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yoshitakaoka.hatenablog.com
皆さま、お久しぶりです。 お元気ですか? お元気でなくても、生きていますか? 暑いですけど、ご飯を食べていますか? 食べていなくても飲んでいますか? 下町のナポレオンに癒されていますか? たまには遊んでいますか? ボーリングとかやっていますか? 今年はスイカバーを買いましたか? プールに行きましたか? 水面に飛び込みましたか? 遊園地はどうですか? 帰りに欲しくもないキーホルダーとか買いましたか? 夏がくるとソワソワするのは、大人になっても変わらないのだと実感しました。ソワソワするからといって、日常が様変わりするわけではないのですが、太陽の照りが強くなって首筋にジワッと汗をかくようになると、起きて寝るまでのルーティンの中で思い出す記憶の内容は、夏とそうでない季節とで大きく変化します。 ラジオから流れる曲のように、次に何がくるのか予想できないのが記憶の面白い(恐ろしい)ところで、いわゆる『フ
お前が行きたかった国に行くまで祈る お前が欲しがってた車を買うまで祈る お前が撮りたかった映像を撮るまで祈る お前が入れ込んでた女優が売れるまで祈る お前の子供が二十歳になるまで祈る 大丈夫 祈ってる 上がっても下がっても祈ってる 借りパクしたCD はやく返せよ 借りパクした写真集 はやく返せよ また夏が来るぞ 今年もやっぱり帰れそうにない 溶けたスイカバーもお預けだ また夏が来るぞ 今年もベイスターズは優勝しない だったらお前も帰ってこないな 真っ暗な道を歩いてると 蒸し暑い夜を思い出すんだ なかなか燃えない蚊取り線香 生温くなった三ツ矢サイダー サンダル履くのもダルいから 裸足のまんまで寝そべった 今でも数字を数えてる 決まった時間にアラームをかけて 7、8、9でボタンを止める なんもかんも昔のまんまで なんもかんも変わってしまった 忘れるから生きていけるって人は言うけど 忘れなくても
街の七不思議のひとつになるのが、この計画を立てた理由だった。 僕がそう思うに至ったのは、ジャンピングマンの存在が大きい。ジャンピングマンとは、毎夜僕らがタバコを吸う為に集まっていた田んぼ道に現れる男で、ビートルズのレットイットビーを歌いながらジャンプして進むという習性を持っていた。 ジャンピングマンは幽霊とかもののけの類ではない。れっきとした人間だ。最初にその姿を目撃した時は驚いたが、危害を加えてくる人ではないと分かってから、彼の存在はいつも見る風景の一部になった。 ジャンピングマンが飛び跳ねるスポットと僕らがたまる場所は、そんなに離れていない。距離にすると十五メートルくらいだ。彼が道端に座る僕らのことを認識しているかどうかは分からない。でもきっと、そんなの彼にはどうでもいいことなのだろう。ジャンピングマンはジャンピングマンの理由があって夜遅くに人気のない田んぼ道で飛び跳ねている。暗闇の中
区切りをつけるという行為は、とても大事なことだ。 今いる場所、状況、従事している事柄から距離を取り、関わり合いを断つ。それは何かを成し遂げた後でも、中途半端な状態でも構わない。とにもかくにも「終わり」と決めて、さよならするのが重要なのだ。 去年の3月から区切りをつけられない毎日を生きている。でもそれはきっと、私だけではないのだろう。 北国特有の長い冬が終わり、街中いたる所に色が付いて木々も青々としてきた。ひと足先に自然界が衣替えを終えても、人間界に住む私は足踏みしたままだ。 半地下にある職場の窓から気持ちよく晴れた日を見上げていると、さまざまな思いが頭に浮かぶ。喜怒哀楽バランス良く湧いてくるのならこの上ないが、最近はそうもいかない。猫で頭を満たそうとしても、新しい生活様式へと変わっていく社会への不安が思考を覆う。 好きな音楽をかけても頭に響かない時、私は心に残っている昔の場面を思い返す。そ
「未来」という言葉に希望が含まれていた少年時代、ブラウン管の中にはサトームセンのジャガーや、オノデン坊やが息をしていた。 元気があった街の本屋にはジャンプやマガジン、コロコロやファミ通といったカタカナの少年誌が平積みされており、高橋名人や毛利名人が競ってファミコンの腕前を披露していた。 私は、アナログとデジタルの狭間に生まれた。 機種変更やモデルチェンジを含め、今までなかったものが生まれ、そして消えていった様を数多く見てきた。それらは私にとって、「未来」という魔法だった。 ビデオデッキ 世に出た後に、随分遅れて我が家にやってきた未来機器。 一言でいうと、タイムマシーンだった。 どうでもよいCMを録画し、すぐに再生する。そうすると、ついさっき見た映像がそっくりそのまま画面に流れた。 ボタンひとつで時間が操れる角ばった箱は、夢でしかなかった。 このドリームマシーンのおかげで、巨人戦の裏番組を後
寝る前に開いたページで見つけた記事を、放っておくことは出来なかった。 全ての人間が人間のまま生きているとは思えない。実際、人間の皮を被った悪魔を何人も見てきた。「未成年」「未熟さゆえの過ち」「集団心理の暴走」この事件にそれっぽいフレーズは幾らでも付けられると思うが、そんなものは知らない。加害者たちの行動の意味を見つけようとしても、個人的にはそんなものがあるとは思えない。記事で書かれている行為は人間のそれではない。卑劣で残酷で鬼畜な行為。それ以上でも以下でもない。 清廉潔白に生きるべきだなんて考えは持っていない。そんな風に生きてこれなかったし、生きたいとも思わない。マイナススタートでも、紆余曲折があっても、どうにかこうにか立っていればいい、そう思って生きている。事情や状況は人それぞれだ。どうしようもなく流せない日は呑めばいいし、打てばいいし、巻けばいいし、吸えばいい。人に迷惑がかかる云々言う
夕立を避けて息を殺し 渡り廊下で合図を待つ 見下ろした中庭ではしゃぐ制服 びしょ濡れになって騒げたら 夜は怖くないんだろうな 開けっ放しの窓 ポカリを飲んで空に願掛け 広げた二本の指の間に あなたの帰る道が伸びる 強い炭酸が苦手なのは 切れた口にしみるから 電話番号を教えないのは 続きを聞くのが怖いから 夕焼け色に染まった髪の毛 唇の横に刺さったピアス 原付で国道を飛ばしても 映画のようにはいかなかったね どこから中を覗こうと 白く濁った液ばかり どこから中を覗こうと あの日に嗅いだ匂いばかり 過ぎた時間も流れた場面も 誇れないものにまみれて埋まった あなたのように綺麗じゃないし あなたのように澄んでもいない 汚れた身体を白状したら 見捨てた感情は報われるかな 美しいだけの言葉にバイバイ その場しのぎの言葉にバイバイ 過去を思い出に変えるため 生きた証の首をしめて 横たわる言葉をここに残そ
シーブリーズを首もとにふりかけた女の子が、あぶらとり紙で頬についた98年を拭き取った。クラスで目立つグループに入っていた生徒は、だいたい「よーじや」を使っていて、1、2年前まで愛用していた白いルーズソックスの代わりに、シュッとしたラルフのハイソックスを履いていた。 売れている音楽を悪だと勘違いしていたあの頃の私は、借りてきたアイデンティティにならって3、4番手がイケてるのだと信じて疑わず、シーブリーズでもギャツビーでもなくGymを選んで、暇さえあればプシュープシューとノズルを押していた。 どうしようもなく息苦しくて、嫌なことばかりだった毎日。それでも笑ったり笑われたり、騙したり騙されたりしながら、窓の外を眺めて6時間目が終わるのを待った。 行ってもいいコンビニと行ってはいけないコンビニを見分けるのがあの頃を生き残るコツで、何も知らないうちは誤って魔窟へと足を踏み入れてしまい、入り口付近を占
Nobody Knows 閉所恐怖症の人はマスクができない。 でもそんなことは、誰も知らない。 先端恐怖症の人は注射が怖くて仕方がない。 でもそんなことは、誰も知らない。 普通の社会は普通に進み、新しい生活様式を強要する。 閉じ込められた苦しさや、針で刺された痛みなど、誰も知らない。 同じ色の服を着た正義の行進。 ファッションマスクで顔を隠した正義の行進。 「普通」という怪物が街を牛耳る。 彼らは至る所に存在し、「普通」以外を監視している。 通常、彼らは優しい。それが彼らの普通だからだ。 しかし、一歩「普通」から外れると、彼らは牙を剥き、異分子を追い詰める。 そんな彼らと上手く付き合う方法はひとつ、出来る限り「普通」に振る舞うことだ。 Nobody Knows あの映画の公開から約16年経った。 今、目の前に何が見える? どういった世界を生きてる? Nobody Knows 誰も知らない
「おい、おいっ! シンスケ! ちょっと何やってんだよ! こっち!」 「おぉ」 「『おぉ』じゃねーよ。遅れてきて何ボォーッとしてんだよ」 「ケンジ、お前、元気か?」 「は? 何だそれ? そんなことより、他に何か言うことあんだろ。ほら、昨日のやつ。ちゃんと聴いてたんだろ?」 「お前が元気そうで、本当に良かったよ」 「だから何なんだよそれ。気持ちわりーな。あ、あれか? 俺が先に『殿堂入り』して悔しいんだろ? いやー、気持ちは分かるよ。分かるけど、そこは大人になれって。俺だってお前のが先に読まれた時はマジかって思ったけど、ちゃんとファンタ買って祝ってやったろ? でもさ、昨日のやつ、あれマジで面白かったろ? 田中なんか爆笑してたもんな。あの瞬間はテンション上がったなー。ラジオ越しに空気が伝わってくるっていうかさ、おぉ! ていう感じが分かったもんね」 「あぁ、『爆笑問題カーボーイ』のやつか。お前あれ、
楽しい時間はあっという間に終わる。 本当に同じ尺を使っているのかと疑いたくなるほど、楽しい時とそうでない時の体感差が激しい。それはもちろん集中しているか否か、脳内のナンチャラ成分が分泌されているか否かなどと言ってしまえばそれだけの話なのだが、どうもその説明では素直に納得できない。 まだ私が日本にいた頃、銀色の髪をした恐ろしい人の部屋に閉じ込められたことがある。『閉じ込められた』と言うと表現が強くなってしまうが、拉致や監禁ではなく、軟禁だ。 「お前、エヴァンゲリオン知ってるか?」 地元の駅で数年ぶりに再会してしまった恐ろしい中学の同級生は、銀色の髪をしていた。 「お前、エヴァンゲリオン知ってるか?」 私がその時、彼にどう返答したのか覚えていないが、しばらくして何故に何故だか私の体はその銀髪さんが住むアパートにテレポートしていた。時期が夏だったので、酷く蒸し暑い部屋だったことを記憶している。
誰もが知っている通り、楽しい時間はあっという間に終わる。 水曜7時のドラゴンボールも、ドラえもん音頭が流れていた夏祭りも、深夜のファミレスで話し込んだ時間も、冗談みたいな速さで過ぎていき、気が付いた時には何事もなかったかのようにいつもの日常に引き戻されるのだ。 それは、ミチコオノという時間も同じだった。 今から約2年半前、私の生活にはミチコオノという時間があった。 はてなブログに突如として現れた超新星。一昔前のスカウトキャラバンのコピーみたいに感じるが、私にとってミチコオノ氏のブログ「ミチコオノ日記」は、まさにその大袈裟に聞こえるキャッチコピーそのものだった。 私とミチコオノ日記との出会いは、13話が始まりだった。 この話を読んだ感想は、ヤバい、だった。 リンクに飛んで頂ければ分かると思うのだが、とにかくヤバかった。感覚的に言うと、「おぉ」や「うわぁ」といった感嘆詞で頭が埋め尽くされた。
オンタリオ州の緊急事態宣言が発令されてから今日で1ヶ月と18日。4日間の休みが取れたので、念願だった散歩に出た。 政府からの通達に従い、身分証明書を携帯してウォーキングシューズを履く。 天気は雲が散らばる晴れ。気温10度。歩いて5分程の距離にあるメインストリートに着くと、子供の頃に見た正月みたいな風景が広がっていた。 ご覧の通り、繁華街の機能は停止している。辺りに人がいないわけではないが、まばら。なので自動的にソーシャルディスタンスを保てている。 この街に移って13年経つが、こんなにも人が少ない繁華街を見たことがない。 道沿いの店舗は全て閉まっているのにも関わらず、週末は人が来ているという話を耳にするので、月曜日の昼下がりという要素も手伝っての風景なのだろう。 メインストリートの坂を下って滝に近づいても、状況は一緒だった。 アメリカ滝もカナダ滝も変わらずそこにあるのだが、その周りにあった人
家の近くにあったレンタルビデオ店は、「TSUTAYA」ではなく、「すみや」だった。 店の内装や雰囲気は駅前にあったTSUTAYAの方が洒落ていたが、私はアットホームなすみやが好きだった。 閉店間際に行って映画を3本借り、すぐ横にあったセブンイレブンでチェリオのライフガードと午後の紅茶レモンティー、牛カルビ弁当とおにぎり2つを購入し、国道沿いの自動販売機でタバコを3箱買って帰宅するのが私の定番だった。 映画はもちろんのこと、CDの購入も殆どせずにレンタルばかりを行なっていた私にとって、すみやは巨大なジュークボックスであり、映画館でもあった。 当時の私は、年がら年中行動を共にしていた集まりの影響で「売れ線=悪」という歪んだ思想に侵されており、すみやジュークボックスのプレイリストでは満足できなくなっていた。 クリックひとつで何でも買える社会が訪れる前の旧世界、箱型Windowsを未来のツールだと
両耳にかかる水圧。目を閉じてるから光はなくて、とにかく重くて息苦しい。 光を掴んだ気がした。 こじ開けた穴に腕をねじ込み、チャンスの尻尾を掴んだ気がした。 先が見えた。そう実感したから眠くならなかった。ずっと頭が興奮して、睡眠なんて必要なかった。 景色を変えるんだって意気込み、期待を寄せて広げた手のひら。 そこには何にも残ってなかった。 2020年4月2日 状況は何も変わっていない。 何の進展もみえないまま、グルグルその場を回っているうちに世界は変わり、後戻り出来ない事態になった。 オフィスと机が与えられた代償は誰もいない街に向かう行為で、慣れない仕事を頭に詰め込み、消毒液に囲まれて毎日が過ぎていった。 この選択が逃げだったのだと気付いたのは、ついこのあいだの真夜中で、情けなさが湧き上がって自分が心底嫌いになった。 昇進は、かぜ薬だ。 即効性があり熱を下げるが、その根本をなおしてはくれない
白樺は、親父にとって特別な木だった。 小さくて狭い実家の裏庭にあった白樺の木。周囲の景色に馴染まないその様子は、四畳半に寝転がるペルシャ猫のようだった。 「サラサラって葉っぱの音を聞いたら、北海道かどっかの避暑地にいるみたいだろ」 窓を開けられる季節が訪れると、親父は決まってそんなことを口にした。 青が褪せて、くたびれた水色に変わった網戸。私はそのライトブルー越しに、すくっと伸びる白樺を見ていた。 風が吹いて葉音がしても避暑地にいるようには思えなかったが、「避暑地=北海道=別荘=金持ち」という刷り込み教育を受けたおかげで、私の中の白樺の地位は、ヒマワリよりも高かった。 幹が虫に食われているのが分かり、安全のために切り倒すことが決まった時、親父はとても寂しそうな顔をした。 命あるものは、いずれ朽ち果てる。 命ないものも、消えてなくなる。 実家に白樺があった頃、指が簡単に入ってしまうブルーハワ
透明な枠でもがいてる 自由だ自立だって叫んでも 何かに怯えて後ろを見るんだ 一日の終わりに目を瞑る 十字も切らないし手も合わさない ただ黙って祈りを捧げる 当たり前である事に涙を流し 当たり前である事に苦しさを覚える いつも何かを追ってんだ 降りてきたイメージとか 残って消えない場面とか 麻痺しない感覚が付きまとう 気にならないって強がっても 眠れぬ夜が増えるだけだ 吐き捨てられた声が居座り 思考と行動の邪魔をするから 音楽でそいつを溶かすんだ 何が心を突くんだろう 何が気持ちを急かすのか ルールばかりが街に溢れ 普通の群れが道を塞ぐ 道を外れた感情よりも 同調の方がよっぽど怖い 何だって良いと思ってる 飲もうが 吸おうが 打とうが それこそ何だって良い それらの全てをやらないが やってる人に文句はない こっちにとって重要なのは 表に出てくる言動だ シラフで他人を虐める奴より キマって揺れ
「何でその名前なんだよ?」 「何が?」 「ラジオネーム。変だろ、それ」 「変じゃねーよ。ちゃんと計算して付けた名前だぞ」 「『放課後のジェットリー』が?」 「いいか、ラジオネームってのはインパクトが命だ。名前八割、内容二割って言うだろ。そんだけネームは重要なんだよ」 「そんな比率、聞いたことねぇよ」 「考えてみろ。何百枚の応募から選ぶんだ。ジャブを何発撃ってもしょうがねーだろ。はなからストレートだよ」 「そういうもんなのか」 「あぁ、そういうもんだ」 「じゃあ、インパクトはいいとして、何でその名前なんだよ? お前、ジェットリー好きだったっけ?」 「いや、別に」 「だったら何で?」 「好きとか嫌いとかじゃねーんだって。ちゃんと法則で付けてんだから。いいか、『放課後のジェットリー』って聞いて、何を思い浮かべる?」 「何って、ふざけた名前だなぁって」 「違うんだよ。そうじゃなくてさー。オッケー、
駐車場のライトに照らされた車体が汚れている。 泥で出来た線を指先で擦り、ユウタは運転席のドアを開けた。 「はい、ミルクティーとチョココロネ。ミニクロワッサンはなかったから、代わりにチョコデニッシュ買ってきた。好きだったろ?」 「うん、ありがと。デニッシュか、確かによく食べてたね」 「違うのがよかったか?」 「ううん。これでいい。ありがと」 ミサキは受け取ったビニール袋を足元に置き、ショルダーバッグから財布を取り出した。 「いくらした?」 「いいよ、別に」 「いくらよ?」 「いいって。大したもんじゃないから」 「こういうの、ちゃんとしたいから。いくら?」 「ミサキ、いいから。お前、そういうとこ何にも変わんないな。菓子パンぐらい黙って受け取れよ」 ペットボトルの蓋を開けたユウタは、お茶を一口飲んでから座席にもたれかかった。 「分かった。ありがとう」 「中身はあれだけど、見た目は、少し変わったな
灰色の壁に投げた石が 影になって夜に溶け込む 盗んだ菓子を頬張っても 離した思いは戻らない 帰れなかった校庭で お前は何を見ていた 蹴飛ばされた帰り道で お前は何を見ていた 騒がしい国道に消された叫び ジェスチャーだけじゃ掴めなかった 首にかけてた銀の鍵 パンクしたままの黒い自転車 あんたがいた場面も空気も 忘れた瞬間に消えるんだろ だったら俺はここに残って あんたやあんた達の歌をうたおう もう戻らないと家を出て 二時間後にはガラスを叩いた 片耳だけで踊るピアス 薄れた香水は煙草に負けた 環境のせいだって 借金のせいだって 暴力のせいだって 癒えない傷を舐め合っても カサブタにさえならなかった 財布に残った映画の半券 隠した手紙に何を書いた 手首に引かれた赤い線 眠剤の先に何が見えた 山になったキャスターの吸い殻 指で弾いたスリーナンバー あんたがいた場面も空気も 忘れた瞬間に消えるんだろ
3つ目 出来過ぎた展開に、都合の良いタイミング。 この話をもし小説として書くのなら、プロットの段階で大幅に修正しなければいけなくなるだろう。 まるで、ご都合主義の王道を行くようなストーリー。3つ目の岐路は、そんな事例の連続で作られていった。 2つ目の岐路で「たまたま」アパートのドアが開いたことにより、コチラの世界にとどまった私は、何とか高校を卒業し、自分を取り巻いていた煩わしさから逃げるようにしてカナダのバンクーバーへと渡った。 異国で勉強する楽しさを知った私は、帰国後に大学へ進んだが、自ら勝手に上げたハードルにつまずき、行き場のない感情に飲み込まれてそこを中退することになった。 それからは、先の見えない毎日が続いた。 生きるために単発の仕事をし、呼吸をするために食事を取る日々。やられていた頃のように眠れない夜が多くなり、心のバランスを徐々に崩していった。 一方通行の救いを求めて訪れた大学
Amazon Kindle ストアで電子書籍「じゃあ、またね」を出版しました。 制服を焼却処分してから約二十年、ひとつの区切りをつけられた作品です。 いじめの被害者、加害者、そして、そのどちらでもない人たちに読んで頂けたら嬉しいです。 よろしくお願いします。 以下が、あらすじの書かれている作品ページになります。
2つ目 駅前の公衆トイレ 風が強い静かな夜 階段で見た腕時計 記憶に強く残っている場面がある。 それは匂いや音を伴い、時間が経っても薄れることなく頭の中に存在し続ける。 私が経験した2つ目の人生の岐路は、そういったいくつかの場面の先に用意されていた。 1つ目の岐路を通して拾われたグループに参加するようになっても、学校では変わらず呼び出しを受けていたが、そのことに対する自分の心持ちは変化した。何というか、外側と内側を分けて考えられるようになったのだ。 ヤラレている私だけが、私じゃない。そう思えるようになれたのは、避難所という居場所を確保したことにより、どうしようもない愚か者という役柄以外でいられる時間が増えたのが大きかった。 四六時中仲間に会い、何事もなかったかのように服や音楽の話をしていると、自分が新しく生まれ変わったような気持ちになれた。 笑顔を見せる度に、蘇る自尊心。 仲間たちとの楽し
並行世界、パラレルワールド。 呼び名は何だっていい。滑稽な話に聞こえるかもしれないが、私はそういった世界の存在を信じている。 私が生きている世界、私が生きている別の世界、そして私が死んだ世界。 宗教的な話や非科学的な話をしたいのではない。ただ、そう考えるようになったきっかけが、今まで生きてきた中で3つあった。 不思議な出来事、そこで別れた世界。 1つ目 あの頃、全てが真っ暗でどうしようもなかった。 増えていく上納に、終わらない暴力。どれだけ働いても高校生のバイトでは限界があり、家の金にも手をつけはじめていた。学校、家や街、どこにも居場所はなく、呼び出されることばかり気にして毎日を過ごしていた。 何度も心を折られた。でも、私も人を傷つけた。 手に入れた弱さを使って、たくさんの人に迷惑をかけた。だが当時の私は、そのことに罪悪感を抱いていなかった。 (これだけのことをされてるんだ。弱さを売って何
制限があっても、与えられた中で花を見つける。 まだ大洋ホエールズが生きていた頃、私はコントローラーが絶対に回ってこない「ファミコン応援係」という役を与えられていた。 仲間に入れてもらえるアイテム、ファンタオレンジを献上して、所定の位置に座る毎日。 表向きはプレイヤーに声援を送っていたが、頭の中ではブラウン管から流れるゲーム音楽を使って遊んでいた。 当時のお気に入りは、ネズミ警官がトランポリンを使ってはしゃぐ「マッピー」。 AメロとBメロの頭に「ミスするなら 金返せよ」と、夢のない歌詞をつけ、それをループさせて声を出さずに歌った。 曲が転調してから「トゥントゥントゥン」と続くメロディラインが気持ちよかった。 そんな脳内歌謡ショーは、曲のテンポがあがると一旦終わり、ツインビーへと移行するのが常であった。 その行為が、あの時、私が見つけた花。 薄暗い中で咲く、一輪の赤い花だった。 *** 喜怒哀
仕事着を通して見渡す街に 暮れも明けも存在しない 夜になったら ただ忙しく 朝になれば ただ煙たい 鏡を見つめて息を吐く 固まった頬を揉みほぐす ウィードが溢れる帰り道 赤い目玉が笑っている こちらを睨んで吠える狼 立てた中指をしまってくれ 憂いを晴らすクリアホワイト 何粒飲めば楽になる? 違う それじゃない 欲しい景色はそこにない メシアもいない 糸も垂れない だから私は書いていく どうやったって消えない思いを 言葉に変えて書いていく *** 皆様、こんにちは。 こちらメープル荘は、二時間前に年が明けました。 2018年は私の書いた文章を読んでくださり、本当にありがとうございました。 深く感謝いたします。 今年も、どうぞよろしくお願いします。 21世紀型 交換ノートをやっています。 よろしければ、是非。
So this is Xmas And what have you done 何をしたのかと問われれば、「生きてきた」と答えよう。 五匹の猫がヒーターの通気孔を塞いでいる午前三時半。 丑三つ時の四角い部屋には、離婚記念で空を飛んできた義理の母が寝息を立てている。 約一ヶ月の滞在。 長い長い拘束生活から解放されたのだ、是非ともピザやポテト、ハンバーガーなどを頬張ってゆっくりしていって欲しいと思う。 ドアが開き、内へ潜って区切りをつけて、しばらくその場を回った後に、障子を破って部屋を出る。 今年は、そんな一年だった。 新宿から乗って、物思いにふけていたら、もう相模大野。 今年は、そんな速さで過ぎていった。 例年通り、二、三ヶ月ちょろまかされている感覚だ。 歳を重ねて、「変化」という言葉が好きになった。 変わることは失うことではない、今は無理せずにそう思える。 ここ最近、私はたくさんの「こんにち
雪が降った木曜の朝8時、ブラックももひきをはいた私は、リクライニングチェアーに腰掛けて、口を大きく開いていた。 目の前にはマスクをしたインド系歯科医。 彼のタレ目に見守られ、これでもかとリピートされるクリスマスソングに包まれながら、残り1本になっていた私の前歯は勢いよく引き抜かれた。 たくさん打たれた麻酔のせいで痛みはなかったが、歯がなくなった後、何とも言い表せない寂しさを感じた。 診察が終わってトイレに寄った私は、口をニカッとあけて鏡を見た。 何だかなぁ、という気持ちが心を覆う。 こんな羽目になった原因は分かっている。しかし、その時の私は、30代で全ての前歯とさよならすることになるとは思ってもいなかった。 私の前歯は、入れ歯だ。 抜き差しするタイプや、両脇の歯で支えるブリッジタイプではなく(支える歯が欠けているため、不可能)、口内の形状に合わせて、上の歯茎にカパッとはめる形をとっている。
Amazon Kindleストアで電子書籍「アーティフィシャル・フラワーズ」を出版しました。 この作品のテーマは、「偽物」「本物」「血の繋がり」そして、「人を好きになること」です。 こちらには、表題作の他にもう一編、自分にとって思い入れの深い作品である「六千百七十二本の物語」を収録しています。 たくさんのものから逃げて、たくさん諦めて、たくさん捨てて、もがいて拾って、怖くて壊して、それでもどうにか作り上げて生きてきました。 込めた思いが多くの人の目に触れてもらえることを祈ります。 読んで頂けたら、幸いです。 よろしくお願い致します。 以下が本のあらすじと、商品ページのリンクになります。 *** ”もしかしたら、この言葉を聞くために、俺は彼女と出会ったのかもしれない” 造花店で働く「タナベ」というネームプレートをした店員に、生まれて初めて一目惚れをしたサトムラシンジ。 彼女の店へ通う頻度が増
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