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このコラムにおいても何回か、記録管理・アーカイブズの専門職問題について述べてきましたが、最近、おもしろい調査資料を見つけました。それは米国アーキビスト協会(SAA)が2015年、会員アーキビストの実態を調査した資料です。まず驚くのは全体的なアーキビスト人口の多さですが、次に驚くのは調査に回答したアーキビスト3976名中、77%の3048名がフルタイムの正規職員だということです。全体の人数には学生や引退した人等が500名ほど含まれていますので、実質的には実に86%が正規職員ということになります。日本ではアーキビストに関する正確なデータはありませんが、この割合は日米で逆転しているように思われます。つまり日本では正規職員は、せいぜい3割で7割は非正規、あるいは期限付き雇用と思われます。この国では、アーキビストの職能が確立しておらず、いかにその地位が不安定であるかが分ります。 次に米国アーキビスト
次世代やその先の子孫のために文書・記録を残していくことは、アーカイブズの大切な使命です。しかし、史資料は放置すれば劣化が進んでしまいます。 史資料の劣化の深度には、次のような段階があります。手にとって見ることができる状態(A)、取り扱いに注意を要する状態(B)、修復が必要な状態(C)、そして修復ができない状態にまで劣化が進んでしまうケースもあります。多くの場合、Cの状態になると専門家の助けが必要ですが、A・Bの状態をCまで進行させないための措置は、専門家だけではなく、史資料の保存にかかわるすべての人の責務であるといえるでしょう。 史資料の急激な劣化を回避・予防するための保存措置を、欧米ではPreventive Conservationといいます。Preventive Conservationでは、「自分たちでできることは自分たちでやる」という積極的な気持ちと、知恵を出し合い相互に助け合う体
東京・北の丸の一角に国立公文書館があります。先日、およそ一年ぶりに出向きましたが、サービスが格段に向上していて、関係者の努力、改革への熱意を感じました。 まず驚いたのは、持参のデジタルカメラでの資料撮影が自由化されたことです(一部に制限があります)。これまで、一部の県立や市立の公文書館等で、デジカメでの撮影を許可していましたが、「本丸」たる国立公文書館が自由化に踏み切ったことで、全国のアーカイブ機関も追随するものと思われます。 もうひとつは、「昼休み」がなくなって、閲覧室がオープンしている間は、いつでも資料の出納をしてくれるようになったことです。 かつては、国立国会図書館も昼休みの出納をしませんでしたが、いまやそのような「役所の常識」は罷り通らなくなっています。 また、一階ロビーでの企画展にも旺盛に取り組んでおり、なかでも終戦記念日を中心に展示された天皇の「終戦の詔書」の展示は、全国紙(読
当社のアーカイブサポートでは、目録作成などの資料の「知的整理」のほかに、資料にとって最適な保存環境を作るための「物理的整理」もご提供しています。 保存措置・資料の防護と呼ばれる作業(例えば、保存のために資料を封筒や箱などの保存容器に入れること)はそのひとつです。 長期保存のための保存容器について、お客様からご相談を受けた際、当社では、資料の保管される環境状態を十分考慮した上で、資料ごとに適した保存容器をお奨めしています。 例えば、むきだしのまま保管されていた紙媒体資料ですと、埃から守り、封筒内での内部劣化の進行を減少するために、弱アルカリ性紙製の封筒に入れることをお奨めすることがあります。その際、お客様から、封筒にしまいこむと活用がしにくい、また、取り出しにくいだけでなく中身が全部見えない、というお声をいただくことが多くなってきました。 この「活用」も、実は、方法次第では、資料劣化の進行を
以前に、「アーカイブズ」の定義は時代と共に変化してきていると述べました。そのことについて、海外のアーキビストの論考をご紹介しながら考えていきたいと思います。 1950年代以前は、記録とアーカイブの関係は明確に区別されておらず、アーカイブズ=「歴史的文書」という概念はなかったようです。 例えば、1898年にSamuel Muller他は、「アーカイブズは行政機関で作成および受領される文書である」と述べています(※1)。 1922年には、「アーカイブズ学の父」的な存在であるSir Hilary Jenkinsonが、著書の中で、「アーカイブズに属するものは、公文書・私文書ともに、(記録作成の母体組織の)業務や活動過程の中で作成・使用された文書であり、そのため、記録の作成者が自らの情報として自らが保存すべきである」と、述べています(※2)。 つまり、アーカイブズは、後世の研究や興味のために作成・
2012年9月1日の日本経済新聞文化欄に、出版社や大学などの、近現代日本の雑誌や学術誌などの定期刊行物を索引データベース化して保存する記事が掲載されました。 この動きは著名な雑誌だけでなく、忘れ去られた雑誌や地方の刊行物、学術論文、業界誌、学会誌などの索引・記事もデータベース化する試みであることが特徴的です。 雑誌記事の索引データでもっともよく知られているのは、国立国会図書館の雑誌記事検索システムです。10月末現在1万846タイトルを網羅しています。 しかし、収録データは1948年以降のものがほとんどで、近現代日本の重要な時期、つまり戦前・戦中・戦後直後の時期のデータが少ないのです。 この空白を埋めるべく、出版社の皓星社は、「ざっさくプラス」というデータベースを提供しています。 これは、日本(旧植民地なども対象)で発行された日本語の雑誌記事や、明治初期から現在までの全国誌から地方誌も対象で
アーカイブの仕事で大学へ行く機会が多くありますが、昨今の大学の変わりようには目を瞠るものがあります。 どこも校舎の建て替えや高層化がすすんで、キャンパスがオシャレできれいになっていることに驚かされます。ホテルのロビーかと見紛うような立派なエントランスを持つ大学、著名なレストランが開店しているキャンパスもあります。 見た目だけでなく、教学や学生生活も大きく変わっています。 多くの大学では、学生はノートパソコンやスマートフォンを片手に学内を闊歩し、教室はもちろん図書館でも食堂でも無線LANが使えるようになっています。 講義の資料もネットで配信され、レポートもメールで送るのがあたりまえになっています。 かつては、分厚いシラバス(講義要綱)片手に、大きな時間割表を参照しながら受講登録をしたものですが、今はほとんどの大学で、インターネット経由で閲覧・登録を行っています。 また、掲示板の前で休講や教室
今号からコラム執筆の担当に加わりました、白川です。よろしくお願いいたします。 最近何かと話題になる電子記録の管理・保存の問題ですが、話題になるには理由があります。電子記録の性質には「アーキビストの眼」から見て色々と厄介な点があるのです。問題は主に4つあります。今回はその1つをご紹介したいと思います。 まず、その量の膨大さが挙げられます。例えば、Eメールは、世界で年間300億以上も送信されているということを皆さんはご存知でしたか[※1]。電子文書は、紙と違い物理的に目に見えない上にお金がかからず、簡単に変更や複製、そして保存ができるため、作られ放題になっているのが現状です。そのため、大量に作られた電子文書でハードディスクがブラックホール化してしまっている方が多いのではないでしょうか。その中から必要な情報を適時速やかに探すことは難しく、多くの時間を要します。2005年にアメリカのモーガン・スタ
2012年2月16日、国立国会図書館は、総務省「知のデジタルアーカイブに関する研究会」実証実験との連携を開始しました。この連携は、都道府県レベルの機関による支援を受けながら、地域の「知の記録組織」が持つデジタルアーカイブのメタデータ(目録情報、書誌情報)を集約し、国会図書館サーチ(NDLサーチ)に提供するというスキームの先行事例になるものと考えられているそうです。地域の「知の記録組織」には、MLA機関(Museum、Library、Archives)や行政情報センター、研究機関などが含まれます。 「知のデジタルアーカイブに関する研究会」は、総務省が「図書・出版物、公文書、美術品・博物品、歴史資料等公共的な知的資産の総デジタル化を進め、インターネット上で電子情報として共有・利用できる仕組み(デジタルアーカイブ)の構築による知の地域づくり」を目指し、2011年2月より研究会の会合が始められまし
「公文書管理制度の研究は、広義の政治制度研究である」と主張するのは、『公文書をつかう―公文書管理制度と歴史研究―』(青弓社、2011年)の著者、瀬畑源氏です。 瀬畑氏は一橋大学大学院社会学研究科特任講師で、情報公開制度と深く関わりを持つ公文書管理制度にも興味を持ち、ブログ「源清流清―瀬畑源ブログ―」を立ち上げています。 『公文書をつかう』は、法制度の逐条解説本ではなく、書名の如く、利用者の視点で書かれていることが特徴です。 本書の第一章では、明治時代今日に至るまでの公文書管理法制定の過程がわかりやすく、詳細に書かれています。太政官制度での記録編纂事業から記録課が設置されるも、内閣制度創設後の編纂事業の縮小と記録課の格下げ、そして永久保存文書とされる公文書はあくまでも行政として必要とされる文書を残すのみで、当時は歴史的な価値や国民への説明責任への発想があまり無かったのではないかと指摘されてい
私たちの周辺では、近年「デジタルアーカイブ」という言葉がたびたびでてきますが、この言葉の定義は、時に曖昧なことがあります。 ここでは、まず二つの意味を押さえておきましょう。 手書きで書かれた文書や写真・絵画等アナログデータをスキャンしてデジタル情報にして保存・活用するということが活発に行われるようになりました。この意味の「デジタルアーカイブ」が、まず挙げられます。 一方でワードやエクセルといったソフトで作成された文書やウエッブ上のデータなど、いわば生まれながらのデジタル文書「ボーンデジタル(Born Digital)」を今後保存・活用していこうという場合に使う、「デジタルアーカイブ」があります。 ボーンデジタルに対して、前者を、「ターンドデジタル(Turned Digital)」と呼ぶ、ということも筆者は最近知りました。 ターンドデジタル、ボーンデジタルという表現は、言い得て妙と思われ、こ
毎日jpの2011年12月17日付の記事によると、原子力災害対策本部と政府・東京電力統合対策室の合同会見で、園田康博・内閣府政務官は「全体会議の議事録は取っていない」と明言し、さらに「(事故対策の)時系列のメモはあるが、内部文書なので公開しない」として、記者からの関係文書の開示要求を突き放したとのことです。 また、メモは各省でとりまとめているが、そのメモが行政文書にあたるのか否かについても明言を避けています。 「メモ」が、組織的に用いられていない「個人のメモ」だから情報公開法で開示請求される行政文書には該当しない、開示する必要はないという含意が読み取れます。 さらに、メモが「個人のメモ」と意味づけられることによって、対策室における政府と東電のやり取りを表す記録が一般国民にクローズされ、一連の事故対策が適切な措置だったのか否かを一般国民の目で検証できる術(すべ)がなくなることをも意味します。
資料整理とコンサルティングで、資料と情報の管理をサポートします 資料整理 調査・計画・実作業 コンサルティング 訪問による対応 管理のサポート ルールとツールの導入 活用のサポート 様々なシーンで活用 アーカイブとは? ■一般的な意味 歴史的な価値を持つ記録類=歴史資料・史料そのもの(記録、文書など) または、これらを保存・公開する施設(博物館、文書館、資料室など) ■出版文化社の考える「アーカイブ」 歴史的な価値を持つ記録類を、収集⇒整理⇒管理⇒活用するために 必要な一連の過程
社会情勢の変化のスピードが速まり、「今日の資料は、明日には史料になる」と言わる昨今です。このような環境のなかで、アーカイブは、単に「過去の記録」だけを相手にしていていいのか、という議論が出始めています。 もともと、ヨーロッパ社会におけるアーカイブは、現用文書も含めた記録全般を管理・保存する考え方だったようです。社会が成熟して複雑になり文書量も多くなるに従って、1950年代、特に米国において、レコードとアーカイブを分けて考えるようになりました。そこでは、レコード=現用文書を扱う専門家をレコード・マネジャー、アーカイブ=非現用文書を扱う専門家をアーキビストと呼んで区別し、役割を分担したのです。 しかし、このように役割を分担させると、一般の市民は随分と不便を感じるようになりました。例えば、これまで情報公開法などは、行政機関の「行政文書」と言われる現用文書のみが市民の請求により閲覧可能になる、とい
出版文化社の企業サイトへ 資料整理 導入事例 Q&A アーカイブコラム お問合わせ 2021年3月30日 ●発行者:出版文化社アーカイブ事業部 昇順 降順 01:アーカイブって何? 02:百花繚乱 - 工夫をこらす企業博物館 03:データ保存、ベストなメディアは? 04:公文書管理、法制化へ一歩踏み出す 05:公文書管理法の行方 06:地方公文書館の奮闘 07:水戸黄門のアーカイブズ 08:アーカイブ電子化の功罪 09:時を貫く記録 10:まずどこから手をつけるか 11:知られざる専門図書館―情報の宝庫 12:私的アーカイブズのすすめ 13:資料整理と目録 14:資料整理と目録の大事さ 15:将来に備えるデータ保存 16:電子化の仕様 17:企業史と史料館のこと 18:歴史的資料の分類と保管のヒント 19:写真の保管法 20:アーカイブは利益を生む 21:注目される地方自治体の歴史的公
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