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<フランスの総選挙における「極右」国民連合の大躍進の背景には、国民連合がもはや「極右」とはみなされなくなってきたフランス国民意識の変化がある> 7月7日に行われるフランス総選挙の決選投票では、「極右」国民連合が第1党となることが確実視されるが、もし単独で過半数(絶対多数)の議席まで獲得するようなことになれば、マクロン大統領はその国民連合のバルデラ党首を首相に任命せざるを得なくなり、まったく政策や主義主張が異なり、政治的に鋭く対立する大統領と首相の野合政権が誕生することとなる。 「極右」に対する国民意識の変化 ここまで「極右」とされる国民連合が党勢を拡大してきたことの背景には、国民連合を必ずしも「極右」とはみなさなくなってきたフランス国民意識の変化がある。 それは特に右派支持層の中に顕著に見られる。 左派支持層と中道支持層の中では、依然として「極右」に対する拒否感・警戒感は根強いが、右派支持
<フランスで、また凄惨なテロ事件が起きた。なぜ、フランスばかりがイスラム原理主義テロの標的とされるのか。そこには、フランスとイスラムの間の、宗教と国家の関係をめぐる、理念的対立がある......> フランスで、イスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を見せながら「表現の自由」を説いていた中学教師が、イスラム原理主義過激派によって、首を切られ、殺された。現場を訪れたマクロン大統領は、この反文明的な蛮行を断罪し、イスラム原理主義を「分離主義」の元凶、共和国の敵として、徹底的に戦うことを宣明した。 テロとの戦いは、今に始まった話ではない。とりわけ、2015年のシャルリエブド紙襲撃テロ事件以降、フランスは「対テロ戦争」(当時のオランド大統領)に踏み切った。緊急事態宣言が発令され、警察と情報機関は、徹底的な捜査・摘発や要注意人物のリストアップと監視などを行ってきたが、モグラ叩きをしているようなもので、テ
ゴーン解任は、日本とフランスの関係にまで、影響を及ぼしそうな気配 Regis Duvignau-REUTERS <今回のゴーン解任劇に対し、フランス人が驚き、疑念を抱いている点が3つある> 今年、2018年は、江戸時代末期の日本とフランスが日仏修好通商条約を締結して160周年にあたる。それを祝って、両国で華やかな文化行事が行われ、ハイレベルの要人往来も行われた。そして、日産とルノーのアライアンスは、永年の日仏交流のなかで最大級の成果として、日仏双方から称えられてきた。 そうしたお祝いムードに、今回の突然のゴーン解任劇は、冷水を浴びせた。しかも、日産とルノーの関係だけでなく、日本とフランスの関係にまで、影響を及ぼしそうな気配なのだ。 その原因となっているのは、今回の解任劇をめぐる日本とフランスの間の認識のギャップである。 もとより、フランスの認識といっても、すべてのフランス人が一枚岩という
<国民戦線の党首マリーヌ・ルペンが党大会で新しい党名を提案した。その意図と背景は...> 3月10〜11日、フランス北部の町、リールで開かれた国民戦線の第16回党大会。昨年の大統領選挙決選投票でマクロン候補に敗れたものの、党首として再任されたマリーヌ・ルペンの演説を、会場に詰めかけた党員たちは、いつものお祭り気分とは程遠く、息を潜め、耳をそばだてて聞いていた。かねてからルペンが示唆していた党名の変更につき、どういう具体的な名称がルペン自身の口から提案されるか、固唾を呑んで見守っていたからだ。 ルペン党首は、1時間20分にも及ぶ長い演説の終盤になって、今後の党の目指す方向として、これまでの基本路線を踏襲しつつも、政権奪取のため連帯できる勢力との幅広い結集を図るうえで、党名にある「戦線」という言葉は対決的なニュアンスが強く、心理的障害になっているという認識を示した。 これは、むしろ「戦線」とい
フランスのパルリ国防相とルドリアン外相、河野外務大臣と小野寺防衛大臣 Frank Robichon-REUTERS <1月26日、日本とフランス両政府は4回目となる外務・防衛担当閣僚による会合(2プラス2)を開き、日仏双方が、中国に対する認識を共有し、政策協調を進めることを改めて確認した> フランスのルドリアン外務大臣とパルリ軍事大臣が日本を訪問し、26日に河野外務大臣・小野寺防衛大臣と、外交・安全保障に関する政策対話(いわゆる2+2外務・防衛閣僚会合)を行った。2013年6月に国賓として日本を訪れたオランド大統領と安倍首相との間で、「特別なパートナーシップ」を築くことが合意され、その一環として、2014年1月にパリで第1回会合が開かれて以降、今回で4回目となる。 今回の対話の成果として注目されるのは、日仏双方が、中国に対する認識を共有し、政策協調を進めることを改めて確認したことだ。 会合
カタルーニャの独立騒動の帰趨はまだ見えてこないが、同じような少数民族問題を抱えるヨーロッパの他の国々では、その余波が徐々に広がっている。フランス領コルシカ島もその一つだ。 コルシカでは、12月3日と10日に地方議会選挙が行われる。そこで、コルシカ民族主義勢力が多数を占め、議会を制するとともに、執行部をも手中に収める勢いなのだ。 コルシカのプッチダモン その中心人物は、コルシカ民族主義政党の大同団結により結成された「コルシカのために(Pè a Corsica)」のジル・シメオニとジャンギー・タラモニだ。独立推進派のタラモニは、コルシカのプッチダモンと称されることもある。 コルシカ民族主義政党「コルシカのために」は、コルシカの独立を掲げるタラモニの「自由コルシカ(Corsica Libera)」と、自治の確立を目標とするシメオニの「コルシカを作り上げよう(Femu a Corsica)」が、2
<フランスは今ほどアメリカとの協力・協調を必要としている時はない。高級レストランでの夕食会と、軍事パレードにおける特別待遇で、トランプ米大統領からの支援や協力が得やすくなるのであれば、これほど安い買い物はない> アメリカ人にとってパリは格別のものらしい。パリを「移動祝祭日」と表現したヘミングウェイや、「パリのアメリカ人」を作曲したガーシュインと同じように、先週マクロン仏大統領の招きを受けフランスを公式訪問したトランプ米大統領も、パリの美しさに魅了されたに違いない。 トランプは、シャンゼリゼ通りで行われた7月14日恒例の革命記念日軍事パレードに参列し、マクロンとともに仏軍部隊を閲兵した。このパレードでは、アメリカの第一次大戦参戦100周年を記念して特別に招かれた米軍将兵も行進したほか、イラクとシリアにおける対「イスラム国」掃討作戦に従事する仏軍部隊も参加し、「テロとの戦い」における米仏協力の
<フランスで7日に行われた大統領選の決選投票は、マクロン前経済相が勝利した。しかし、マクロン新大統領が、2回投票制のおかげで獲得した66%に見合うほどの国民の支持と委任を受けたわけでは決してない...> 7日に行われた決選投票の結果、マクロン候補が66.06 %の支持を得てフランス大統領に当選した。既成政党の枠組みから離れ、右でも左でもないという立場から、自らの新しい政治運動「さあ前進!」を立ち上げ、政治に新風を吹き込んだ若きエリートに、フランス国民はフランスの将来を託す選択をした。一方、「極右」とされる国民戦線のルペン候補は、反エリートの立場から、反EUや反移民を訴え、第5共和政史上最高の得票(33.94%、約1,064万票)を得たが、その急進的な主張と反知性的扇動に対する反発も強く、大統領への道を阻まれた。 この決選投票に臨んだフランス国民は、政策も思想も性格もまったく対極にあると言っ
4月23日に行われたフランス大統領選挙第1回投票で、マクロンとルペンがそれぞれ1位(得票率23.86%)、2位(同21.43%)を占め、5月7日の決戦投票に駒を進めることとなった。このことが何を意味するのか、両者の対決の構図を読み解いてみたい。 ルペンの勝因は、既に多くの識者やメディアが取り上げているとおりだ。国民の間に広がってきた反移民感情と治安悪化への懸念を背景とした徹底した移民規制と治安対策、フランス優先と反EU、フランス国民保護などの主張が功を奏し、反エリート・反グローバル感情の高まりと近年の国民戦線(FN)のソフト化(脱悪魔化)路線の成功とが相まって、国民の5分の1強の支持と期待を集めたのだ。 一方のマクロンの勝因としては、右でも左でもないという新しい中道路線の成功を挙げることができる。基本的には左派の価値観をもち、オランド社会党政権で閣僚を務めた若いエリートが、既成政党の枠組み
<中道系独立候補のマクロン前経済相の躍進はフランス政治に構造変化が起きていることを示している。伝統的な左右対立の構図の枠を超える動きで、これまでの常識では理解しがたい。これは一体どういうことなのか、またなぜそうなってしまったのか?> 最近のフランス政治に関しては、4月23日(第1回投票)に迫った大統領選挙を前に、国民戦線のルペン候補の帰趨に関心が集まりがちだが、実はその陰に隠れて、フランス政治のパラダイムシフトとも言うべき構造変化が起きていることが見逃されている。それは、ルペンの躍進のほか、左右両派の既成政党の不振と、その枠外で颯爽と登場してきた新星、マクロン候補の躍進に端的に示されている。 マクロンは、高級官僚、銀行幹部を経て、オランド社会党政権の下で、大統領補佐官、経済大臣を務めた。その職を辞して、「右でも左でもない」という立場から、政治運動「さあ前進!」を立ち上げ、2016年11月の
<フランスの既成政党やエリートに対する、大衆の不信は根深い。そうした声を代弁するポピュリスト政党として、マリーヌ・ルペンの国民戦線は、もはや単なる「極右」政党の域を脱するところまで成長している...> 4月23日と5月7日に予定されている大統領選挙を前に、フランスの政治は今、混迷を深めている。かつて大統領を輩出した左右両派の既成政党の候補が低迷に喘ぐなかで、極右とされる国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン候補が、いよいよ大統領になるのではないかという予想が現実味を帯びてきているのだ。 ルペン候補が党首を務める国民戦線は、前回2012年の大統領選挙で17.90%という、それまでの党の歴史における最高得票率を記録したのちも、2014年の欧州議会選挙や2015年の県議会選挙と州議会選挙で、それぞれ24.86%、25.24%、27.73%と、4分の1を上回る得票率を得て、躍進を続けている。 この躍進
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