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<FOXニュースの人気司会者が過去6年で400回も連呼してきた陰謀論を、ニューヨーク州バファローのスーパー銃乱射事件の容疑者が信奉。銃乱射の裏にでたらめ陰謀論あり> 大置換理論(Great Replacement Theory)って分かるかな? まあ、アメリカで最も人気の司会者、FOXニュースのタッカー・カールソン(Tucker Carlson)も5月17日にはっきりと「僕らもまだ把握していない」と言っていたから、知らなくても大丈夫だよ。 では、説明しよう。これはフランス発祥の極右陰謀論だが、アメリカでは「ユダヤ教徒やリベラル派が移民を大勢わが国に受け入れ、白人を追い出して権力を確保しようとしている!」という解釈が人気だ。 例えば「民主党が(現在の)有権者を、途上国からの従順な有権者と入れ替えようとしている」「わが国は外国から侵略されている」といった荒唐無稽な主張を......カールソンの
<名作『マウス』を、米テネシー州の教育委員会が禁書に指定したが、女性のヌード描写などを理由に歴史的な罪を伝えない決定は正当なのか> ナチスドイツはユダヤ人などの大虐殺や近隣諸国への侵略を行う前、まず表現・思想の自由を抹殺しようとした。その代表的な手段は公共の場で書物を焼却する「焚書(ふんしょ)」だった。 風刺画ではその恐ろしい歴史が再現されている。本を燃やしているナチス将校の1人はWhat if a Holocaust survivor’s son decides to write a graphic novel?(ホロコーストの生存者の息子がグラフィックノベル〔長編コミック〕を描いたらどうする?)と、自分たちの罪が後世に伝わることを恐れているようだ。 もう1人はRelax... The Tennessee school board will have our back!(大丈夫。米テネシ
<「コロナは危険じゃない」「ワクチンで大勢死亡」などと発信した議員は、これまでにもさらに驚くべき発言を連発していた。仰天の発言録を紹介> 共和党の有名な政治家がツイッターアカウントの永久凍結を食らったが、そんなツイッターの名前の由来はご存じだろうか? 「鳥の鳴き声」という意味のtwitter(ツイッター)から付けられたそうだ。ロゴマークも鳥だし、「ツイートする」も、鳴き声の擬音語tweet由来だ。 風刺画で鳥に化けているのはその有名政治家、MTGことマージョリー・テイラー・グリーン下院議員。だが、彼女の鳴き声はtweetではなく、Quckooだ。これは陰謀論「Qアノン」とcuckoo(カッコウの鳴き声)を組み合わせた造語。カッコウは昔からバカな人、狂人の例えに使われる。連邦議員をそんな鳥に例えて失礼じゃないかって? では、グリーンの過去の発言を見て、失礼かどうかを検証しよう! ■58人が射
<11人の死傷者が出た銃乱射事件の容疑者は授業中に弾丸を買おうとし、グロテスクな絵を描いていたが、学校に呼び出された親は知らん顔> 僕はお手本のような親ではない。パックンマックンのライブを見た翌日に長男がコントのセリフ「洗剤でも飲もうかな」を小学校で言いふらしていたことで呼び出されたこともある。 だが、Caution: Bad Parents(注意:悪い親)という標識を立てられるほどではないだろう。アメリカで、それが必要そうな親に注目が集まっている。ミシガン州の高校で11人の死傷者が出た乱射事件の容疑者の親、クランブリー夫妻だ。 2人は2021年11月26日、クリスマスプレゼントとして15歳の息子に半自動式拳銃を贈った。それだけでは悪い親とはされない。銃をプレゼントする親は多いのだ。不思議なことに、アメリカの子供にとって「平和の王子」イエス様の誕生日は殺傷力アップの日でもある。 悪いのはそ
<新型コロナとワクチンをめぐって分裂する保守派とリベラル派。NFL選手とビッグバードの相反するメッセージがアメリカで話題に> アメリカでけなし文句に使われる超汚い単語はよくfour-letter word(4文字の単語)と記される。ニューズウィークのような上品な媒体に書いてはいけないので、F***KとかSH*Tのように表記され、読む人の想像に任される。僕はこれらを見ると、罪のないFORK(フォーク)とかSHOT(ショット)も巻き込まれてかわいそうだと思うけど......。 最近、けなし文句としてはやっている4文字の単語といったらWOKEだ。直訳すると「目覚めた」という意味だが、環境問題、社会問題などに配慮する「意識高い」人を指すスラングとして使われる。 そして不思議なことに、保守派はこれを罵るための単語にも使っている。こうした用例は他にもある。例えば、本来は褒め言葉なのに今やエリート!リベ
<アフガニスタンから米軍が撤退する際に残していった最新鋭の兵器がタリバンの手に渡ったが、思われているほどの惨事でない理由とは> アメリカ史上「最長の戦争」が醜い終末を見せている。米軍がバイデン大統領の命令の下で性急に撤退したことによって、アフガニスタン政府軍は姿を消し、政府は崩壊、首都カブールは陥落してしまった。 同時に、軍の銃、大砲、飛行機などがタリバンの手に渡った。戦闘で活躍したヘリコプター「ブラックホーク」や、夜中に鍵を落としたときに役に立つ暗視装置「ナイトビジョンゴーグル」もだ。 つまり、アメリカのおかげで、「中古車の荷台にマシンガン姿」でおなじみの反政府勢力タリバンが一気に最先端の軍備を手に入れることに成功した。この増強が風刺画ではステロイド注射として表現されている。しかし、希望を捨ててはいけない! 実は思われているほどの大惨事ではないのだ! まず、装備が入手できても、そこまでの
What He Left Behind / (c)2021 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION <1988年から30年以上にわたって全国放送で保守派の怒りや憎しみをあおり、1000万人超のリスナーに行動を呼び掛けた> 日本で知られていない、最もアメリカで影響力を持っている超有名人は誰だと思う? あっ、知られていないから、答えようがないか......。正解はラジオ番組司会者で保守派のスーパースター、ラッシュ・リンボー。 昔、政治系メディアは基本的にバランスの取れた、味気ないものだった。今は、口に合う人は大喜びし、合わない人は吐き気がするほど、辛くて濃厚なものになった。何が変わったかというと、反対意見も伝えることを義務付けた「公平原則」が1980年代のレーガン政権下で廃止されたのだ。つまり、不公平な、偏りっぱなしの番組内容が許されるようになった。 そのチャンスを
An Alice-in-Wonderland Democracy / (c) 2020 ROGERS-COUNTERPOINT.COM <国家は選挙への信頼の上に成り立っているはずなのに、民主主義の首を切ろうとした「死刑執行人」は......> ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』に登場するトランプ(ハートの女王)の口癖は Off with her head!「首をちょん切れ!」。今、不思議なわが国のトランプ(大統領)も激怒し、democracy(民主主義)に死刑を命じているようだ。 ドナルド・トランプは、大統領選挙の開票の途中で勝利を宣言し、集計の停止を求めた。そして「選挙不正」を理由に一部の票の無効化や再集計も求めた。その上、いくつかの州の知事や議会、選挙管理委員会に対し、集計結果を承認しないように圧力をかけた。しかも、説得するために激戦州の関係者をホワイトハウスに招いた。倫理的に
<賢明で勇敢な存在としてアメリカの学校やメディアが伝えてきたコロンブスは、2020年を境に残忍さと非人道の象徴に> 「いい国つくろう、鎌倉幕府」。歴史を覚えるために、この語呂合わせを無数の日本人が暗記している。結局「鎌倉幕府成立は1192年じゃなかった」ってことに、多少のショックを覚えた人も多いけど。 アメリカには語呂合わせはないが、わが国の英雄クリストファー・コロンブスがアメリカ大陸を発見した年を覚えるために、この風刺画に登場するポエムを暗記する人は多い。結局、「アメリカを発見していない」「コロンブスは英雄じゃなかった」ってことに、大変なショックを覚える人も多いけど。 In fourteen hundred ninety-two, Columbus sailed the ocean blue(1492年に、コロンブスは青い海を航海した)。He had three ships and le
Parable of the Superspreader / ©2020 ROGERS-ANDREWS McMEEL SYNDICATION <マタイによる福音書の「種をまく人の例え」で、群衆は心を開いて真摯にイエスの言葉を受け止めようとしたが、現代の米国民もまたトランプの言葉に耳も心も傾けている> 新約聖書のマタイによる福音書に、イエス様が群衆に伝えた「種をまく人(sower)の例え」が載っている。まかれた種の運命はさまざまだ。石の上に落ちた種、鳥に食われた種、雑草に抑えられた種は実らないが、良い土に落ちた種は百倍もの実りを生むとさ。......だから何って? 後で教えよう。 風刺画のとおり、トランプ大統領がまいているのはウイルス。残念ながらこれは例えではなく、実害の「実り」を伴う実話だ。9月26日にホワイトハウスで開かれた最高裁判事の指名式典の参加者11人が新型コロナウイルスに感染。そ
When Conspiracy Reigns / (c) 2020 ROGERS-ANDREWS McMEEL SYNDICATION <悪い高官たち「ディープステート」が国家を牛耳っているという陰謀論は、それと戦うトランプをヒーローとして崇める政治運動「Qアノン」へと発展> 2016年12月。自動小銃、拳銃、ナイフなどを持った男が首都ワシントンのピザ屋「コメット・ピンポン」に押し入った。彼は「ヒラリー・クリントン率いる闇組織がピザ屋を本拠に児童の性的人身売買を行っている」と信じていた。その活動を止めに入ったのだ。当然、普通のピザ屋さんだったわけだが、男はそれでも発砲。幸いけが人はいなかったが、壁、ドアやパソコンは重傷を負ったようだ。 この陰謀説や関連事件(そのピザ屋への放火もあった!)はまとめて「ピザゲート」と呼ばれる。2016年から広まり始め、大物ハリウッドセレブ、政府高官、政治家など
<10代で公民権運動に加わり、逮捕回数は40回以上。暗殺されたキング牧師の後継者として、不公平との闘いに生涯をかけたジョン・ルイス米下院議員の功績> 高祖父母は奴隷。親も奴隷とほぼ変わらない立場の小作人。そんなアラバマ州の貧農に生まれた黒人男性が世界を変えた。 10代の時に公民権運動に加わり、地元で座り込み抗議を始める。学生非暴力調整委員会を創設し委員長として、映画にもなったセルマ行進のリーダーの一人となった。弱冠23歳の時に、ワシントン大行進でキング牧師の「私には夢がある」演説と同じ演壇から演説を行った。そして、キング牧師暗殺以降、後継者としてその夢の実現に長年邁進した。 その男性は先日80歳で死去した米民主党のジョン・ルイス下院議員だ。相変わらず漫画がネタばらししているけどね。 34年間議員を務め、大統領自由勲章も受章したルイスだが、一番目立った瞬間は1965年3月、アラバマ州セルマ市
My Kind Of America / (c)2020 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION <自由の国のはずなのに、経済活動も生活も自由にできないって......でも黒人にとってはそれこそがアメリカの日常> アメリカに蔓延する恐ろしい「病気」がある。その脅威にさらされている人はI'm afraid to leave the house(家を出るのが怖い)や、A trip to the store could be fatal(お店へ出掛けることが命取りになるかもしれない)、またはMy basic freedoms are denied(基本的な自由が認められていない)とよく嘆いている。ではその「病気」というのは......。 風刺画を先に見ているから、分かるよね。あぁ、ネタバレだ。 それは黒人への差別や冷遇だ。各所で出ている「症状」は本当に恐ろしいもの。教
Dinosaurs in Coronavirus Era / (c)2020 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION <トランプ支持の共和党員は、コロナの時代に「ソーシャルディスタンス」も気に掛けない> 現状に適応しない時代遅れの人は英語で dinosaur(恐竜)と揶揄される。風刺画で恐竜に例えられているのはトランプ米大統領の支持者たち。 「MAGA(Make America Great Again=アメリカを再び偉大にする)」のロゴ入りキャップや 「TRUMP2020」のTシャツという応援グッズを身に着けていなくても、セリフだけでそのキャラ設定が分かる。Screw the warnings...We need to get back to life as we know it! (警告なんかくそくらえ...いつもの生活に戻らなきゃ!)というのは、トランプ支持
If Trump Were Really a Wartime President / (c)2020 ROGERS-ANDREWS McMEEL SYNDICATION <もし南北戦争でリンカーンが Let the states fight it out(州たちの戦いに任せよう!)なんて言ったら笑えるよね!> 新型コロナウイルスとの戦いにおいてアメリカの最高司令官となるドナルド・トランプ大統領は「戦時の大統領」と自ら名乗っている。今回の風刺画は If all wartime Presidents acted like Trump...(もし戦時の大統領がトランプのように振る舞ったら...)という、まるでコントのような設定を提供している。トランプと歴代大統領のセリフを交ぜてみるという、僕ら芸人が大好きな「もしも」シリーズだ! まず、トランプは4月初めに We're a backup(われわれ
Fauci to the Rescue / (c)2020 ROGERS-ANDREWS McMEEL SYNDICATION <一部の州がコロナ対策に出遅れている。それらの州の共通点は、感染者数の少なさではなく、州知事が共和党員で州民にトランプ支持者が多いこと> アメリカは格差社会になっている。いや、貧富ではなく疾病対策の話。自治体によって、新型コロナウイルス対策の隔たりが大きい。感染拡大を防ぐために学校や会社の閉鎖、イベントの中止、外出規制などの「社会的距離戦略」を早めに導入した州もあれば、それを怠っている州もある。この時間差だけで死者が数千人増える試算もある。 なぜ一部の州が出遅れるのか。ワシントン大学の研究チームがデータから原因を調べた。結果、対策が遅れる州の一番の共通点は、州内の感染者数が少ないことなどではなく、州知事が共和党員で州民にドナルド・トランプ大統領の支持者が多いことだ
Trumped by the Truth / ©2020 ROGERS-ANDREWS McMEEL SYNDICATION <感染拡大中にもかかわらず大規模な政治集会で不特定多数と濃厚接触――予防意識のかけらもないトランプでは国の感染対策が遅れるのも当然> 新型コロナウイルス流行中に新しい流行語も登場した。Social distancing(社会的距離)だ。飛沫感染や接触感染を予防するために、他人と一定の距離を置く戦略を指す。日本で広がっているイベント中止や学校閉鎖、時差出勤やテレワークなどの制度も、個人の日常的な心掛けや行動もそれに当たる。分かりやすいのは握手に代わる挨拶だ。足と足をタッチさせる「武漢シェイク」も、合掌する「ナマステポーズ」も、肘を軽くぶつけ合う「エルボーバンプ」も、どれも社会的距離戦略として有効。確かに、肘に病原体が付いても、肘を目や口に入れることはほぼ不可能だ。ぜひ
Long Live The King!/©2020 ROGERS-ANDREWS McMEEL SYNDICATION <パックンも赤面!母校であるハーバード大学の元教授でトランプを弁護したスゴ腕弁護士が、トランプを無罪にするために持ち出した信じられない論法とは......> 時々、自分とつながりのある人の愚行で自分も恥ずかしくなることがあるよね。同じ事務所の人が不倫騒動を起こしたとき、同じ党の人がヤジを飛ばしたとき、同じ国の人があの大統領を選んだときなど。 この間、僕と同じ大学の人があの大統領の弾劾裁判で発言したが、実に恥ずかしくなった。ハーバード大学の元教授アラン・ダーショウィッツは超有名なすご腕弁護士。 殺人事件でアメフト選手のO・J・シンプソン、未成年性的暴行事件で大富豪のジェフリー・エプスタイン、レイプ事件でハリウッド・プロデューサーのハービー・ワインスティーンなどの弁護を務めて
Trump’s Phony Facebook Ad / ©2019 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION <トランプ陣営がバイデンに関する事実無根の陰謀論をFB広告で拡散させたが、バイデン側からの広告取り下げの要求にFBは応じなかった> ワシントン・ポスト紙のスローガンは Democracy Dies in Darkness(闇の中では民主主義は死ぬ)。CNNは Most Trusted Name in News(ニュースにおいて、最も信頼されている名前)。ではフェイスブックは? 風刺画では Lies Pay!(嘘は金なり!)だ。 真実を明るみに出し民主主義を守ろうとする新聞や、その名に懸けて情報の信憑性を保証するテレビ局は褒めるべき。でも、リア充自慢中心のSNSなんか関係ないだろう! そう思われがちだが、実はアメリカの成人の7割近くがフェイスブック(FB)利
<99年のクリントン弾劾を先導した共和党議員は現在のトランプ弾劾には否定的で、民主党議員はその正反対。つまり与野党議員の大統領弾劾への賛否は全員180度転換した> 時がたつと人は変わる。米共和党の重鎮、リンゼー・グラム上院議員が変わったように。昔は、「犯罪じゃなくても、公職に適さない行為をしたら罷免だ!」とか、風刺画のように「Impeachment is about restoring honor and integrity to the office(弾劾は公職の名誉と品位を取り戻すものだ)」と公言していたのに、今は、性的暴行を自慢し、1万3000以上のウソめいた発言をし、条約や法律を踏みにじる大統領にも文句はない(最近、シリア撤退で少しもめているが)。まるで Fuck honor and integrity(名誉と品位なんかくたばれ!)と言わんばかりだ。注:アメリカの上品な媒体ではお下
Dem Impeachment Push / (c) 2019 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION <トランプ自身が「外国の介入」を依頼したウクライナ疑惑の発覚で、及び腰だった民主党もとうとう弾劾に向けて動き出した> ドナルド・トランプが米大統領選挙に向け、外国の力を借りて政敵の民主党候補をつぶそうとした! そして、その事実を隠そうと情報を隠蔽したり、資料の開示を阻止したりした! いや、2016年7月にロシアに民主党選挙対策委員会のデータベースのハッキングを呼び掛け、ヒラリー・クリントンのメールをリークしてもらった後、関連の捜査を妨害した話ではない。その行為は既にロバート・ムラー特別検察官が確認した。でも、不思議だね。半年前のムラー報告書公開が大昔のことのように感じる。不祥事のあふれる時間は飛ぶように過ぎるのかな。 僕が言っているのは、今年7月の話。トランプ
Big Pharma, Big Lies / (c)2019 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION <「依存性がない」「耐性もできない」と嘘を並べてオピオイドを販売し続けた製薬会社の罪と罰> 第2次大戦以降初めて、アメリカの平均寿命が下がっている。珍しいことに、今回はドナルド・トランプ大統領のせいだとは言わない。原因は薬のやり過ぎによる死亡者数の急増。2017年にその数は7万人を超えた。交通事故で死亡した人は(たったの!)4万人ぐらいなのに。 特に増えているのはケシ系の化合物オピオイドの乱用。快感も得られる強力な鎮痛剤だが、依存性が非常に高い上、耐性ができるため使用量が徐々に増えていく。使い過ぎたり、精神安定剤と同時に使ったりするととても危ない。カビキラーじゃないけど、混ぜるな! 危険! 乱用ブームを起こしたのは90年代以降の過剰処方だ。オピオイド系新薬を開発
Trump's "Go Back" Remark / (c)2019 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION <人種差別や女性蔑視、外国人恐怖症......ヘイトに満ちた人がこんなにいるアメリカはもう立て直しようがないかもしれない> この国を批判する前に、崩壊して犯罪まみれの出身国に帰って、立て直す手助けをしたらどうか――ドナルド・トランプ米大統領が野党の女性議員4人に対してツイッターでこう攻撃した。僕もたまに2ちゃんねるなどで同じようなことを書かれるが、それとこれとは確実に違う。 まず、4人はアメリカ国籍を持っている。うち3人はアメリカ生まれ。実はトランプも移民の親から生まれたアメリカ人だ。一方、僕は日本の永住権を持っているが、ふざけて本名を「鳩゚陸波乱」と書くことがあっても国籍はない。 次に、4人は下院議員。有権者に選ばれた公職者だ。僕は「イケメンなのにそそ
Measles Crisis Underway / (c) 2019 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION <はしかのワクチン接種が自閉症を引き起こす、という陰謀説から広がった反ワクチン運動ではしかの患者数が急増する事態に> 化学、教育、公共保健制度。3つのコラボレーションが大成功をなした! 僕の親が若かった頃、アメリカで麻疹(はしか)の感染は毎年数百万人に上り、約500人が死亡していた。だが、1963年に予防接種が始まり、2000年に「はしかの撲滅」が宣言された。めでたしめでたし! 残念ながら、物語はそこで終わらない。はしかがなくなる傍ら、同時期に新しい感染がはやり始めた。それは「MMR(はしか、おたふくかぜ、風疹の3種混合)ワクチンが自閉症を引き起こす可能性がある」という陰謀説。1998年にイギリスの医師アンドルー・ウェイクフィールドが12人の子供を症例に
Virginia Blackface Scandal / (c)2019 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION <バージニア州で知事らトップに相次いで発覚した黒人差別的な顔面「黒塗り」行為の過去> 黒塗り。1年ちょっと前に『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』の特別番組「絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時」で浜田雅功さんがエディ・マーフィーに扮して話題になったね。白人が顔を黒く塗り、ばかで怠け者、非道徳的で淫乱な黒人を演じて笑いを取る大衆演芸「ミンストレル・ショー」が原点で、その芸風が黒人差別を強化し、現在の不平等な社会につながったとされる。そう考えると、あれはまさに「笑ってはいけない」演出だった。 もちろん、制作側や浜田さんにはそんな意識も知識も、差別的な狙いも全くなかったので大きなダメージにならなかった。しかしアメリカ人がやると、そう簡単には
Women Want an Old White Man / (c) 2019 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION <中間選挙で民主党からは多くの女性やマイノリティの議員が当選したが、そんな民主党支持者も大統領候補には「白人男性」のバイデンを望んでいる> 新記録だ! 1月3日に就任した米下院議員の中には106人も女性がいる! しかも下院議長は史上初の女性議長、ナンシー・ペロシ! 正確には7~11年にも務めたので史上初の「女性議長リターンズ」だ。 さらに史上初のアメリカ先住民の女性議員もいれば、イスラム教徒女性議員もいる。バイセクシャル女性議員も女子キックボクサー議員もいる。就任日には民族衣装姿や家族連れの議員が議事堂に現れ、ダイバーシティーの新時代を証明した。 これはもちろん、民主党議員の話。共和党の下院議員は90%が白人男性だ。彼らなりのバラエティーはあるけ
ジョージア州の民主党支持者に対する投票抑制策は特に酷い (c)2018 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION <都市部の学生の有権者登録をやりにくくしたり、民主党員が多い地域で投票所を減らしたり、共和党の民主党票「抑制」対策は余りに露骨> 昔のアメリカ南部では、白人と黒人の使うものは違った。 separate but equal(別々でも対等)という制度で、だいたい黒人用の出入り口はお店の裏。黒人用の席はバスの後ろ。黒人用のお手洗いは外。黒人用の高校は......ない、などなど。別々であっても、対等では全くない。 風刺画にあるのは、11月6日に行われる中間選挙のジョージア州のWhite(白人)とColored(有色人種)向けballot box(投票箱)。別々だし、大きさが違う。 アメリカの州の選挙制度は州議会で定められるが、共和党はずっと前から、州議会で過半
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