E会員 磯貝 勝太郎 いそがい かつたろう 6)刊『古通豆本27 文藝評論家 昭和十年(1935) 東 京新宿区生まれ。長谷川伸賞。掲載作は昭和五十一年(197 歴史小説の種本』(日本古書通信社)初 出、電子文藝館出稿に際し一部加筆訂正を加えた。 歴史小説の種本(たねほん) 第一章 頻繁(ひんぱん)に典拠される種本 歴史文学とは、歴史上の事件、人物を素材として構成される文学で、小説の ほかに史劇、史伝などもふくまれるが、本書では主として、小説というジャン ルに限り、それも明治時代以降に創作された近代歴史文学作品において、種本 (たねほん)がいかに扱われているかについてふれてみたい。 『広辞苑』で種本の項目をひいてみると、種本とは、著作・書画または講義な どのよりどころとする他人の著作とある。 本書では狭義的に解釈すると、小説化する場合に、小説価値のある話材―― 時代の推移によ