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いまだ存在が明らかになっていない中間質量ブラックホールが球状星団に潜んでいる可能性

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 地球から7200光年の先にあるとある星団で、ブラックホールの”ミッシングリンク”が発見されたかもしれない。

 それは地球からもっとも近いさそり座にある球状星団「M4」の中心にある何かで、未だ正確に存在が確認されていない「中間質量ブラックホール」ではないかと考えられている。

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 その領域は太陽800個分の質量が凝縮された超高密度空間で、そばにある星々がまるで「巣に群がるハチ」のように周囲をめぐっている。

 宇宙望遠鏡科学研究所のエドゥアルド・ビトラル氏は、「あまりにも小さいので、未知の星々のメカニズムが働いているのでない限り、単一のブラックホールだとしか説明できません」とプレスリリースで語っている。

謎に包まれた中間質量ブラックホール

 巨大な星が自らの重力で崩壊することで誕生するブラックホールは、主に2つのタイプが知られている。

 1つは「恒星ブラックホール(恒星質量ブラックホールとも)」。太陽の数倍から数十倍の質量を持つ、宇宙でもっとも一般的なブラックホールだ。

 もう1つは「超大質量ブラックホール」。こちらは太陽の数百万倍から数百億倍と桁外れの質量があり、銀河の中心に存在する。

 不思議なことに、その中間の質量、つまり太陽の100倍から10万倍の質量を持つとされる「中間質量ブラックホール」はほとんど見つかっていない。

 その有力な候補ならいくつか見つかっているが、はっきりと確認されたものはない。なぜ中間質量ブラックホールが見つからないのか? これは天文学上のちょっとした謎の1つだ。

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中間質量ブラックホール(右奥)が恒星を引き裂いている様子を現した想像図 / image credit:ESA/Hubble, M. Kornmesser

球状星団「M4」に中間質量ブラックホールが?

 今回の研究では、中間質量ブラックホールというミッシングリンクを探すために、7200光年先にある地球に一番近い球状星団で、さそり座の明るい赤い星アンタレスの近くにある「M4(メシア4)」が観察された。

 球状星団は、数万から数百万の星々がぎっしりと密集した領域で、その多くはこの宇宙でもっとも古いもののひとつだ。

 もし仮に中間質量ブラックホールが宇宙のあらゆるものを貪りながら恒星質量から超大質量ブラックホールへと成長する過程にあるものだとしたら、食べ物がたくさんあるM4は捜索場所としてぴったりに違いない。

 そこに中間質量ブラックホールがあるのかどうか探るため、ビトラル氏らは、ハッブル宇宙望遠鏡とガイア宇宙望遠鏡が集めた観測データからM4にある星々を確認。

 その上で、その中心をめぐる星の動きを調べたところ、それらが直接は検出されない何か巨大なものの周りをまるで「巣に群がるハチ」のように移動していることが明らかになったのだ。

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ESOのラ・シージャ天文台にある望遠鏡で観察したM4 / image credit:ESO Imaging Survey / WIKI commons

中間質量ブラックホールが星々を動かしている可能性

 星々をそのように動かす巨大な重力の源が、中性子星や白色矮星のような高密度の星の死骸だと考えるには、そこはあまりには狭すぎる。

 それは10分の1光年の範囲に恒星質量ブラックホールが40個も密集しているような重力なのだ。

 このことから、そこには単一のブラックホールがあると考えられている。

 そこにまだ知られていない星々の物理が働いているのでない限り、中間質量ブラックホールがあるとしか説明できないのだという。

 研究チームはこの結論に自信を持っているが、きちんと確かめるために最新鋭のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡などでさらに観測を行う必要があるとのことだ。

 この研究は『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society』(2023年5月23日付)に掲載された。

References:A rare type of black hole never proven to exist could be orbiting our galaxy right now, Hubble telescope reveals | Live Science / written by parumo

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この記事へのコメント、10件

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  1. メシアは救世主の事じゃなかったっけ??
    天体のM(メシエ)はシャルル・メシエさんが彗星と間違えられやすい天体をカタログ化したものじゃなっかったっけ??

  2. これでブラックホールなら今後中間質量BHを探す指針になるし、そうじゃないなら何かしらの新しい物理の存在を示唆するわけか
    ワクワクするなぁ

  3. 通常、天文学分野のMessierをカタカナ表記する時は、「メシア」ではなく「メシエ」を使うのでは? (元の綴りがMessiahならメシアやメサイアだけど)

  4. 恒星ブラックホールが成長して超大質量になったわけじゃないってこと
    超大質量ブラックホールに始まりはなく、宇宙の多次元構造とリンクしていると考えればいい
    宇宙そのものにも始まりはなく、多次元構造との相互作用で存在している
    数学的に検証するしかない

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