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『知らないと損する年金の真実』(大江 英樹 著)の読書感想文

金村 圭介(김 용규)

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最近労働分野ばかりやってましたが、社会保障分野も勉強しておかないといけないと思い、旅行中に以下の本を読みました。

知らないと損する年金の真実 - 2022年「新年金制度」対応 - (ワニブックスPLUS新書) [ 大江 英樹 ]



「年金って巷で言われているような悪いもんじゃないよね」ってスタンスで、年金の真実を教えてくれる良書でした。
分かりやすい文書で書かれているので、そこまで知識がなくても読める本だと思います。

その中でも特に勉強になった箇所を2点紹介したいと思います。

①少子高齢化が進むので年金は崩壊する?

日本は少子高齢化が進む社会なので、かつては多くの現役時代でお年寄りを支える『お神輿型』でしたが、今は3人で1人を支える『騎馬戦型』、そして将来は1人で1人を支える『肩車型』に確実に変化していきます。
今のままでは将来世代はこの負担に耐えられませんという論旨の展開は、至るところで述べられています。

しかしこれは、65歳以上か65歳未満かという単に年齢で切っただけの数字。
年金のような社会保障制度は、現役で働いている人が保険料を負担するので、単に年齢で切り分けて、その比率を比べるのではなく「働いている人が働いていない人を養っている割合がどれぐらいか」で考えるべきです。

2020年では1人が0.89人を支えています。
30年前の1990年には1人で0.96人、1970年は1人が1.05人という数字になっています。
お神輿型と言われていた1970年よりも今の方が高齢者の数は増えているにもかかわらず、支えている人数自体はわずかですか、減っているのです。

働く高齢者や女性が増加し、保険料を負担する人数が増えていることで、そのバランスはほとんど変わっていないことが分かります。
「少子高齢化が進むから」という理由だけで「年金は崩壊する」わけではありません。


確かに過去の55歳定年の時代から比べると、今は定年が60歳になり、それを過ぎても働き続けるのが当たり前。
その人たちは70歳まで年金保険料を払い続けます。

さらに、寿退社などは私語で、女性が結婚・出産後も働き続けるのも普通。
支払い不要で100%受給できる3号保険者ではなく、2号保険者のままでいてくれます。

年齢ではなく、就業者で見ることでかなり違った世界が広がっているのが分かりました。

②年金支給開始年齢は引き上げられる?

年金支給開始年齢の引き上げについてですが、これは今のところまずあり得ないだろうというのは歴史を見れば分かります。

55歳から60歳までの引き上げに要した期間は20年。
そして60歳から65歳までの引き上げは決定してから32年が経過していますが、まだ終わっていません。
全てが完了するのは2030年です。

ずっと払い続けてきたのに急に来年から開始年齢を引き上げるのは現実には不可能。
相当な時間をかけ、さらには経過措置も併せて作りながら徐々に変えていくしかありません。

将来平均寿命が90歳とか100歳という時代がくれば再び引き上げが検討されるでしょうが、その時期は少なくてもこれから10年や20年の内に来ることはないでしょう。
今の現役世代の多くの人たちにとっては、支給開始年齢が65歳というのはほぼ既定の事実と考えて良いと思います。


指摘されているように、1989年に決まった65歳までの引き上げすらまだ終わっていません。
今の65歳までの引き上げも、60歳への引き上げが完了して16年後に決定し、さらに12年後から段階的に始まった歴史があります。

65歳への引き上げが終わるのが2030年、過去と同じようにそこから次の引き上げまでに28年かかるとすると2058年。
今から35年後なので、今30歳の人なら65歳支給開始で逃げ切れることになります。
もっと早く始まったとしても、いきなり70歳開始になるのではなく、国民年金部分だけ1年刻みで遅らせるみたいに段階的に削られています。

「年金はそのうち70歳になるよ」と半ば当たり前のように言われていますが、歴史的経緯を見ても、今の現役世代の多くは65歳から支給開始論は、なかなか説得力があるように感じました。

年金に関しては本当にイメージが悪く、バイトで一緒になった大学生とかが「俺らどうせ年金とか貰えないっすから、払うだけ損っすよ」みたいな話はちょいちょい聞きます。
社労士としては、その辺のマイナスイメージを少しでも払拭できればいいなと考えています。
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Posted by金村 圭介(김 용규)
        

Comments 7

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元インデックス投資家  

金村さんの年金記事は本当にいい内容で全国紙の社説に載せたいレベルですよ
年金は払い損と言って払わない人たちに読んでほしい秀逸な内容ですね

2023/08/07 (Mon) 19:56 | EDIT | REPLY |   
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生活保護制度がある以上、年金制度は無意味。
年収中央値の会社員が40年厚生年金を収めても手取りは生活保護以下。

資産が有る人は、強制徴収&資金拘束で機会損失。
資産が無い人は、現役時の購買力低下、老後は生活保護で十分。
現在でも生活保護受給者は60代以上が6割程度。

年金は政治家・公務員の利権の為だけに存在している制度です。

2023/08/07 (Mon) 22:38 | EDIT | REPLY |   
金村 圭介(김 용규)  
コメント返信

元インデックス投資家 様

それはどうも。

名無し 様
> 生活保護制度がある以上、年金制度は無意味。

生活保護と年金では、受給までもその後も違うので、全く同意できません。
その辺のことも本には書いてありました。

2023/08/07 (Mon) 23:43 | EDIT | REPLY |   
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年金は政治家・公務員の利権の為だけに存在している制度だから廃止が望ましいが、最大限譲歩して賦課方式分は国民年金に統一して二階建て以降をiDeCoにする方が良い。国民年金の加入を任意化すると尚良い。

2023/08/08 (Tue) 22:20 | EDIT | REPLY |   
金村 圭介(김 용규)  
コメント返信

名無し 様
> 年金は政治家・公務員の利権の為だけに存在している制度だから廃止が望ましいが、最大限譲歩して賦課方式分は国民年金に統一して二階建て以降をiDeCoにする方が良い。国民年金の加入を任意化すると尚良い。

僕は、国民のためにも国民皆年金は大事で、さらに厚生年金の適用範囲を広げていくことが望ましいと考えます。

2023/08/08 (Tue) 22:24 | EDIT | REPLY |   
   

働いている人が働いていない人を養っている割合がどれぐらいかで考えるべきというのは都合のいい切り取り方。
1970年代の労働者は専業主婦と子供二人を養えるだけの収入があるムキムキマッチョ
今は非正規や女性高齢者が増えてモヤシみたいなのが老人を支えてるイメージ
そのうえ加入者の10%は年金の免除申請してるような底辺労働者
働いている人の中身が著しく劣化しているから単純比較は無意味
拠出と給付の金額推移で見ないと意味がない
こんなのに騙されるのはアホ

2023/08/09 (Wed) 10:53 | EDIT | REPLY |   
金村 圭介(김 용규)  
コメント返信

名無し 様
> 働いている人が働いていない人を養っている割合がどれぐらいかで考えるべきというのは都合のいい切り取り方。

年金の収支状況が変わっていないとの趣旨ではありません。
これまで支えられる側だった人でも支える側に回っている事実もあるので、少子高齢化=年金破綻ではないと言う事です。

2023/08/09 (Wed) 15:33 | EDIT | REPLY |   

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