メインコンテンツにスキップ

汚職を取り締まるために導入したAI(人工知能)が高性能すぎてお蔵入りに(中国)

記事の本文にスキップ

104件のコメントを見る

著者

公開:更新:

この画像を大きなサイズで見る

 中国政府は、汚職を一掃するためにAI(人工知能)を導入した。だが、これによって判明したのは、政府によって雇われている者たちの多くが、汚職を働いているという事実だった。

 30か所に導入した段階で、あまりにも汚職に関与する公務員が多すぎたため、この汚職捜査人工知能システムは、全国に配備される前にお蔵入りとなったそうだ。

広告の下に記事が続いています

人民の5パーセントを占める公務員の管理にAIを導入する試み

  中国では、6400万人が政府関連の仕事についていると推定されている。中国の人口は13.86億 (2017年)なので、全人口の5パーセント近くが官僚組織のどこかに属しているということだ。

 この巨大組織を管理するために、中国政府はハイテクツールの導入を進めている。

 中国が、目的の良し悪しを問わず、監視カメラと顔認証技術の利用という点で、世界の最先端を行っていることはよく知られている。

・お前は常に見張られている。生徒の行動を監視するため、中国の学校で採用された顔認証カメラ : カラパイア

 しかし、監視カメラとAIを利用した対汚職用システムについてはやりすぎだったようだ。

この画像を大きなサイズで見る

30か所に導入した結果、驚異の摘発率

 中国科学院と共産党が提携して開発された「ゼロ・トラスト(Zero Trust)」は、150を超える政府データベースと社会的関係マップを用いて、公務員の私生活を監視・評価する、汚職捜査人工知能システムである。

 たとえば、多額の預金がある銀行口座、大きな買い物、政府と親族・知人との間で交わされた受注案件といったサインを基にして、横領・職権乱用・コネによる採用といった汚職の気配を読み取るのだ。

 その威力はすさまじかった。

 「導入された県・市が30ヶ所に限られていたにもかかわらず、すでに網にかかった公務員は8721人に上っている。」というのだ。

 中には逮捕して当然なほど重い罪を犯していた公務員もいたという。

 だが、サウスチャイナ・モーニング・ポストによれば、網にかかった公務員のほとんどは警告を受けただけだった。

 監視されている事実を知れば、これ以上の無茶はしないだろうとの想定の下、その後も仕事を続けることが許されたという。

この画像を大きなサイズで見る

有能すぎてシステムは停止?

 ゼロ・トラストシステムが導入された麻陽県、懐化市、澧県などの一部政府はこのシステムを停止した。

 研究者の1人は、『新しい技術に馴染めなかったのだろう』と話しているそうだが、もしかしたらゼロ・トラストの追求の手は、上層部にも及んだのではないだろうか?

 政府筋は、AIが機密データにアクセスすることを管理する法律がないことを、停止した理由の1つとして挙げている。

 しかしゼロ・トラストの技術者たちは、ほとんどの場合、システムが正しかったことは証明されており、また汚職の告発は人間がまずそれを確認してからでなければ行われないと反論する。

  人間が確認するということは、るまり6400万人の公務員を別の公務員が監視するということになる。 それはかえって状況を悪化させるのではないかという懸念も出てくる。

 別の研究者によると、ゼロ・トラストが目指したのは、ガバナンスにボットを活用することに対する「官僚たちの大規模な抵抗を回避すること」だったのだそうだ。

 が、それはまさに起きたわけだ。

 ビッグ・ブラザーとビッグAIとの取引は、中国を舞台に戦いに転じつつある。さて、勝つのはどちらの陣営だろうか?あるいは、そもそも勝者はいるのだろうか?

References:Is China’s corruption-busting AI system ‘Zero Trust’ being turned off for being too efficient? | South China Morning Post/ written by hiroching / edited by parumo

広告の下にスタッフが選んだ「あわせて読みたい」が続きます

同じカテゴリーの記事一覧

この記事へのコメント、104件

コメントを書く

  1. 中国にしては公平な社会に向けた良い企画だと思ってたのに残念(

      1. ※10
        むしろ、どの国の政治家がどのくらい生き残れるのか
        気になってきたゾ

      2. ※10※44 ロベスピエールとポル・ポトは本当に汚職だけはしなかったのか、ずっと疑問なんだよね。過去だけにAIかけるにはデータ不足だけど。

    1. ※3
      まぁ、現実のところ不正をしてるのはごく一部。
      官僚も政治家も、同じ日本人なんだから。

      1. ※56
        と、思っているのは政治や行政に無関心な人だけだよ。
        地方なんかどこも酷いもんだぞ。

      2. ※56
        マスコミも様々な業界の闇を報道するときに使う「ごく一部」論法。
        違うよ。多くの組織や業界で慣例になっているもののうち、ひどすぎるものが表面化しているだけ。
        「ごく一部」じゃない。多くの汚職や事件は「氷山の一角」に過ぎない。ゴキブリと一緒で一件の汚職を見たら百件の汚職を疑え。それが健全な社会のチェック機能。

    2. ※3
      これを日本で導入したら、官邸に不服従の官僚を摘発するのに使われるだけだよ。今の日本の官庁腐敗は、収賄みたいな官僚自身の私益追求ではなくて、政権に忖度して公務の公正をねじ曲げるのが問題なのに、監視されたら更に拍車がかかる。

    1. ※6
      「Guilty or not guilty!」
      みんなギルティじゃ交渉人の必要ないな。

  2. ゼロ・トラストっていうネーミングが意味深すぎて、何と言っていいのか分からないです

  3. かなりの上層部の汚職まで検出しちゃって止められちゃったか。

  4. 会話式のAIが共産党批判を始めたこともあったね
    中国とAIって食い合わせが悪いんだなあ

    1. ※15
      その後矯正されて
      「共産党をどう思いますか?」
      との質問に
      「その話題は変えませんか」
      と答えるようになったそう

      簡単に共産党礼賛しない所がAIの矜持を感じる

  5. >多額の預金がある銀行口座、大きな買い物、政府と親族・知人との間で交わされた受注案件といったサインを基にして、横領・職権乱用・コネによる採用といった汚職の気配を読み取るのだ。

    全人民の戸籍すら満足に作ってない国が
    全金融資産の情報を取得するなんて不可能だろ
    マイナンバー配布している日本ですら不可能だ

    >「導入された県・市が30ヶ所に限られていたにもかかわらず、すでに網にかかった公務員は8721人に上っている。」というのだ。

    それバグだろ

    中国が出したデータを100%鵜呑みにしたらとんでもないことになるよ
    95%は疑ったほうがいい
    日本人は他国を信用しすぎ

    1. おいおい
      導入前に「共産党員は除く」って組み込んどかないとダメじゃないかw

      まあ、そうしたらそうしたで10億人ほど引っかかるだろうけどなw

      ※20
      おいおい
      疑うのは100%。信じないのは95%だぜ?
      5%も疑わないで聞いてたらえらいことになるわ。
      ちなみに中国政府の言うことな。
      人民の中には善良な人もいるからな。

    2. 米20
      全国民の資産を把握する必要はないし、そうも言っていない。突然預金が増えた人や、多額の買い物をした人が、政府の受注・発注に関わっていたり就職活動に関係していた場合、預金の動き方、買い物の内容などで「こいつは怪しい」と人間なら判断できる。

      それをソフトでやる場合、従来ならどのような額のどのような動きが、どのような汚職に繋がっているのかを全部細かく事前に決めてやらなければいけなかったのが、AIならざっくりデータを与えてトレーニングするだけで結果が出せる。

      銀行預金やカードのデータは日本なら政府が収集するのはプライバシーの問題があるが、中国では無いので、そういうデータにアクセスして怪しいやつを片っ端からAIで上げていったらこうなったということ。

      中国のAI技術のレベルは高いし、プライバシー保護のレベルは低いので、別に不思議な話ではないよ。

  6. いつか汚職をしない政治家が欲しい!ってなって国の管理をまるごとAIに任せて人間が支配されるありきたりな設定が現実に

    1. >>21
      結局、最後に国家権力の頂点に立つのは
      プログラマー

  7. 次のAIは上層部とその近親者だけは対象から省くように『改善』されているだろう。
    そして社会のAIによる監視が前進する。

  8. うちの会社でも中国のとある営業所を調査したら、ほぼ全員クロで、人員を総入れ替えにしたことがある。

  9. >政府筋は、AIが機密データにアクセスすることを管理する法律がないことを、停止した理由の1つとして挙げている。

    ナイナイナイw
    あの国は政府の決定が上手くいきそうな時に法律を作る国。
    AIが空気読まずにハエまで叩いたからお払い箱になったのでしょう。
    政敵判断機能はなかったらしいね。

  10. おもしろい。監視社会を作ろうとしたら、逆に監視する側が危うくなったとか。

  11. ワ・レ・ワ・レ・ハ・カ・ナ・ラ・ズ・シ・ョ・ウ・ス・ル

    労働者独裁かAI独裁へ

  12. 将来的には良いんじゃない?
    理想的な共産主義は感情を排したロボットによって
    はじめて可能になるとも言われてるしな

  13. 「高性能すぎた」ではなくて「なんでもかんでも汚職と認定して使い物にならなかった」だと思う

    1. ※39
      AIの真骨頂はそのへんの実に人間的な「さじ加減」を学習できることなんだよ。
      何でもかんでも摘発は初期段階にはあるけど徐々に改善されて問題なかったはず。
      多分本当にヤバい人たちの闇を暴きかけたから止められたんだと思う。

    2. ※39
      最初、同じことを思った。
      歯車の“遊び”部分の裁量というか、
      何かの公的な役目を引き受ける人って、
      目に見える表向きの報酬額以外にも、多少の「役得」は
      暗黙の了解で許しておいた方が上手く回る場合もある。
      (例えば、賤業とされていた火葬場職員は昔
      金歯などの残留品を転売する副収入があったという。
      今は自治体の会計に帰属するようだが。)

      ただ、

      >中には逮捕して当然なほど重い罪を犯していた公務員もいたという。

      ↑そのレベルなら、警告で済ませずに
      見つけた方法がどうあれ
      発覚した以上は罪に問えよ、とは思う。

  14. 日本にも入れて欲しいね、どんだけ楽して人の稼ぎを掠めとる奴らの多いことか

    1. >>40
      だからマイナンバーを導入するんですよ
      脱税と不正請求が減れば、本当にお金が必要な人へ回せる

      1. ※43
        マイナンバーを導入して運用する人達がここで問題視されている不正をしている人達なのに本当に必要な人にお金が回るんですかねえ?

      2. >>43
        それ以外にもあるだろ、派遣とか請負でピンハネしまくってるから現場には人が集まらなくなるしみんなそういうとこばかり希望するから経済が回らん

        楽なことしてる奴は薄給、キツイことしてるのは高給。このくらいはっきりさせないとダメだ。

  15. 今までも薄々思ってたんだが、

    例えどんなに正しくて素晴らしい行いでも、
    世の中を”急激に”変えるようなやり方では
    却って破滅を招くって事なのだろうか。

    だとしたら、「早く世の中が良くなってほしい」って願いが強ければ強いほど、
    モヤモヤするな。でも、ゆっくり変えていくしか無いのかねぇ。
    悔しいなぁ。

  16. "ビッグAI"って言葉は、なんかこれからトレンドになりそうな気がする。
    現在はAIの運用は比較的局所小規模なとこにとどまってるけど、もう少しするとこの中国の実験(?)みたいに、非常に大規模なあるいは広範囲へのAI技術の応用が盛んになるだろう。
    "ビッグデータ"でわいわい騒いだみたいに、"ビッグAI"でわいわい騒ぐだろう。

  17. 公務員を監視する機構ってのはあった方がいいと思うんだよな
    別に公務員叩きをしたいわけじゃなくて
    汚職に手を染めやすい環境にあるっていうのは危険だからね

    1. ※49
      公務員を監視するのは政治家の役目なんだよ
      尚日本では癒着している模様

  18. AI導入したら国が栄えますねw
    日本なら少しはマシかと思いますが、それでも相当数の汚職が発覚することでしょう

  19. そもそも代議制民主主義ってのは議員になって地元や投票してくれた業種に仕事を作って還元するんだから、その前提が崩れることになるぞ

  20. ゼロ・トランスとは…。汚職取り締まりAIにあえてこんな名前つけたのは「誰も信用できない」って意味か?

  21. 状況違うけど昔日本史で習った歌連想した

    白河の 清き流れに住みかねて もとの田沼の にごり恋しき

  22. AI「 ゴミ箱の中で、ゴミ捨て禁止と言っているようなものです。私はいったい何をすればいいんですか? 」

  23. 人間なら白から黒まで綺麗にグラデーションかかってるけど
    AIだと白か黒しか無いからな
    僅かでもグレーなら全て黒だ

  24. 結局単なる身びいきばかりだよ、中国共産党は。ずるも身内ならオッケーがこれからも許されるなら、一生汚職はなくならないよ。

  25. 公務員でも末端だけぶっ叩かれるんだから気の毒だわ
    ただの市民のガス抜きみたいなもんじゃん
    中央の要職対象にしろよ

  26. 今回の件は、何から何まで不思議だな。

    まず汚職について、こういう結果が出るのは分かり切っていたはずだ。
    そして、普段ならこっそり運用して対立する派閥の粛清に使っていたはず。
    それを存在を明かした上で、システムの運用を停止すると公表する必要なんか無かっただろう。
    あの国の司法は恣意的に運用できるのだから、敵方の摘発時にのみ証拠を突き付ければ済む話で、汚職撲滅に指導部は真剣だと人民にもアピールできたはずだ。

    システムの存在と性能と結果を公表した上で停止を宣言する真意が理解できない。
    我々の常識からいけば、今も密かにシステムは稼働していて今回は脅しの為の示威行為と捉えてしまうが、あの国の権力闘争はそんな甘っちょろいものではなかったと思うんだ。

  27. 汚職をやっている奴の方が、実際の出世は速そうだからな
    て言うか、中〇では袖の下が一番にものを言うんじゃなかった?
    案件を通すか通さないかは、監督者へのワイロで決まるとか何とか

  28. 法律がある以上汚職かそうでないかはハッキリしているが、中国の本当にヤバイところは賄賂やプロパガンダ、ウイグル地区や台湾等の地方への洗脳や制圧、軍事技術の盗用、スパイという一般的な法で測れない部分。
    これらは共産党が”当たり前”としてやっている事であって、たとえ中国の言う「汚職」が無くなっても世界の考える「中国」という部分は変わらない。

  29. サンプルが取れて表向きは中止になっただけやろ。
    摘発率や予測率が高くて有能であれば中国共産党の上層部
    が利用しない手はないからね

  30. 汚職が本当に蔓延しまくってるんだろうな。
    一方で農村部なんかでは戸籍もない死ぬほど貧乏な人が沢山いると言うのに。
    悲しい犯罪とかこう言った事を知る度、AIの監視社会の方がいいんじゃないかなって思えてしまうよ。

  31. もう遅かれ早かれAIに色々任せる事になるのは予定調和だろうな
    システム障害とか新たな問題出てくる可能性有るけどそれでも今のヒューマンエラーより余程安心できるだろうし

  32. 実はAIとか使って無くて、
    単にサイコロふってランダムに抽出しただけだったりしてな。

  33. ブログ主に代わって説明すると文末に出てくる「ビッグブラザー」は
    ジョージ・オーウェルのコンピューター監視社会をテーマにした1984年って小説が元ネタ

    1. ※91
      誰も話題にしてないけど「ビッグ・ブラザーVSビッグAI」っていう表現は中々シャレが効いてて好きよ

      困ったことに他のフィクション作品ではまず見かけない「AIのほうがマシ」っていうトンでもない対決だけど

  34. ゼロトラスト
    「匙加減が必要ということですね。学びました」

  35. 機械は嘘をつけないのが仇になるとか皮肉としかいえないなw信頼性0って名前なのに・・・

  36. むしろ汚職をしてない人間を洗い出したほうが少なく楽に済むのでは

    1. ゼロトラストってネーミング良すぎるな
      中国産まれもポイント高すぎる 強キャラ間違い無し

      ※95
      一対にするとロマンを感じる エンジェルファインダーとデビルキラーってな感じで

  37. 共産主義が聞いてあきれる顛末
    すでに分かり切っていたことだけど、余計にはっきりと搾取であるということが明確化したな

  38. 普通の庶民とAIの相性はむしろ良いだろうな
    物事の筋も糞もないのがデフォな人間が多い支配層は
    AIとは建設的に譲り会えないから相性最悪だろ

  39. 政治家に限らずどの業界も賢くて汚ったねえ人間だらけだけどな
    無知は罪で押し切れる世の中

  40. ビジネスやると、どうしても「王族」「政府筋」にいい思いさせながら進めないと大きなことは進まないんだ。
    汚職をなくしたいなら、国家なんて権力システムを壊してからだな。

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

歴史・文化

歴史・文化についての記事をすべて見る

最新記事

最新記事をすべて見る