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戦場の犬 – 兵士として戦う軍用犬、米国のミリタリー・ワーキング・ドッグ(MWD)

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 千年もの間、人と共に戦場を駆け抜けていた。そして今日にいたるまで、彼らは厳しい訓練を受け交戦地帯にいる。人の都合で戦争に駆り出される彼らだが、信頼という絆で結ばれている犬は嬉々として与えられた役割を全うすべく行動を共にした。

 海外サイトにて、偵察や追跡、探知、そして見張り番などの役目を担う「軍用犬」とハンドラー(その犬の調教、訓練する兵士)に捧げる記事が掲載されていた。

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 交戦地帯にいる軍用犬は見過ごされやすいというのは事実だ。多くの人々は犬が使われていることを全く知らない。彼らは配属された場所で大いに貢献する。このように人知れず活躍し、戦いを勝利に導いてくれた犬たちに敬意を払おう。

グアム解放に貢献した犬の記念碑に立つ二等兵曹ブレイク・ソーラーと軍用犬のリコ

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 記念碑には”1944年、25匹の海兵隊軍用犬がグアム開放のために命を捧げた。彼らは見張りや伝令、偵察としての任務を果たした。彼らは洞窟を探り、地雷やブービー・トラップを探知した。 実に忠実な仲間だった。” という言葉が刻まれている。

訓練を終えた後の軍用犬ポシャと海軍伍長ウイリアム・スートラ

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 一匹の犬を軍用犬にするための訓練には非常に長い時間がかかる。この写真は、公開訓練を終えたあとの写真だ。彼らは2009年の末にかけて一緒に配属された。配属期間中、犬は喜んでチームに加わる。また、親しみの湧く犬の顔を見ると士官らも幸せな気分となる。犬はたいてい積極的に任務を受け入れる。彼らは警備をするだけでなく、周囲の人々を楽しませてくれるのだ。当然ながらほとんどのハンドラーは、”自分の軍用犬と働くこと”が最高の仕事だと考えている。

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 犬とハンドラーの仕事は、周辺を歩き回るような単純なことばかりではない。ヘリコプターから降ろされ、現地の任務をこなし、再び吊り上げられることもかなり多い。だが心配はいらない。犬は事前に訓練されているうえ、彼らのほとんどはその体験をとても楽しんでいるそうだ(事実、これも訓練任務だ)。

第101空挺師団のリザと二等軍曹のデビッド・ホーンズビー

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 写真のリザは第101空挺師団に所属している。二等軍曹のデビッド・ホーンズビーに抱えられ安全に釣り上げられている。この写真はアフガニスタンのバグラム空軍基地の外で撮影したものだ。

軍用犬ロニーと二等軍曹マイケル・ハイリー

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 犬の目は人間の目よりも埃が入りやすく、特別な装備を要する場合がある。2009年のバグラム空軍基地では、二等軍曹マイケル・ハイリーとピッタリと固定されるようにハーネスが使われた。軍用犬の中でもカッコいいと評判のロニー(Rronnie)。なんでもサラリとやってのける彼の名前には[r]が2つも入っている。

 犬達が配置される場合、危険な場所に送られることは言うまでもない。現地にIED(即席爆発装置)がありそうな場合、任務にあたる人々を守ることが彼らの仕事になる。

ヘリコプターに乗り込むリコと二等軍曹フィリップ・メンドーザ

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 クールなサングラスが決まっている軍用犬のリコ。第332空軍警備隊の二等軍曹フィリップ・メンドーザは、2009年6月からリコを連れてヘリコプターに乗り込む練習をしている。その訓練目標は空からの急襲作戦に備え、チームが安全に航空機に乗り降りできるようになることだ。

空中からダイブする軍用犬とハンドラ―

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休息をとるときも、もちろん一緒だ

 犬は人間が100万年かけてもできないことをやってのける。そしてその勇敢な性質は驚異的としかいいようがない。彼らはたいてい2才前後で初めて配置される。その期間はおよそ7ヶ月間続き、その任務が終わるまで、ハンドラーと軍用犬は課せられた全ての任務を一緒に出向く。例えばブービー・トラップが仕掛けられた道に向かったり、lEDを見つけに建物内に入ったり、または彼らの部隊の休息を守るためにペアで出かけていくのだ。

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爆発物の確認をする軍用犬とハンドラ―

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 この写真はイラクのディヤーラー県で1等兵曹ショーン・マリガンが撮ったもの。1匹の軍用犬と第2歩兵師団所属のハンドラーが、ちょうど建物内の爆発物などを一掃したところだ。

 かつて軍用犬にはジャーマン・シェパードを使うのが主流だったが、ここ十数年は小型であっても嗅覚が鋭敏な犬が使われるようになってきている。軍用犬には世間一般には知名度が低い品種であるダッチ・シェパードが非常に多く、またベルジャン・シェパードドッグ・マリノア(ベルギー原産種)も人気がある。

ヘリポートで待機中の軍用犬とハンドラ―

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 こちらはマルコという名の7才のベルジャン・マリノアと、彼のハンドラーであるアリッサ・ジョーンズ三等軍曹。彼らはバグダッド・キャンプリバティーのヘリポートで待機しているところだ。このペアはオクラホマ州のティンカー空軍基地からイラクへ派遣された。米国空軍所属の軍用犬チームは世界中に500以上ある。軍用犬のほとんどが、現在アメリカ唯一の訓練施設であるラックランド空軍基地で訓練を受ける。

熱が上がり手当てを受ける軍用犬

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 軍用犬は大きなプレッシャーを受けて体温が上がることがある。ライキーは、少々興奮しすぎたので救助を呼ばざるを得なかった。巡回任務を行うの軍用犬の体温はしっかりとモニターされていて、摂氏およそ39度を超えた場合は何らかの手を打つ必要がある。

 米陸軍三等軍曹ローレンス・キャメロンは、ライキーに点滴を投与した。彼はトレーナーではないが、ライキーのハンドラーであるジェームス・ハリントン三等軍曹からその対処法を見せてもらっていたのだ。ちなみに漫画みたいな話だが、キャメロン軍曹の無線コールサインは”犬の衛生兵”だ。

攻撃の前に待機中の軍用犬とハンドラ―

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第5海兵連隊第2師団の軍用犬とハンドラー。イラクのラマーディ市で休憩している。

 よく働いた後はご褒美の休憩が必要になるときもある。2007年4月、イラクのディヤーラー県のBuhrizにある安全な隠れ家で待機するケヴィン・リース二等軍曹と彼の軍用犬グレック。これから彼らは反乱軍に対する猛攻撃を行う予定だ。

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 こちらも撮影地はイラクだが、モスル市のメデューサ計画のときのものだ。第549憲兵部隊所属のこの兵士はイラクの治安部隊と共に、”罪のない一般市民を殺すのは許さない”とテロリスト容疑者に声明文を送った。それでも相棒と過ごす休憩時間はまだ少し残っている。

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爆発物を確認する軍用犬のエディ

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 軍用犬の役目は重要で、部隊全員の命は1匹の犬にかかっている。こちらはバグダッドで第2ストライカー騎兵連隊の兵士と共に巡回するエディ。ちょうど警官が麻薬犬を扱うように、よく訓練された軍用犬は、様々な種類の爆発物が発するかすかな臭い嗅ぎつけることができる。これこそが捜索や哨戒任務で彼らが頼りになる証なのだ。彼らの爆弾探査での成功率は、98%に達すると考えられている。

爆発物で命を落とした軍用犬とハンドラ―

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 最悪な事態に直面することもある。この写真は第94地雷犬ユニット所属の下士官コリー・D・ウィーンズと、彼の相棒クーパーだ。彼らは2007年7月、イラクで哨戒中にIED(即席爆発装置)により共に亡くなった。それはイラクとアフガニスタンの戦争が始まって以来、初めて軍所属の軍用犬チームが命を奪われる出来事だった。彼らは火葬の後、ウィーンズの故郷ダラスに一緒に埋葬された。軍用犬チームに犠牲者が出たのはベトナム戦争以来のことだ。

軍用犬の追悼式

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ジェニとスティーブン・スナイダー兵長

 2009年8月アフガニスタンのカンダハール飛行場にて、任務中に亡くなった軍用犬の追悼式が行われた。多くのハンドラーにとって、犬を失うことは我が子を失うに等しいほどの悲しみを伴う。追悼式はそのつらさに向き合い、前に進むために行われる大切な行事だ。

 ハンドラー達は深い悲しみという精神的な重荷を背負うだけでなく、自分の犬を危険な目にあわせて死なせてしまったという、必要以上の罪悪感にとらわれてしまう。寄付金とボランティア活動を通じて軍用犬を偲ぶための慰霊碑が建てられた。

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兵士らとボール遊びをするセラピー犬

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 犬は交戦地帯にいる軍人たちのストレスを軽減できると証明されている。こちらはバッジ。イラク北部の第528衛生隊から派遣され、数名の兵士達とボールで遊んでいる。イラクに派遣されている2匹のセラピー犬のうちの1匹だ。兵士たちに慈愛と安らぎを与えることで彼らの敵意を鎮めることが望まれている。

犬の有用性をイラク人兵士に説明する米軍兵士

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 犬とハンドラーはたとえ交戦地帯であろうと重要な仕事をこなす。こちらは第18警務隊の二等軍曹マイケル・ハイリーと、第二歩兵師団の兵士が打ち合わせしているところだ。米軍や他の軍隊が去った後でも軍用犬はイラクに留まり、現地人の部隊と任務を続行するのだ。彼は、犬がモスルの前線で探索や拘留、そして攻撃にどれだけ役に立つかをイラク人兵士に説明する。そして彼のそばには人気者のロニーが控えている。

引退後の軍用犬

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 かつては、軍務が終了すると軍用犬は安楽死させられるという時代もあった。だが今はそんな事はなくなり、軍用犬はペットとして飼えるようになった。また、職務を終えてセラピー犬になるといった新たなキャリアで仕事を続けることもできる。写真は軍務を引退して5年になるアランだ。2009年の11月にあった特別式典の際に陸軍の表彰式に招待された。

戦場でも犬は人間にとって一番の親友

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via:The Dogs of War – A Tribute to the MWD, Military Working Dogs 原文翻訳:R

 軍用犬兵士の友人になるだけでなく、多数の軍人の命を救う。写真の中でロードはスティーブン・スナイダー兵長にハグされている。お互いが通じ合ってる様子が伝わる素晴らしい一枚だ。

訓練を受ける軍用犬

追記:本文を一部訂正して再送いたしました(2015/12/19)

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この記事へのコメント、39件

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  1. ロニーさんマジかっこいいけど、「なんでもサラリとやってのける彼の名前には[r]が2つも入っている」ってどういう意味なんだろう。
    なんかRとなんでもサラリとやってのけることの間に関係あるんだろうか。

  2. 殉職した軍用犬の中には、負傷で動けなくなって苦痛を終わらせるため、
    泣く泣くハンドラーが引き金引いた事例とかもあるんだろうな。

  3. 爆弾背負わせて戦車の下に潜り込む時代よりかは犬の仕事もマシになったかねぇ

  4. 昔、イギリスでトランシーバーを背負わせて、遠距離から指示を出して行動させるっていう軍事目的の実験があったけど、結局正式採用されなかったんだよね
    犬用パラシュートを使う想定でパラシュート降下訓練とかもやってたらしいし、イギリスって犬単体で動かす方針だったのかな
    兵士との信頼関係が築けないとか、犬を道具みたいに扱うのに抵抗があったとかで、そういうのは廃れたんだろうけど

  5. 軍隊に犬がいるだけで兵士は癒されるだろうなあ
    カリスマドッグトレーナーで軍用犬のリハビリもやってたけど
    犬にも相当の負荷がかかってるだろうに犬は本当にけなげだ

  6. >かつては、軍務が終了すると軍用犬は安楽死させられるという時代もあった。
    これは「問答無用で敵を噛み殺すように訓練された殺人犬」のことだ。
    ベトナム戦争時にベトコンの巧妙な夜間戦闘に苦しめられた米軍が使った。

  7. どうでもいい侵略戦争に駆り出されるかわいそうな動物たち

  8. 表彰される程優秀な海兵隊所属の熊もいた、、、、はず。
    犬と人間の間には切っても切れ無い信頼とか、絆が確かにあるよな。
    もう一度会いたいよ。

  9. 兵隊さんとの強い絆を感じるなあ~ところでわんこちゃんはベルギアンシェパードのマリノアが多いな。

    1. ※12・17 ヴォイテクは部隊章にまでなってたね。
      ※32 そこまで手をかけるだけのメリットがあるかな。是非とも開発されないことを祈るばかりで。

  10. ローレンス・キャメロン三等軍曹のコールサインはDawgMedicであります。発音がDogに似ているがDawgの意味は『仲の良い友達』だと思うのです。

  11. 綺麗事と言われても、俺は反対だよ!
    人間の争いに動物巻き込むなんて!!

  12. こういうのも動物虐待っていうのじゃないかな?可哀想だとか動物にも人間と同じ生きる権利があるんだっていう割にはこういう事をする。
    得手勝手な奴らさ。

  13. ひとつの権利に対して、手を上げるものが複数居る事象がなくならない限り、どんなレベルであれ競争は生まれる。暴力的でない駆け引き取引で決着が付かなかった場合次の段階に移る。この世の権利が均等に配分されない以上、またそれを望む者が少ない以上戦争は無くならない。

  14. 人間の争いに動物を巻き込むことには全面的に反対だけれど、自分が兵士だったら戦場に犬がいたらだいぶ精神的に救われるだろうなって思うね。

  15. 忠実過ぎる、人間にはまずマネできん
    故に絶対な信頼が置けるんだろうな
    どこまで技術が進歩しても生物の有する能力に勝るのは遥か未来か

  16. イルカとか犬なんか昔爆弾を背負わせて、敵に突っ込まる訓練とかしてたもんな。
    犬は自軍の戦車で訓練したもんだから、離した途端に自軍の戦車につっこんで自爆したそうだが。
    システマチックに生き物を扱う癖に、イルカクジラ殺すなとか喚いて来てウザいよね。

  17. そのうち軍用犬を噛み殺すように訓練された軍用犬とか軍用犬をターゲットに変異させたジステンパーとか登場するんだろう

  18. そもそも人間と犬が結びついたのは、見張りと狩猟における協力関係なんだから
    ペットなどと言って狭い家の中で飼い殺ししているほうがむしろ異常
    戦いと死こそが異なる生物を結びつける

  19. 地雷背負わせて突撃させたら戻ってきたなんて話もあったな。あれはなんだっけか

  20. かわいそうって言うけど、必要なんだから仕方ないよ 軍用犬もいれば、新薬お試しネズミ 時には人体実験だって…簡単に非難出来ないでしょう。

  21. 記事に誤訳が有ります。慰霊記念碑写真の解説ですが海軍軍用犬ではなく海兵隊軍用犬です。
    navy wardogと書いていれば海軍軍用犬ですがmarine wardogと書いてあるので海兵隊軍用犬です。海軍と海兵隊は全く別の組織です。
    戦死された彼らや国に尽くす方々の名誉を守る為に敢えて書きます。アメリカでは軍人の名誉を重んじるので原文に忠実に訳すのが彼らに対する敬意の1つだと思います。
    本当に彼らのお陰で安全が保たれている事に感謝と敬意を払います。

  22. 軍や武装警察のように殺し合いの戦争に使われる兵士にわんこを雇うよりも災害救助犬にして震災等災害時に人命救助復興支援に犬を使って頂きたい。災害救助犬の方が311経験した人類にとっても犬にとっても素晴らしい国際貢献になるだろう。

  23. こう見ると否定的な人が多いけど、こうして人と犬が共に歩んできたからこそ人と犬の信頼関係があるんだし、歴史ができてると思うんだから、私は素敵な関係だとも思う。

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