日刊イオ

月刊イオがおくる日刊編集後記

『アイたちの学校』、明日から東京・渋谷で上映スタート

2019-06-14 10:00:00 | (相)のブログ
 

 朝鮮学校の歴史と現状を描いたドキュメンタリー「アイたちの学校」(高賛侑監督)が明日6月15日からアップリンク渋谷(東京都渋谷区)で上映される。期間は6月15日~28日までの2週間となっている。
 https://shibuya.uplink.co.jp/movie/2019/54264
 『アイたちの学校』は今年1月12日から大阪・十三の第七芸術劇場で封切られて以来、日本各地の映画館で公開されているほか、市民有志らによる自主上映も行われている。3月19日には参議院議員会館でも上映された。
 https://blog.goo.ne.jp/gekkan-io/e/19c2fae105aa554c80c09051f48db51d
 映画館ではこれまで第七芸術劇場(大阪)、京都シネマ(京都)、名古屋シネマスコーレ(愛知)、横川シネマ(広島)、シネマテークたかさき(群馬)、元町映画館(兵庫)の6ヵ所で上映された。東京の映画館で上映されるのは今回が初めて。
 6月中旬以降も、和歌山、東京、栃木、埼玉、京都などで上映が決まっている。上映日程は以下のリンク先で確認できる(変更が生じる場合もあるので主催者にも確認を)。
 http://aitati.blog.jp/archives/18084679.html
 これまで、上映された各地で好評を博してきた『アイたちの学校』。海を越えて、韓国でも釜山平和映画祭(5月23~26日)、ディアスポラ映画祭(24~28日、仁川広域市主催)で上映された。
 アップリンク渋谷のサイトでスケジュールを確認したところ、当面20日までは午前中の上映となっている。16日(日曜)の上映終了後には高監督の舞台挨拶がある。
 東京および関東地方在住で本作を未見の方は、この機会にぜひアップリンク渋谷に足を運んでいただきたい。(相)

朝鮮半島と日本に非核・平和の確立を! 7日と8日に集会、デモ、シンポ

2019-06-05 10:00:00 | (相)のブログ
 

 今回のエントリでは、今週金曜日と土曜日に予定されている集会の案内を。
 
 昨年、朝鮮半島で南北首脳会談とシンガポールで米朝首脳会談が実現し、長期にわたって政治的・軍事的な緊張状態が続いてきた朝鮮半島に対話による平和の兆しが現れている。しかし、日本の安倍政権は、東北アジアの平和の確立につながるこの変化の積極的な推進役になっていないばかりか、阻害物になっている。朝鮮半島の非核化、日本の朝鮮に対する過去の植民地支配と侵略による加害の歴史を直視したうえでの真の友好の実現に向かって、今こそ広範な市民の連帯が求められている。
 このような趣旨の下、「朝鮮半島と日本に非核・平和の確立を!」市民連帯行動実行委員会が主催して7日(金曜日)に日比谷野外音楽堂で集会とデモが、翌8日(土曜日)には青陵会館(千代田区)でシンポジウムが行われる。両日の行事には韓国からも市民団体や労組の代表らが出席、登壇するなど国の垣根を越えて市民たちが連帯し、声を上げる場となる。
 「朝鮮半島と日本に非核・平和の確立を!」市民連帯行動実行委員会は「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」と「2019 3・1独立運動100周年キャンペーン」が呼びかけて今年3月11日に結成された。
 7日と8日の詳細は以下の通り。

 ●6月7日(金)18:30~ 集会 19:30~ デモ
 場所:日比谷野外音楽堂(〒100-0012 東京都千代田区日比谷公園1-5)
 交通:東京メトロ丸の内線「霞ヶ関駅」下車 B2出口より徒歩3分
    東京メトロ日比谷線・千代田線「日比谷駅」下車 A14出口より徒歩3分
    都営地下鉄三田線「内幸町駅」下車 A7出口より徒歩3分
 あいさつ:キム・ヨンホさん(国債補償運動記念事業会)/オム・ミギョンさん(民主労総)/東京朝鮮高級学校生徒の歌とアピール(予定)/内田雅敏さん(弁護士)/湯浅一郎さん(ピースデポ)/中村元気さん(日朝国交正常化連絡会)
 行動提起
 ※手話通訳あり

 ●6月8日(土)13:30~16:30 シンポジウム
 場所:青陵会館(〒100-0014 東京都千代田区永田町2-16-2)
 交通:東京メトロ有楽町線・半蔵門線・南北線「永田町駅」下車 6番出口より徒歩3分
    東京メトロ千代田線「国会議事堂前駅」下車 5番出口より徒歩5分
    東京メトロ銀座線・丸の内線「赤坂見附駅」下車 11番出口より徒歩7分
 パネラー:イ・スンファンさん(東アジア平和会議)/パク・チョンウンさん(参与連帯)/ハン・チュンモクさん(韓国進歩連帯)/和田春樹さん(日朝国交正常化連絡会)/湯浅一郎さん(ピースデポ)/庵逧由香さん(立命館大学)/李柄輝さん(朝鮮大学校)
 参加費:1000円
 事前申込制。申込者数が定員(300人)に達し次第、受付終了。
 予約の申し込みは5日中(本日!)で締め切り予定。
 申し込み先:FAX 03-3221-2558 E-mail [email protected] 

 詳細は総がかり行動実行委員会のウェブサイトでも
 http://sogakari.com/?p=4050

 主催:「朝鮮半島と日本に非核・平和の確立を!」市民連帯行動実行委員会
 連絡先:
 ★戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会
  1000人委員会(03-3526-2920)
  9条壊すな!実行委員会(03-3221-4668)
  憲法共同センター(03-5842-5611)
 ★3・1朝鮮独立運動100周年キャンペーン
  [連絡先]ピースボート(03-3363-7562)

(相)


朝鮮大学校オープンキャンパス2019

2019-05-27 10:00:00 | (相)のブログ
 

 先週金曜日の24日に行われた朝鮮大学校のオープンキャンパスに足を運んだ。
 朝鮮学校高級部の生徒たちを対象とした朝大のオープンキャンパスは、同大が掲げる教育理念「L・I・N・K・S」(Leadership、Identification、Net-Work、Korean Culture、Science&Technologyの頭文字)に基づいて、毎年趣向を凝らした内容で参加者たちが朝大を体験できる場となっている。
今年のオープンキャンパスのテーマは、「『LINK-Stories』-朝鮮大学校がつなげる未来の物語 つながろう!平和と繁栄、統一の未来へ! つなごう!あなたと私の夢、私たちの可能性!」
 東京、神奈川、茨城の関東3都県の朝鮮高級学校に加えて北海道、愛知、京都、広島の各朝高から3年生の生徒たちがメインで参加した。
 講堂での李柄輝准教授による特別講演と卒業生たちの座談会、同大教員・学生たちによる特別授業、ポスター展示、博物館見学、そしてキャンパス内に舞台を設置しての交流夜会など趣向を凝らした企画が参加者たちを楽しませた。興味津々のようすで朝大を体験する朝高生たちの姿が印象的だった。
  
 

 

 

 今から20数年前、私が朝高生だった時代はオープンキャンパスのような催しはもちろんなし。この日、大学側が一生懸命に準備したオープンキャンパスを見ながら、今の朝高生が少しうらやましくなった。(相)


本の装丁について

2019-05-16 10:00:00 | (相)のブログ
 

 本を購入する際に意識するポイントは人それぞれだろう。「装丁」もその一つだろうか。装丁は、本を手に取った時に真っ先に目に入ってくる、いわば本の「顔」に当たる部分。音楽CDでは「ジャケ買い」という言葉があるが、書店で本を購入する際にも装丁を見てその本を気に入ってレジに足が向くという人もいる。私は一度もない。「肝心なのは本の内容」という見方からすれば、装丁はあくまでも副次的なものだろう。しかし、装丁は本を構成する不可欠の一部であり、美しい装丁の本、印象的な装丁の本はそれだけで価値があり、売り上げにも影響を及ぼすのではないだろうか。

 『HHhH』(ローラン・ビネ著、高橋啓訳、東京創元社、2013)。近年読んだ本の中でインパクトの強い装丁の作品の一つとして選んだ。もちろん、内容も面白い。
 著者が描いたのは、ナチス・ドイツ占領下の1942年のプラハ(チェコスロバキア)で起こったナチスの高官ラインハルト・ハイドリヒの暗殺事件。ハイドリヒは、ナチスの秘密警察を束ねる国家保安本部の長官で、「ユダヤ人問題の最終的解決」(ユダヤ人大量虐殺)の主要な計画遂行者だった人物。「死刑執行人」「金髪の野獣」「第三帝国でもっとも危険な男」などと呼ばれ、暗殺事件当時はナチス・ドイツのベーメン・メーレン保護領(チェコ)の実質的統治者でもあった。ハイドリヒは1942年5月27日、大英帝国政府と当時ロンドンにあったチェコスロバキアの亡命政府が送り込んだ2人の暗殺者に襲撃され、そのときに負った傷がもとで6月4日に死亡した。作戦のコードネームは「エンスラポイド(Anthropoid、類人猿)」。歴史上、ナチス高官に対する暗殺計画の中で唯一成功した作戦として名高い。本書のタイトル『HHhH』は「Himmlers Hirn heiβt Heydrich」の頭文字から取ったもので、日本語に訳すと「ヒムラーの頭脳はハイドリヒと呼ばれる」(ヒムラーはハイドリヒの上官)。
 本書はこの「エンスラポイド作戦」について書かれた歴史小説なのだが、この作品のユニークなところは、作品の分量の半分以上が著者の資料調査の経緯や歴史的事実を記述するにあたってどのような姿勢で臨むべきかといった記述に費やされていること。歴史とは何か、文学とは何か、「物語る」とは何か―。「『著者がハイドリヒ暗殺事件を小説にしていくプロセス』を小説にした作品」とでもいおうか。暗殺事件の筋だけでいい、著者の語りの部分はいらないという意見もあって好き嫌いが分かれる作品だが、私は興味深く読んだ。

 ハイドリヒ暗殺は結果的に成功したが、その後の展開は悲惨だ(当時のチェコスロバキアとそこに住む人びとにとって)。ナチスは事件とは無関係の村を2つ、文字通り物理的に地上から消し去るという身の毛もよだつような報復に出る。暗殺実行犯とその支援者たちはプラハ市内の教会に立てこもったが、親衛隊に包囲され銃撃で3人が死亡、残り4人は自決した。そして、

 ナチがハイドリヒの霊に払ったもっとも正当な敬意は、その葬儀でヒトラーがぶった演説ではなく、たぶんこっちのほうだろう。つまり、ベウジェツ、ソビボル、トリブレンカの各収容所の開設とともに、一九四二年七月から始まったポーランドの全ユダヤ人絶滅作戦のことだ。一九四二年七月から一九四三年の十月にかけて、二百万人以上のユダヤ人と5万人近くのロマがこの作戦によって命を落とした。この作戦の暗号名は〈ラインハルト作戦〉という。(本書379ページ)


 装丁の話に戻る。本書の表紙は日本語訳版もいいデザインなのだが、英訳版の方がより印象的だ。ナチの制服を身に着けた人物の顔を覆うように重なった本書のタイトル『HHhH』。以下、Amazonのリンク。
 https://www.amazon.co.jp/HHhH-Laurent-Binet/dp/0099555646/ref=pd_lpo_sbs_14_t_1?_encoding=UTF8&psc=1&refRID=W6VFD55Z8EFX5AYWKQCA
 
 インパクトの強さとすれば、こちらの方が圧倒的に上だと思う。(相)

千葉でフレンドシップフェスタ2019開催!

2019-05-07 10:00:00 | (相)のブログ
 
 
 日本各地で年間を通してさまざまな朝・日の国際交流イベントが数多く催されている。千葉では、千葉朝鮮初中級学校を会場にした「フレンドシップフェスタ」が有名だ。
 同イベントは2011年、東日本大震災の復興支援を掲げて初開催。近年は国際文化交流をメインテーマとしながら毎年開催されている。今年も、きたる5月19日(日曜)に9回目となるフレンドシップフェスタが千葉朝鮮初中級学校で開催される。
 内容は、毎年恒例の和太鼓グループ「琉翔」や在日コリアンアーティストによるパフォーマンス、コリアンフードが楽しめる各種売店、フットサル大会、豪華賞品が当たる大抽選会などなど。今年は、在日イベントでは定番の「七輪焼肉」も復活する。フレンドシップフェスタは過去8回の開催すべて快晴というのがウリの一つ。青空の下で食べる七輪焼肉の味は格別だ。そして今回、「わくわくフリーマーケット」と題して、初めて出店を一般募集している。
 
 11歳の時に東京から千葉に引っ越してから、一昨年12月に再び東京に引っ越すまで約30年にわたって千葉に住んできた。千葉を離れはしたが、昨年もこのイベントには足を運んだ。今年も参加するつもりだ。
 みなさんもぜひ足を運んでみてください。(相)

 場所:千葉朝鮮初中級学校グラウンド(千葉県千葉市花見川区浪花町965)
 日時:5月19日(日曜日)11:00〜15:30(開場10:30)

ドキュメンタリー映画「ニジノキセキ」、5月11日より公開

2019-04-23 10:00:00 | (相)のブログ
 

 在日本朝鮮兵庫県青年商工会(兵庫県青商会)が企画・制作したドキュメンタリー映画「ニジノキセキ-『4.24』の未来へ、七色の架け橋-」が5月11日より元町映画館(兵庫県神戸市)で公開される。
 先日、某所で行われた試写会に足を運び、一足先に映画を観てきた。
 映画は、兵庫を含めた阪神地区が中心地となった1948年の4.24教育闘争の歴史をひもときながら、「『4.24』の精神とは何なのか?」の答えを見つけるために兵庫県下の朝鮮学校6校とそこで学ぶ児童・生徒、教職員、子どもたちの保護者、地域同胞たちに密着する。かれ、かのじょたちの姿を通じて、朝鮮学校の置かれた現状、そして未来への希望が描かれる。
 上映時間約80分のドキュメンタリーの内容の詳細については公開前なので言及は控える。ぜひ劇場に足を運んで観覧してもらいたい。映画を企画・制作した兵庫県青商会はもちろんだが、朝鮮学校と名がつくものに対しては猛烈なバッシングが寄せられる、そんな風潮の中で上映を決断した元町映画館にも敬意を表したい。現在は元町映画館での上映スケジュールのみ公開されているが、今後、ほかの地方でも上映されてほしい。
 「下を向いていたら、虹を見つけることはできない」(“You’ll never find a rainbow if you’re looking down”)
 映画のタイトルにある虹にちなんでだろう、作中ではチャップリンの映画『サーカス』の中の一節が引用されていた。「今は苦しくとも、下を向かずがんばろう」という映画の作り手からのエールとして受け取った。

 明日は4月24日。71回目の4.24がめぐってくる。
 当時、朝鮮学校に通っていた児童・生徒たちも今は70代後半から80代半ばにさしかかっている。成人として4.24を経験した人々は今やほとんど残っていない。これまで私が4.24関係でインタビューしたことのある方々もここ数年でみな鬼籍に入った。71年前の出来事が今も語り継がれているのは、本作にも登場している方々も含めた数多の証言者、その証言を文書や映像で記録してきた有志、そして学者・研究者の方々あってこそだとあらためて思った。

 今後の上映スケジュールや最新情報などは、映画の公式ウェブサイトで。
 https://www.nijinokiseki424.com/ (相)

ふたたび延長された対朝鮮独自制裁

2019-04-11 10:00:00 | (相)のブログ
 日本政府は9日の閣議で、2006年から実施している朝鮮民主主義人民共和国に対する独自制裁を2年延長することを決めた。
 制裁の発動から13年。この間、制裁措置は国会で全会一致または圧倒的多数の賛成によって拡大・強化され、期限の延長を繰り返してきた。07年から12年までは期限が1年だったが、13年から2年に延長されている。制裁は広範囲におよんでおり、現在、両国間ではヒト・モノ・カネの流れが全面的に遮断されている。制裁措置は今年4月13日に期限を迎えるが、与党・自民党はこれをさらに2年間延長することを決定。日本政府も9日の閣議で延長を決めた。
 制裁の主な内容は、朝鮮への渡航自粛要請、日本の国家公務員の朝鮮渡航見合わせ、朝鮮籍者の入国禁止(再入国除く)、在日の「北朝鮮当局職員」および「補佐する立場にある者」の再入国禁止、貿易・金融措置違反者、核・ミサイル技術者の再入国禁止、すべての品目の輸出入禁止、300万円超の対朝鮮支払報告規制、10万円超の携帯現金の届出規制、「10万円以下の人道目的」を除く朝鮮向けの支払禁止、すべての朝鮮籍船舶の入港禁止、朝鮮に寄港した日本籍船舶および第三国籍船舶の入港禁止、航空チャーター便の日本への乗り入れ禁止など。
 https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/01_seido/04_seisai/kitachosen.html

 この制裁措置によって祖国自由往来をはじめとする在日朝鮮人の諸権利は侵害され続けている。これで何度目の延長だろうか。制裁の延長が「当たり前」の光景となって久しい。その状況に自分自身が慣れっこになっているのも怖い。最近では、訪朝した神戸朝鮮高級学校の生徒たちが空港の税関でお土産を没収された出来事が記憶に新しい(後に返還)。これも「対北朝鮮制裁」をめぐる状況の一断面なのだが、この時は事態がSNSなどで拡散され、メディアでも報じられるなど社会的に批判の声が上がった。しかし全体でみると、日本の政治、世論、メディアの中で制裁措置がさしたる反対もなく受け入れられているという異様な状況が続いている。
 この問題についてはたとえば、在日本朝鮮人人権協会が2017年10月30日に発表した「在日朝鮮人の人権を侵害する制裁措置の廃止を求める意見書」 http://k-jinken.net/?p=902 などにくわしい。(相)

参院文教科学委員会で高校無償化除外問題について質問

2019-04-03 10:00:00 | (相)のブログ
 前回(3月26日)のエントリで、3月19日の参議院文教科学委員会で高校授業料無償化・就学支援金支給制度からの朝鮮学校除外問題についての質問が行われたと書いた。前回は動画のURLを貼り付けただけだったが、今回は、具体的にどのようなやり取りがあったのか、インターネットの国会会議録検索システムを使って当該部分の質疑応答を全文引用する(3月19日の参議院文教科学委員会の会議録の全文は以下のURLから確認できる)。
 http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/198/0061/19803190061003a.html

 3月14日の福岡地裁小倉支部での原告敗訴の判決で日本全国5ヵ所で係争中の朝鮮学校高校無償化裁判の判決が地裁段階で出そろった直後に行われた国会での質問だということもあり、この問題に関する現政権のスタンスを知るうえでの参考になると思い、取り上げた次第だ。
 質問に立った立憲民主党の神本美恵子議員は、朝鮮高級学校10校が高校授業料無償化・就学支援金支給制度の対象になっていない状況についてどう思うのか、柴山昌彦文部科学大臣に問うた。大臣は、「朝鮮学校が朝鮮総連と密接な関係にあり、教育内容、人事、財政にその影響が及んでいることなどから、法令に基づく適正な学校運営が行われているとの十分な確証が得られなかったため(筆者注:規程13条適合性問題)、審査当時の規定に基づき不指定処分とした」と回答。「法令に基づく適正な学校運営が行われているという確証が得られれば指定されるということか」という質問に対しても、「現在は、朝鮮学校が就学支援金の受給申請を行った根拠規定(筆者注:規定ハ)そのものが廃止されていることから、法令に基づく適正な学校運営に関する確証の有無にかかわらず指定されることはない」とのべた。
 神本議員は、先の東京無償化裁判でも原告側が主張した不指定処分の2つの理由(規定ハ削除と規程13条)の関連性(原告側弁護団は、この二つの理由は論理的に両立し得ない、不指定の真の理由は政治・外交的理由による規定ハ削除であると主張)についても問いただしたが、文科大臣は「訴訟係属中の案件なので詳細なコメントは差し控えたい」と回答を避けた。
 規定ハの削除について政府参考人の永山賀久・文科省局長は、「日本在住の外国人を対象とする各種学校については、教育課程や教育内容についての制度的担保がない、外国の学校教育制度において制度的に位置付けられたものであることが大使館などを通じて確認されたもの(イ)、または文科大臣が指定する団体の認定を受けたもの(ロ)を制度の対象とするというのが原則であり、ハはあくまでも例外的な規定である」「イ、ロ以外の教育施設が法令に適合していることについて文科省に立入調査の権限がない、などの理由から審査に限界があるといった問題が生じたために削除した」というむちゃくちゃな答弁を行っている。文科省は2014年8月の国連人種差別撤廃委員会で朝鮮民主主義人民共和国との国交が回復すれば朝鮮学校は現行制度で審査の対象となり得ると答弁しているが、神本議員がもし国交が回復されればどうなるのかと質問すると、文科大臣は(文科省自らが仮定の話を出したにもかかわらず)「仮定の質問については回答を差し控えたい」とのべた。
 ほかにも腹立たしさを抑えられない質疑応答が続くのだが、詳細は以下に引用するやり取りの全文を参照。(相)


○神本美恵子君 立憲民主党の神本美恵子でございます。
 今、大学の無償化というお話もありましたけれども、これが本当に無償化なのかどうかということは今日ここで議論はいたしませんけれども、二〇一〇年四月、高校の、いわゆる後期中等教育の授業料不徴収と就学支援金の支給法が成立をいたしました。実質的に九八%が高校に通っているという現状の中で、社会全体でこの子供たちの後期中等教育を支えようということでこの法律が成立をし、現在に至っているわけですけれども、現在は残念ながら一部所得制限が掛かって、全ての希望する子供がこの授業料不徴収と就学支援という形になっていないところはありますけれども。
 現在、朝鮮学校十校がこの高校無償化、実質無償化の対象になっていないという状況について大臣はどのようにお考えなのか、幾つかお尋ねをしながら御意見聞きたいと思うんですけれども、毎週金曜日の夕方、文科省前で無償化の適用を求める活動が行われていることを御存じかどうかということが一つです。
 そこでのある学生の発言を御紹介します。文科省の皆さん、僕はサッカーを通じて多くの日本の友人、日本の人と友達になり、理解と協力を得ています、しかし、あなた方は平気で差別します、恥ずかしくないですか、私たちは同じ人間に見えますか、差別するのは同じ人間に見えないからではないでしょうか、朝鮮学校を無償化から除外する日本政府の政策が、日本社会にある朝鮮人へのヘイトスピーチを扇動、助長しているのです、誰かが誰かを嫌悪し排除することから争いは生まれ、互いに苦しみます、そんなことはもうやめませんかという、この声は、恐らく歴史的経緯の中で日本で生まれ育ち、今や三世、四世の世代になっている若者の一人の声ではないかというふうに私は受け止めておりますけれども、こういった若者が、朝鮮学校で学んでいるがゆえに、授業料の不徴収、いわゆる実質無償化の対象になっていない、排除、除外されているということについて、まず、大臣、どのように受け止められますか。

○国務大臣(柴山昌彦君) 抗議活動等については私も承知をしております。
 その上で、朝鮮学校への高等学校等就学支援金制度に係る不指定処分については、いろいろと訴訟等も係属しておりますけれども、私どもといたしましては、朝鮮学校が朝鮮総連と密接な関係にあり、教育内容、人事、財政にその影響が及んでいることなどから、法令に基づく適正な学校運営が行われているとの十分な確証が得られなかったため、審査当時の規定に基づき不指定処分としたものであります。
 なお、現在は、朝鮮学校が就学支援金の受給申請を行った根拠規定そのものが廃止をされていることから、法令に基づく適正な学校運営に関する確証の有無にかかわらず、指定されることはありません。

○神本美恵子君 朝鮮高校が無償化の対象から外された経緯について大臣が今御答弁されましたけれども、皆さんのお手元に資料をお配りしております。朝鮮学校無償化排除に関わる流れということで、文科省の施行規則等を基にして大まかに流れを概観してみました。
 まず、一九七九年に社会権規約を批准して、日本はその批准のときに高等教育の漸進的無償化条項は留保しておりました。しかし、二〇一〇年四月、先ほど言いましたこの実質無償化法案が成立をいたしまして、同じ年に社会権規約の留保を撤回しておりますので、高等教育まで漸進的に無償化をこの国は進めていくということを国際的に約束をしたわけです。
 その高校実質無償化の法成立に伴って施行規則が決められて、その第一条の二項をそこに挙げておりますけれども、専門学校や各種学校についての規定が書かれております。この無償化は公立、私立を問わず全ての高等学校ですが、各種学校や専門学校等については次のような規定でやるということで、施行規則が定められております。
 その各種学校の中で、我が国に居住する外国人を専ら対象とするもののうちということで、イ、ロ、ハが挙げてあります。イは、主に大使館等が日本に置かれていて、交流が、国交がある国に関する外国人学校であります。ロは、いわゆる国際機関が認定をしたインターナショナルスクール等を含むものであります。ハが、このイにもロにも属さない、文科大臣が定めるところにより、高校の課程に類する課程を置くと認められるものとして文科大臣が指定したもの、いわゆる朝鮮学校というのは、国交もありませんので、インターナショナルスクールでもないということで、このハに属するということであります。
 このハに属する規程を、認定基準を作らなければ大臣が指定できないということで、資料二に、次のページに掲げておりますが、この高等学校の課程に類する課程を置く外国人学校の指定に関する基準ということで検討会議が設けられて、どのように認定をしていくのか、その基準、認定の手順等がここで議論をされております。そして、一部だけ抜粋しておりますけれども、三ページのところに、先ほどのイ、ロ、ハに当たるところが少し詳しく書かれていると思って書いておりますが、もう分かりますね、今申し上げたとおり、ハ、このほか、文科大臣が定めるところにより、高等学校の課程に類する課程を置くものと認められるものということで、ハが朝鮮学校を認めるか認めないか、その審査するに当たっての基準がこの後にずっと書かれているところであります。
 ところが、この朝鮮学校が無償化の対象から外された理由について、国連の人種差別撤廃委員会、二〇一四年に開かれた委員会において問われた日本政府が答弁を次のようにしております。
 今申し上げましたハ、ハの規定に基づく指定に関する規程十三条、これに基づく規程がまたあります。あちこち行きますが、一枚目にその十三条を書いておりますので御覧いただきたいのですが、ハの規定に関する規程を決定、二〇一〇年八月、十三条、前条に規定するほか、指定教育施設は、高等学校等就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当など法令に基づく学校の運営を適切に行わなければならないというような、この規程に基づいて審査が行われる。朝鮮学校はこの申請を期限内に行っております。
 その結果なんですけれども、規程十三条において、今も読み上げたようなことを当時の国際課の調査係長が人種差別撤廃委員会において答弁しているんですけれども、学校の運営が法令に基づき適正に行われていることを要件としており、具体的には教育基本法、学校教育法、私立学校法などの関係法令の遵守が求められます、教育基本法十六条一項で禁じる不当な支配に当たらないこと等について十分な確証を得ることができず、法令に基づく学校の適正な運営という指定の基準に適合すると認めるに至りませんでしたので不指定処分としましたというふうに答弁しております。つまり、不当な支配に当たらないこと等について十分な確証を得ることができなかった、ハの規定に基づく規程十三条ですね。
 お尋ねしますが、この確証がもし得られれば、先ほどちょっと言いました審査基準に従って確証が得られれば指定されるということになるのでしょうか。

○政府参考人(永山賀久君) 朝鮮学校への高等学校等就学支援金制度に係る不指定処分でございますけれども、朝鮮学校が朝鮮総連と密接な関係にあり、教育内容、人事、財政にその影響が及んでいることなどから、法令に基づく適正な学校運営が行われているなどの十分な確証が得られなかったためということにつきましては、今御指摘のあったとおりでございます。
 現在は、朝鮮学校が就学支援金の受給申請を行った根拠規定が、先ほども御紹介ありましたけれども、廃止をされていることから、法令に基づく適正な学校運営に関する確証の有無にかかわらず指定されることはないと考えております。

○神本美恵子君 今答弁がありましたように、朝鮮学校が申請をするその根拠規定がもう削除されてしまっているんですね。ですから、幾ら学校運営適正にやっていますということになっても、もう今の状態では指定が受けられないということになっております。
 二〇一三年の二月二十日に処分通知が出されました。その処分通知には、今言いましたハの規定を削除したことが理由の一、及び規程十三条に適合すると認めるに至らなかったことが理由の二として挙げられています。しかし、同じ二月二十日に文科省は省令を改正してハを削除しているんですね。だから、同じ日にハを削除して、そして処分通知を出して認められませんというふうに、どうも、これは何を根拠に、じゃ認められないということを判断したのかということがとても納得できない。
 これは裁判にもなっておりまして、二〇一八年、昨年十月三十日、東京高裁で判決が出された中の一つに、この二つの理由は論理的には両立し得ないことは、被控訴人、つまり国側においても自認するところであるというふうに言われているようなことなんですが、この二つが両立し得ないとすれば、どちらが正式な処分理由になるんですか。ハの規定なのか、規定に基づく十三条なのか。

○国務大臣(柴山昌彦君) 今御指摘になられたとおり、このハ規定を削除した日とそれから不指定処分が同日であるということから、今御指摘にあった、審査基準に適合すると認めるに至らなかったということとそれからこのハ規定を削除したということがどういう関係にあるのかということが問題とされているかということだと思います。
 ただ、本件は訴訟係属中の案件でありますので、詳細なコメントは差し控えたいと考えております。

○神本美恵子君 昨日レクの中では、どちらかと聞いたら十三条だというふうにお答えになったんですけれども、今は係争中だということでお答えはありませんでした。
 文科省は、同じくこの先ほど言いました二〇一四年の国連の委員会の中で、北朝鮮との国交が回復すれば現行制度で審査の対象となり得ますというふうに答弁をしているんですね。
 そこでお尋ねしたいんですけれども、その場合、国交を回復した場合、昨年から朝鮮半島をめぐる対話の動きがありまして、今ちょっとまたアメリカとの関係もあって止まっているようですけれども、安倍首相は、日朝平壌宣言を踏まえ、金委員長との対話についても前向きにという発言もされている現状でございますが、もしそのようになった場合、削除したハを復活するのか、朝鮮学校の扱いは、それともイの、国交が回復すればイロハのイに戻る、どっちになるんでしょうかというのが一つと、それから、そもそもなぜハを削除したのかということについてお伺いしたいと思います。

○政府参考人(永山賀久君) まず、一点目の御質問でございます。
 朝鮮学校を高等学校等就学支援金の対象外とした件につきまして、御指摘いただきました二〇一四年八月の国連人種差別撤廃委員会における委員の質問に対する答弁、回答でございますけれども、日本政府代表団としての回答でございますが、この趣旨は、一般論として、外交関係のある国の教育機関であれば御指摘のイの規定ですね、イの規定に基づいて支給対象となり得る旨を述べたものと承知いたしております。
 ハの規定は、先ほど来お話ありますとおり、既に廃止をされているということで、現時点でこれを復活をするということについて考えていないというところでございます。
 二点目でございますけれども、では、そのなぜハを削除したのかということでございます。
 我が国に居住する外国人を専ら対象とする各種学校については、教育課程や教育内容についての制度的担保がないわけでございます。外国の学校教育制度において制度的に位置付けられたものであることが大使館等を通じて確認されたもの、これはイですね、イなんですが、又はロとして文部科学大臣が指定する団体、国際バカロレア等の認定を受けたもの、これを対象とするということを原則としておりまして、あくまでこのハというものは例外的な規定だというふうに認識をいたしてございます。
 例外的な規定としてハが存在していたわけですけれども、イ及びロ以外の教育施設が法令に適合していることについて、例えば文部科学省に立入調査の権限がない、そういったことなどから審査に限界があるといった問題が生じたために削除したものと認識をいたしております。

○神本美恵子君 ハは例外的な規定なんて、どこにも施行規則書いてありませんよ。何を勝手に解釈しているんですか。どこに書いてありますか。後になって、そんなことを後付けで言うのは本当におかしいと思います。
 これは、政権が民主党政権から自民党・公明党政権に替わったときに省令改正が行われました。そのときの文科大臣は、拉致問題の進展も見られず、朝鮮総連と密接な関係があるというようなことをこのハを削除した理由として発言して、理由としてされたかどうか分かりませんが、この削除のことについて説明をされております。
 この法律が成立したときに施行規則を作り、その施行規則に基づいてこういう基準、先ほど言いました検討会議を設けて基準を作って、そして、真剣に本当に教育課程としてやっているのかということを見るために基準まで作って審査をするというようなことをやって、なぜそういうふうにやったかというと、これは外交問題ではなくて、この国に生まれ育った全ての子供たちの教育を保障する教育問題であるという観点からこういう基準が作られて審査をしてきたのに、政権が替わった途端に拉致問題と結び付けて、先ほどの国交が回復すればというような発言もそうだと思うんですけれども、やっていることについては、これは本当に差別としか言いようがない、もう断言したいと思います。
 そこで、最後に、イによる場合でも、先ほどイに当たるというふうにおっしゃられたと思いますが、国連でも不当な支配に当たらないことについて十分な確証を得られないので不指定にしたと答弁しましたけれども、ここは、例えば国交が回復してイになっても、不当な支配について十分な確証を得られないというふうに不指定の理由をおっしゃっているんですけれども、その問題はどんなふうに解決できるんですか。

○国務大臣(柴山昌彦君) ちょっと、まず神本議員にお答えをする前提として、あたかも何か特定の国の学生さんを我々が差別しているかのような物言いだったんですが、そんなことはないんですよ。ちょっと答弁をよく聞いてほしいと思います。
 当該学校、教育機関で行われている教育課程や教育内容について、それが日本においてしっかりと質の担保が図られているかどうかということについて確認するすべがあるかどうかという問題でありまして、先ほど申し上げた、外国の学校教育制度、特に、我々が国交を通じ、大使館などを通じてそれが確認できるということがイであります。
 それから、先ほど永山局長からお話があったように、文部科学省が指定される一定のやはり国際バカロレアなどの団体の認定を受けたもの、これも教育課程や教育内容についての制度的担保が見られるということからロということなんですけれども、ハは例外か、もちろん例外的というふうにも申し上げましたけれども、いずれにせよ、やはりこういった内容についての制度的担保、あるいは内容のしっかりとした確認をするための、我々としては例えば立入調査を行い、あるいはそのカリキュラムについて提出をさせる、そういったことを求める必要があるわけなんですけれども、結局我々にそういった立入調査の権限がないため審査に限界がある、そこでこのハの項目を削除したわけでありまして、あたかも特定の国を狙い撃ちにしているかのようなちょっと物言いというのは、私は非常に心外であります。
 その上で、今の御質問ですけれども……

○委員長(上野通子君) 大臣、時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。

○国務大臣(柴山昌彦君) 簡潔に。
 じゃ、国交が回復をしたら一体どうなるのかということなんですけれども、仮定の質問についてはお答えを差し控えさせていただきます。

○神本美恵子君 まとめます。
 差別ではないとおっしゃいましたが、国交のない台湾を含む中華学校はイに入っております。私は納得できません。
 以上です。終わります。

「アイたちの学校」が参院議員会館で上映

2019-03-26 10:00:00 | (相)のブログ
 
 
 朝鮮学校の歴史と現状を描いたドキュメンタリー映画「アイたちの学校」(高賛侑監督)の上映会が3月19日、参議院議員会館で開かれた。
上映会には朝鮮学校の関係者や日本の支援団体のメンバー、メディア関係者など40人あまりが出席。国会議員は、途中参加、途中退席を含めて5人が姿を見せた。
 映画を初めから最後まで鑑賞した立憲民主党の那谷屋正義参院議員は、映画の中で大きく取り扱われた高校無償化制度からの朝鮮学校除外の問題について、「子どもの視点に立った、学ぶ者の視点に立った行政を行うというのが文科省の仕事だ。にもかかわらず、政治的な問題を持ち出してきている」と現政権を批判。「子どもの学ぶ権利を国境関係なく大事にするということが世界平和の一歩になる」としながら、出席者に向けて「民主党が政権の座にあったときになぜもっとしっかりとこの問題に踏み込まなかったのか、お詫びをしなくてはいけない。私も微力ながらみなさんと同じ立場に立って今後も頑張っていきたい」とのべた。また、「柴山昌彦文科大臣にこそこの映画を見てもらいたい」としながら、途中退席した元文科大臣の馳浩衆議院議員に対しても「最後まで映画を見てほしかった」とのべた。
 
 「アイたちの学校」は当初、大阪で1週間上映の予定だったが、5週間に延長され、合計1594人が鑑賞した。4月以降、名古屋、広島、神戸、栃木、群馬の映画館でも上映が決定している。有志による自主上映の動きも広がっている。5月下旬に開幕する韓国の釜山映画祭(5月23~25日)からも招待を受けているという。
 また現在、朝鮮学校の権利を守る国際的な運動を喚起するため、朝鮮語版と英語版を制作中だ。4月完成を予定しており、クラウドファンディングで朝鮮語と英語の字幕制作費用を集めている。
 クラウドファンディングの詳細は、https://a-port.asahi.com/projects/aitati/

 上映会が開かれた19日、参議院の文教科学委員会が開かれ、この場で立憲民主党の神本美恵子議員が高校無償化制度からの朝鮮学校除外問題について質問を行った。上映会に出席した田中宏・一橋大学名誉教授らによると、第二次安倍政権発足以降、国会でこの問題に関する質問が行われたのは今回が初めてだという。
 文科省側の答弁にはこの問題に対する現政権のスタンスがよく現れている。議事録がまだ公開されていないので、以下のURLから、ライブ配信された動画を見てほしい。当該の質問と答弁は36:50すぎから57:40あたりまで。(相)
 https://www.youtube.com/watch?v=SLPbTL2M77Y

イオ4月号が完成しました

2019-03-14 10:00:00 | (相)のブログ
 


 イオ2019年4月号が完成しました!

 今月号の特集は「これからの介護を考える」です。時代の変化に合わせて介護の形も変わっていく。これからの介護はどうなるのか? 実感が湧かない人たちには介護について考えるきっかけになるような、当事者にとってはヒントや共感を得られるような企画にしました。「東大阪同胞生活相談センター」相談員の金菊江さんの執筆による「『いつかの介護』におびえないための5ヵ条」、2人の同胞女性が自身の肉親を介護した経験をつづった「わたしの介護体験記」に加えて、資格を持って専門的に従事するスタッフから自らの得意分野で貢献するボランティアまで、さまざまな形で介護現場に新風を吹き込む人々も紹介します。

 特別企画は「『3.1独立運動』から100周年」です。朝鮮近代史における民族運動の一つの到達点を示す「3.1独立運動」の歴史的意義や「3.1」の記憶の継承をめぐるさまざまな論点について、「生き続ける『3.1』、独立から統一へ」と題して康成銀・朝鮮大学校朝鮮問題研究センター長に寄稿していただきました。100周年に際して、東京、名古屋、大阪、福岡など日本各地で催された記念行事のようすも伝えます。

 特集、特別企画のほかにも、朝鮮民主主義人民共和国から4人の選手が出場して銀メダル1つを獲得したFINAダイビングワールドシリーズ2019・相模原大会や、日本政府が就学支援金制度の対象から朝鮮学校を完全に外すため無償化法の省令を改悪した2013年2月20日に際して、この差別に抗議し市民社会に広く訴えるために「朝鮮学校を支援する全国ネットワーク」の呼びかけで日本各地と韓国で行われた全国統一行動(2・20アクション)のもようも載せています。
 そして、2月27日から28日までベトナムの首都ハノイで行われた第2回朝米首脳会談についても、Q&A方式の解説などを交えて、4ページで掲載しています。
 中村一成さんのエッセイ「在日朝鮮人を見つめて」、「マンガ・トンポとんねイモジョモ話」など人気連載も読みごたえがあります。連載5年目に突入した「朝鮮学校百物語」は今月号から2号連続で「4.24教育闘争」にまつわるストーリーを掲載します。

 今年からイム・ヒャンスクさんが担当している表紙デザインですが、今月号のテーマは「ハラボジ、ハルモニのスティックダンス」です。介護特集に合わせたデザインになっています。

 月刊イオは以下の定期購読フォームにてどなたでも注文することができます。
 http://www.io-web.net/subscribe/ 
 1冊からのご注文も承っています。定期購読ではなく1号のみの注文の場合は、「その他伝達事項」の欄にその旨と希望号数を記入して下さい。(相)

大阪で三・一人民蜂起100周年記念公演/シンポジウム 「怪物」たちの行進―朝鮮と日本、歴史と現在

2019-03-07 10:00:00 | (相)のブログ
 

 「3.1独立運動」100周年を迎えて、日本各地でさまざまな記念行事が催された。
 とくに、「3.1」の先駆となった在日朝鮮人留学生の志を受け継ぐ在日本朝鮮留学生同盟(留学同)は東京、東海、近畿、九州の4地域でそれぞれ特色ある記念行事を企画した。
 3月2日、大阪市内では大阪、京都、兵庫の各地方本部の共催で「三・一人民蜂起100周年記念公演/シンポジウム 「怪物」たちの行進―朝鮮と日本、歴史と現在」が行われた。

 

 

 第1部・総合文化公演「『怪物』たちの行進」は、含蓄あるタイトル、1919年3月1日を100年越しで再現した演出、「3.1」を日本帝国主義に対する武装闘争も含めた抵抗の歴史の文脈にあらためて位置づけ、今も継続する日本の植民地主義に鋭い批判を突きつけた演劇など見どころが多かった。

 

 文化公演に続くシンポジウムでは、「支配と闘争、その150年~『現在』をどのように認識し、行動(連帯)すべきか」をテーマに、康成銀(朝鮮大学校朝鮮問題研究センター長)、吉澤文寿(新潟国際情報大学教授)の両氏が発言した。両方とも大変示唆に富む発表だった。
 徴用工裁判や日本軍性奴隷制被害者に対する日本の世論、メディア、政治家の醜悪な反応を見ながら、今こそ過去の歴史に目を向け、「3.1」の意味をあらためて問う必要があると思った次第だ。
 本誌イオでは3月中旬発行予定の4月号で「3.1独立運動」100周年に際した企画ページを準備している。(相)

耳障りな「させていただく」

2019-02-27 10:00:00 | (相)のブログ
 先日、某所で行われた集会に参加したときのこと。

 冒頭、司会者が登場して開会を宣言。続いて自己紹介を行った。
 「ただいまより、○○○を始めさせていただきます」
 「本日、司会を務めさせていただく×××と申します」

 ああ、また「『させていただく』症候群」の人か、とのっけから脱力してしまった。
 
 これまで各所でしつこいくらい指摘されてきたことだが、「させていただく」にも正しい用法と間違った用法がある。
 文化庁の見解によると、
 他者の許可を得たうえで、自分が行うことについて、その恩恵を受けることに対して敬意を払っている場合に使うのが正しい用法だという。ひらたく言うと、
 ・相手の許可を受けているかどうか
 ・その行為によって恩恵を受けるのかどうか
 がポイントとなる。
 上記のケースについていうと、開会すること、司会を務めることについて司会者が誰かの許可を得ており、その行為によって自身が恩恵を受けていることが強調されるのだが…
 はっきりいって、そんなことは集会の参加者からするとどうでもいい。
 シンプルに、
 「ただいまより、○○○を始めます」
 「本日、司会を務める〇〇と申します」。
 で十分だろう。
 何でも「させていただく」をつければ敬語っぽく聞こえるのかもしれないが、適切ではない場面で「させていただく」を多用されると、冗長かつ耳障りで、「うるさい」のだ。
 くだんの司会者本人の日本語運用能力の問題といえばそれまでだが、やたらと「させていただく」を使う政治家や芸能人、あるいは彼、彼女らの発言を音声で伝えるテレビメディアの影響も大きいのかもしれない。

 まあ、偉そうに言っているが、ひるがえって、私はどうだろうか。
 活字メディアの編集に携わる人間として、正しい文章、他者の手本になるような文章を書いているだろうか。安易な紋切り型の表現を多用してはいないだろうか―。(相)

国側の書面は「ゼロ解答」、裁判は続く―広島無償化裁判控訴審第4回口頭弁論

2019-02-19 10:00:00 | (相)のブログ
 

 広島朝鮮学園と広島朝鮮初中高級学校高級部の卒業生らが国に対し、同校を高校無償化・就学支援金支給制度の対象に指定しなかった処分の取り消しなどを求めた裁判の控訴審第4回口頭弁論が2月12日、広島高等裁判所(三木昌之裁判長)で行われた。

 今回、裁判の傍聴取材はできなかったが、広島朝鮮学園側から提供されたレポートと資料に基づき、この場を借りて第4回期日の内容について簡単に報告したい(写真提供も広島朝鮮学園)。
 
 前回の控訴人側(朝鮮学園、卒業生)の求釈明申立に対して、今回、被控訴人側(国)から第3準備書面が提出された。求釈明は、なぜ不指定処分と規定ハ削除が同日に行われたのか、なぜ審査会の審査の結論を待たずに不指定処分の決定を下したのか、など7項目にわたる。しかし、被控訴人側が提出した書面の内容は実質「ゼロ解答」だった。

 控訴人側代理人は第7準備書面と意見書、証人尋問に立つ原告の陳述書などを提出し、意見陳述を行った。控訴人側代理人は国側の書面に誠意がないことを訴え、これ以上釈明がなされないのであれば、前川喜平・前文部科学事務次官の証人尋問に応じるよう求めた。第7準備書面は、控訴人側が入手した無償化法制定にあたって文部科学省が作成した法律案の想定問答集の内容に基づいたもので、▼「高等学校の課程に類する課程」には、不当な支配や財政運営の適正の観点は含まれないこと、▼不正受給防止については、「高等学校の課程に類する課程」の判断枠組みで解決すべき問題ではなく、他の規定による解決が想定されていたこと、など想定問答集の解釈が原告(朝鮮学園、卒業生)の主張と一致することなどを主張している。

 裁判官は3月末までに国側に控訴人側の準備書面、意見書に対する反論を新たに求め、学園側には朝鮮学校と総聯、つまり民族学校と民族団体との関係を具体的に陳述するように求めた。

 口頭弁論終了後、弁護士会館で2.20全国行動月間広島集会が約140人の参加の下で開かれた。集会では日朝友好広島県民の会の代表からあいさつがあった後、弁護団から第4回期日の報告、広島朝鮮初中高級学校の学校長から無償化除外問題の経緯と裁判概要報告、1月にジュネーブで開かれた国連子どもの権利委員会の会期中に行われた子どもの権利条約の日本政府報告書審査に合わせて現地を訪問し、ロビー活動を行ってきた同校オモニ会会長による報告などがあった。

 次回、控訴審第5回口頭弁論は4月23日、14時から広島高裁で行われる。証人尋問は第6回期日以降に行われる。(相)

在日朝鮮学生美術展 鳥取米子展へ協力を

2019-02-08 10:00:00 | (相)のブログ
 

 2018年度の在日朝鮮学生美術展(学美)が日本各地を巡回中だ。

 昨年9月12日開幕の神戸展を皮切りに、福岡展(10月11日~14日)、大阪展(10月31日~11月4日)、広島展(11月10~17日)、京都展(11月22~25日)、東京展(11月28~12月2日)、千葉展(12月4~9日)、神奈川展(1月11~16日)、東海展(1月29~2月3日)まで終わった。残るは北海道展(2月15~17日、札幌)、鳥取展(3月15~17日、米子)の2ヵ所。

 学美とは、日本全国にある朝鮮学校で学ぶ幼稚園から高校の子どもたちの表現発表の場として東京・大阪・神戸・福岡などの日本の主要都市で毎年行われている巡回展だ。さまざまな人々の支えを受けて開催されてきた学美は今年で47回目を迎えた。

 今回の巡回展でも、1万点を超す応募作品から選ばれた入賞作品の中から約500点の巡回作品と開催地方の入選作品などが展示される。平面のみならず立体、映像など作品のバリエーションは多彩。全国の朝鮮学校児童・生徒たちの感性豊かな作品世界に触れることができる。

 巡回展では地方ごとの特色をいかしたさまざまな取り組みが行われている。

 朝鮮学校がない山陰地方(鳥取県・島根県)でも3月に11年連続12回目となる巡回展が鳥取県米子市で開かれる。日本人有志らが中心となった「在日朝鮮学生美術展 山陰地区実行委員会」が支援の輪を広げながら毎年地道に開催している。昨年2月に島根県立美術館で開催された島根松江展は「島根県委託事業・みんなで学ぶ人権事業」として取り組まれ、鳥取島根両県の行政・教育機関やメディア・各種団体など過去最大となる89団体の後援を受けた。来場者も約800人をかぞえ、地域の冬の催しとして定着している。島根県立松江南高等学校放送部が、島根展の準備から終了まで約半年におよぶ過程を取材し、日本の高校生の目で見た学美展やそこに関わる市民、来場者の声を丹念に拾った映像作品を制作。その作品「思いをのせて」が昨年7月の「第65回NHK杯全国高等学校コンテスト テレビドキュメント部門全国大会」に出場したことも、学美の存在が広まっていることの一つの証左だろう。

 学美山陰地区実行委員会では昨年、初めてクラウドファンディングの形式で開催支援金協力の呼びかけを行ったところ、日本全国から約39万円が寄せられた。今回の鳥取米子展開催に際しても費用をクラウドファンディングで集めている。目標金額は30万円で、募集の期限は3月4日の午後11時までとなっている。

 詳しくは、以下のクラウドファンディングサイトReadyforのページで(本エントリのトップ画像も以下のサイトから)。
 https://readyfor.jp/projects/gakubi47


 

 第47回在日朝鮮学生美術展「鳥取米子展」
 期間:2019年3月15日(金)~17日(日)
 時間:9:00~17:00
 会場:米子市美術館(鳥取県米子市中町)
 入場料:無料
 主催:在日朝鮮学生美術展山陰地区実行委員会
 問合せ:鳥取事務局 090-1686-6588(三谷)

 よろしくお願いします。(相)

川崎・桜本の識字学級で学ぶ女性たちの作文が本に

2019-01-30 09:57:17 | (相)のブログ
 

神奈川県川崎市の桜本にある識字学級「ウリマダン」で学ぶ在日朝鮮・韓国人女性や日系移民女性たちがつづった文章をまとめた書籍『わたしもじだいのいちぶです―川崎桜本・ハルモニたちがつづった生活史』が1月30日に日本評論社から発行された。

 戦前から在日朝鮮人が多く暮らしてきた桜本。識字学級「ウリマダン(旧ウリハッキョ)」は社会福祉法人青丘社が運営するふれあい館で30年近くにわたって開かれてきた。ここで学ぶ女性たちは、日本の植民地支配、戦争、民族差別、貧困、女性であることといったさまざまな理由から高齢になるまで文字を学ぶ機会を奪われた。そして、識字学級で文字を学ぶことで自らの人生について書きつづり、心の奥底の記憶を一つひとつ言葉にしてきた。幼少期の思い出、家族のこと、日々の暮らしの雑感、ヘイトスピーチに対する抗議などなど―。本書には、植民地期に渡日したオールドカマーのみならず、戦後に渡日したニューカマーたちや日系ブラジル人・ペルー人女性などさまざまな背景をもった人たちの文章が収められている。

 本書の出版は、識字学級で長年ハルモニたちの学びに寄り添ってきた人々や大学の研究者ら市民有志で構成された刊行委員会が企画した。「ハルモニたちの言葉を一冊の本にまとめて、全国津々浦々に届けたい」と出版資金をクラウドファンディングで募ったところ、目標金額の140万円を大きく上回る180万円が集まった。
 


 さる1月16日、ふれあい館でハルモニたちに本をお披露目する集いがもたれた。

 本書の編著者である康潤伊さん(早稲田大学大学院教育学研究科博士課程後期)と、本書の出版元である日本評論社の吉田守伸さん(ともに本書刊行委員会メンバー)が集まったハルモニたちに一人ずつ本を手渡した。



 その後、本書に収録された文章を「共同学習者」(ハルモニたちの学習をサポートする人)、刊行委員会メンバーが朗読し、ハルモニたちが感想のべた。自らがつづった文章が本になった喜びを口にし、逆境にくじけず強く生き抜いてきた人生経験を語る言葉が印象的だった。

 本書を読んだ感想などは次回以降に書きたい。(相)