BLOOD-Cとは (ブラッドシーとは) [単語記事]

『BLOOD-C』とは、Production I.G 制作のオリジナル TVアニメーション作品である。

2011年 7月よりMBS・TBS・CBCで放送された。全12話。ニコニコ動画でも2011年 7月14日から10月6日まで最新話が1週間無料配信された。

概要

ストーリー・キャラクター原案をCLAMPが、制作をProduction I.Gが担当するアニメ作品。

『月刊少年エース』（角川書店）にて2011年 7月号より琴音らんまるによる漫画版が連載されている。

劇場版映画の公開が2012年 6月2日に予定され、文化庁の国際共同製作映画事業による支援（補助金5,000万円）も決定している。

あらすじ

浮島神社の神主の一人娘で巫女でもある更衣小夜は、私立三荊（さんばら）学園に通う高校2年生。彼女は鄙びた田舎での学園生活を過ごす一方で、父・唯芳の命により浮島神社に伝わる御神刀を使って『古きもの』という化け物を狩る任務を負っていた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「ヌシ…、約定ヲ守レ…！」

『古きもの』は人をはるかに凌ぐ力を持っており、対抗出来るのは小夜ただひとり。大切な人々を守るためひとり戦う彼女に、どのような運命が待ち受けているのであろうか。

登場人物

この節は、物語に関するネタバレ成分および残酷な描写を多く含んでいます。
未視聴の方およびグロ耐性の弱い方はその旨ご了承の上お読みください。
なお、更に核心に迫るネタバレについては文字を反転してご覧ください。

更衣小夜（きさらぎさや） - CV：水樹奈々: 三荊学園に通う女子高生。イタいファザコン父を盲目的に慕っている。母は小学生に上がる頃に死亡。田舎町に似合わない何処か浮世離れした少女で、登校中でも鼻歌（※実は中の人のアドリブ）に夢中で困ってるモノを放っておけず毎日遅刻ギリギリというお人好しのドジっ娘。見かけに依らず頑丈で優れた身体能力を持ち、戦いに赴くと冷徹な戦士へと豹変する。第7話でノーブラ派と判明（ヌーブラ派説も根強い）。
実は更衣というのは偽名（他の登場人物も大体は偽名）で、元々はどこか別の場所で戦っていた「古きものを糧とする」人型の古きもの。文人に拉致され実験材料となり、「人間を守ることを義務とする」人格と偽の記憶を植え付けられたのが劇中の小夜であった（つまり人間を守るというのは本来の「小夜」の意思ではない）。結局第11話での「メインキャスト」の裏切りを契機に本来の人格を取り戻したが、第12話の決戦で左目を失った。
更衣唯芳（きさらぎただよし） - CV：藤原啓治: 小夜の最も尊敬する父親。厳格な性格だが、小夜には基本的に甘い。浮島神社の神主で御神刀を管理している。
実は古きものと人間の混血児であり、小夜とは赤の他人。文人に協力し父親を演じる一方で「光の先が見えるか」と小夜が本来の記憶を取り戻すことを願っていた。本気で戦う際に獣人型のださきもの古きものとしての姿を現す。第12話で小夜の血を無理矢理与えられ、それに秘められた「古きものを使役する力」により文人に操られるが、完全に覚醒した小夜に敗れ「偽りでも（自分と近しい存在である小夜と）共にいられたことが嬉しかった」と言い残して絶命。小夜は全てを理解した上で、最後まで彼を「父さま」と呼び続けた。
七原文人（ななはらふみと） - CV：野島健児: 神社の前にある、町随一のカフェ『ギモーブ』のポエム作家マスター、略してギモマス。唯芳とは古くからの友人。小夜には少なくとも朝昼の食事とコーヒーを毎日振る舞い、店名にもなっている菓子"ギモーブ"もよく作って渡している。メガネ属性もちの可能性あり。
実はかつて小夜を拉致し抜き取った血の力で古きものたちを操って、小夜という特別な古きものを自在に使役できるかどうかというこの壮大な茶番劇実験を行っていた黒幕。日々のコーヒーには小夜の本来の人格を抑える作用があった。第12話で小夜の撹乱と不要となった関係者の始末を兼ね凶悪な古きもの（後述）を街中に放ち逃亡し、それでもなお追いすがる小夜の左目を銃で撃ち抜いた。
網埜優花（あみのゆうか） - CV：浅野真澄: 小夜のクラスメイト。キツそうな見た目に反して、根は優しい姉御肌のしっかり者。常識のない小夜によく小言を言う。第9話、タチコマ巨大クモ型古きもの（CV：滝知史）に追われ、クラスメイトたちと逃げ込んだ屋上にて脚部で腹を刺し貫かれ死亡。…したのは替え玉であり、11話で生きていたことが判明。それまでとは打って変わって丁寧な口調で話していた。実は見た目より大分年上（都知事になろうとしていたので30歳以上？）らしい。文人と共に数少ない生存者の一人。
求衛ねね（もとえねね） - CV：福圓美里: 小夜のクラスメイトで、呼吸がピッタリな双子の片割れ。前髪の編み込みを向かって右に流した方がねねで、左がのの。第5話ラスト～第6話冒頭でフラグ成立後、巨大ムカデ型古きもの（CV：なし）によって即マミる。実はマミった死体は偽者で、のの共々第10話ラストに再登場し、第11話で真相をバラし二人して小夜を嘲弄した。しかしそれは実験の存続に関わる重大な違反行為であった為、第12話で彼に操られた肉食獣型古きもの（後述）に捕まり、必死の抵抗や懇願も虚しく股間を裂かれ喰われた。
求衛のの（もとえのの） - CV：福圓美里: 小夜のクラスメイトで双子の片割れ。2人とも毒舌家だが悪気はなく、小夜のことが大好き。ののの方が少し怖がり。第6話で自身の影に寄生したカオナシ古きもの（CV：なし）に取り込まれ、小夜に狩られる。しかしねね同様、取り込まれたのは本人ではなかった。実は二人とも本来はかなり性格が悪い犯罪者であり（少女買春の斡旋を想わせる発言がある）、その揉み消しを条件として実験に参加していた。第12話では逃走中にねねに突き飛ばされ転倒、肉食獣型古きものに両足首を掴まれ石畳に数回叩きつけられたのち喰われた。
鞆総逸樹（ともふさいつき） - CV：阿部敦: 小夜のクラスの委員長でメガネ男子。小夜に気があるのはクラス公然の秘密で、よく世話を焼くものの全てが空回りに終わる。小夜は小夜で全然気にしていないというか、箸にも棒にも・・・といった次第。第11話ラストで文人や優花と共に現れ、小夜に真相をバラした裏切りメインキャストたちを諌める。一応、他のキャストよりは小夜を気にかけているそぶりを見せ、第12話で文人の私兵の銃撃から小夜を庇い死亡。最期には正体を知りながら小夜を「かわいい」と想っている旨を告げるなど、数少ない小夜の味方であった。
時真慎一郎（ときざねしんいちろう） - CV：鈴木達央: 小夜のクラスメイトだが、ぼっち気味で無口。いつも小夜に対して何か言いたげであるが、小夜はあんまり気にしてない。第10話で少女姿の古きもの（後述）に丸ごと喰い殺された。・・・のは多額の報酬を手に入れる為の演技（トリックは不明だが、「時実」を喰った直後に古きものは何故か空腹と人間を食べたい旨を小夜に訴えている。喰われたのは時実どころか人間ですらなかったかもしれない）。第8話でのハグも、第9話での告白ももちろん演技で、第11話でかつてミゾオチにムーンサルトダブルニープレスを見舞われたことへの血を啜る「化け物」へのあからさまな嫌悪を示し、「カァネはどォーなるんだよォー!?」という屈指の名言と共に魂の守銭奴・時金銭一郎として覚醒。しかし結局一銭ももらえないまま第12話で猛獣型古きものに頭を潰され食われました。
筒鳥香奈子（つつとりかなこ） - CV：宮川美保: 白衣に鴨羽色のキャミソール、短い暗色のタイトミニにパンプスというエロい格好で男子に大人気の乳取り先生クラス担任。担当は化学であり、誠に残念ながら保健医ではない。だが喜べ諸君、下着は紫だ。えろきもの古きものの存在を知っているかのような発言をしているが・・・。それは緩慢な実験進行への苛立ちからくるものだった（つまり視聴者は彼女の苛立ちを半ば共有していたことになる）。実はニセ教師で、小夜の存在のヒントを百人一首に求めたが故に学会から見放された学者であった。実物を追って実験に参加していたが、主任の文人は研究者としてライヴァル()ということもあり、ついに彼の方針に業を煮やして独断で進行を早めるべく、時実と双子をそそのかして小夜に真相を告げる。「もうそろそろ終わりにしましょう…こんな茶番劇は」→終わったら猛獣型古きものに襲われました→「小夜」に救われるものの半狂乱で逃走→すがりついた唯芳（半覚醒）に頚動脈を噛みちぎられ断末魔の中で失血死。しかし覚醒した「小夜」が自分を虐げた存在でありながらも自主的に救出しようとした唯一の人間（人間を救うのは本来の小夜の意志でない、にもかかわらず）であった。

※以上がメインキャスト。以下はエキストラ、古きもの、その他。

ギモーブ - CV：（なし）: ※『BLOOD-C』の半分は ■ ←コレでできています。敵わないデザートプリン。文人曰く、小夜に食べさせてたのは古きものの血が入った特別製。小夜が人間を糧とできるよう、内臓に似た食感（風評被害）で選ばれたらしい。
約定（やくじょう） - CV：（なし）: ※『BLOOD-C』のもう半分は薬事法約定できています。小夜は事あるごとに古きものたちから「約定を守れ」という謎の諫言を告げられるが・・・？約定とは厳密には「朱食免（ひじき麺しゅじきめん）」と呼ばれる。はるか昔に強大な力を持つ古きものと時の有力者たる人間との間に交わされた取り決めであり、その内容は「古きものは一定数までの人間ならばこれを捕食してもよい」というもの。しかし文人の実験は古きものたちを小夜の血の力で操り餌として小夜に供する（殺させる）というものであり、明らかにこの約定に反するものだった。
犬 - CV:福山潤: 小夜の登下校時にたびたび姿を現していた四月一日君尋小さな犬。第6話で人語を話し、小夜に現状への疑問を投げかけるような発言。そして第7話では某作品とのリンクを堂々と臭わせ、第8話で淫獣化した、えろきもの。
パン屋 - CV：（なし）: 美形若夫婦が経営するパン屋「うぐいす商店」の主人。第3話に登場し、誘われるように夜の無人駅へ向かい、汽車型の古きもの（CV：上田燿司）に触手攻め喰われる。イケメンリア充にはおよそ冷淡なはずのニコニコでは諸所の事情*で同情票を多く集め、役名も声も無いのに今や嫉妬をされる程の大人気。*いわゆる見殺-C
山田、ほか2名 - CV：小野友樹、井上剛: 役名は「住民」。第4話に登場し、夜の湖？に入り貝漁らしきことをしていた所、突如現れた巨鳥型古きもの（CV：増谷康紀）とその手下に襲われて喰われる。山田も悲鳴しかセリフが無いのに、ニコニコではたまに名が上がる程の人気。一人が「話が違う……っ」という謎の言葉を残していたが、意味が第11話で判明した。
古きもの（第5話） - CV：川澄綾子: 貴人のような古風な口調に旅の巫女スタイルで錫丈を操り、零れ落ちんばかりの大きく円らな瞳を持つ美少女型古きもの。というか目玉姐さん。小夜のシャイニングフィンガー徒手による眼潰しで退治される。
酒屋、ほか数名 - CV：白川りさ、牛田裕子、田中雅之、徳本英一郎: 役名は「町の住人」。第6話に登場し、昼間の商店街での戦闘の巻き添えで喰われる。酒屋はちょい人気。
巡査（第7話） - CV：加藤将之: 第7話には巡査が2名出てくるが、これは後で出てきた警官のくせに堂々とノーヘルでパトロールしてる方。小夜との会話中に ↓ の奴に後ろからズッパシ！（中の人つながり）。
古きもの（第7話） - CV：三宅健太: 時代がかった豪放な口調の武者の様な姿をし、高笑いすらしてみせる異色のホンダム巨大武人型古きもの。戦闘中に追加の腕がどんどん増えると思いきや、同じ側の腕を同時にしか動かせなかったり、お喋りしてると元の1組しか動かせなかったりと、結構ぶきっちょさん。小夜に正中線に沿ってズッパシやられる。割られた仮面の下の素顔は、キャラの割には意外とイケメンさん。最期に唯芳に真実を問うよう小夜に忠告する。
サイトウ、ヨシト、etc… - CV：河西健吾、西健亮、坂東孝一、黒沢寿樹、山口理恵、内山有実、佐々木智代: 役名は「男子生徒」「女子生徒」。小夜のクラスメイトたち。第8～9話で古きものに容赦無く次々と蹂躙される。
古きもの（第10話） - CV：佐藤利奈: 長い乱れ髪で全身をすっぽりと包み隠す少女型古きもので、自在な飛行能力と高い再生能力をもつ。その実態は「超級覇王電影弾」の使い手である流派・東方不敗頭部から下には背骨しか無い超ウルトラスリム体型であり、ニコニコではその人形めいた整った造作と気怠げな表情・口調が「かわいい」と評判。しかし小夜に真っ二つにされた彼女の頭蓋にはカブトムシの幼虫のようなものがビッチリと……ｶﾞｸｶﾞｸﾌﾞﾙﾌﾞﾙ。モザイク仕事しろいやしてくださいおねがいします。
古きもの（第11話） - CV: 長井将孝: 巨大なさよなライオン大型肉食四足獣型古きもの。長めの耳の先端からは巨大な人間の肘から先が出てくるようになっている。完全に文人の支配下にあり、楽しい仲間をポポポポーン裏切り者たちを続けざまに喰らっていくが、完全覚醒した小夜に体内から鉄棒で貫き破られ絶命した。
古きもの（第12話） - CV: 長井将孝: 巨大なありがとウサギウサギ人間型古きもの。と言っても身体は自在に変形可能で、真っ二つにしても分裂、しなくても数体の楽しい分身にポポポポーンと分裂する。逃走時の撹乱と実験の後始末のために文人が放ったもので、街中を逃げ惑うエキストラたちを次々と文字通り「血祭り」に上げていったが、小夜が本体を見つけ細切れにすると他の分身は動かなくなった。
アッコ - CV : （なし）: OPに登場。ニート回避したり、玄米食わしたがったり、三つも埋まっとったり。という見事としか言いようのない空耳はさておき、日英仏3カ国語の混成（2番は全て仏語）であるOPの歌詞は「小夜」の境涯をストレートに熱くぶちまけたもの。対して水樹奈々自ら作詞のEDは一見ラヴソングの形をとりつつも「如月小夜」の心境を抒情的に表しているとも解釈できる。つまり、どちらも一般向けのポップスやロックを装ったガチのアニソンだったりするのだ（同様のアニソンは『デッドマン・ワンダーランド』のOPおよびEDが記憶に新しいだろう）。

スタッフ

主題歌

オープニングテーマ「spiral」: 作詞：DUSTZ / 作曲：DUSTZ&BOND×L!TH!UM / 編曲：BOND×L!TH!UM / 歌：DUSTZ
エンディングテーマ「純潔パラドックス」: 作詞・歌：水樹奈々 / 作曲：吉木絵里子 / 編曲：陶山隼

放送局

ニコニコ動画でも2011年 7月14日から最新話が1週間無料配信されていた。毎週木曜日午前3時の配信。また、同年8月18日から8月31日までの間、第1話～第5話の無料配信キャンペーンがなされた。

放送局	放送開始日	放送時間
MBS	2011年 7月7日	木曜日 25:40～（初回25:55～）
TBS	2011年 7月8日	金曜日 25:55～（初回26:25～）
CBC	2011年 7月13日	水曜日 26:00～

各話リスト

話数	サブタイトル	放送日（ニコニコ動画）
第1話	あまつかせ	2011年 7月14日
第2話	きみがため	2011年 7月21日
第3話	ひとはいさ	2011年 7月28日
第4話	なげけとて	2011年 8月4日
第5話	めぐりあひて	2011年 8月11日
第6話	かぜをいたみ	2011年 8月25日
第7話	うかりける	2011年 9月1日
第8話	よのなかよ	2011年 9月8日
第9話	こころにも	2011年 9月15日
第10話	ふくからに	2011年 9月22日
第11話	たれをかも	2011年 9月29日
第12話	わすれじの	2011年 10月6日

サブタイトルについて

各話サブタイトルは小倉百人一首から採られている。話の内容とは若干の対応が見られるようだ。参考訳を付した。

第1話　あまつかぜ: 第12首　天つ風雲の通ひ路吹き閉ぢよ乙女の姿暫し留めむ　僧正遍昭（816-890）　
　　　　　　（天の風よ、雲の通り道を閉ざして、天女たちの艶姿をもう少しこのまま留め置いてくれ）
第2話　きみがため: 第15首　君がため春の野に出でて若菜摘むわが衣手に雪は降りつつ　光孝天皇（830-887）
　　　　　　（貴女にあげようと野に出て春の野草を摘む。袖に雪を降り積もらせながら）; 第50首　君がため惜しからざりし命さへ長くもがなと思ひけるかな　藤原義孝（954-974）
　　　　　　（貴女の為なら惜しくなかったこの命、もうしばらく永らえたいと今では思うよ）
第3話　ひとはいさ: 第35首　人はいさ心も知らず古里は花ぞ昔の香に匂ひける　紀貫之（866/872?-945?）
　　　　　　（君の本心は判らないけど、きっとこの里の懐かしい梅の花のように変わっていないだろう？）
第4話　なげけとて: 第86首　嘆けとて月やは物を思はする託（かこ）ち顔なる我が涙かな　西行法師（1118-1190）
　　　　　　（眺めれば泣けとばかりにあれこれ思い出す、と月を睨む恨みがましいこの顔にも涙が浮かぶよ）
第5話　めぐりあひて: 第57首　巡り逢ひて見しやそれとも分かぬ間に雲隠れにし夜半の月かな　紫式部（973?-1014/1025?）
　　　　　　（やっと会えたのに、顔をよく見れたかどうかも分からないうちに、曇り夜の月の様に消えてしまった）
第6話　かぜをいたみ: 第48首　風を痛み岩打つ波の己のみ砕けて物を思ふ頃かな　源重之（?-1000）
　　　　　　（ひどい突風で岩に打ち砕ける波のように、頑ななあの女性に身も心も悩み張り裂けそうなこの頃だ）
第7話　うかりける: 第74首　憂かりける人を初瀬の山颪（おろし）よ激しかれとは祈らぬものを　源俊頼朝臣（1055-1129）
　　　　　　（初瀬観音よ、祈りもしないのに、あの冷淡な女性をこの山颪のようにつれなくするおつもりですか）
第8話　よのなかよ: 第83首　世の中よ道こそ無けれ思ひ入る山の奥にも鹿ぞ鳴くなる　皇太后宮大夫俊成（1114-1204）
　　　　　　（この世にはもはや行くべき道は無いのだろうか。人里離れたこの山奥でも鹿が世を嘆いているよ）
第9話　こころにも: 第68首　心にも在らでうき世に存らへば恋しかるべき夜半の月かな　三条院（976-1017）
　　　　　　（一心にこの辛いこの世をしのいでいれば、いつかこの美しい月を懐かしめる日も来るのだろうか）
第10話　ふくからに: 第22首　吹くからに秋の草木の枝折（しを）るれば宜（む）べ山風を嵐と言ふらむ　文屋康秀（?-885?）
　　　　　　（「山」から強い「風」が吹くと秋の草木はひとたまりも無い。なるほど、それで「嵐」と言うのか）
第11話　たれをかも: 第34首　誰をかも知る人にせむ高砂の松も昔の友ならなくに　藤原興風（9世紀後期-10世紀初頭）
　　　　　　（友人と呼べそうな者はもう誰も残っていないよ。あの高砂の松だって昔馴染みではないのだから）
第12話　わすれじの: 第54首　忘れじの行く末までは難ければ今日を限りの命ともがな　儀同三司母（?-996）
　　　　　　（誓いを守り続けるのは難しい事だから、いっそ「ずっと忘れない」と言われた今ここで果ててしまいたい）