日刊イオ

月刊イオがおくる日刊編集後記

劇団アランサムセ結成30+1周年公演「リプレイ」、間もなく!

2019-06-10 09:45:00 | ï¼ˆç†ï¼‰ã®ãƒ–ログ
 劇団アランサムセ結成30+1周年公演「リプレイ」が、今月20日から23日にかけて、東京のTheater新宿スターフィールドで行われる。アランサムセは、在日朝鮮人による劇団として1988年に旗揚げ。時代とともに移り変わる同胞たちの生き様を描き続けてきた。

 昨年11月に結成30周年記念公演を予定していたが諸事情により公演は中止、主宰・金正浩さんによる謝罪動画は約750再生を記録した。それから5ヵ月。30周年を記念するだけでなく“新たな一歩”という思いを込め、改めていま自分たちができる作品を上演しようと今回の公演に至ったアランサムセ。新作「リプレイ」の概要、作品に込めた思いなど、金正浩さんに話を聞いた。たっぷりと話して下さったため、今月中旬に発刊される7月号に入りきらなかった分を含めてブログでも紹介したい。

—作品「リプレイ」について

 登場するのは、結成30周年を迎えた在日同胞劇団「アリランヘボセ」。新作の脚本を書けない座長と団員たちの葛藤を描きながら、過去作品と向き合う…という構成の物語だ。アランサムセの現状をリアルに反映させている。全くのフィクションでもなく、全くのノンフィクションでもない。

—構想はどこから得たか

 脚本ができなかったことで昨年11月の公演中止を決定したあと、これからどうしたらいいかメンバーで話し合った。その時に、これまでを振り返るだけでも内容になるのでは、という案が出た。しかし、ただ30年の歴史を紹介するだけでは作品にならない。いまの状況を「器」にし、過去作品を内容に盛り込んだ物語に出来ないかと考えた。
 そのためには仕掛けが必要だ。いろいろな仕掛けの案を出し合った。劇団の倉庫の掃除で過去の小道具や衣装を出して思い出すとか、座長を被告にした裁判で、証人や物的証拠を出しながら過去作品を検証するとか。過去作品の回想だけにとどまらず、現在と今後にどのように繋げるかが必要だと。

—どのような思いを込めたいか

 「歴史を大事にするのも結構やけどな、新しいものを作れんかったら意味がないねん」、これは劇団解散を決意する座長のセリフだ。個人的には、朝鮮大学校の教員として、作中の劇団が瀕している状況と現実のウリハッキョや同胞社会の状況を重ね合わせている。厳しい状況の中でどう踏ん張るか。苦労している同胞たちにエールを送る、そういうものになれば。
 アランサムセは結成当初から、民族心や自身の立ち位置の問題について同胞たちに警鐘を鳴らしてきた。私たちを取り巻く情勢や環境、価値観は変化したが、根本的な課題は変わっていない。改めてこれまでの脚本を振り返ると、作家は変われど一貫して同じ問題提起をしているのが分かる。そして今日の問題をどう見るのか、道しるべとなるメッセージも過去の作品から探すことができる。1989年の作品「トドリの冒険」(脚本=金智石)に、こんなセリフがある。

―全ての人が西に月を追いかける時、一人で東に向かう。彼には何もない。道は険しく暗い。
しかし彼には熱い情と固い意志と信念がある。陽はいつでも東に昇るのだ―

 民族教育を取り巻く状況もいまだ厳しい。依然として差別もある。ヘイトスピーチなどへのカウンターとして、自分のルーツに関わることをやっているんだと伝えたい。上の座長のセリフに関して言うなら、新しいものを作るために歴史が否定されるべきではない。大事なのは、歴史を起点にどうやって新しいものを作ろうと努力するかだ。新たなものを生み出すためには続けなければいけない。再び、繰り返しやっていくしかないのでは、そういう思いも「リプレイ」というタイトルには込められている。

—どうして30年も劇団を続けてきたか

 これまでは「表現したいことがたくさんあるから」と考えていた。日本社会に、同胞たちに、言いたいことだらけだし、どんどん増えている。その手段として演劇をしていると言い続けてきた。しかしこの数年間で考えが変わった。
 自分が大好きで憧れの演出家に蜷川幸雄さんという方がいる。海外公演も数多く上げ、「世界のニナガワ」と呼ばれる人だ。この人が演出した舞台を見て、生まれて初めて“金縛り”にあった。蜷川さんは、自身が演出して最高傑作といわれている作品を、自分の手で壊してまた一から作り直すことを繰り返した。昔の作品をいまその時の問題意識、その時の自分の姿勢でまた作り上げる。なかなかできないことだ。
 その蜷川さんも、「なぜ演出を続けるのか」というような質問を受けたことがある。それに対しての答えは「評価されてないから」。世界的にもじゅうぶん高く評価されているが、これまでやってきたことに安住しない、飽くなき情熱とチャレンジ精神があったのだろう。
 おこがましいが、いま自分も同じ気持ちだ。私個人の評価という意味ではない。30年やってきても観客数が増えていないこと、同胞社会で演劇文化がまだまだ成熟していないこと…。日本の映画や舞台の俳優を志す同胞青年は少なくないが、私たちの問題を私たちでやろうという人がどれだけいるだろうか。そういう意味で、30年間やってきたからといって何の達成感もない。
 劇団結成25周年公演の際、愛知から駆けつけた旗揚げメンバーが「見に来てよかった、守ってくれてありがとうございます」と言ってくれた。観てくれた人の人生にできるだけなんらかのプラスがある、そのような作品を上演することが目的だ。また次、また次と、もっと同胞たちが観てくれるよう活動を続けていきたい。

***
 現代を生きる同胞たちへ向けた、劇団アランサムセの新作「リプレイ」。30年間に積み重ねられた言葉を借りて、いま私たちに送られるメッセージとは。
公演の詳細は以下、チケットは問合せにて。(理)

●劇団アランサムセ結成30+1周年公演「リプレイ」
日時:6月20日(木)~23日(日)
20・ 21日 19:30~/22日 14:00~、19:30~/23日 14:00~
※開場は開演の30分前
場所:Theater新宿スターフィールド(東京メトロ・新宿御苑前駅から徒歩約5分)
チケット:一般3000円(当日3300円)、大学生2500円、中高生1000円/全席自由
問合せ:劇団アランサムセ(090-4415-0339、[email protected])

※劇団アランサムセの公式HP、Facebook、ツイッターも随時更新!
https://aransamse.web.fc2.com/
https://www.facebook.com/arangsamse/
https://twitter.com/arangsamse

ヘイトスピーチ根絶のために、国会議員ができること

2019-06-08 10:00:00 | ï¼ˆç†ï¼‰ã®ãƒ–ログ
 国会議員による「ヘイトスピーチ解消法施行3年記者会見」が5月31日、永田町の参議院議員会館で開かれた。1週間ほど経ってしまったが、気づきや学びが多かったので内容を紹介したい。

 会見では、解消法成立のため当時から関わっていた議員がこの間の取り組みを振り返り、それぞれに課題を語った。



 自由民主党の西田昌司議員(国会対策委員長代行)は、「とにかくヘイトスピーチというのは恥ずべき行為であり、やめるべきなんだということを国会が認めたのは非常に大きな意味があった」とのべた。一方で、「残念なのが次は選挙を通じて、演説でなら自由だろうとわざわざ選挙に出てヘイトスピーチをする人が一部にいる。それを取り締まることはなかなかできない」とし、「そういう人たちは社会的に認められない。国民がそのことをしっかり認識しないといけない」と強調した。

 「ヘイトスピーチは人々の心を不快にさせるし、言えば言うほど自分の心が乱れて負の感情が増長し、不幸な道に行ってしまう。ヘイトスピーチをやっている人々にはそれを理解してほしい」とも発言した。



 公明党の矢倉克夫議員(政策審議会副会長)は、「5~6年前に川崎でヘイトスピーチの問題が上がり、法務委員会で視察に行ったときに、市役所の職員から『法律がないから私たちは何もできません』と言われたことが印象に残っていた。なんらかの形で必ず法律を作って行政を動かすことが必要だと学んだ」と当時の思いをのべた。また、「『助けて下さい!』という町に暮らす方の声が深く胸に刺さって、そういった一人の思いが広がって全会一致という形になったのかなと改めて感じている」と話した。

 矢倉議員は他にも、「選挙運動の名を借りたヘイトスピーチの問題については、“公明党ヘイトスピーチ問題対策プロジェクトチーム”が3月26日に菅官房長官に提言をした。解消法の理念を活かしていくためには、許されないものは許されないと社会の人たちに伝えていく必要があるのではないか、という提言だ。その結果、28日には警察庁が都道府県に対して、選挙運動でも不当な差別的言動は許されないという趣旨の通知をした」と最近の働きかけについて報告した。
 「解消法は一つの、スタートの宣言。長い闘いだということを理解したうえで、それでも諦めずにやるということを宣言した」という言葉から、ヘイトスピーチ根絶のために不断に行動していこうとの決意が伺えた。



 日本共産党の仁比聡平議員は、「解消法の成立は大きな一歩ではあるが、終着点ではない。3年間を振り返って、差別や分断のない社会を実現していく上での国会の責任、政治家の責任というものを痛感している。ヘイトスピーチの根絶のため、6年前から有田さんとともに参議院法務委員会での質問を繰り返してきた。最初の時期の質問というのは法務省の啓発ポスターについて。外国人の人権を守りましょう、というようなほんわかした、テーマのはっきりしないポスターが全国で1000枚もないという条件下で、広がっているヘイトスピーチに焦点を当てた、「許さない」という啓発をしなければならないのではないか、と問うた。そういった中で、現在の『ヘイトスピーチ、許さない』という黄色のポスターに実っていった」と積み重ねてきた取り組みを話した。



 また、「私がとりわけ印象的だったのは、ヘイトスピーチを叫ぶ人たちが警察に守られながら向かって来た時のショック。そして被害者の『あの時、私の心は殺されたと同じです』という言葉。ヘイトスピーチが人間の尊厳をどのように踏みにじり、否定し、人格そのものを壊していくのか。その傷がどれほど重いのかということを私たちがちゃんと認識したことが、今の解消法成立に実っていったと思う」と、自身の気づきと行動の動機についてのべた。
 その上で、「この3年間、積み重ねられてきたさまざまな行政の取り組み、地方自治体議会での条例制定の取り組み、また条例制定後の運用実績などをしっかり受け止めて、国会での議論を再び行う時期なのではないかと思っている」と主張した。



 立憲民主党の有田芳生議員は、「昨日も新宿で凝りもせずにヘイトスピーチをする人物がマイクを握っていたが、それに反対する人たちが当然のように来ていた。6年前に新大久保でとんでもないデモが行われた時に比べると大きな変化だ。ヘイトスピーチのデモや集会に、こんな人たちが来てるのかというような新しい人たちが老いも若きもカウンターとして集まってきているというのが、解消法制定以降の現実的な大きな効果だろうと思う」と実感を話した。

 有田議員は続けて、「市民一人ひとりの人間的な怒りが、ここにいらっしゃる国会議員の皆さんの怒りと結びついてできたのが解消法だと思う。先ほど桜本の話が出たが、法務委員会で視察に行ったときも法務省の人権擁護局長も参加しており、在日コリアンの方のお話を聞いて涙を流す場面があった。そういう悲しみと苦しみと怒りというものが法務省の中でも広がっていった。その当時の人権擁護局長は土日の休みにヘイトスピーチの現場に自ら行き、実感としてヘイトスピーチを許さないという思いに駆られたという。そういった思いが法務省をも動かし、選挙におけるヘイトスピーチに対する通達を出して下さるような、今につながっているんだろう。しかし、いまだ止まないネット上の人権侵害やヘイトスピーチに対し、いまの法律では限界がある。これはやはりこれからの課題として、超党派で新しい取り組み、法律化を進めていかなければいけない。皆さんのお力に支えられながら、現場を基本にして国会と結びつく動きというものをこれからも作っていきたい」とさらなる対応策の必要性に言及した。


続いて質疑応答があった。

Q:公人、国会議員、著名人によるヘイトスピーチが大変多くなっているが、そのことに対して一般の方々は「こういう人たちが言っているからいいではないか」というような事例が増えている。これをなくすために求められる議員の役割は?

-仁比聡平議員
 公的存在によるヘイトスピーチの問題は実際に大きい。そんなことは許さないんだという大衆運動を、私たち政治家が先頭に立って大きく広げていかなければいけないし、そのことによって攻撃の対象となっている人たちの前に私たちが立ちはだかって守ることが大事だ。ところが現実には現職の国会議員だったり、その候補者だったりが、戦後の憲法のもとでの基本的人権の保障や平和と民主主義という大前提を根本から否定し、覆す言論を起こしている。この政治の責任ということを根本から打開しなければならない。先ほど言った地方自治体での条例の取り組み、運用と全部ひっくるめて、国会―例えば法務委員会の舞台で、関係の皆さんをお呼びして参考人質疑を行い、今の現状がどうなっているのかということをちゃんと認識・共有するということを次の国会からでも始めるべきだと思う。

-矢倉克夫議員
 先ほど官房長官への提言について話したが、国会議員だからこそできることを当然やるべきだ。解消法ができたことで、ヘイトスピーチの存在とそれをなくすことを国の目標にした、という理解はされたと思う。次は他者への理解や寛容という想像力が大事で、それを育むために必要なのは教育だと思う。色んな部分に関わる根本の話なので、教育制度も含めて、どのように詰めていくかという議論を総合的に進めていかなければいけない。

-有田芳生議員
 立憲民主党の参議院比例区の公認候補で、ネット上でヘイトスピーチを行ったとして公認を取り消された人がいた。与野党問わず、もっと国会議員―あるいは候補者が敏感にならなければいけない。私は立憲民主党の議員として、党内でヘイトスピーチについての講座をやるべきだという提案をしている。ここにいる我々はヘイトスピーチは許さないという考えがはっきりしていても、そうでない人たちがいる党もある。なのでそのような努力もしていきたい。

***
 記者会見に参加しながら、自分たちの生活に直結するものとして、初めて政治家の力の大きさを身に迫って実感した。上で話されたような公人のヘイトスピーチといったマイナスの部分にしても、市民の言葉を国レベルに押し上げ具現化してくれるプラスの部分にしても。本当に、「自分のできること」というのは階層によって様々なのだなと知った。
 同時に、声を上げる一人がいるかどうかも大事だと思った。これは最初に声を上げたというだけに関わらず、その後に続いて立ち上がる人がいたかということだ。膨らんだ市民の声は小さくても国を動かす可能性を持つ。ただ、傷を受けた個人が声を上げるまでには想像もできない辛さがあるし、声が広がるまでは二次被害が最初の一人に集中する。だからこそ、上でも引用した「攻撃の対象となっている人たちの前に私たちが立ちはだかって守ることが大事だ」という言葉には心強さを感じた。
 この日の会見に立った国会議員たちは目の前の個人の苦しみに触れて、自分がやるべきことを決意した。政治家と市民の生活をつなげるためには間に入る機関や制度がきちんと機能すべきだし、それを支える専門家など幅広い分野の連帯が必須だ。各々の「できること」を知り、その力を結集させなければいけないと感じた。(理)

市民の声を届けるために-国会で反人種差別政策について考える集会

2019-05-30 10:00:00 | ï¼ˆç†ï¼‰ã®ãƒ–ログ

 5月29日、東京・永田町の参議院議員会館で、院内集会「ヘイトスピーチ解消法施行から3年 改定入管法施行後の反人種差別政策に向けて」が行われ、関係者、国会議員、メディア、市民など約150人が参加した。
 今年4月1日に改定入管法が施行され、外国人の「受け入れ」と人権にかかわる多くの問題がふたたび浮上するいま、まもなく施行3年目を迎えるヘイトスピーチ解消法をリンクさせ、新たな立法も射程に入れてさらに力を結集させていこうという趣旨だ。



 はじめに、ジャーナリストの安田浩一さんが「外国人労働者とヘイトスピーチ」をテーマに発言。安田さんは冒頭で、「まずはどうしても許せないことがある」としながら、5月28日に起こった川崎・登戸の殺傷事件に言及。
 「事件そのものはもちろん許しがたい。だが容疑者の身元が確認されるまでの間、ネットには『犯人は外国人に違いない』『川崎は在日コリアンが多いから犯人は在日だろう』というようなデマが流されたことに、ふざけるなという気持ちでいっぱい。著名人や影響のある人たちもデマに踊らされ、マイノリティが犠牲者になっている」と強く指摘した。

 安田さんはまた、総聯中央本部に銃弾が撃ち込まれたヘイトクライムのほか、国際政治学者を名乗る人物が「大阪には北朝鮮のスリーパーセルがいる」とテレビで平然と言ってのけた出来事、また政治家によるヘイト発言などを挙げながら、「これらすべてが、ヘイトスピーチ解消法が施行された以降に起こったことだ」と、法の実効性について再考する必要性を指摘した。



 弁護士の指宿昭一さんは、「改定入管法と外国人の人権」をテーマに発言。「日本には外国人人権基本法もなければ、多文化共生を推進する法律もない。入管法は外国人を管理するだけで、外国人の人権を守る法律ではない。それどころか外国人差別の温床になっているのではと思う」とさっそく問題提起をした。
 指宿さんは今年4月1日に施行された改定入管法の問題点について解説。一つ目は、外国人労働者を日本へ送るブローカーの規制がきちんとなされなかったこと。これまで、技能実習生や留学生のケースでも渡航希望者から不当に高額な費用を取る事例が多発しており、中間搾取や人権侵害の温床になっていた。そのような課題が目に見えているにも関わらず、大きな改善には至らず、実行性に疑問があるとした。
 もう一つは、労働者の使い捨ての問題だ。改定入管法では、新たに「相当程度の知識または経験を要する」、「特定技能1号」と「熟練した技能を要する」、「特定技能2号」という在留資格が設けられた。しかし、「1号」の労働者は通算5年以上の滞在が認められない使い捨ての状態で、家族帯同も認められていない。

 「そして最大の欠陥、それは技能実習制度を残したこと。技能実習生の方が、より奴隷的だからです。技能実習制度は、国際協力のために技能・技術を開発途上国へ移転する—という名目を持たされているが、実際には労働者として扱われている。技能実習生には基本的には転職する自由がなく、これまでにたくさんの人権侵害が起こってきた。農家に送られ、強姦された中国人女性もいる」
 指宿さんは、技能実習制度は必ず廃止されるべきだと主張し、また制度の改正を求めていかなければと話した。同時に法改正を待つだけでなく、市民社会のなかで外国人労働者を組織化し、団結・支援して権利を守っていく必要があるとした。



 国士舘大学教授の鈴木絵理子さんは、「解消されない実質的差別と拡大する制度的差別」とのテーマで発言。先立つ発言にもあるように、制度的不平等の拡大は差別の拡大につながると話し、総合的な対応策として言葉、制度の壁を解決するための施策が設けられなくてはいけないと主張した。



 最後に、弁護士の師岡康子さんが「切迫する人種差別禁止法の必要性」について発言。師岡さんははじめに、「今日の話でも怒りを禁じえない、外国人に対する人権侵害の話がたくさんあった。私たちはそれが新しい問題ではないということは確認しないといけない」と指摘。
 「植民地時代には法的にもっと差別して、被植民地の人々を奴隷とし、簡単に命を奪ってきた。戦後はそれに対する反省から出発しないといけないのに、それをすることなく差別し続けて、在日朝鮮人をはじめとする多くの在日外国人を無権利状態に置いたまま今日に至っている。その結果としての現在のヘイトスピーチの蔓延だと思うし、移民の方々への差別だと思う」

 師岡さんはまた、ヘイトスピーチ解消法が施行された以降の路上、警察、市民の動きなどの変化について解説。いまだ止まないヘイトスピーチ、それどころか法の隙間をぬって巧妙に広がり続けるようすを指しながら、ヘイトスピーチ解消法の矛盾と限界が露わになったと話した。その上で、より実効性のある法律、人種差別撤廃基本法の必要性を訴えた。



 集会の最後にアピール文が採択された。
 「ヘイトスピーチ解消法と改定入管法。これらは国会では別々の問題として議論されてきましたが、当事者から見れば、技能実習生として職場で不当な扱いを受けることも、家族の帯同を認められずに働かなければいけないことも、外国人として入居や入店、就職を拒否されることも、入管で暴力的な扱いを受けることも、路上のデモ隊から悪質なヘイトスピーチを浴びせかけられることも、すべて差別という点で同じです」―。
 主催側は、参加者一同の名前で▼政府は、外国人の人権擁護や異なる文化的背景の尊重などを含んだ内実ある移民政策を提示すること、▼政府は、何がヘイトスピーチかを判断するガイドラインを明示するとともに、ヘイトスピーチを含む人種差別全般を解消するための基本方針を策定すること、▼政府は、ヘイトスピーチ解消法をふまえてヘイトスピーチを解消するための教育活動を実質化すること-など5つの事項を求めた。

 集会には8人の国会議員が参加。ある議員が「今回の集会を機に、またいろいろと教えて頂いて頑張っていきたい」と発言するのを聞いて、国に声を上げるために、このような市民たちの団結した集まりと発信がとても大事なのだと実感した。(理)

平壌での「はじめまして」

2019-05-21 09:15:35 | ï¼ˆç†ï¼‰ã®ãƒ–ログ
 ちょうど2年前の今ごろ、イオ編集部のメールボックスに一通の問い合わせが届いた。記事の内容についてもう少し詳しく知りたいというものだった。名前を見るに、それまで何度か読者カードを送ってくれている方だったのと、そのカードに私と同じ年齢が書かれていたので、その旨を伝えると自然と少し打ち解けた。
 ぽつりぽつりではあるが、メールが1ヵ月ほど続いた頃。私が3ヵ月の朝鮮滞在をすることになり、しばらくメールはできなくなると伝えたところ…

「ウリナラ羨ましいなぁ! 当分メールは出来ないのは悲しいですが、8月に東京の方主催の訪問に混じって行こうと考えてて、もしかのもしかするとウリナラで初めて会うという素敵なことが叶うかもしれませんね!!笑」

とのお返事が。期待半分、本当に会えるかな?という気持ち半分で、平壌ホテルで日々それらしき訪問団に目を凝らしていた(事前に写真を交換しておけば良かったと、このとき気づいた)。

 そんなある日、とある訪問団に後輩がいるのを発見!  試しに「◯◯さんって人わかる?」と聞くと、「え? そこにいますよ」。なんともスムーズに会うことができた。
 「はじめまして!」と出会いを喜び、その日の夜は大同江ビールで乾杯して互いにこれまでの人生を語り合った。その子は日本とのダブルで、朝鮮学校には通ったことがない。自分なりに朝鮮と自身を見つめる過程で、同じくさまざまな背景を持つ同胞と出会ってきたという。私にはない経験と考え、人脈があり、話を聞くのが面白かった。

 かのじょは関西に暮らしているため、この2年の間に会った回数はそれほど多くない。しかし定期的に近況報告などをして、変化の多い時期を共有してきた。
 現在、その子がたまたま東京に来ている。今日の夜に会う約束をした。久々にゆっくり話を聞くのが楽しみだ。(理)

カマトト

2019-05-10 10:00:00 | ï¼ˆç†ï¼‰ã®ãƒ–ログ
 4月の終わり、会社の同僚たちと10人ほどで東京・小平にある国平寺に行ってきた。5年前に亡くなった先輩に会いに行くためである。

 2歳上の先輩との思い出で強烈なのは、入社した当初、帰り際に突然「このカマトトが!」と言い放って去って行かれたことだ。最初は言葉の正確な意味が分からなかったものの悪口なのは明らかだったので、意味を調べると「うぶらしく振舞う女性、ぶりっこ」の文字が。なぜ突然…と思っていたら(うぶらしく振舞った覚えがない)、当人が戻ってきて「さっきの冗談だから」と照れ笑いをし、また去って行った。つかみどころのない雰囲気もあったが、日常の言動の端々から素の優しい人柄がにじみ出ているような先輩だった。

 国平寺につくと、遺影が並んでいる場所へ行く前に、住職がお話をしてくれることになった。大きな広間にたくさんの椅子が置いてあり、そこに座るよう促される。前の方が空いていたので、(席を詰めた方が失礼にならないかな…)と思い一番前に座った、のだが…。
 住職が私の正面に立ち、ほぼ私の顔を見て話してくる。仏さまに関する質問も交えてくるので、そういう物事をよく分からない私はさりげなく目を逸らす。しかし目の前に立たれているのでよそ見をするのは申し訳ないかなと思い視線を戻す、と答えを求められる…。というなんとも困った状況になった。
 それでもなんとか話が進み、そろそろかなと思った頃、住職が「〇さんが亡くなったのはあなたのせいです!」とビシッと私を指さした。(えっ…!?)と思い身をすくめると、「あなたや私が〇さんの命をいただいて、いま私たちは生きています。だから皆さんは…」というような言葉に続く。あっそういう意味か…とホッとしたが、先ほどの場面があまりにショッキングで、他の言葉はすべて吹き飛んだ。

 そんなこんなで先輩の遺影がある場所へ。写真を見ると、うわ〜っと懐かしさが溢れてきた。「カマトト」と言って私をからかっていたときのような、無邪気な先輩の笑顔がそこにあった。先輩が亡くなったのは25歳のとき。私は23歳だった。いつの間にか追い越して、年齢はもう私の方が上だが、写真を前にするとやっぱり「先輩」という感じがする。心の中で昔のように少し話しかけてみた。一緒に行った同僚たちも、それぞれの思い出の中のかれと再会したのだろう。変わらない当時の笑顔にこちらまで笑ってしまった。(理)

“先輩”たちに学ぶキャリアデザインー第2回Roots Project

2019-04-30 09:48:42 | ï¼ˆç†ï¼‰ã®ãƒ–ログ
 「Roots Project」による第2回目のキャリアセッションが4月20日、東京都内で行われ、同胞の大学生や社会人など30人以上が参加した。「Roots Project」とは在日コリアン有志らによるチームで、「若い世代が『在日コリアンでよかった』と誇りに思えるようなきっかけや体験を提供する企画・場づくり」を目指している。
 前回、2月24日の「グローバルキャリアを考えるトークセッション」に続き、この日は「キャリアデザインを考えるトークセッション」と題してゲストらが経験を共有した。



 開始に先立ち、株式会社マイナビで働く李昌信さんが司会をし、「これからの人生で自分が迷った時にどう生きるかを考える『なにか』を掴むきっかけになれば」と呼びかけた。
 


 はじめに朴養順さん(神戸朝鮮高級学校卒)が登壇。朴さんは立命館大学を卒業後、株式会社リクルート、Amazon Japan合同会社、Indeed Japan株式会社を経て、現在はLINE株式会社にて勤務している。転職を重ねながらキャリアデザインを組み立てていく考え方と自身の経験について話した。
 朴さんは、「日本では転職に対するネガティブなイメージしかないが、全ての経験が皆さんの価値になるので、どんなことを言われてもぜひ自分で現状を見極めながらトライしてほしい」とエールを送った。



 続いて登壇した金誠樹さん(山口朝鮮高級学校卒)は、Cykanエンターテインメント、株式会社ヘッドウォータース、NHNJapan、NHNST、株式会社SEGA、合同会社DMM GAMESとIT系の分野で転職を重ね、今年5月から個人事業主として独立した経緯について振り返りながら、自身の働き方をのべた。



 また、Roots Projectの呼びかけ人である李成一さん(大阪朝鮮高級学校卒)もこれまでの職歴と現在の仕事について発表。日本、韓国、台湾などでシェアハウスを展開している意義を話した。



 最後にゲスト全員でクロストークを行い、司会や会場から寄せられたテーマに沿ってそれぞれの持論を語り合った。
 「これからの時代、どんな人材が求められるか」という質問に対して朴さんは、「モノやサービスはこれからもっと細分化されていくと思う。その上で、分野ごとの“スペシャリスト”と幅広い知識や技術を持つ“ジェネラリスト”の両極端が求められるのではないか。その中で個々人のポテンシャルが評価される。私個人について言うなら、自分のやりたい分野においてスキルセット(自分が有している知識や技術)を増やして経験を積み上げていくことでジェネラリストになりたい。皆さんの力は“かけ算”でどんどん広がっていくので、かけ算の数を増やしていってほしい」とアドバイスした。



 会場では、参加者同士も自己紹介やこの日の学びについて話し合い、交流を深めていた。

 30代の同胞男性は、自分と同じ世代の在日がどう生きているのか関心があり、偶然見つけた今回のイベントに参加したという。かれは10代の頃に家族とともに日本国籍へ「帰化」し、在日同胞コミュニティと出会うことなく成長したそうだ。しかし、自身のルーツは自覚しているなかで社会や情勢を見ながらモヤモヤすることが増え、一方で周りの日本人とは共有できず、同じルーツを持つ人たちとの出会いを求めた。今後のイベントにも注目していきたいと笑顔を見せた。

Roots Projectのメンバーに共通しているのは「後輩(若い世代の在日コリアン)たちのために」という思いだ。
育った背景や国籍、自称(在日コリアン、韓国人、在日朝鮮人など…)、アイデンティティの掴み方はそれぞれだが、これから社会に出る子どもたちのためにとボランティアでイベントを企画・運営している。

李成一さんと朴養順さんは朝鮮学校や留学同、青商会の学習会・イベントなどにも呼ばれ、この社会の中で一人ひとりが自身の価値を生かすためにはどうしたらいいか、ヒントになるような内容を伝えている。

また、上で紹介したような、これまで同胞コミュニティとつながることのできなかった人も参加しやすい、間口の広い場でもあるのだなと感じた。


 次回、第3回目のイベントは6月1日(土)の13時から予定されている。「最新テクノロジーで進化するビジネス戦線」というタイトルで、eスポーツとプログラミングを体験しながら学べる場を企画中だ。詳細はRoots ProjectのFBページか以下のHPで告知される。(理)

http://www.korean-roots.pro/

イオ5月号が完成しました

2019-04-17 10:00:00 | ï¼ˆç†ï¼‰ã®ãƒ–ログ
 本日、イオ5月号が完成しました。
 特集は「ワーク×ライフ 女性起業の新たなカタチ」です。“すべての女性が輝く社会づくり”が叫ばれる中、女性の起業に注目が集まっています。本特集では、さまざまな分野で起業し、持ち前のアイデアやバイタリティを頼りに自身の可能性を切り開く在日同胞女性たちの奮闘を取り上げます。また、女性の起業を取り巻く現状を分析し、女性の社会進出を活性化させるための課題についても掘り下げました。

 特別企画は、「解説・『徴用工』問題」。昨年10月30日、韓国の大法院(最高裁判所)は、植民地時代に日本企業に徴用され過酷な労働を強いられた朝鮮人被害者(以下、「徴用工」と表記)に慰謝料を支払うよう企業側に命じました。日韓の2国間関係を超えて、戦後補償問題全般にも大きな影響をおよぼすであろう今回の「徴用工」判決をめぐる問題の基本的な事実関係を整理しつつ、今後の課題や展望についても見ています。

 5月号の工程期間には九州無償化裁判の判決言い渡しもありました(3月14日)。結果は原告側敗訴。当事者と弁護団が5年以上にわたって訴え続けてきた思いや議論から目を背け、またもや裁判官が国による差別を許した不当判決でした。誌面では、判決言い渡しの瞬間から報告集会のようすまでをまとめた当日のルポに加え、判決文の問題点について書いた解説を掲載しています。
 「朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪」(無償化連絡会・大阪)が主催した無償化裁判応援イベント「MOREフェスタ2019~子どもたちの学ぶ権利を求めて新たなステージへ~」の内容もあわせてお読み下さい。

 3月20日~24日に開催された「ISU世界フィギュアスケート選手権大会2019」(さいたまスーパーアリーナ)に朝鮮代表ペアとして参加したリョム・デオク選手とキム・ジュシク選手に関する記事も。ブログでは紹介できなかったインタビューを収めています。

 他にも、京都朝鮮学校襲撃事件から10年を迎え、再び排外主義者たちがヘイトデモを起こしてしまった事態についてカウンターの方が寄稿して下さった「レイシスト、警察、マスコミは何をしたか #0309NoHateKyoto」、群馬県下の同胞幼児とオンマたちをつないできた「ポッポ会」の創立10周年イベント「뽀뽀회すた」を写真満載で伝えた「広がる新しいつながり」など今月号も盛りだくさん。プレゼントコーナーも充実してきたので、ぜひチェックしてみて下さい。

 最後にお知らせがあります。月刊イオは2019年5月号から価格を700円(税込)に改定することになりました。なお、2019年秋に予定されている消費税引き上げの際には、本体価格の調整を行い定価700円を維持します。
 定期購読の際の金額など、改定に関するお問合せは経営局事業部までお願いいたします。
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 イオは今年からキャッチコピーを「コリアにつながるすべての人へ」に変えました。これからもイオならではの発信に努めていきます。引き続きのご愛読をよろしくお願いいたします。月刊イオは、HPの定期購読フォームにてどなたでも注文することができます。1冊からのご注文も承っています。定期購読ではなく1号のみの注文の場合は、「その他伝達事項」の欄にその旨と希望号数を記入して下さい。(理)

ハルモニの尊厳回復と平和への願い、蝶に込めて―今年、5回目の4.23アクション

2019-04-05 09:45:00 | ï¼ˆç†ï¼‰ã®ãƒ–ログ

 在日本朝鮮人人権協会の性差別撤廃部会が主催する“4.23アクション”が今年も開催される。同アクションは、日本政府が否定し続けている日本軍性奴隷問題について今いちど声を上げようと15年から始まったもの。沖縄で日本軍の性奴隷を強いられた裵奉奇さんが、朝鮮新報を通じて自らの被害を世に告発した4月23日(1977年)にちなみ、この日をメモリアルデーとして毎年さまざまな行動を起こしてきた。

 今年はこのようなアクションが企画されている。


 一つ目のプログラムは、ルポライター・金栄さんによるお話「植民地朝鮮の遊廓と慰安所-北部朝鮮の現地調査から見えてきたこと」。日本軍性奴隷被害者の存在が不可視化され続けている朝鮮民主主義人民共和国で、長期にわたり「慰安所」研究をしてきた金栄さんの報告を通じて、日本の朝鮮植民地支配と日本軍性奴隷制について考えようというもの。

 また、会場では日本軍性奴隷問題の克服と朝鮮半島の平和統一を願うメッセージを込めた朝鮮半島統一旗が披露される予定だ。現在、同部会ではメッセージを書き添えた蝶の折り紙を広く募集している(冒頭の写真は在日本朝鮮留学生同盟のメンバーらが折ったもの)。当日、アクションの場には来られないが会の趣旨に賛同したい人たちが参加できるよう、同時に、より多くの人たちがこの問題について知り発信できるように、との意図がある。
 集まった折り紙は統一旗に描かれている朝鮮半島の上に貼られていく。ハルモニたちに思いをよせ連帯する声、被害者の尊厳回復を求める声、朝鮮半島の平和統一を願う声…。さまざまな声を載せた色とりどりの蝶が統一旗の上に集まるだろう。メッセージ折り紙は4月16日(火)まで引き続き募集されている。蝶の形、色、サイズ、枚数は自由。個人でも団体でも、参加したい方はぜひ下の送り先へ。

●郵送先:〒110-0016 東京都台東区台東3-41-10-3F 在日本朝鮮人人権協会 性差別撤廃部会
※簡単な折り方 → http://jyoharu.com/archives/1815.html

 アクションの詳細は以下。(理)

◆日時:2019年4月23日(火)19:00~21:00(開場18:30)
◆場所:武蔵野スイングホール(JR武蔵境駅北口より徒歩2分)
◆参加費:1000円(人権協会会員・学生・生活困窮者・障害のある方700円)
※高校生以下・介助者1名無料。託児はありませんがお子さま連れも歓迎です。多目的トイレあり。日本語が得意でない方や聴覚を使ったコミュニケーション補助が必要な方、その他なんらかの配慮が必要な方はお問い合わせください。できる限り対応できるよう努力いたします。
◆問合せ:在日本朝鮮人人権協会 性差別撤廃部会(TEL/03-3837-2820、Email:[email protected])




ウリナラ選手に感動、興奮…

2019-03-28 10:00:00 | ï¼ˆç†ï¼‰ã®ãƒ–ログ

 今月17日、朝鮮民主主義人民共和国のフィギュアスケートペア選手が、「ISU世界フィギュアスケート選手権大会2019」(3月20日~24日、さいたまスーパーアリーナ)に出場するため来日しました。平昌オリンピックのフィギュアスケートペア競技で総合13位に入り、オリンピックにおいて朝鮮フィギュアスケート史上最高の順位を記録したリョム・デオク(20)、キム・ジュシク選手(26)です。競技のようす、結果は朝鮮新報で紹介しています。

●〈世界フィギュア選手権2019〉朝鮮ペア、ショートプログラムで健闘/明日最終競技へ(3/20)
●〈世界フィギュア選手権2019〉朝鮮ペア、大会で11位/北京冬季五輪へ向け、さらなる飛躍を(3/21)

 競技を終え、23日には選手団が埼玉朝鮮初中級学校を訪問しました。この日は終業式。「子どもたちがあまりに興奮していて、終業式はサッと済ませました」と鄭勇銖校長は笑います。朝鮮のスポーツ選手が同校を訪問するのは実に36年ぶり。玄関前に待機した児童・生徒たちはもう待ちきれないといったようすで、すでに目を輝かせていました。



 午前11時半。選手たちが到着すると場は大興奮! 「반갑습니다-(嬉しいです)!!」「잘 오셨습니다-(ようこそ)!!」とあちこちから声が上がります。子どもたちは選手に触ろうと必死に手を伸ばしていました。ぎゅっと抱きしめたり、ハイタッチしたり。選手たちも子どもの頭をなでたり、両手で頬を包んだりと、出会いを嬉しそうに表現していました。





 リョム、キム選手が朝鮮学校を訪れるのは初めて。はじめは緊張した面持ちの二人でしたが、子どもたちの熱烈な歓迎を受けてどんどん表情がほころんでいきました。



 選手たちはその後、学校内を見学。初級部1年生の教室で机に座ってみたり、教科書を開いてみたり…





 また、教室の黒板にメッセージを残していました。



 ともに、「祖国の栄誉を世界に轟かせます!」と力強い決意を。



 そしてついに歓迎式! 児童・生徒たちは「필승조선(必勝朝鮮)!」と大きく声を合わせながら、アーチと紙吹雪で選手たちを迎えました。



 選手たちはこの間の応援と歓迎に感謝しながら、「練習がきついとき、民族の心を守りながら日本で暮らしている同胞たちのことを思い出して奮闘したい」と話しました。



 式では、児童・生徒たちが朝鮮舞踊と合唱を披露。子どもたちが精一杯に「가슴펴고 걸어갈래요(胸を張って歩いて行こう)」をうたうと、はじめは微笑ましそうに手拍子をしていた選手たちがこらえきれず涙を流しました。

 

 初級部4年生の宋炅潤さんは、「埼玉初中の児童・生徒で合唱したとき選手たちが泣いているのを見て、『ウリナラの人たちは本当に僕たちのことを大事に思ってくれているんだな』と感じてありがたかった」とのちほど感想を話していました。
 また、 学校からお知らせを受けて足を運んだという保護者の裵玄珠さん(39)も、「子どもたちの素朴な気持ちが伝わって、ウリナラの選手たちが涙を流して、またその気持ちが返ってきて。子どもたちにとって、祖国は普段なかなか感じることができないもの。初めて近くに感じたと思う」と話していました。



 その後、選手たちが「반갑습니다」の曲に合わせて登場すると割れんばかりの大歓声が。



 二人は軽快に踊りを披露し、さらに平昌オリンピックで着用した衣装を埼玉初中に贈りました。



 最後にみんなで記念撮影。笑顔いっぱいの時間でした。



 そしてお別れの時。選手たちはもみくちゃになりながら車に乗り込みました。最後の最後まで別れを惜しみます。





 それだけでは足りず、校門前でもういちど車を見送るため運動場をダッシュ!



 子どもだけでなく、先生やオモニたちも一緒に駆けていく姿がとても感動的でした。

 この日の夜には、さいたま市内の宴会場で同胞と選手団による交流歓送会も行われました。競技のようす、また選手、監督、団長のインタビューとあわせてイオ5月号で紹介する予定です。(理)

「闘いこそが私たちの未来」―九州無償化裁判、報告集会

2019-03-15 15:00:00 | ï¼ˆç†ï¼‰ã®ãƒ–ログ

 昨日の記者会見終了後、18時半から北九州市立商工貿易会館で行われた報告集会には、裁判所に集まった人々のほか、仕事を終えて駆けつけた同胞や日本人支援者の姿も新たに見られました。



 集会に先立って、九州中高の朴広赫教務部長が緊急の呼びかけをしました。



 「皆さんにどうしても伝えたいことがある。今週月曜日の朝8時半頃、同校最寄りの折尾駅で日本第一党が“スピーチ”をして、女子生徒に向かって『朝鮮人は帰れ』といった暴言を吐いた。話を聞いて折尾駅に駆けつけたが、もう街宣は終わった後だった。その場にたくさん警察がいたので『私たちの生徒に被害があったらどうするのか』と抗議したが、『かれらはいちおう道路使用許可をもらっているから自分たちはトラブルがないように見ている』という返答だった。インターネットでその時の動画を見たが我慢できなかった。ちょうど当日は東日本大震災が起こった3月11日だったのだが、内容の中に『震災で2万人が亡くなったとき、朝鮮人は横断幕を揚げてお祝いをした』というような作り話まで出している。私たちの同胞も震災でたくさん犠牲になった。また、女子生徒を指して『あの子たちを見て下さい、以前はチマチョゴリを着ていたけど、自分たちがこういう活動をするから今は着れなくなった』と堂々と言っていた。本当に許せない。また、折尾には朝鮮人がたくさんいるから潰さないといけないとも言っている。目と鼻の先でそういうことがあった。いまも無言電話や嫌がらせの電話が続いている。私たちは子どもたちに少しの被害も加えられないように守らないといけない。子どもたちが日本社会で朝鮮人として堂々と学び、好きなことができるようにこれからも支援をお願いします」



 報告集会ではまず、金敏寛弁護士が地裁判決の結果を伝え、この間、裁判支援運動に尽力してくれた人々に改めて感謝の意と、控訴審への意欲を伝えました。



 続いて、九州無償化弁護団の朴憲浩弁護士が判決の分析報告をしました。朴弁護士は地裁判決の内容について、「端的に言うと非常に不誠実だしとても空虚」と感想をのべたあと、記者会見で言及された問題点について再び説明しました。
 「裁判所は公安調査庁の報告などをとても重視し、それを教育に持ち込んでしまっている。つまり国から目をつけられたらなにもできなくなってしまう、公安が目をつけた対象であれば教育上の不利益を科してしまってもいいというような判断が今後も持ち込まれる可能性が出てしまっている。それが怖い。在日朝鮮人やその他のマイノリティもそうだが、差別されたらそのままどんどん不利益を科されてしまう状況を許してしまう判決だと思う。本来、その流れに釘を刺して流れを止めるのが裁判所の役割だと思うが、それができなかった」。朴弁護士は「めげずに、諦めずに、より怒りを込めて正しいことを言っていく」と言葉を強めました。

 各地からもたくさんの支援者が駆けつけました。はじめに無償化裁判を行っている東京、愛知、大阪、広島から連帯のあいさつがあり、それぞれの経験を共有しながら九州無償化裁判に携わってきたすべての人たちを激励しました。









 あいさつのあと、九州朝高生たちが公演を披露しました。





 生徒たちは、先代たちによる民族教育を守るための闘いを、次は自分たちが継いでいくと決意をアピール。

 「この闘いこそが、私たちの未来だから」―。



 裁判所の前で悲痛に泣き叫んでいた子どもたちが笑顔で希望を語るようすに、再び涙する人もいました。



 アピールはまだまだ続きます。舞台には九州中高オモニ会の代表たちが登壇。福岡県下にあるすべての朝鮮学校のオモニ会の力を借りて製作してきた折り紙チマチョゴリを紹介しました。判決の日を迎えるまでにオモニたちの心を一つにして、必ず勝訴を獲得したいという願いを込めたそうです。



 「学生のみなさん、堂々と胸を張りましょう。この6年間のあなたたちの闘いが、あなたたちのありのままの姿が、ウリハッキョを取り巻く環境を間違いなく大きく変えてきました」。梁敬順会長は力強い言葉で子どもたちを励ましました。



 次に留学同九州が発言。九州中高57期卒業生の李智香さんは、「私が初めて裁判を傍聴したのが高1のとき。それから6年が経った今もなお日本政府は朝鮮学校への差別を続けている。このような状況の中で、子どもたちが在日朝鮮人としての誇りを持って生きていけるようにするためには、私たちが声を上げて日本政府と闘っていかなければならない。在日朝鮮人の権利の中で闘わずに得たものはなにもない。無償化適用の権利も運動を通して勝ち取りましょう」と呼びかけた。



 2014年に九州中高を卒業し、同じく留学同九州で活動する金梨美さんも発言。
 「今日のこの日を迎えるにあたって、私は4.24教育闘争を思い浮かべた。あれから70年が経った今、日本はなにが変わったでしょうか。チマチョゴリが切り裂かれ、ヘイトスピーチという言葉の暴力を浴びせられ、そして今日、高校無償化制度から私たちは除外されました。私たちは人として生きる権利を奪われ続けています。司法でさえも、私たちを守ってくれることはありませんでした。私たちにはもう闘うことしか残ってないと思ってます。私たちの権利は私たちで勝ち取るしかありません。先祖たちが命をかけて守ってくれたこの場所を、これからは私たちが守っていくべきだと思います。もう二度と、未来を生きる子どもたちが悲しくて痛い思いをしなくて済むよう、涙を流さなくて済むよう、次は私たちがこの学校、そして在日朝鮮人と同胞社会を守っていきます」。



 またこの日、韓国から駆けつけた同胞たちも発言。



 「朝鮮学校と共にする市民の会」のリ・ヨンハク常任代表は、「この裁判が終わりではないことを皆さん分かっているでしょう。いまだ行く道は遠く、しかしこの道でこそ必ず正義が勝つということを示さなければなりません。皆さん悲痛な心情でしょうがしばらく呼吸を整えてから立ち上がり、目をしっかりと開き進みましょう」と温かい励ましの言葉を送りました。

 

 「ウリハッキョと子どもたちを守る市民の会」のソン・ミヒ共同代表は、「皆さんが始めた東京の『金曜行動』、大阪の『火曜行動』を引き継いで、ソウル大使館前で始めた『金曜行動』も先週210回目を越え、5年目を迎えようとしています。この力が拡大し、統一の歌になり、平和の踊りとなるでしょう。南、北、海外、全民族の力を合わせれば必ず勝ちます。諦めず最後まで闘い、必ず勝ちましょう!」と力強く発言しました。



 「キョレハナ」の教育局長を務めるシン・ミリョンさんは、「恥ずかしながら、初めて無償化裁判の場に来た。人類史で最も残虐な民族差別、子どもたちへの酷い差別を目の当たりにし、悔しくてたまらない。民族の自尊心を守るために闘う同胞たち、そして支援者たちに出会い、申し訳なかった一方で、これから大きく連帯していかなければならないと感じた。闘争の一歩一歩がどれだけ苦しいものなのか想像もできないが、この闘争が一歩一歩進んでいくごとに連帯と指示が拡大していくと確信している。遅れたが、キョレハナもその歩みに、誠実に一生懸命、連帯していきたい」と話しました。



 「モンダンヨンピル」の事務総長を務めるキム・ミョンジュン監督は、「2011年3月、東京の代々木公園で、朝鮮学校を無償化制度に適用するよう求める集会がありました。そのとき韓国からは自分ひとりが参加しました。2019年、8年が経ちました。それも東京でなく九州に。韓国から何人が来ましたか? 韓国ではいま、何千人もの人が朝鮮学校とそれを取り巻く問題に関心を持っています。KBSでも紹介されました。自分たちの同胞が日本でどれだけ差別を受けているのか、韓国の人たちもだんだん知ってきている。もう決して孤独ではありません。私は2002年3月に初めて日本に来た時はひとりでしたが、いま見て下さい。友人たちがこんなにもたくさんいます。闘いというのは、だれが勝った負けたというような結果が重要なのではありません。過程です。どれだけ仲間を作れたかが重要です。皆さんしんどいですが、明日からまた笑って! 頑張っていきましょう」と明るいエールを送りました。



 続いて、全国オモニ会代表の一員として登壇した京都朝鮮中高級学校オモニ会の朴錦淑会長が発言しました。
 「京都は毎回、無償化裁判に足を運んでいます。京都では高校無償化裁判をしていないのに、どうしてと聞かれることがあります。京都では10年前に、京都朝鮮初級学校が差別主義者に襲撃される事件が起こりました。私はこの事件と無償化除外の問題はつながっていると思う。先日の3月9日、襲撃事件を“記念”するという趣旨で京都の繁華街で当時の主犯が告知をして堂々と、警察の保護を受けながらヘイトスピーチを垂れ流しました。そういうことが許されてしまいました。無償化制度からの朝鮮学校除外は官製ヘイトです。それが、かれらをバックアップしてこの問題を起こしてしまった。だから二つはつながっていると思います。また、裁判というのはすべての労力を消耗するような本当に辛く苦しい闘い。それを自分の目で見届けて後世の子どもたちに伝えないといけないという思いもある。私たちがいま持っている権利はすべて勝ち取ったもの。高校無償化の権利も私たちが闘って勝ち取ったんだということ、そして闘ってきた人たちの思いや辛さや姿を、きちんと自分の言葉で語れるようにするために参加している。また自身も親として、九州中高の子どもたちに、『全国のオモニたちが応援している、力になっている』ということを伝えに来た。今日は負けたが自分の心に矢印を向けないで、前を向いて堂々と生きていってほしい。そして九州中高のオモニたち。ここに全国各地からオモニたちが来ています。子どもたちが泣いてる姿を見るのは本当に苦しいと思います。だけど、子どもたちのためにも大人が最後までやりきりましょう。まだまだ長く続いていく闘いではありますが、この裁判が求心力となって無償化の闘いが続いていると思います。全国のオモニたち、そして同胞たちが一緒になって連帯しているのでともに最後まで頑張りましょう!」
 子どもたち、そして保護者たちの気持ちに寄り添ったメッセージでした。



 その後、「朝鮮学校無償化実現・福岡連絡協議会」の中村元氣代表が声明文を共有しました。
 「本日のこの『不当判決』を絶対に認めません。そして、決してひるむことなく生徒たちを励ましながら、今後とも民族教育の擁護、子どもたちの学ぶ権利の保障を求め、全国の支援者とともに、勝利の日までたたかい抜くことを誓います」
 また、「朝鮮学園を支援する全国ネットワーク」はじめ、全国各地から応援のメッセージが寄せられていることを伝えました。



 次いで、服部弘昭弁護団長が改めて弁護団声明を朗読しました。



 「このような不当な判決が出てしまいましたが、諦めずに最後まで闘い続けましょう!」。報告集会の最後に、福岡朝鮮歌舞団が前に立ち、参加者全員で「声よ集まれ、歌となれ」を合唱しました。



 日本の差別政策に怒りを持って裁判闘争を続けてきた同胞・支援者たち。しかし司法が機能しない様までをも目の当たりにして、無力感に包まれてしまうこともあったでしょう。一方で登壇者も話していたように、闘いを続けてきた過程で確実に支援の輪は広がってきました。新しい言葉、新しい力が生まれています。なによりも、互いにしんどいけれど踏ん張ろうと励まし合える仲間がたくさんいることは大きな力になると、今回の報告集会を見ながら感じました。
 裁判はまだまだこれから。九州の控訴審の予定、各地での進行など、今後も状況が進み次第イオで報じていきます。(理)

「差別するな!」子どもたちの悲痛な叫び―九州無償化裁判、原告側が敗訴

2019-03-15 09:25:59 | ï¼ˆç†ï¼‰ã®ãƒ–ログ
朝鮮学校を無償化制度から除外したことは違法であるとして、九州朝鮮中高級学校の在校生、卒業生らが2013年12月19日に起こした国家賠償請求訴訟。昨日3月14日、福岡地裁小倉支部で判決が下された。

 結果は原告側敗訴。裁判所前で結果を待っていた同胞や日本市民たちは、落胆し、言葉なくうつむき、涙を流していました。あちこちで怒りの声が上がると、「声よ集まれ、歌となれ」の歌とともに裁判所への非難が広がっていきました。








 
 「私たちを差別するな!」「学ぶ権利を奪うな!」。

 留学同九州のメンバーが声を張り上げると、九州中高生徒たちがそれに呼応しシュプレヒコールをしました。「差別するな!」「奪うな!」と生徒たちが何度も何度も泣き叫ぶ姿に、周囲の大人たちは涙をこらえきれないようすでした。





 「私たちは最後まで闘う!」―。生徒たちはもうすでに次の闘いへの決意を叫んでいました。5年以上に渡って訴えてきたことを無視され再び深く傷つけられた当事者である子どもたちが、なお強くいなければならない現状、それを強いる日本社会のむごさを感じました。



 しばらくののち、裁判所の裏にある弁護士会館で記者会見が行われました。はじめに無償化弁護団の服部弘昭弁護団長が弁護団声明を発表。



 声明で弁護団は、国側が朝鮮学校を不指定処分にした二つの理由(▼ハ号削除、▼規定13条に適合すると認めるに至らなかったこと)は互いに矛盾すると主張したにもかかわらず、裁判所がその判断を避けたことを指摘しつつ、
―このように、審理の段階において明らかになっていた最も重要な論点について判断を回避したのみならず、朝鮮学校が朝鮮総連から「不当な支配」を受けているかという点について、原告らの検証申立てを却下し学校に赴いて事実を確認することもなく、また「不当な支配」が何を指すかも検討することなく、まして民族教育の歴史的経緯を振り返ることもなく、朝鮮学校が「不当な支配」を受けているとの合理的疑いが払拭できないなど、本件規定13条に適合すると認めるに至らないという文部科学大臣の判断に逸脱濫用がないとした。これは、国の主張をそのまま受け入れるものでしかなく、事実と証拠に基づいて判断を下すべき裁判官の職責を放棄したものに他ならない―
と辛辣に非難しました。これを見ると、裁判所による審議の過程は「していない」ことづくし。とても不誠実な判決であることが伝わってきました。



 続いて、判決の内容について安元隆治弁護士が発言しました。

 「朝鮮学校だけ無償化制度から除外するという差別的な国の政策に、司法が正面から判断を下すよう強く求めてきた。しかし今回の判決では、国による不指定処分の真の理由が政治外交目的だったという事件の本質について一言も触れていない」。

 安元弁護士も、国が不指定処分としている二つの理由の矛盾について言及しながら、「この不当な不指定処分について司法が正しい判断を下してくれると信じて闘ってきた。しかしあまりにも逃げ腰で、極めて残念な判決になっている。強い憤りを覚えている」とのべました。



 九州中高の全晋成校長は、福岡朝鮮学園の声明文を朗読しました。

 「行政府はもとより司法府までもが、不純な政治外交的動機により自らが定めた法の趣旨を歪曲してまで朝鮮高級学校の生徒たちを排除し傷つけながらも平然と居直る姿勢に、驚きと怒りを感じています」。声明文は、これからも多くの同胞と日本・韓国・世界の支援者とともに、良心と正義が実現するその日まで闘い抜くという決意で結ばれました。



 九州中高オモニ会の梁敬順会長は、涙をこらえるよう何度も口元を引き締めながら自身の心境を話しました。

 「悔しい思いでいっぱいです。子どもたちがどんな気持ちで今日を迎え、どういう思いで闘ってきたかを思うと本当に心が痛い。子どもたちをどんな顔で見つめ、どんな言葉で慰めたらいいのか…。でもこんな悔しい思いを二度とさせないためにも絶対に負けることはできません。他の4ヵ所で同じように闘っているオモニたち、支えてくれる多くの方たちの気持ちを忘れずに、勝訴のその日まで闘っていきたい」



 2013年度に九州中高を卒業し、現在は教員をしている余信徹さんも思いをのべました。

 「差別的な状況がこんなにもたやすく容認されたことがとても悔しいし憤りを感じています。在学中、卒業してからも今日まで自分たち、そしていま学んでいる子どもたちが当然のように自分の国の言葉や歴史を学んでいいんだということを伝えるためにも闘ってきたが、こういう形で一度ダメになってしまったことが非常に悔しい。しかし、いま学んでいる生徒たちもそうだし、これから学ぶことになる子どもたちに『自分たちが学びたいことを学んでいいんだ』ということを教えるためにも闘い続けていきます」



 その後、いくつか質疑応答が交わされたあと、「ほかに質問がなければ…」と、弁護団の事務局長を務める金敏寛弁護士が強調したい点について話しました。

 金弁護士は、“朝鮮学校を不指定処分にした二つの理由が同時に存在することは論理的に整合しない”という論点が東京高裁で出たものだと改めて説明。結果的に不当判決が出たものの、東京高裁はこの矛盾する関係をきちんと説明するよう国に指摘したとのべました。

 「九州の裁判ではそれを踏まえて、地裁の段階で裁判所に同じことを求めてきた。さらに言うとハ号削除こそが不指定処分の真の理由であり、規程13条自体は後付けの理由である、だから『ハ号削除は政治外交目的によるものだったか』という点をこそきちんと判断してほしいと丁寧に説明したにもかかわらず、今日の判決はそこになんら触れなかった。入口の議論をまったくしないまま、東京地裁と名古屋地裁での判決同様、『規程13条をクリアしない以上、ハ号削除は論じるまでもない』というところに落とし込んだ」

 九州では東京高裁で指摘された内容まで盛り込んで一歩進んだ主張をしていたにもかかわらず裁判所がまっすぐに向き合わず、結局は他の地裁判決と同じレベルの判決しか出せませんでした。目の前に突きつけられた問題提起を完全にスルーし、だれが読んでもおかしいとしか思えない判決を、裁判官はどんな思いで書いたのでしょうか。

 最後に、金弁護士が記者たちに呼びかけました。

 「今日の結果について、決して『朝鮮学校に対する差別的政策が続いている』というような論調で書いてほしいと思っているわけではない。裁判所がこのような判断をしてもいいのか、という部分をぜひ指摘してほしい。東京高裁での指摘があった後、初めて言い渡される判決だったにもかかわらず、その問題点にまったく触れようとせず、東京高裁からさらに後退する判決を出してしまった福岡地裁の罪は大きい」

 弁護士たちが何度も繰り返していましたが、この裁判で真剣に問われ、明らかにされなければいけないのは、“下村文科大臣による不指定処分の判断が政治外交目的に基づくものだったか”。昨年、9月20日に行われた第20回口頭弁論での金弁護士による意見陳述でも、明快に言われていることです。以下、再び引用します。
 ―下村文部科学大臣は、堂々と、「拉致問題」、「朝鮮総聯」、「朝鮮共和国」などの政治外交的理由に基づき、日本国民の理解が得られないから、朝鮮高校を不指定処分すると、明確に表明したのです。(中略)被告自身、規則ハ号を削除したことが、政治外交的な理由であることを認識しているはずです。だからこそ、被告は、本件訴訟において、下村文部科学大臣の発言を伏せるかのように、朝鮮高校だけが不指定処分となったのは、本件規程13条に適合すると認めるに至らなかったという後付けの理由を繰り返し主張せざるを得ないのです―

 弁護団は裁判官らに対して、考え方の順序を変えてみろと何度も丁寧に説明しています。日本語が理解できないなんていうことはないと思います。司法がハ号削除に関する審議を頑なに避けるのも、逆に、そこになにか不都合があるからなのでしょう。この不自然な見て見ぬふりを止め、問題の本質を直視し判断せざるを得ないような主張が今後なされることを期待したいです。弁護士たちは記者会見の場で、控訴審への意欲も口にしました。

 記者会見終了後、弁護団の白充弁護士が、また違った言葉で今回の判決について語ってくれました。

 「判決文の日本語自体がおかしい。朝鮮学校を排除するという結論が先にあって、そこにどう結びつけていこうかと引っ張っていくから無理が生まれる。内容を理解しようにも、そもそも論理として伝わってこない。これは『不当判決』以前に『論理矛盾判決』だ。裁判所がこういうことをしていいのか。自分たち在日朝鮮人はウリマルを大事に守ってきた。いま、日本社会、特に権力側が日本語を大切にしないという現象が起こっている。市民はそれに気がついていない。沖縄に暮らしながらも感じるが、政府の言っていることとやっていることが全然違う。日本語を大切に守らなければという思いを、今日さらに強くした。自分たちが警鐘を鳴らしていきたい」

 この日の夕方に行われた報告集会の内容は、本日午後にアップする予定です。(理)

九州で不当判決

2019-03-14 14:02:51 | ï¼ˆç†ï¼‰ã®ãƒ–ログ


 朝鮮学校を無償化制度から除外したことは違法であり、これにより教育を平等に受ける権利や経済的援助を受ける権利を侵害されたとして、九州朝鮮中高級学校の在校生、卒業生らが2013年12月19日に起こした国家賠償請求訴訟(九州無償化裁判)の地裁判決が先ほど下された。

 「原告の請求をいずれも棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする」
 法廷内は沈黙に包まれた。金敏寛弁護士が片手で顔を覆うのが見えた。口元は歪んでいた。後ろの方から深いため息が聞こえた。

 福岡地裁小倉支部には、九州中高の中3〜高3生徒・北九州初級の初6児童と教職員ほか、県内はもちろん日本各地や韓国からも同胞・支援者が集まり、たった37の傍聴券を求めて約320人が列をなした。また、マスコミ関係者も20人ほど来ていた。

 不当判決の知らせに、裁判所前にもしばらく重苦しい沈黙が流れたが、方々で少しずつ抗議の怒号が上がった。一人の同胞が声を絞って「声よ集まれ、歌となれ」をうたうと、歌声は少しずつ広がりながら裁判所を包み怒りの合唱となった。

 「私たちを差別するな!」「学ぶ権利を奪うな!」ー。何度も何度も泣き叫ぶ朝高生たち。歯を食いしばりながら、崩れそうになりながら、必死で声を上げる姿を見て同胞や支援者たちも涙を流していた。

 このあと15:30から北九州弁護士会館にて記者会見が、18:30から北九州商工貿易会館2階 多目的ホールにて報告集会が行われる。

 判決の詳しい内容と報告集会の様子は、明日の日刊イオで紹介する。また、イオ5月号にも詳報を掲載する。丸5年以上、法廷の中と外で闘ってきた当事者と支援者たちの思い、そして判決文の問題点をしっかりと伝えていきたい。(理)

自分が暮らすまちだから―川崎で市民学習会

2019-03-11 10:00:00 | ï¼ˆç†ï¼‰ã®ãƒ–ログ

 神奈川県川崎市で、「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民ネットワーク」が主催する市民学習会「実効性のある条例制定へ 前へ、前へ。ともに。」が3月8日に行われ、約200人が参加しました。
 同ネットワークが結成されたのは16年1月。日本各地で広がっていた在日コリアンに対するヘイトスピーチが川崎でも頻繁に起こり、生活を壊された市民たちが立ち上がって声を集めました。これまでの活動はHP(https://kawasakiar.tumblr.com/)に記録されています。

 今回の学習会は、川崎でもついに差別を禁止する条例を作ろうとの動きが進むなか、市民たち自身の力で、より実効性のある内容にするため学びを深めようとの趣旨で持たれました。
 また、川崎市では、市民の地道な行動によって2017年11月に「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律に基づく『公の施設』利用許可に関するガイドライン」というものが策定され、18年3月末から施行されました。これは名前の通り、川崎市にある公の施設で差別的な集まりを持つことを禁止するため、基準となるガイドラインを設けるというものです。
 しかし、このガイドラインは適正な運用がなされていないとして、ネットワークを中心とした市民たちは多くの課題を指摘しています。学習会では、この内容についても併せて紹介されました。



 はじめに司会があいさつ。「差別を禁止し、終了させるための実効性のある条例を作りたいという思いで何年間も活動してきたが、やっとその努力が実るようになってきた。来週の月曜、川崎市議会に条例の骨子案が提出される。私たちは川崎市にいい条例ができるように全力で応援し、より実効性のある内容にするため、学んでいかなくてはいけない」と呼びかけました。
 続いて市議会議員らによるあいさつがあり、それぞれにより良い条例策定のため尽力していく旨を話しました。


↑飯塚正良議員


↑堀添健議員


↑片柳すすむ議員

 応援メッセージ(書面)の紹介のあと、ゲストによる学習が始まりました。
 精神科医の香山リカさんは、反ヘイトスピーチの活動に携わるようになったきっかけを話したあと、精神科医としてこの問題とどう関わっていけばよいか、自分なりの考えをのべました。



 香山さんが、人種差別団体である「在特会」の排外デモを初めて見たのは2013年。まるで映画の撮影のような、現実に起こっていることとは思えないほどひどい実態に驚きながら、その後も在特会の動きをおっかなびっくり注視していたそうです。本格的に抗議を始めたのは14年の秋。その年の夏、札幌市議会の金子快之議員が自身のTwitterに「アイヌ民族なんて、いまはもういないんですよね」と投稿したのを見て、「民族の否定とはどういうことだ」と怒りを持ちました。
 香山さんは北海道出身で、アイヌルーツを持つ地元の人たちがSNSで自分の民族の文化を楽しそうにシェアするのも見ていました。金子議員の発言のあと、その人たちが萎縮していくのをリアルタイムで感じて居ても立っても居られず、民族差別に抗議する意志を表明したと話しました。

 香山さんはまた、排外デモをする人々がニコニコしながらヘイトスピーチを吐くようすを見て、「非常に娯楽的。恍惚感や高揚感が訪れて、依存状態になっているのでは」と感じたと言います。最後に、「社会の中で、人権や心身の健康を阻害するような恐ろしいことが起きている。被害者の実態、加害する側の原因、ヘイトスピーチの後ろにある病理的な背景などについて、精神科医という立場で関わっていかないといけないと思う。市民や行政だけでなく、専門家をはじめとする色々な分野の立場から包囲網を作り、ヘイトや差別のない社会を作っていけたら」と思いをのべました。



 香山さんによる学習のあと、ふたたび応援メッセージがありました。4月に市議選に立候補する後藤まさみさんは、「3歳のときに父が亡くなり、母が在日コリアンの方が経営する焼肉屋の事務をして生計を立ててくれた。小さい頃からそこのハンメやオモニたちにとてもお世話になった。そうした経験からも、ヘイトスピーチや民族差別を絶対に許さないという思いがある。皆さんの思いを市政に反映させていきたい」と話しました。



 県議選候補の岩田サヨ子さんは、「桜本に長く住んでおり、川崎協同病院で看護師として務めてきた。お金のあるなしや国の違いによって差別があってはいけないと、平等な医療を目指して続けられてきた病院だ。45年間そこで勤めた。地域でも今後、同じ理念を持って活動していきたい」とあいさつしました。



 次に、1999年から国立市議会議員として活動している上村和子さんが講演をしました。上村さんは、4月に施行予定の「国立市人権を尊重し多様性を認め合う平和なまちづくり基本条例」制定のために長年、地元で尽力してきました。この条例は、人種、皮膚の色、民族、国籍、信条、性別、性的指向、性自認、障害、疾病、職業、年齢、被差別出身その他、経歴などを理由とした不当な差別を行ってはならないという、差別を包括的に禁止した都内でも初の条例です。
 上村さんが合言葉にしているのは“ソーシャル・インクルージョン”(すべての人を社会的孤立や排除から守り、社会の一員として包み支え合うこと)。この理念をもとに条例制定まで活動してきた内容について振り返りました。その間には、国立市からの朝鮮学校児童生徒補助金が打ち切られそうになる事件や、被差別出身者への連続大量差別ハガキ問題など、特定の民族や出身者に対する行政的、民間的な差別とのたたかいをはじめ、多くの紆余曲折があったそう。「朝鮮学校の補助金を廃止させたら、私は議員として加害者になると思った」という上村さんの言葉が胸に響きました。

 上村さんは、国立市の場合、▼人権感覚のある首長がいたこと、▼職員や議会にもやる気があった、▼当事者が頑張っていた、▼学識者が力を貸してくれた―という4つの条件があって条例制定に至ったと話しました。



 上村さんのエールを受けたあと、「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民ネットワーク」事務局の崔江以子さんが発言。条例制定に向けて進んできたこれまでの経緯を説明したあと、「公の施設」利用に関するガイドラインの課題についても改めて話しました。このガイドラインは、▼差別的言動が行われる可能性が高いこと(人種差別要件)と▼施設の安全な管理に支障が生じる事態が予測されること(迷惑要件)の二つを同時に満たしたときに適用されるとされています。しかし、このままだと確信的に差別扇動を繰り返している人には抜け道を与えてしまいます。実際に川崎市では、そういった性格の集会において、一部の参加者から「ウジ虫、ゴキブリ、日本から出ていけ」というヘイトスピーチが出た例がすでに発生しています。崔さんは、ガイドラインの改善も引き続き訴えていく必要があると伝えました。

 「さあ、いよいよです。来週月曜日の10時から、川崎市議会文教委員会で条例の骨子案が提出されます。私たちの代表である委員たちが、私たちの条例を審議します。しかし、特別な人たちだけが条例を決めるのではなくて、私たち市民は議員さんを応援することで参画していきましょう」。崔さんは、自分たちが暮らすまちは自分たちの手で守ろう、作っていこうと呼びかけました。
 同時に、条例制定に向けてのスケジュールも共有されました。夏には市民たちの意見を聞くためのパブリックコメントも実施されます。これについても崔さんは、「行政がなにか施策をしようとすると、必ず相反する考えを持つ人たちが反対の電話をします。それに対して『頑張れ! 私たちがついている!』と励ましましょう」と再三強調しました。
 「学びを力に、前へ、前へ。頑張っていきましょう!」



 崔さんの発言に続いて、「反差別相模原市民ネットワーク」の田中俊策事務局長が緊急アピールをしました。同ネットワークは、人種差別と排外主義を掲げる政治団体「日本第一党」の桜井誠党首が相模原市内で講演と称したヘイトスピーチを行ったことに対して危機感を持った市民たちによって結成されました。
 田中さんは今年の地方統一選挙に日本第一党から3人の立候補者が出ていることに言及しながら、▼かれらを当選させないこと、▼相模原でも差別禁止条例を制定すること、そして津久井やまゆり園での障害者虐殺事件について触れ、それを活動の根底に置き、▼すべての差別を許さないこと―、この3つの方向で運動を進めていくと話しました。



 最後に、「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民ネットワーク」事務局の山田貴夫さんが行動提起をしました。山田さんは今回の条例の骨子案にはネット上でのヘイトスピーチの対策については盛り込まれていないため、それも課題として挙げていかなければならないと提起。また、被害者の救済システムをつくること、条例制定後もきちんと機能しているかチェックする場を持つこと、その場に市民が参加すること、などの項目も重要だと話しました。



 さて、上にも書きましたが、本日10時から川崎市議会文教委員会が開かれます。「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例(仮称)」の骨子案についての審議が開始するのは11時~11時半頃とのこと。インターネット中継もあるそうなので、気になる方はこちら(http://www.kensakusystem.jp/kawasaki-vod/)からチェックしてみて下さい。(理)

「3.1節100周年記念 民族の自主と平和、統一のための海外同胞大会」

2019-02-28 10:00:00 | ï¼ˆç†ï¼‰ã®ãƒ–ログ

 昨日、ついに朝米首脳会談が始まった。それに先立つ形で、2月26日に「3.1節100周年記念 民族の自主と平和、統一のための海外同胞大会」が赤羽会館で行われた。6.15共同宣言実践日本地域委員会が主管したものだ。



 行事には南や海外からも代表が参加し、歴史の節目を記念するとともに新しい時代への期待と決意を共有した。日本政府の制裁によって参加が叶わなかった北側からは連帯のメッセージが送られた。
 「歴史的なあの日から1世紀が経ちましたが、私たちは未だ先烈たちの念願であった完全な自主独立を果たせておらず、70年以上も分断と敵対の痛みの中で暮らしています。もうこれいじょう民族分断の悲劇が続いてはならず、我が民族同士ちからを合わせて自主統一を果たし、全民族の力で外勢によって強要された受難の痛みを消し去り、平和と繁栄の大路を開いていかなければなりません」…

 続いて総聯の許宗萬議長が登壇し、「今日のこの大会は、民族史に開かれる新しい時代の呼び声に応答し、歴史的な北南共同宣言の履行のため我が海外同胞たちの統一運動をさらに高い段階に発展させることにおいて重要な契機になるだろう」とのべた。

 また、南側の代表らも連帯のあいさつに立った。



 6.15共同宣言実践南側委員会のリ・チャンボク常任代表議長も「南北間で交わされたすべての協定をすべて履行することができるよう、私たちが協力しともに働きかけていこう」と呼びかけた。



 民族和解協力汎国民協議会のキム・ホンゴル代表常任議長は、在日朝鮮人の民族教育や日本との歴史的な問題について言及し、翌日に控えた朝米首脳会談についても触れながら「我が民族はこれまで、数多くの困難を克服してきました。これから開かれる変化の時代において、初めて進む道だと怯え、躊躇する人々もいるが、果敢に前に進んでいこう。その道の上で私たちは一つです」と話した。



 また、더불어 민주당(ともに民主党)のリ・ジョンゴル国会議員は「100年前、私たちの先輩方は独立宣言を発表した。その時は南と北がなかった。この間、戦争の脅威を感じながら生きてきた私たちだが、今こそ手をつなぎ、完全な自主統一を実現するための土台を作っていこう」と力を込めた。

 その後、大会の報告と海外同胞・在日同胞の各界各層代表による演説があった。



↑6.15共同宣言実践米国委員会のシン・ピリョン代表委員長



↑6.15共同宣言実践中南米地域委員会のチョン・ガッパン常任代表



↑6.15共同宣言実践ヨーロッパ地域委員会のソン・ギョンソク常任共同代表



↑在日韓国民主女性会のキム・ジヨン会長



↑東京朝鮮中高級学校 高級部2年生のピョン・スンジュンさん



↑平和統一協会のリ・ドンジェ会長

 最後に、海外同胞大会の参加者らの思いを集めて決意文が採択され、
1.民族自主、民族自決の原則、「我が民族同士」の立場を固守し、民族共同の新しい統一里程標である歴史的な板門店宣言と9月平壌共同宣言を履行するための運動を積極的に展開していく
2.南北の同胞たちとともに、朝鮮半島の平和の主人であるという自覚を持ち、外勢による干渉や対立構造の助長を断罪糾弾し、朝鮮半島の平和実現を要求する多様な運動を積極的に展開していく
3.すべての海外同胞たちを統一運動に携わる一員とし、民族の和解と団結を深め、南北間の協力と交流を全面的に拡大・強化していくため特色ある取り組みをしていく
4.祖国統一に向けて進む南北関係の改善と、平和と繁栄の絶好の機会を逃すことなく、自主統一のための望ましい法案を模索し、これを実現するまで力強くたたかっていく
5.日本当局が朝鮮民族に犯したすべての悪について謝罪し清算するときまで、力強くたたかっていく

の5つの課題が共有された。















 第2部の文化公演にはさまざまなアーティストが登場し、統一への希望を感じさせる明るい演目を披露した。(理)



ハムケヘヨコンサートin 北九州、大成功!

2019-02-21 09:30:00 | ï¼ˆç†ï¼‰ã®ãƒ–ログ

 「ハムケヘヨコンサートin北九州―いいね朝鮮学校! 釜山・北九州・筑豊・福岡・山口の友情と絆―」が2月9日、北九州国際会議場で行われ、日本市民と南の同胞、朝鮮学校保護者など約600人が観覧しました。朝鮮学校を支援する日本と南の市民団体(「福岡県朝鮮学校を支援する会」「福岡地区朝鮮学校を支援する会」「筑豊地区朝鮮学校を支援する会」「朝鮮学校を支える会・北九州」「朝鮮学校を支援する山口県ネットワーク」「朝鮮学校と共にする市民の会(釜山)」)が共催して実現したコンサートです。

 プログラムには、呼びかけを受けて参加した福岡県と山口県にある朝鮮学校の児童・生徒たちに加え、福岡朝鮮歌舞団、日本のアーティスト、またコンサートのために構成された釜山の同胞公演団による多彩な演目が並びます。



 児童たちは直前まで演目の練習に精を出していました。



 ロビーでは、九州朝鮮中高級学校のオモニ会がブースを作り、折り紙チマチョゴリ作成の協力を呼びかけていました。3月14日に行われる九州無償化裁判の判決言い渡しの際、アピールの一環として使用するものとのこと。開演まで、多くの方が参加していました。



 ついに開演。会場の照明が変わると児童たちが続々と舞台上に現れ、元気いっぱいに「가슴펴고 걸어갈래요(胸を張って歩いて行こう)」を合唱しました。第1部「朝鮮学校・子どもたちの現在(いま)!」の開幕です。オープニングから涙をぬぐう人、スマホで撮影する人、盛大に拍手をおくる人…。朝鮮学校で学ぶ子どもたちの生活を記録した映像をはじめ、続く演目にも会場中から感嘆の声とあたたかい歓声が飛びました。



 民族打楽器演奏のあと、九州朝鮮中高級学校の生徒たちが舞台へ。明るい笑顔で歌とダンスを披露しながらも、一方で朝鮮学校が受けている社会的な差別問題についてまっすぐに訴えました。



 第1部が終わり休憩時間に。「とにかく素晴らしくて、拍手のしすぎで手が痛い」と笑うのは地元に暮らす74歳の日本人女性。市の施設に置かれたチラシでコンサートのことを知り、友人を連れて訪れたといいます。朝鮮学校を知っていたかとの問いに、「全然知らなかった」。「日本で生まれて日本で育ったのになんで差別するんやろ」と首をかしげていました。
 また、朝鮮学校を「北朝鮮の人たちが行く学校だと思っていた」60代の日本人女性たちも、児童・生徒たちの姿が「明るくて元気でよかった」と感想を言い合っていました。「交流の機会があるならもっとアピールしていってほしい」。共通していたのは、学校や子どもたちのことを具体的に知りたいという反応です。



 「朝鮮学校を支える会・北九州」の事務局長を務める瑞木実さん(69)は、「これまで朝鮮学校を支援していた人たちの、もうひとつ周囲に手を広げたかった」と話します。一般の人々にも伝わりやすい表現を選び、仲間たちと準備・広報に励んできました。その結果、北九州市、同市教育委員会、福岡市、下関市のほか4つの新聞社とテレビ局からの後援を獲得するという画期的な進展がありました。



 「朝鮮学校を支援する山口県ネットワーク」の内岡貞雄さん(73)もそのことを喜びつつ、「圧倒的マジョリティの日本市民にどう伝えるか。初めての人を呼ぶのは難しいし時間もかかるが、ここで終わらないことが大切だ」と継続する課題を挙げました。



 「朝鮮学校・子どもたちの未来へ!」と題された第2部には、釜山同胞公演団と福岡朝鮮歌舞団、そして10年以上にわたって歌舞団と交流を続けている日本の和太鼓チーム「志免飛龍太鼓」が出演。パンソリ、現代舞踊、民族器楽、農楽、民族舞踊と、迫力ある演目の数々で観客を魅了しました。



 中でも盛り上がったのが「뱃노래 소란(ペンノレソーラン)」。日本と朝鮮半島の友好を願い、朝鮮民謡のペンノレ(舟歌)をソーラン節で表現したオリジナル作品です。歌舞団の歌に合わせて和太鼓、チャンゴの力強い振動が響き、それぞれの文化がみごとに調和していました。フィナーレでは1、2部の出演者全員で統一列車をつくり、手を取り合って未来を開いていこうとの願いを観客に伝えました。



 同日夜に持たれた懇親会にはコンサートを準備した方々が集まり、今回の出会いを通じて得た経験や思いをそれぞれに共有しました。



 「子どもたちを励ましに来たのに、むしろ自分がエネルギーをもらった」と微笑むのは、現代舞踊「나비춤(蝶の踊り)」を披露したパク・ジェヒョンさん(39)。作品の中で何度も潰れ、消えてしまっても再び生まれてくる蝶は「民族」を表しているといいます。「日本政府に存在を否定されながらも学校や民族を守っているのはすごい。自分がもし同じ立場だったら、果たしてそういられたか…」。実際に出会った朝鮮学校の子どもたちを思いながら本番に臨んだそう。

 釜山広域市議会・経済文化委員会のキム・ブミン委員長(43)は、「在日同胞、南の同胞、そして日本の人たちが同じ場所に集まり朝鮮学校のことを伝えるため行動した。とても大きな意義がある。この取り組みが人々の融和のきっかけになれば」と呼びかけました。

 北九州市議会の福島司議員(67)は、「文化に国境はないことを肌で感じた。自分も長い間、門司で在日の人々と生活してきた。高校無償化適用のためだけでなく、地域の中での“普段着”の交流が進むよう努力していきたい」とのべました。

 コンサートの舞台監督を担当したペ・ソンシクさん(48)が釜山での朝鮮学校支援に参加し始めたのは数年前のこと。映像や写真、記事などを通して朝鮮学校を知る努力を続けてきたといいます。「子どもたちに会ったのは初めて。存在を知っているだけなのと直接話すのとでは全然ちがうと実感した。コンサートも涙が出て…。今日の出会いを南の同胞たちにももっと知らせてあげたい」。

 福岡朝鮮歌舞団の歌手・金潤基さん(29)は、「一番伝えたかったテーマは『一緒に生きていこう』。これからやっていくべきは、お互いのいい所を持ちよって、一つの思いを届けることだ」と話していました。



 また、南の同胞が日本の支援者に駆け寄って話している言葉を、在日同胞が通訳して伝える場面も。懇親会の会場にはそのような輪がいくつもできていました。「言葉の壁はあるけど、なんとか半年間でコンサートを上げ成功させることができた。思いが同じ方向にむいたら話が進む。民間の交流が先行すれば情勢もついてくるはずだ」(瑞木実さん)。



 懇親会では最後に再び大きな統一列車がつくられ、言葉と距離を越えた友情が確認されました。高校無償化問題についても改めて共有され、次の目標や課題に向けての大きなパワーが生まれた場になったと感じました。

 最後にお知らせを。上でも書きましたが、九州無償化裁判の判決がついに3月14日(木)に言い渡されます。日本各地5ヵ所で行われている無償化裁判のうち最後の地裁判決になります。無償化弁護団は提訴時、問題の本質を「在日朝鮮人社会に対する日本社会の差別・偏見が典型的に表れた事案である」と訴え、当事者や支援者たちと5年以上におよぶ裁判闘争を繰り広げてきました。裁判所に対し、偏見にとらわれず公正な判決を下すよう強く求めています。
 判決当日は県内はもちろん、各地域からもたくさんの方が駆けつけるそうです。社会的にも多くの関心が集まることを願います。(理)