でグリーン車を連結した12両編成の営業運転を開始することが発表されました。グリーン車の組み込み作業はこれ以降順次進められ、全編成への組み込みが完了する来年春に正式にサービスを開始する予定となっています。サービス開始までの間はグリーンアテンダントが乗務しないため、2007年の常磐線でのグリーン車サービス開始時と同様に「お試し期間」として普通車扱いとなり、無料で乗車することができます。グリーン車の有無はJR東日本が提供しているスマートフォンアプリ「JR東日本アプリ」にある列車走行位置の項目からリアルタイムで確認できます。
 営業運転が開始されましたら、改めて調査を行いますので続報をお待ちください。

▼参考
中央快速線等へのグリーン車サービスの導入について - JR東日本ニュースリリース(PDF/149KB)
中央快速線等へのグリーン車サービス開始時期および車内トイレの設置について - JR東日本ニュースリリース(PDF/298KB)
中央線快速・青梅線でグリーン車サービスを開始します - JR東日本ニュースリリース(PDF/1.5MB)
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