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大そうじへの備え
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人間が出した二酸化炭素(CO2)が大気中にたまって地球の気温が上がるのが温暖化問題と理解していましたが、気温が上昇した結果、海からCO2が放出され、大気中の濃度が上昇しているという説明も耳にします。どちらが本当なのですか。 中岡 慎一郎 (国立環境研究所)1 向井 人史 (国立環境研究所)2 これまでに行われた海洋表層での二酸化炭素(CO2)の観測と、そのデータに基づく海洋と大気のCO2交換量の評価によると、全体で見れば海洋はCO2を吸収していて、近年では炭素換算で年間18億トン程度のCO2を吸収していることが分かっています。このため、大気中のCO2濃度の上昇は、海からCO2が放出されたことが原因とは言えないことは明らかです。海洋のCO2吸収量の増加は、人間活動によるCO2排出量の増大によって生じていると考えられますが、今後も同じように吸収し続けるか注視する必要があります。(以下、本文での
2018年3月10日(土)北海道帯広市のとかちプラザにおいて開催された「地球温暖化とわたしたちの将来」のなかで、講演者と会場の参加者によるディスカッションを行いました。参加者の一人から地球温暖化の原因について二酸化炭素(CO2)濃度の増加と対比して他の要因についても説明してほしい、また、大気の0.04%に過ぎないCO2が大きな影響を与えているとは考えられないので、CO2原因説をそろそろ卒業してもいいのではないか、という質問をいただきました。この質問に対してお答えした内容を紹介します。なお、限られた時間であったため、概要の説明にとどめました。 地球温暖化はCO2濃度の増加ではなく、他の要因で起こっているという説があります。CO2濃度の増加が温暖化の原因ではないという科学者も確かにいます。個人的な見方ですが、そういう人は気候変動の科学を十分吟味した上でおっしゃっているようには思えないところがあ
海の酸性化の仕組みと、生きものたちへの影響 海の中にはさまざまな物質が溶けていますが、サンゴや貝などの生きものに重要なのはカルシウムイオンと炭酸イオンです。サンゴや貝はこの二つのイオンを結合させた炭酸カルシウムで自分の骨格や殻をつくっています。 産業革命以前、人間活動の影響がまだなかった海では、カルシウムイオン、炭酸イオンが十分に存在し、サンゴや貝が自分の体を作るのに必要な炭酸カルシウムを簡単につくることができました。ところが、人間が二酸化炭素を大気中に排出し、海水に二酸化炭素が溶け込んでくると、それが酸として働いて、炭酸イオンを減らしてしまいます。これを「海の酸性化」といいます。海の酸性化が進むと、カルシウムイオンと結合できる炭酸イオンの濃度が減少し、生き物たちにとっては成長に必要な炭酸カルシウムを作りにくくなります。これが海の酸性化が生物に影響を及ぼすメカニズムです。 放送で紹介された
国立環境研究所地球環境研究センター 横畠徳太 アラスカ大学フェアバンクス校 岩花剛 海洋研究開発機構 斉藤和之 北見工業大学 大野浩 海洋研究開発機構 町屋広和 緯度が高く寒冷な地域では、一年を通して地面の中の氷が解けない「永久凍土」が広く分布しています。永久凍土は氷河時代からずっと凍りついており、有機物やメタンや二酸化炭素などの温室効果ガスが、たくさん含まれています。地球温暖化によって永久凍土が解けると、そこに含まれている有機物が分解されることなどによって、温室効果ガスが大気中に放出されます。放出された温室効果ガスは、さらに地球温暖化を加速する可能性があります。私たちは環境省環境研究総合推進費「永久凍土大規模融解による温室効果ガス放出量の現状評価と将来予測」プロジェクト[1]で、この問題に取り組んでいます。 2017年6月には、研究プロジェクト活動の一環として、アラスカでの朝日新聞の取材
空気中の二酸化炭素を回収して地中や海底に貯留する技術が開発されつつあるそうですが、この技術が実用化されれば、温暖化を心配する必要はないのではありませんか。 芦名秀一 地球環境研究センター 温暖化対策評価研究室 NIESポスドクフェロー (現 社会環境システム研究センター 持続可能社会システム研究室 研究員) 現在のところ、火力発電所などの二酸化炭素(CO2)濃度が高い排ガスからCO2を回収し、地中などに貯留する技術は既に実用段階にあります。この技術は、化石燃料に頼らずに必要なサービス量を得ることができる持続可能なエネルギーシステムを実現させるまでの、つなぎの技術であるということをきちんと認識しておく必要があります。しかし、大気中CO2濃度の増加抑制には即効性の高い技術であり、当面の温暖化対策技術としては有望な選択肢のひとつといってよいでしょう。 二酸化炭素(CO2)を回収して貯留する技術:
2013年8月号 [Vol.24 No.5] 通巻第273号 201308_273002 「400ppm」の報道で考える 二酸化炭素の濃度の限界はいくらなのか? 地球環境研究センター長 向井人史 二酸化炭素(CO2)濃度が、400ppmを超えたという報道発表がこの2年間たてつづけに出されている。たとえば、昨年5月には気象庁が「岩手県綾里の観測所の月平均値が400ppmを超えた」と発表した。今年5月10日には、アメリカの海洋大気庁(NOAA)が「ハワイのマウナロアのデータで5月9日の1日の平均値が400ppmを超えた」という発表をした。ハワイはCO2濃度の最も長い観測記録を持っている重要な観測地点である。 気象庁やNOAAで発表されている文面は「何月にもしくは何日に400ppmを超えた」という表現になっているが、しかし実はこれは情報としてはいささか早合点をさそいやすい。CO2濃度は、春先に高
日経エコロミー 連載コラム 温暖化科学の虚実 研究の現場から「斬る」! 国立環境研究所 地球環境研究センター 江守正多 はじめまして、国立環境研究所の江守正多です。地球温暖化の将来予測の研究をしている研究者です。年末に日経エコロミーのインタビューを受けた勢いで、連載コラムを書かせて頂くことになりました。このコラムでは、実社会で話題になっていることを睨みつつ、地球温暖化研究の現場の研究者という立場から、温暖化科学の平易な解説を試みていこうと思っています。どうぞよろしくお付き合いください。 今回は第1回目ということで、そもそも世間でこれだけ騒がれている温暖化という話は科学的に「正しい」のか、という問題を取り上げたいと思います。温暖化というのは、人間が排出する二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスが大気中に増えているせいで、地球が暖まっているという話です。 しかし、みなさんご存じと思いま
今の調子で二酸化炭素の排出が続くと、二酸化炭素が溶け込んで海水が酸性化し、海の環境に大きな影響を与えかねないというのは本当ですか。 野尻幸宏 地球環境研究センター 副センター長 (現 地球環境研究センター 上級主席研究員) 大気中の二酸化炭素濃度増加で海洋酸性化は既に起こっていて、海水の酸性度は上昇しつつあります。海水の酸性化は、生物の殻や骨格になっている炭酸カルシウム生成を強く妨害するので、海の生物に影響を与えます。21世紀半ばには生物に対する影響が顕著になる可能性が高いと考えられますが、生物種ごとの影響はまだ十分に解明されていません。海洋酸性化の影響を小さくするには、二酸化炭素の排出を抑制し、できるだけ低い大気安定化レベルを実現するという根本的な温暖化対策しかありません。 海洋の酸性化はもう始まっている 酸性度の指標であるpHは、水素イオン(H+)濃度が高まり酸性度が上がると小さな値、
小野雅司 環境健康研究領域 総合影響評価研究室長 (現 環境健康研究センター フェロー) 実は日本にはすでにマラリアを媒介する蚊が広く生息しているのです。一方、マラリア患者についてみると、国外の流行地で感染・発病して帰国するケースや国外で感染して帰国後国内で発病するケース(輸入マラリア)はありますが、国内で輸入マラリア患者から二次的に感染した例はありません。温暖化によって媒介蚊の生息域が拡大することは確実ですが、日本のように都市化が進み、衛生状態の整った国で、実際にマラリアが再流行する可能性は低いと考えられます。 マラリアが流行するための必要条件 マラリアは、マラリア原虫を蚊が媒介することで伝染する病気で、患者の血を吸った蚊が別の人を刺すことによってうつります。流行に必要な要素は、(1) 患者、(2) 媒介蚊、(3) 刺される人、です。温暖化との関係を中心に詳しくみていきます。 (1) マ
こんにちは、国立環境研究所の江守正多です。歴史的なCOP15が終わりましたが、そのことはいろんな人が解説するでしょうから、僕はいわゆる「クライメートゲート事件」に関係したことを引き続き書きたいと思います。今回は、この事件が投げかけた問題の1つと思われる、科学における「査読」の意味に焦点をあててみます。 前回書いたとおり、英国イーストアングリア大学の研究者の電子メールなどが大量にインターネット上に流出し、その内容の一部が問題になっています。これが一部で「クライメートゲート事件【2015年2月現在リンク切れ】」とよばれているものです。 まず、僕は大量のメールなどを全部調べたわけではありませんので(他人のメールを調べる趣味もありませんので)、現時点で確定的なことは言えません。この問題については大学に独立評価委員会が設置されて調査が進められているようですので、その結論を待つべきでしょう。 しかし、
昨夏、日本各地で「これまで経験したことのないような」集中豪雨が発生し、日最高気温の国内最高記録が更新されました。他方、この冬は関東甲信地方を中心に記録的な大雪に見舞われました。このような異常気象は地球温暖化と関係があるのではないかと報道等でも取り上げられています。これらの関係についてはスーパーコンピュータによる数値シミュレーションなどによって研究されています。今回は当研究所の釜江陽一気候モデリング・解析研究室特別研究員と塩竈秀夫気候変動リスク評価研究室主任研究員に、最新の研究をわかりやすく解説してもらいました。 解説この異常気象は地球温暖化が原因? 地球環境研究センター 気候モデリング・解析研究室 特別研究員 釜江陽一 地球環境研究センター 気候変動リスク評価研究室 主任研究員 塩竈秀夫 最近の異常気象は地球温暖化によるもの? 2013年の夏は記録的な猛暑や大雨[注1]に、2013/201
メタン(CH4)の温室効果は二酸化炭素(CO2)の10倍、一酸化二窒素(N2O)は100倍、フロンガスは1万倍と聞きました。CO2よりもこれらのガスを先に減らすべきではないですか。 梅澤 拓 (国立環境研究所)1 野尻 幸宏 (国立環境研究所)2 これらの数字はガスの単位量あたりの温室効果ですが、温暖化をもたらす効果は単位量あたりの温室効果と濃度増加のかけ算で決まります。このことから、温暖化に対して最大の寄与を示す二酸化炭素(CO2)の削減を急がなくては本質的な対策になりません。ただし、CO2以外の温室効果ガスの温室効果をたし合わせると全体の1/3に達し、その削減は重要です。メタンや代替フロン類の削減は温暖化抑制の効き目が早く、今世紀前半のような近い将来の温暖化を遅らせて気候の急激な変化を防ぎます。一方、一酸化二窒素(N2O)、フロン類、六フッ化硫黄(SF6)などの削減は効き目が遅いものの
遠嶋 康徳 (国立環境研究所) たしかに、私たちは呼吸によって二酸化炭素(CO2)を吐き出しています。しかし、そのCO2は食物として体内に取り込んだ有機物を分解しエネルギーを取り出す過程で最終的に排出されるものであり、その食物の起源をたどってゆくと植物が光合成によって大気中のCO2と水から作りだした有機物にたどりつきます。つまり、私たちが呼吸によって吐き出すCO2はもともと大気中に存在したものなのです。ですから、いくら呼吸をしても大気中のCO2を増やしも減らしもしません。このように、自然の炭素循環の中での出来事は、大気中のCO2濃度にほとんど影響しません。私たちが呼吸以外で排出するCO2が問題なのです。 1増加する大気中の二酸化炭素(CO2)濃度 最初に、現時点でわかっている大気中CO2の収支関係をおさらいしておきましょう。産業革命以降、われわれ人類は石炭や石油、天然ガスといった化石燃料の
2013年夏の異常気象 2013年の夏、日本列島は、記録的な猛暑と度重なる大雨といった異常気象に見舞われました。たとえば、8月12日には、高知県の四万十市で最高気温が41.0℃を記録し、国内最高記録を更新しました。また、7月28日に山口と島根を襲った豪雨、8月9日に秋田と岩手を襲った豪雨では、気象庁が「これまでに経験したことの無いような大雨」として、最大限の警戒をよびかけました。 この異常気象ですが、気象庁による定義は、「三十年に一回起こる程度の珍しい気象」のことです。つまり、異常気象とは、起こることが信じられないような異変のことではなく、たまにしか起こらないけれども、昔からたまには起こっていたことです。異常気象が起こるのは、主には大気や海の不規則な自然の変動のせいです。
1. はじめに 2013年1月23日、一橋大学一橋講堂中会議場において、第5回温暖化リスクメディアフォーラムが開催された。本フォーラムは、地球温暖化にかかわる研究者と温暖化を報道するメディア関係者が集まり、最近の温暖化科学に関する話題提供と参加者による意見交換の場をもつことを目的として、2009年3月の第1回から年1回行われている。2011年度までは環境省環境研究総合推進費S-5の一環として開催されていたが、S-5の終了にともない、2012年度からは文部科学省気候変動リスク情報創生プログラムが引き継ぐ形で、同プログラムの一環として開催された。今回は「地球温暖化は進行しているのか? —最近の疑問にお答えします—」と題し、長期的な気候変動の中での近年の気温変動傾向の捉え方や、中長期的な太陽活動や北極海の海氷の変動等、地球温暖化を取り巻く最近の疑問について、気候学の立場から議論した。参加者は研究
大気中の水蒸気が温室効果ガスとしては最大の寄与があると聞きました。少しくらい二酸化炭素(CO2)が増えたところで、水蒸気の量に比べれば小さなもので、温暖化が進行するとは思えないのですが、間違っていますか。 横畠 徳太 (国立環境研究所) 水蒸気は温室効果ガスとしてたしかに最大の寄与を持ちますが、二酸化炭素(CO2)も重要な役割を果たしています。現在の大気の温室効果は約5割が水蒸気、2割がCO2によるものです。このため大気中のCO2濃度が増加することによって、温暖化が進行すると考えられます。実際にはこの気温上昇に伴い、自然のしくみによって大気中の水蒸気が増えることにより、さらに温暖化が進むことが予想されます。 1二酸化炭素(CO2)の増加は温暖化を進行させる 現在の地球は大気中に水蒸気やCO2などの温室効果ガスが存在することによって温暖な環境が保たれています(ココが知りたい地球温暖化「二酸化
寒冷期と温暖期は定期的に繰り返しており、最近の温暖化傾向も自然のサイクルと見る方が科学的ではないのですか。また、もうすぐ次の寒冷期が来るのではありませんか。 横畠 徳太 (国立環境研究所)1 阿部 学 (海洋研究開発機構)2 過去に氷期と間氷期が周期的に繰り返されてきました。この気候変動は、地球が受け取る太陽エネルギー量(日射量)の変動がきっかけとなって生じると考えられています。しかし、20世紀後半からの温暖化は、日射量変動のみでは説明できず、大気中の温室効果ガス濃度の人為的な増加が主因であると考えられています。また、2万~10万年スケールの日射量変動は理論的に計算できることから、これをもとにした将来の氷期に関する予測研究があります。このような予測によると、これまでに排出された温室効果ガスの影響により、現在の間氷期は今後5万年以上続き、今後の温室効果ガス排出量によってさらに氷期の到来が遅れ
江守 正多 (国立環境研究所) 温暖化の「暴走」はそう簡単には起こりません。なぜなら、地球には、温度が上がるほどたくさんの赤外線を宇宙に放出して、温度を安定に保とうとするメカニズムが備わっているからです。ただし、現在の科学でまだよくわかっていないメカニズムが温暖化を加速することもありうるので、温暖化が暴走する可能性がゼロとはいいきれません。 1「正のフィードバック」があると「暴走」が起こる? 質問の「決して止められなくなる」を、どんなに対策をしても際限なく温度が上がり続けること、いわゆる「暴走」すること、ととらえてお答えします。 一般に、何かの原因によって、ある変化が起こったときに、その変化をさらに強めるような作用が働くことを「正のフィードバック」といいます(注1)。たとえば、子どもに家庭教師をつけて勉強させたら(原因)成績が上がったとします(変化)。すると、勉強がおもしろくなって自分で勉
太陽の黒点数の変化と気温の変化との間に強い相関があると聞きました。ということは、太陽活動の活発化が温暖化の主要な原因なのではないのでしょうか。 野沢 徹 (岡山大学)1 塩竈 秀夫 (国立環境研究所)2 太陽黒点数の変化は、太陽から地球に降り注ぐ放射エネルギーの変化をもたらすため、地球の平均気温を変化させる可能性はあります。しかし、地球の平均気温は、太陽活動だけでなく、大規模な火山噴火、温室効果ガスや大気汚染物質の増加などによっても変化することに注意が必要です。最新の観測データを見ますと、20世紀半ば以降、長期的には太陽黒点数はほぼ横ばいか減少傾向を示しており、太陽活動が活発化しているとは考えられません。すなわち、太陽活動が近年の温暖化の主要な原因であるとは考えられません。 1太陽黒点数の変化は気温の変化をもたらし得る 太陽黒点は太陽表面に見られる黒いしみのような領域を指し、周囲よりも温度
江守正多 (国立環境研究所) はい、あります。過去数十年の間、地球ははっきりと温暖化しており、その主な原因は二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの増加以外に考えられません。これ自体が、何よりの証拠です。 1理論的には温暖化するはず 証拠の話に入る前に、理論的なことを簡単に説明します。 まず、二酸化炭素の分子は「赤外線」を吸収・放出する性質があります。これは、物理学の量子力学という分野で非常によくわかっていることです。赤外線は電磁波の一種で、伝播することでエネルギーを運びます。 地球の表面は赤外線のエネルギーを放出して冷えようとしますが、大気中に存在する二酸化炭素などの「温室効果ガス」が、逃げようとする赤外線を吸収して、また赤外線を放出します。放出された赤外線の一部は地表面に戻ってくるため、温室効果ガスには地表面付近をあたためる効果があります。 実際にはこの過程はもっと複雑です(大気中にはた
Q3海と大気による二酸化炭素(CO2)の交換 !本稿に記載の内容は2024年7月時点での情報です 大気中の二酸化炭素(CO2)は、海洋との間で大量に交換されていて、それに比べると化石燃料の燃焼で発生するCO2の量は格段に小さいと聞きました。そのわずかな量が大きな気候変動をもたらすのですか。 中岡 慎一郎 (国立環境研究所)1 向井 人史 (国立環境研究所)2 2023年現在、化石燃料の燃焼等によって大気中に炭素換算(注1)で年間100億トン程度のCO2が放出されていますが、大気と海洋の間ではその約8倍となる800億トンものCO2がやりとり(交換)されていると考えられています。このCO2の交換は、主に拡散とよばれる現象による双方向のCO2の移動により行われます。この交換量は化石燃料消費などで放出しているCO2量よりもはるかに大きいのですが、私たちが考えなければならないのはこの交換量よりも、最
最近、温暖化の影響でサンゴが白化しているという報道をよく目にします。今起きているサンゴの白化の原因は、温暖化の影響でしょうか。 山野博哉 地球環境研究センター 衛星観測研究室 主任研究員 (現 生物・生態系環境研究センター 生物多様性保全計画研究室長) 今起きているサンゴの白化に、温暖化による海水温の上昇が影響しているのは間違いないものと思います。ただし、白化を引き起こす原因は、高水温だけではありません。サンゴにとってストレスとなる要因、たとえば淡水や土砂の流入、強光なども白化を引き起こします。白化を防ぐには、温室効果ガスの排出量を減らして温暖化を抑制するとともに、サンゴが受けているストレスを明らかにし、それが人為影響である場合は低減することが必要です。 サンゴの白化はなぜ起こるのか? 今回話題となっているのは、深海にいる宝石サンゴではなく、サンゴ礁を形成する造礁サンゴ(以下、サンゴ)です
地球全体の平均気温はどうやって求めるのですか。観測点のない海洋上や陸上奥地などの気温はどうやって推測するのですか。また、観測点の周囲の環境が変われば、気温データにも見かけの変化が出てしまいませんか。 小倉 知夫 (国立環境研究所)1 野沢 徹 (岡山大学)2 過去に起きた気候変動を観測データに基づいて把握する際、よく用いられる指標が、地球全体の平均気温の時間的な変化です。その算出方法は、地球上に不均一に分布する観測データを緯度5度×経度5度などに格子点化して、さらに面積の重みを付けて平均する、というものです。現在、一般的に算出されている地球の平均気温の変化には、陸上のデータだけでなく、海洋のデータも考慮されています。また、観測機器や観測場所、周辺環境などの変化の影響もできるだけ取り除かれています。 1陸上の観測空白域はさほど大きくない 温度計による気温の直接観測が世界的に行われるようになっ
温暖化をはじめとした地球環境問題に関する研究で得られたデータや成果・情報を収集・整備し、広く提供・発信するための基盤データベース。
茨城県つくば市小野川16-2 国立環境研究所 地球環境研究センター 温暖化リスク評価研究室 emori*nies.go.jp(メールを送信する時は*を@に換えてください。)
温暖化すると北極の氷が融けて海水面が上昇し、海抜ゼロメートル地帯は水没してしまうと聞きましたが、本当ですか。 小倉知夫 地球環境研究センター 温暖化リスク評価研究室 主任研究員 (現 地球環境研究センター 気候モデリング・解析研究室 主任研究員) 温暖化すると北極海の氷が融けるのは本当です。しかし、温暖化して海水面が上昇するのは北極海の氷が融けるからではなく、グリーンランドなど陸上の氷河/氷床が融けて海に流れ出して海水の量が増加したり、海水が温まって膨張したりすることによるものです。海水面上昇による水没の危険は海岸地域から徐々に進行し、温暖化を放置した場合、数百年以上かけて東京湾・伊勢湾・大阪湾の海抜ゼロメートル地帯にまで及びます。ただし、温室効果ガスの排出を今後抑制することで水没を回避できる可能性はまだ残されています。 海面上昇の原因は陸上の氷の融解と海水体積の膨張 まず、海面上昇が起こ
地球温暖化のことは見聞きする機会が多いですが、よく知っているようで、でも腑に落ちているかというとそうでもないのが実状のような気がします。 呼吸で大気中の二酸化炭素は増えるの?サンゴの白化は温暖化のせい?など、地球温暖化の科学・対策にまつわる、よくある質問、素朴な疑問に、国立環境研究所の第一線の研究者がズバリ答えます。
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